生き残りBAD END

とぅるすけ

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第2章 「征」編

守れる刀

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 ショウは寝巻きのまま食卓について楓彩に質問していた。

「あいつが……楓彩に剣術を……?」

 今日の朝は普段と違って楓彩の隣にショウが座っている朝食の風景だった。

「はい……でも、剣術を教えてくれたというよりは、相手をしてくれたに等しいんですけど…」

 と思い出しながらショウと話す楓彩。

「ふーん、あいつ本当に分からないな、つい先日まで惨殺事件の犯人、SABERの一員、その他犯罪行為……私達に対する敵対心は確実だったけど……」

 ショウはいつもの顎に手を当てる考えるポーズをする。
 剣得も腕を組んで考え込んでいる様子だった。

「スパイにしては目立ち過ぎてる、だが、俺らを翻弄するあの能力、ただ単にあいつ自身の“存在証明”のために来たって訳か?」

 剣得の考えに対しショウは

「まぁ、普通に考えてそうだよね…」
「「ふむーー」」

 またしても剣得とショウは難しい顔をする。
 すると、楓彩が

「ご飯冷めちゃいますよ?」

 確かに、この場にいる3人の中で、楓彩だけは朝食を黙々と食べていた。

「とにかく、ショウさん、剣得さん? 人の心はひょんな事ですぐ変わりますから、難しい考え方は要らないと思うんです」

 いきなりの楓彩の発言に剣得とショウの視線が楓彩に釘づけになる。

「その……人の心に疑問なんか持ったら何も信じられませんよ?」

 と控えるような表情で言う。
 楓彩にしてはやけに大人っぽい台詞だが、確かに楓彩の言うことにも一理ある。
 こちらが警戒していたら相手だってこちらを警戒する。よって、情報が入ってこない。

「賢くなったな…楓彩」

 と剣得は楓彩の頭をわしゃわしゃする。

「きゃっー、もうっ!寝癖を直したばっかりなんですけど!!」

 と剣得を睨む。
 その時

ヴヴゥ

 剣得の携帯か振動する。

「?」

 剣得はポケットから携帯を取り出し耳に当て、部屋を出ていく。

「もしもし?」
『総督ですか?───』


 ショウと楓彩は朝食を食べ終えると楓彩がショウの分の食器も自分の食器に重ねて少し重そうに腕をプルプルさせながら台所へ運ぶ。
 そして流しに全て下ろすと

「剣得さんのも片付けた方がいいですかね」

 と楓彩は剣得に「食器を片付けておく」と伝えるため、リビングの外の廊下で電話をしている剣得の元へ向かう。
 楓彩がドアを開けたその時。

「──なんだって!? 戻ってきた!?」
「っ!」

 そのいきなりの声量に体を震わせる楓彩。

「あぁ、すぐ行く、それまでにショウの作った装置を付けておけ…」

 剣得は携帯電話をポケットにしまうと

「悪いな、洗い物は今日は帰ってからだ、それと、今日は楓彩を東区に送っていけない、だから…ショウ、道案内を頼むぞ?」

 何かセカセカしながら、剣得はさっと寝癖を手ぐしで直し、制服を肩からかけて、ショウと楓彩の返事を待たずに家から飛び出して行く。

「…行っちゃいましたね…」
「そうだね…」

 2人は唖然としてその光景を見ていた。

「じゃあ、まだ出勤の8時半まで、1時間あるので、洗い物しちゃいますね?」

 と楓彩は、テレビの前に置いてあったリモコンをショウの前に差し出す。

「テレビでも見ていてください」
「うん、ありがとう」

 その後、楓彩はショウにコーヒーを差し出し、掃除をする用量で水仕事をこなし、ショウは楓彩から貰ったコーヒーを盛大に吹いていなければ、朝の一般家庭によく居る親父の様な体制でニュースを見ていた。

