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第2章 「征」編
迷い
しおりを挟む「お風呂…ありがとうございました」
楓彩は風呂からあがり、再び、ショウを連れるため、代表室に来ていた。
「おう…鬼月ちゃん? 今日はもう仕事無いから…疲れてるだろうから帰ってもいいよ?」
朝日は両肘を机について頬杖をしながら楓彩に笑顔を向ける。
「は、はい…」
楓彩は返事をしてからショウの車椅子の後ろに回り、押して、代表室から出ていった。
「楓彩? どうしたの?」
代表室から出た直後、ショウは楓彩の暗い表情を見て、心配になった。
「え? …い、いえ…鏡を割ってしまって…あはは…」
と無理矢理笑顔を作ってショウに答える。
「そうか…って何してんの…どうやったら割れんのよ…」
ショウはジト目を向ける。
だが、ショウは楓彩の笑顔に隠れた暗い感情を見て、それ以上詮索することは無かった。
G,S,A本部
「剣得さん…ただいまです…」
「おっす、剣得ー」
楓彩とショウは本部にいる剣得を訪ねて、総督室に訪れていた。
「おぉ、楓彩か…お、おかえり…」
剣得はいつも通り、総督室のデスクで仕事をしていた。
楓彩の表情を見て、何か違和感を感じたのか、少し戸惑う。
楓彩はショウを剣得の近くに移動させると、自分は総督室のソファに腰をかけ、上を向き、親父みたいに深い息をつく。
「ふぅーー……」
それを見た剣得はショウに顔を近づけ
「おい、ショウ、楓彩はだいぶ疲れてる様だけど…あれから何かあったのか?」
「いや…分からない…まぁ、命の危険を感じた後に剣得の過保護…そりゃ疲れるわ…」
と呆れた口調で笑うショウ。
すると、楓彩は
「…剣得さん…」
楓彩は上を向いたまま、剣得を呼ぶ。
「──はいっ!」
剣得とショウは一瞬で立ち直り、両手を膝に当て、楓彩の方を向く。
「お腹…空きました」
と剣得を安心されるようないつもの柔らかい笑顔を見せる。
「…はいよ…晩御飯にしよっか…」
と剣得も答えるように笑顔を見せる。
「よっしゃー、剣得の奢りなー?」
ショウは剣得に笑顔を見せる。
「いや、お前は留守番だ…たまには自分の金を使え」
とショウの前に手のひらをかざす。
「私…楓彩がいないと動けないのに…」
右腕の前腕で両目を覆って泣く素振りを見せる。
そして楓彩に向かって悪戯なウインクを見せる。
「はぁ…わかったよ…」
そして、いつも通り剣得は折れた。
その変わらない光景をみて楓彩はにこやかに笑っていた。が
今、楓彩の中は分裂寸前。
言えない。
言えば壊れてしまう。
自分で何とかする。自分の問題だ。
「(剣得さん達には何も出来ない…)」
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