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第4章 見えた世界 偏
最後の家族
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「そんなことが…ね」
剣得は左手を顎に当てて彩楓の話をまじまじと聞いていた。
「セラフィスが危険地帯……そんな…」
「ハワイ島って死んでる島かと思ってたけど…」
話を聞いていた時もそうだが、楓彩は耳だけを傾けて、俯いたまま無言だ。
その時、ショウが立ち上がる。
「とりあえず、2人の血液検査を────」
ショウは楓彩の様子がおかしい事に気づく。
「───楓彩?」
「───へ? あ、ど、どうしました…?」
「顔色悪いよ…?」
確かに、楓彩の顔は真っ青で、目もどこか虚ろだ。
「す、すこし…あたま…が…───…」
楓彩はそのまま剣得の肩に向けて倒れる。
「楓彩!?」
「おい! 楓彩!!」
「楓彩ちゃん!!───」
「────でうす……ん…? …」
楓彩が目を覚ますと、今日の昼に起きた時と似た光景が目の前に広がっていた。
剣得が枕元であぐらをかいている。
しかし、今回は左側に柱に背をもたれている彩楓の姿もある。
今回は彩楓の膝の上でシロンが丸まって寝ている。
剣得は楓彩に気づき、話しかけてくる。
「…楓彩…起きたか」
「あれ…? 私…何を…」
「気を失ったので俺と彩楓でここまで運んだ」
部屋の中が眩しい。
楓彩の視界はまだぼやける。
「まだ、寝てていいぞ?」
まだ、楓彩の体調が悪いことを見越した剣得。
「お風呂入りたいです…」
と目を擦りながら言う楓彩。
「いや、歩けるのか?」
「まだクラクラしますね…」
楓彩は上体を起こしながら言う。
「ほら、臨に体を拭いてもらうように頼んでおくから寝てな?」
「は、はい…」
その時、
「なぁ、楓彩…」
彩楓が話しかけてくる。
「い、彩楓さん?」
「いま、ショウムートが俺達の血液を調べてる…もしだ、もしも兄妹だったらお前はどう思う」
彩楓は不安だった。
もし、楓彩が拒否すれば彩楓と楓彩は兄妹という事実を残したまま不快な距離を置くようになってしまう。
「…嬉しいです…けど…」
「あぁ、理由はどうあれ俺は、お前が嫌悪する殺人鬼だ。受け入れろって言う方が無理だ」
「……は、剣得さん…」
回答に困った楓彩は剣得の方を見る。
「俺は何も言えない楓彩、お前が決めてくれ」
兄が現れただけで、剣得と楓彩の関係は崩れない。
むしろ彩楓という心強い見方が増えるので剣得にとっては喜ばしいこと。
しかし、楓彩の心が何を思うか。
やっと血の繋がりという孤独から開放されるが、兄が殺人鬼。
「…彩楓さん?」
「あぁ」
楓彩は頬を少し赤らめて、そして、すこし膨らませて四つん這いになりながら彩楓に顔を近づける。
「っ!(近い近い! 丸見え…)」
それに合わせて彩楓も後ずさりする。
彩楓の膝の上で寝ていたシロンは飛び起きて剣得の方へ駆けていく。
「改心しますか?」
「…え? あ、あぁチャンスをくれるのなら…」
「分かりました!」
その後、血液検査の結果は言うまでもないが、一致。
この日を境に、2人は兄妹になった。
剣得は左手を顎に当てて彩楓の話をまじまじと聞いていた。
「セラフィスが危険地帯……そんな…」
「ハワイ島って死んでる島かと思ってたけど…」
話を聞いていた時もそうだが、楓彩は耳だけを傾けて、俯いたまま無言だ。
その時、ショウが立ち上がる。
「とりあえず、2人の血液検査を────」
ショウは楓彩の様子がおかしい事に気づく。
「───楓彩?」
「───へ? あ、ど、どうしました…?」
「顔色悪いよ…?」
確かに、楓彩の顔は真っ青で、目もどこか虚ろだ。
「す、すこし…あたま…が…───…」
楓彩はそのまま剣得の肩に向けて倒れる。
「楓彩!?」
「おい! 楓彩!!」
「楓彩ちゃん!!───」
「────でうす……ん…? …」
楓彩が目を覚ますと、今日の昼に起きた時と似た光景が目の前に広がっていた。
剣得が枕元であぐらをかいている。
しかし、今回は左側に柱に背をもたれている彩楓の姿もある。
今回は彩楓の膝の上でシロンが丸まって寝ている。
剣得は楓彩に気づき、話しかけてくる。
「…楓彩…起きたか」
「あれ…? 私…何を…」
「気を失ったので俺と彩楓でここまで運んだ」
部屋の中が眩しい。
楓彩の視界はまだぼやける。
「まだ、寝てていいぞ?」
まだ、楓彩の体調が悪いことを見越した剣得。
「お風呂入りたいです…」
と目を擦りながら言う楓彩。
「いや、歩けるのか?」
「まだクラクラしますね…」
楓彩は上体を起こしながら言う。
「ほら、臨に体を拭いてもらうように頼んでおくから寝てな?」
「は、はい…」
その時、
「なぁ、楓彩…」
彩楓が話しかけてくる。
「い、彩楓さん?」
「いま、ショウムートが俺達の血液を調べてる…もしだ、もしも兄妹だったらお前はどう思う」
彩楓は不安だった。
もし、楓彩が拒否すれば彩楓と楓彩は兄妹という事実を残したまま不快な距離を置くようになってしまう。
「…嬉しいです…けど…」
「あぁ、理由はどうあれ俺は、お前が嫌悪する殺人鬼だ。受け入れろって言う方が無理だ」
「……は、剣得さん…」
回答に困った楓彩は剣得の方を見る。
「俺は何も言えない楓彩、お前が決めてくれ」
兄が現れただけで、剣得と楓彩の関係は崩れない。
むしろ彩楓という心強い見方が増えるので剣得にとっては喜ばしいこと。
しかし、楓彩の心が何を思うか。
やっと血の繋がりという孤独から開放されるが、兄が殺人鬼。
「…彩楓さん?」
「あぁ」
楓彩は頬を少し赤らめて、そして、すこし膨らませて四つん這いになりながら彩楓に顔を近づける。
「っ!(近い近い! 丸見え…)」
それに合わせて彩楓も後ずさりする。
彩楓の膝の上で寝ていたシロンは飛び起きて剣得の方へ駆けていく。
「改心しますか?」
「…え? あ、あぁチャンスをくれるのなら…」
「分かりました!」
その後、血液検査の結果は言うまでもないが、一致。
この日を境に、2人は兄妹になった。
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