40 / 159
第3章「奪還」編
行動
しおりを挟む「誰かいる…」
その言葉に、その場にいた、楓彩、小雨、臨、ショウ、 いろは に戦慄が走る。
「…」
ショウは無言で、リビングの扉を開け、玄関まで続く廊下に向かって拳銃を構える。
「(迂闊だった…ここはG,S,Aの総督の家だ…追手が来ない訳が無い…)」
ショウの後に、銀の銃槍を構えた臨と、鞘に収められた刀を右手に左手で柄を持つ楓彩も続く。
「(楓彩がドアを開けて、臨と私で迎え撃つ…)」
ショウはそう、アイコンタクトした。
楓彩は理解したのか不安だが、理解した様子でドアに近づく。
そして、3人は息を呑む。
「……」
楓彩はドアを勢いよく押し開き、現れた人影の首元に刀を鞘に収めたまま押し当てる。
ショウと臨はそれに合わせて拳銃と銃槍の銃口をその人影に向ける。
「くっ!!」
「っ!! って…え、瑛太さん!?」
そこに立っていたのは、両手を上げて楓彩が持っている刀を凝視する、黒髪の真面目なイメージの男性、神ヶ丘 瑛太 だった。
それを見た臨とショウは銃口を下ろす。
「な、何やってるんですか…? こんな所で……」
楓彩は刀を下ろす。
「い、いや、鬼月さんこそ、なにやってんの? 最近仕事に顔出さないから……」
「え?あ、いや、色々ありまして……」
楓彩は笑って誤魔化す。
「まぁ、なんでもいいけどさ…瑛太、中に入りな…」
ショウはアパートの周囲を確認しながら瑛太を家の中に入れる。
瑛太は、ショウに招かれるままにリビングに入る。
そこには、体に包帯を巻いてソファに座っている見慣れない男性と、銀の銃槍を手に瑛太を警戒している二つ結びの女性、そして、金髪で、エプロン姿の自然と胸に目線がいってしまう女性がいた。
「あ、ええっと、か、神ヶ丘 瑛太です……」
なんだか分からない圧にとりあえず自己紹介をする瑛太。
「え? 誰? ショウちゃんの知り合い?」
エプロン姿の小雨は瑛太に近づくことなく警戒した様子で瑛太を睨む。
「あっ、わ、私の同僚? です…」
楓彩は右手を小さくあげる。
「あぁ、楓彩ちゃんの知り合いね…てことは東区の人なんだ…何でここに?」
「え? 代表の命令で、この住所に行って様子を見てこいと……」
と、住所が書かれた小さい紙を小雨と臨に提示する。
「へぇ、じゃあ、東区はまだ生きてるんだ…」
「え? どういう事ですか!?」
瑛太は臨の発言に疑問を抱き、聞き返す。
「瑛太は東区からここに来るまでどのくらいかかった?」
後ろからショウが尋ねてくる。
「歩きで来て、途中道に迷ったので10時間くらいですかね…」
「「「(夜通し歩いたんかこいつ!!)」」」
臨と小雨、ショウの中に稲妻が走る。
「コホン、じゃあ、知らないね…本部が壊滅した…」
「え!? ど、どういう事ですか!? それ! 一体何が!」
その時、家の中に電話の着信音が響く。
どうやらリビングのドアの近くにある家電のようだ。
近くにいた臨は受話器を取り上げ、耳元に当てる。
「もしもし…」
『お、繋がった! 剣得か!?』
朝日の声だ。
「いえ、本部勤務の帝です」
『本部勤務!? 剣得は!?』
「いえ、い、今は敵の手に渡りました…」
『は!? 何言ってるんだ君は! まぁいい、そこに瑛太はいるか?』
「あっはい、います」
『変わってくれ!』
臨はその言葉を聞き、振り返って瑛太に手招きする。
「はい、神ヶ丘です」
『落ち着いて聞け、東区が占領された…! 残ってるのは俺と真希奈だけだ』
「っ!!」
『とにかくだ、近くにいる仲間と一緒にいろ! それと、そこは危険だ、移動しろ…』
「了解です!」
そして、通話が切れると瑛太は受話器を置く。
「皆さん! 一大事です! 東区が落ちました! ここにも追っ手が来るかも知れません、移動しましょう!」
ショウはその事を知っていたかのように
「オッケー、荷物は準備してあるから、瑛太? あんたの家開いてる? いや使わせてもらうけど…」
「は? え? いや、俺ん家ですか?」
「大丈夫、“何か見つけても”私は黙ってるから」
「? ……っ!! んな物ありませんよ!!」
そんなこんなで楓彩、ショウ、小雨、臨、 いろは は、そして、1匹の猫は、剣得の家が危険と判断し、瑛太の家に籠ることにした。
そして剣得の家から1時間ほど歩いた場所、女性4人はとある豪邸の前で唖然としていた。
和風な旅館のような家、庭は広く庭園があり、その庭に蔵や並立した格技場まである。
