生き残りBAD END

とぅるすけ

文字の大きさ
56 / 159
第4章 見えた世界 偏

最後の家族

しおりを挟む
 「そんなことが…ね」

 剣得は左手を顎に当てて彩楓の話をまじまじと聞いていた。

「セラフィスが危険地帯……そんな…」
「ハワイ島って死んでる島かと思ってたけど…」

 話を聞いていた時もそうだが、楓彩は耳だけを傾けて、俯いたまま無言だ。
 その時、ショウが立ち上がる。

「とりあえず、2人の血液検査を────」

 ショウは楓彩の様子がおかしい事に気づく。

「───楓彩?」
「───へ? あ、ど、どうしました…?」
「顔色悪いよ…?」

 確かに、楓彩の顔は真っ青で、目もどこか虚ろだ。

「す、すこし…あたま…が…───…」

 楓彩はそのまま剣得の肩に向けて倒れる。

「楓彩!?」
「おい! 楓彩!!」
「楓彩ちゃん!!───」





「────でうす……ん…? …」

 楓彩が目を覚ますと、今日の昼に起きた時と似た光景が目の前に広がっていた。
 剣得が枕元であぐらをかいている。
 しかし、今回は左側に柱に背をもたれている彩楓の姿もある。
 今回は彩楓の膝の上でシロンが丸まって寝ている。
 剣得は楓彩に気づき、話しかけてくる。

「…楓彩…起きたか」
「あれ…? 私…何を…」
「気を失ったので俺と彩楓でここまで運んだ」

 部屋の中が眩しい。
 楓彩の視界はまだぼやける。

「まだ、寝てていいぞ?」

 まだ、楓彩の体調が悪いことを見越した剣得。

「お風呂入りたいです…」

 と目を擦りながら言う楓彩。

「いや、歩けるのか?」
「まだクラクラしますね…」

 楓彩は上体を起こしながら言う。

「ほら、臨に体を拭いてもらうように頼んでおくから寝てな?」
「は、はい…」

 その時、

「なぁ、楓彩…」

 彩楓が話しかけてくる。

「い、彩楓さん?」
「いま、ショウムートが俺達の血液を調べてる…もしだ、もしも兄妹だったらお前はどう思う」

 彩楓は不安だった。
 もし、楓彩が拒否すれば彩楓と楓彩は兄妹という事実を残したまま不快な距離を置くようになってしまう。

「…嬉しいです…けど…」
「あぁ、理由はどうあれ俺は、お前が嫌悪する殺人鬼だ。受け入れろって言う方が無理だ」
「……は、剣得さん…」

 回答に困った楓彩は剣得の方を見る。

「俺は何も言えない楓彩、お前が決めてくれ」

 兄が現れただけで、剣得と楓彩の関係は崩れない。
 むしろ彩楓という心強い見方が増えるので剣得にとっては喜ばしいこと。
 しかし、楓彩の心が何を思うか。
 やっと血の繋がりという孤独から開放されるが、兄が殺人鬼。

「…彩楓さん?」
「あぁ」

 楓彩は頬を少し赤らめて、そして、すこし膨らませて四つん這いになりながら彩楓に顔を近づける。

「っ!(近い近い! 丸見え…)」

 それに合わせて彩楓も後ずさりする。
 彩楓の膝の上で寝ていたシロンは飛び起きて剣得の方へ駆けていく。

「改心しますか?」
「…え? あ、あぁチャンスをくれるのなら…」
「分かりました!」

 

 その後、血液検査の結果は言うまでもないが、一致。
 この日を境に、2人は兄妹になった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

冴えない経理オッサン、異世界で帳簿を握れば最強だった~俺はただの経理なんだけどな~

中岡 始
ファンタジー
「俺はただの経理なんだけどな」 ブラック企業の経理マンだった葛城隆司(45歳・独身)。 社内の不正会計を見抜きながらも誰にも評価されず、今日も淡々と帳簿を整理する日々。 そんな彼がある日、突然異世界に転生した。 ――しかし、そこは剣も魔法もない、金と権力がすべての世界だった。 目覚めた先は、王都のスラム街。 財布なし、金なし、スキルなし。 詰んだかと思った矢先、喋る黒猫・モルディと出会う。 「オッサン、ここの経済はめちゃくちゃだぞ?」 試しに商店の帳簿を整理したところ、たった数日で利益が倍増。 経理の力がこの世界では「未知の技術」であることに気づいた葛城は、財務管理サービスを売りに商会を設立し、王都の商人や貴族たちの経済を掌握していく。 しかし、貴族たちの不正を暴き、金の流れを制したことで、 王国を揺るがす大きな陰謀に巻き込まれていく。 「お前がいなきゃ、この国はもたねえぞ?」 国王に乞われ、王国財務顧問に就任。 貴族派との経済戦争、宰相マクシミリアンとの頭脳戦、 そして戦争すら経済で終結させる驚異の手腕。 ――剣も魔法もいらない。この世を支配するのは、数字だ。 異世界でただ一人、"経理"を武器にのし上がる男の物語が、今始まる!

【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜

るあか@12/10書籍刊行
ファンタジー
 僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。  でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。  どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。  そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。  家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。

【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-

ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!! 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。 しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。 え、鑑定サーチてなに? ストレージで収納防御て? お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。 スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。 ※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。 またカクヨム様にも掲載しております。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

処理中です...