 その後、楓彩は主婦のように鮮やかな手際で家事をこなし、ショウと一緒に寝間着を着替え、制服の姿になると

「さぁ! ショウさん! 行きましょう!」

 玄関で、楓彩は自分の靴を履き、ショウに靴を履かせるとドアを開けて、車椅子だけを外に出し、玄関の踊り場で座っているショウを支えて車椅子まで連れ、座らせる。

「楓彩……悪いね…何から何まで」

 申し訳なさそうに言う、ショウ。

「いえいえ! いつもショウさんにお世話になってますから!」

 楓彩の元気の良さにショウは救われたのか

「そう…」

 と安堵の声。


 2人はその後、朝から賑やかな商店街を抜け、車が行き交う大通りに沿って東へ向かい、30分ほど歩いただろうか、東区本部に到着する。

「な、長かった……」

 楓彩は額に汗を流して肩で息をしていた。 

「お、お疲れ様……」

 ショウも日傘は持っていたが、楓彩の頑張る様子を見て差すことは無かった。
そして、2人が中に入ると、まず、ヒンヤリとした空気とクーラーから出る冷気がお出迎えする。

「「ふわぁぁ……生き返るぅ……」」

そして、“あの男”が姿を現す。

「やぁ、鬼月ちゃん……それと……どうしたんだい? トゥルンちゃん……」

 東区代表の凍海 朝日だ。
 制服の前のチャックを全開にし、黒いTシャツを出して、制服をなびかせての登場はショウの中でなかなか腹立たしいものだった。

「トゥルンって呼ぶな!」
「ははっ、怪我でもしたのかい?」

 朝日はショウに近づき、頭をポンポンする。

「見れば分かるでしょ?」

 と、朝日は車椅子に座っているショウの顔に自分の顔を近づけ

「じゃあ、俺が慰めてあげるよ……今夜……一緒にどう?」

 と甘い声を出す。が

「死にたくなかったら離れろ」

 ショウは前回と同じように右腕の裾からショットガンを取り出し、朝日の顎に押し当てる。

「おいおい、それ、いつも持ち歩いてるのか……?」

 朝日は両手を顔の位置まで挙げる。

「まぁね」
「ショ、ショウさん! またそんな物騒な物を取り出して!!」

 楓彩は仲裁に入ろうとする。

「楓彩、安心して、前のやつは人を殺す用だけど、今回のはゾウを殺せる程度だがら……」

 と殺気立った目で朝日を睨む。

「ゾウさんが死ぬなら人間も死にます!! やめてください!!」

 楓彩の言葉通りにショウは殺気立った目をそのままにショットガンをしまう。

「さぁて、今日は鬼月ちゃんに仕事がある」

朝日は何事も無かったかのように話を進める。

「仕事ですか……?」


 そうして、楓彩が朝日に連れてこられたのは

「うっ! この臭い……」

 楓彩、ショウ、朝日は鼻をつまんだ。
 その部屋の扉を開けた瞬間に押し寄せたその臭いは恐らく汗だろう。
 この東区は危険な場所であるため女性隊員が派遣されるのは極めて希なことで、実際、この東区には男性300人に対し、楓彩と真希奈を含む、10人程しか所属していない。
 よって男子更衣室は想像に任せるが、ほぼ地獄。

「臭いだろ? 掃除を出来るやつを探していたんだよ、鬼月ちゃんは掃除が得意らしいから、ここ、頼んでいいかな?」
「自分たちでやれよバカ」

ショウは楓彩よりも早く即答した。

「今皆忙しいんだよー、頼むよー」

 と両手を合わせて深く礼をする。

「し、仕事ですもんね……やります……」

 綺麗好きな楓彩の顔もさすがに引きつっていた。
 すると、ショウは小声で

「これが続くようになったら私にいいな?剣得と私であの男、ぶち〇すから。」

と、朝日を睨みながら言う。


その後30分

「ふぅーやっと半分ですかぁ」
 とモップを片手に額の汗を腕で拭う楓彩。
男性が多いだけあって、広さはちょっとした一軒家なみだった。
 しかし、楓彩も負けておらず、男子更衣室の半分は見違えるように輝いており、半分はまだ、地獄絵図。
 まるで天国と地獄の境界のようだ。