「「「「ひ、広ーーい!!」」」」
いろは 以外は目を丸くして門の前で立ち尽くしていた。
「どうぞ、こちらへ」
いろは は瑛太の手招きについていくが、他の者はしばらく見とれたあと、歩き出した。
そして、5人が瑛太に通されたのは客間だろうか、十二畳ほどの広さで、真ん中に長方形の木製の机が置いてあった。
「お茶入れてきますね」
瑛太は近くの襖を開けて部屋から出ていく。
5人は四角いテーブルを囲むように腰を下ろす。
すると、楓彩の胸に抱かれていた白猫は楓彩の腕を抜け出して、部屋の中を徘徊し始めた。
「そ、それにしても広いですね…なんだか、シロンも伸び伸びしてます…」
と、楓彩は障子の近くで伸びをしている白猫を見る。
「この子、楓彩ちゃんの飼い猫?」
「いえ、拾った子なんですけど、怪我をしていたので…」
「あっ、ホントだ」
小雨は白猫の右後ろ足に巻かれている包帯を見る。
「でも、もう大丈夫そうですけどね…」
その時、開いていた襖から瑛太がお盆の上にお茶を6つ乗せて現れる。
瑛太は無言で5人の前にお茶を置いていく。
「さて、瑛太のエロ本でも探しますかね──」
と、立ち上がるショウ。
その頭を臨が掴み、一瞬で座らせる。
「あんたは思春期男子に興奮しないの…」
臨はそう言うと、ショウの頭を掴んでいない方の手を手刀の形にして顔の前に出して瑛太に「ごめんね」という合図をする。
「(っ!! この人、めっちゃ美人じゃん!!)」
それを見た瑛太は咳払いをして
「コホン、あ、あのお名前は…」
と、臨を見つめて尋ねる。
「え? オレ? 帝 臨だけど…」
「帝 臨さんですね…よろしくお願いします…」
小雨と いろは、ショウは赤面して臨に見とれている瑛太を見て
「「「(うわぁ、男子高校生、分かりやすい…)」」」
「わ、私は雨地 小雨だよ?」
「そうですか、よろしくお願いします」
素っ気ない返事。
「……(くっ! このガキ…)」
握りこぶしを作る小雨。
「さてと、真面目な話しようか…」
話題を変えるショウ。
「これからの方針だけど…まず、武器を補充しようか…そのためにはまずここに行く必要がある」
ショウは懐から手のひらサイズの端末を取り出し、起動させるとテーブルと同じ大きさの立体的な島の地図が広がる。
「で、ここに私の武器庫がある」
と、島の最東端、スラム街の一角を指さす。
「「「武器庫?」」」
「うん、私が昔使ってた銃器が沢山あるよ」
ショウは端末をしまうと立ち上がり
「まぁ、今日動くのは危険だから いろは の怪我が完治したら、私と いろは 、臨の少数先鋭で向おう…奪還するよ…本部」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
悪役令嬢、休職致します
碧井 汐桜香
ファンタジー
そのキツい目つきと高飛車な言動から悪役令嬢として中傷されるサーシャ・ツンドール公爵令嬢。王太子殿下の婚約者候補として、他の婚約者候補の妨害をするように父に言われて、実行しているのも一因だろう。
しかし、ある日突然身体が動かなくなり、母のいる領地で療養することに。
作中、主人公が精神を病む描写があります。ご注意ください。
作品内に登場する医療行為や病気、治療などは創作です。作者は医療従事者ではありません。実際の症状や治療に関する判断は、必ず医師など専門家にご相談ください。
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
【完結】異世界へ五人の落ち人~聖女候補とされてしまいます~
かずきりり
ファンタジー
望んで異世界へと来たわけではない。
望んで召喚などしたわけでもない。
ただ、落ちただけ。
異世界から落ちて来た落ち人。
それは人知を超えた神力を体内に宿し、神からの「贈り人」とされる。
望まれていないけれど、偶々手に入る力を国は欲する。
だからこそ、より強い力を持つ者に聖女という称号を渡すわけだけれど……
中に男が混じっている!?
帰りたいと、それだけを望む者も居る。
護衛騎士という名の監視もつけられて……
でも、私はもう大切な人は作らない。
どうせ、無くしてしまうのだから。
異世界に落ちた五人。
五人が五人共、色々な思わくもあり……
だけれど、私はただ流れに流され……
※こちらの作品はカクヨムにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる