生き残りBAD END

とぅるすけ

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第3章「奪還」編

変わってしまった日常

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 翌朝

「あ…? ……朝?」

 小雨は目を覚まし、左隣に寝ている楓彩の方に寝返る。
 そこにはまるで天使のような、赤子のような微笑ましいく、愛くるしい寝顔があった。

「むふふ、可愛い寝顔……」

 小雨は楓彩の頬に手を伸ばす。
 だが、昨日の薄い記憶が蘇る。

「っ!!」

 小雨は手を引き、静かにベッドから両足を降ろして腰をかける形になる。
  小雨はすぐに立ち上がり、リビングへ向かう。
 リビングの扉をあける。

「おはよー……ってみんな寝てるし…てか、寒!!」

 リビングの中は冷気で満たされていた。
 どうやらエアコンがついているようだ。
 小雨は床で敷布団の中で仲良く並んで寝ている2人を跨いで大窓のカーテンを開ける。
 リビングで寝ているショウ、臨、いろは に朝日が差し込む。

「「「う……あぁ…」」」

 3人とも顔に光が当たらないように寝返る。

「起きろーー!」

 リビングに小雨の声が響く。
 それと同時に臨とショウから腹にかけてあるタオルケットを奪い去る。

「「うわぁ……寒い…」」

 臨は自分の太ももに右腕を挟み、ショウは臨にくっつく。
 そして小雨は、いろは が寝ているソファを傾けて いろは を落とす。

「いでっ…」

 鈍い音が響くが、小雨は気にせずキッチンへ向かう。

「小雨? ……いま何時?」

 弱々しい声でセクシポーズの臨が尋ねる。
 それに続いてショウも起き上がり、まったく同じポーズで目を擦る。

「まだ、6時かなー…臨? 朝飯用意するから手伝って」

 臨はそう言われると、眠たそうな目のまま起き上がり、ショウの腹を踏んでからキッチンへ向かう。

「げふっ!!」
「あっ、ごめん」

 間もなくして、ベーコンを焼く耳障りのいい音と、シンクに水が当たる音が響く。
 ショウはむくりと起き上がると、ソファの前でうなだれている いろは を見る。

「…ねぇ いろは 、剣得に何があったの? 昨日言いそびれたけど……敵の情報をちょうだい?」

 いろは はショウと目を合わせずに天井の一点を見つめて

「……話せば長いが……────」



─── 10時間前  G,S,A本部

「晴雲……!!」

 剣得は暗い広い、戦闘実演室で死体の山の上で座っている晴雲を見上げていた。

「お前ら、下がってろ…」

 剣得のその声に隊員達は引き下がり、晴雲と剣得の静かな睨み合いが始まる。
 いろは は剣得の隣に歩み寄る。

「おい、いろは 下がってろ」
「王志、敵は1人じゃないぞ……奥にもう一人いる……いいか、我は忘れるなよ…“奴の能力”に掛かりやすくなる…」
「? それって一体…──」