「さぁ、チャッチャと終わらせちゃいましょう」

 楓彩はモップで床を磨き始める。


 その頃、対してやることの無いショウは代表室で仮眠を取っていた。
 朝日はパソコンを操作している横目にそれを見ていた。

「トゥルンちゃん寝ちゃったか…………これってイタズラし放題─────ぶっ!!!」

 ショウとは逆側からの重たい一撃が朝日の頬に直撃する。

「いってぇ!!何すんの真希奈!」

 朝日は椅子から転げ落ちる。

「………」

 真希奈は無言だったが、その萌え袖の中に握られているであろう拳を見て

「え? あ、あの……まさか……」
「はい、グーで殴りましたよ?次はチョキです」

 真希奈は朝日に軽蔑の目を向けていた。

「ご、ごめんなさい!!」

 と、見事に綺麗な土下座を決める朝日。

「まったく……“ボスは自分だけって言ってるのに”……」
「はい……気をつけます……」

 その時だった。

パァァン

 鳴り響く銃声。 

「何事!?」

 朝日と真希奈は瞬時に臨戦態勢になる。


 男子更衣室

「あとちょっと……」

 楓彩の掃除は終盤に差しかかっていた。
 もう、過去の男子更衣室では無い。
 臭いは無くなり、ちょっとしたミラールームのように輝いていた。
 と、その時

「?」

 男子更衣室の扉が開く。

「す、すいません、まだ掃除中────」 

──刹那
 楓彩はロッカーの陰に隠れ、放たれた弾丸は楓彩が隠れたロッカーの隣のロッカーに着弾した。 

「………」

 弾丸が着弾した音が室内に反響する。

「(敵!?)」

 楓彩は息を整えるとロッカーの影から発砲した人間を確認すると素早く頭を引っ込めた。

「な、なんで」

 発砲したのはG,S,Aの制服を着た男性だった。
 そして、もう1人その男性の後ろに同じ拳銃を持った男性がいた。
 楓彩は辺りを見回して、この部屋に入る時に入り口近くに置いた刀を確認する。

「(さぁて、どうやって取りに行きましょう)」

 楓彩は自身でも不思議に思ったが、怖くない。
弾丸の動きが止まって見えたからなのか、男性2人と自分の戦闘力の差を感じているのか。
 これは命のやり取り。
 そのはずなのだが…。

「…今ですっ!」

 刹那の内に、楓彩は男性達の足元に落ちていた刀を拾い、抜刀することなく鞘に収めたまま、男性2人の拳銃をはじき飛ばした。

「───よし!!」

 そして、1人に刀を押し当て、もう1人は右足で壁に押さえつける。
 その際、ピンク色のパンツが丸見えだったことに楓彩は気づいていない。
その時

「鬼月ちゃん!!」

 朝日の声が、男子更衣室前の廊下に響く。
 楓彩は気づいていなかったがいつの間にか、廊下に戦場を移していたようだ。
 楓彩は朝日の声がする方に目線を向けると、焦った様子で走ってくる朝日のあとをショウの車椅子を引いた真希奈がいた。

「………」

 朝日は楓彩が楓彩より大きい男性2人を動けなくしているのを見て少し驚く。

「………鬼月ちゃん凄いね………って内の部下じゃん……何やってんの」

 朝日は近くの壁に体重を預けて脱力する。

「わ、分かりませんこの人達がいきなり発砲してきました……」

 今、男性は2人とも楓彩が押さえつけているため反撃する気配は無い。
 しかしその時、何か合図があったかのように2人とも同時に楓彩の束縛から抜け出し、隠し持っていた銃を構える。
 銃口はショウに向いていた。

「───っ!!」

 朝日の氷結が間に合わない。
 真希奈もショウの前に出ようとするが間に合わない。

 ───刹那

 2人の拳銃は粉々に砕かれ、2人とも膝から崩れ落ちる。

「ふぅーーー」

 楓彩は右手を地べたにつき、左手の鞘に収められた刀は、男性2人の両膝を砕く軌道の残像を残し、振り抜かれていた。

「「「っ!!」」」

 ショウ、朝日、真希奈は楓彩が何をしたのか一瞬理解出来なかった。
 楓彩は息を吐き出すと立ち直り

「男子更衣室、少し傷ついちゃいました…」

 と少し悲しそうな顔をする。
 楓彩は平然としていたが、ショウは気づいていた。

「(今……あの2人の命を奪おうとした…?)」

 ショウの目には見えていた、楓彩の殺気立った目を。
 獲物を狩る獣のような野生に満ちた目を。

「楓彩……あんたいったい………」
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