───刹那

 剣得が立っていた場所に、巨大な切り傷が出来る。

 いろは もそれに合わせて距離をとる。

 剣得は咄嗟に跳んだため、かわせたが、晴雲がそれに合わせて死体の山を蹴り、突進してくる。

「さぁ、“この山”の一部になれよ!!」

 剣得は晴雲の周りを漂っている“鋭利な気配”を感じ取り、見えないそれをかわす。
 恐らく、晴雲の能力、カットだろう。

「(厄介だな…)」

 だが、剣得はあることに気づく。

「(なぜ、本体は攻撃を仕掛けてこない…それにわざわざ近づくということは一定の射程があるのか……)」

 仲間を大量に殺され、我を忘れかけていた剣得だが、戦う時は冷静だ。
 “鋭利な気配”をかわし続ける剣得を睨む晴雲。
 その後ろには部屋の影を警戒する いろは 。

「(いろは を上手く使えないだろうか…)」

 剣得は晴雲から距離を取ると、晴雲もそれに合わせて、自分の能力の射程内に剣得を入れる立ち回りをする。

「いろは !! まずは晴雲だ!!」

───刹那

 その声に合わせて、いろは は考えるよりも先に、晴雲に斬りかかった。

 いろは の刃は晴雲の後頭部既の所で“鋭利な気配”に阻まれる。

「チッ!」
「旦那が敵になるとはね……」

 いろは にも“鋭利な気配”が襲いかかるが、テレポートで、剣得の近くに瞬時に移動する。

「おい、いろは 奴の能力を突破する手口は…」
「隙を見つけるしかない…俺が囮になろう…その隙にお前の怪力を叩き込め」

 剣得は いろは の目を見て頷くと、右腕に力を込め始めた。
 そして、 いろは はテレポートを点々と繰り返し、晴雲を翻弄する動きをする。

「邪魔だ!!」

 “鋭利な気配”は収縮して、 いろは に襲いかかる。

「(随分と早く見せたな……その隙を)……王志!!」

 いろは はその攻撃を刀で切り伏せる。

 そして、晴雲が気づいた時には剣得は自分の懐にいた。

「しめぇだ…バカ兄貴!!」

 その時、剣得の足元に丸い何かが転がってくる。

「っ!!」

 剣得は咄嗟にバックステップを踏み、距離を取る。

「(爆弾か!?)」

 否、暗がりでよく見えないが、恐らく頭部だろう…人の。

「っ!! ……」

 その生首に見覚えがあった。

「お、おい…嘘……だろ……? ……か、楓彩……?」

 青っぽい黒の髪色、間違えない、楓彩の物だ。

「………」

 棒立ちの剣得の背後に、 いろは が駆けつける。

「おい、落ち着け!!」

 いろは は剣得の近くで叫ぶが、剣得は届いてない様子で目を見開いていた。

「……す…」
「おい、王志…」
「殺す!!!!」

 剣得の足元に大きなクレーターが出来、そのひびは頑丈な戦闘実演室の壁にまで入る。
 
───刹那

 剣得の元いた場所を中心に、広い戦闘実演室の半分以上が剣得の力に耐えきれず、沈下する。
 その窪みの外で晴雲は剣得に顔面を鷲掴みにされ、組み倒されていた。

「………はぁぁ……」

 剣得の顔はもはや人間のそれでは無かった。
 と、その時、剣得の力が一気に抜ける。

「……お前の負けだ、王志剣得…」

 晴雲は理解した様子で笑を浮かべる。
 剣得は、脱力したまま、膝立ちの状態で気を失った。

 いろは は巨大な窪みのそこから這い出てくる。
 目線の先には放心状態の剣得。

「……な、何が起こって…っ!! しまった!」

 次の瞬間、剣得は殺意に満ちた冷たい眼光をいろは に向ける。

「ま、まずい!」

───刹那

 数十m離れていた剣得の拳は いろは の腹にめり込んでいた。

「ごぶっ!!」

 続く第二撃の鋭い回し蹴りも、 いろは の右頬に入り、いろは の体はありえない速さで、遠くの壁に打ち当たる。

「かはっ!!」

 いろは は意識が朦朧とする中で、テレポートを使い、戦線から脱出。



 「という訳だ…」

 いろは はショウに向かって、目をそらしながら出来事を話す。

「たった、二撃で……あんたがこんなになるの…?」

 ショウは恐怖混じりな声を出し、いつもの手に顎を置くポーズで、深く考え込む。

「そんな、考え込んでないでさ、まずは朝飯食べよ? ショウ」

 いつの間にかショウの後ろにエプロン姿で立っていた小雨はショウの肩を触る。

「あ、うん…そうだね…楓彩起こしてくるよ…」

 ショウはリビングの扉を開け、廊下の右手にあるドアを開く。
 部屋の中は白いカーテンを通して朝日が差し込み、楓彩が二人用の広いベッドの真ん中でうつ伏せで寝ていた。
 
 「楓彩ー、起きてー」

 ショウは楓彩の背中に手を置き、揺らす。

「ん…んん…? ショウ…さん…?」
「ご飯だよ…起きて?」

 楓彩は重い体を起き上がらせて女の子座りになる。

「ふわぁぁ、今何時ですか…?」
「7時だよ…」
「えっ!? 遅刻します!!」

 楓彩は慌てた様子で寝巻きのまま寝室を出てリビングに駆け込む。

「…っあれ?」

 楓彩は昨日の事を思い出したのか、落ち着いて食卓の席につく。

「そ、そうでしたね…」

 すると、小雨はボウルに盛られたサラダを片手に楓彩に近づき

「ご飯にしよう、楓彩ちゃん」

 とテーブルの真ん中にボウルを置く。

「あ、ありがとうございます、小雨さん」

と、その時。

「みんな! 静かに!!」

 ショウは何かの気配を感じて皆を黙らせる。

「玄関の向こうに誰かいる…」
「「「っ!!」」」
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