生き残りBAD END

とぅるすけ

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第4章 見えた世界 偏

仕切り直し

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 その夜。
 時刻は8時40分。
 剣得は楓彩の寝ている布団にお邪魔していた。
 …楓彩の命令で…。

「楓彩? 寝れないのか?」

 剣得は横目にこちらを向いて目を開けたままぼーっとしている楓彩に話しかける。

「いえ…あんなことをカミングアウトされた後ですから…胸が高鳴って…」

 楓彩が寝れないと言っているのは大した問題ではないが、実のところ、剣得自身も、彩楓の初げに対しては、ものすごく衝撃を受けている。
 すると、

「ちょっと、おしっこ行ってきます…」
「うん」

 楓彩はかかっているタオルケットを剣得の方に寄せて立ち上がり、静かに襖を開けて部屋の外へ出ていく。

「やれやれ…」

 一難去ってまた一難。
 この事のためにある言葉だと実感する剣得。
 剣得は暗闇の中、襲い来る睡魔に逆らわず、そのまま、天井の木目を見ながら目を閉じた。




 楓彩は頭の中を白くして暗い廊下を歩いていた。
 その時、左側の壁が無くなり月明かりが差し込む廊下に差し掛かる。

「あ」

 そこの縁側に座っていたのは、

「よぉ、楓彩…」
「彩楓さん…」
「座れよ…話がある」

 と言われたが、

「も、漏れちゃいそうなので…待ってください…」

 と、モジモジしながら彩楓の後ろを通過する。

「はぁ…!」

 彩楓も、少し顔を赤くして強くため息をする。


(*ˊ˘ˋ*)。♪:*°


「お、お待たせしました」
「あぁ、座れ」
「失礼しますね」

 楓彩は彩楓の座っている縁側に腰をかける。
 
「あ、あの?」
「……」

 楓彩は月明かりに照らされた彩楓の鋭い横顔を見つめる。

「なんだ…」
「いえ、本当に私の…お、お兄さん…なんですね」
「信じられないか?」
「まだ、夢のようです……まだ私に血の繋がる人がいるなんて…」

 楓彩も、彩楓の見上げる月を見る。
 綺麗な半月。
 夜風が心地いい。

「なぁ、楓彩」
「はい」
「一緒に暮らさないか?」
「え?」

 楓彩はその言葉に半月から目を離し、彩楓を見つめる。

「これまで一緒にいられなかった分、せめて俺と一緒にいてくれ」

 彩楓も楓彩の瞳を見返す。
 彩楓のその目は悲しさを含んだ真剣な目だった。

「わ、私は…」

 先程もそうだが、楓彩は自分の人生を誰かに…剣得にゆだねてきた。
 言わなければならない、自分の気持ちを。

「剣得さんと、暮らしてきたのでこれからも剣得さんと暮らします」

 その力強い言葉に、彩楓は自分の言っている事が恥ずかしくなったのか、

「あぁ、そうだよな…悪い、変なことを聞いてしまって」
「いえ。剣得さんが許すなら3人で暮らすのもいいと思います」
「それはやめておく…これ以上王志に恩を貸すわけには行かないからな」
「ははっ。そうですね」

 楓彩はクスクスと笑う。

「楓彩?」
「はい?」
「これからよろしく頼む」
「はい、こちらこそ宜しくお願いします…お、お兄さん?」
「っ!! や、やめてくれ」

 彩楓は恥ずかしくなったのか、立ち上がって、暗い廊下に消えていった。
 時刻は8時55分。
 楓彩に例の睡魔が襲ってきた。

「なんですかね…急に眠いです…」

 楓彩は立ち上がって、壁伝いに元いた部屋を目指す。





 翌朝

 午前5時。
 剣得は目覚め、視界に映る、薄明かりに照らされた天井の木目を確認すると同時に、左手のひらに柔らかい感触を感じる。

「ん?」

 だが、その感触は割とモフモフしていた。

「なんだ、シロンか…」

 と、思いつつ、寝返りを打ち二度寝を試みた、その時、

「っ!!」

 左に寝返ると、可愛らしい寝顔で剣得の隣で寝息を立てている花麗の姿が。

「スースー…」
「み、花麗ちゃんか…」

 剣得はゾッとした、もし、今左手で揉んだのがシロンではなく花麗だったら、人様の家の看板娘にセクハラをしてしまっていた。
 などと考えていると、

「ん? 剣得か…おはよぉ」

 と、花麗は目を半分開けて横になったまま、気持ちよさそうに伸びをする。

「…おはよう、ってもう起きるの?」
「うん…朝ごはんを作るのでな…」

 右手を猫の手のような形にして自分の猫耳を擦りながら弱々しい声で言う。

「手伝おうか?」
「瑛太に手伝ってもらうからいい」

 花麗はそう言って、まだ、横になっている剣得を置いて部屋から出る。

「…えらいなぁ…って、楓彩はどこいった?」

 楓彩の姿が室内に無いことに気づく。

その時。

「ああああぁぁ!!!!」

 襖越しに、廊下から花麗の悲鳴が聞こえる。
 その声に剣得は飛び起きて、廊下に飛び出て花麗の元へ向かう。

「どうした!? 花麗ちゃん!」

 駆けつけた剣得が目にしたのは衝撃を受けた表情で部屋の中を見る花麗。
 剣得も花麗の視線の先に視線を送る。
 そこには、今度は熱帯夜だったにもかかわらず、深く抱き合って寝ている瑛太と楓彩の姿が。

「え…瑛太が寝取られたぁ!!」

 花麗はそう叫んだ後、2人目掛けてジャンプし、空中できりもみ回転して見事なボディプレスを2人の腹に決める。

「ぐはっ!!」
「ぎゃあっ!!」

 2人とも鈍い悲鳴を上げる。
 花麗はぐったりしている瑛太の左頬に平手打ちをかましたあと、楓彩の胸ぐらを掴み、上体を起こさせて前後に振る。

「あうあうあう…」

 楓彩は寝起きで状況が掴めないまま頭を首振り人形の様にかくんかくんさせていた。

「よくもぉ!! 瑛太を!!」

 花麗の平手打ちで目が覚めた瑛太は花麗が楓彩の胸ぐら掴んでいるのを見て、

「こ、こらぁ! 花麗!!」

 と言って花麗の両肩を掴んで楓彩から引き離す。
 急に手を離された楓彩はそのまま元の体制に戻る。

「んんんー…何事ですかぁ…?」

 楓彩はあれだけのことをされてまだ意識がハッキリしていない。

「くぅーー!!」

 猫耳の毛を逆立てて、弱点の尻尾が露出しているにも関わらず、花麗は瑛太に取り押さえられながらも楓彩を威嚇していた。

「え? えっ!? み…花麗さん? な…なんで怒ってるんですか?」

 楓彩は上体を起こして、花麗を見つめたあと、あたりを見回す。
 花麗の両肩を抑えている瑛太。
 左手を額に当てて「やれやれ」という表情の剣得。
 どう見ても剣得の部屋ではないようだ。

「あれ? ここ…瑛太さんの部屋…」
「おい! お主! なぜ瑛太を狙った!」
「え?」
 
 涙目の花麗。
 楓彩はそれを見てただ事ではないと察した。

「うっ…ぐすっ…瑛太を取るのはずるいだろぉ…」

 その声に瑛太の手が緩む。

「花麗…お前…」

「…瑛太はウチの旦那さんだぞ!!」

「「「え?」」」

 ついに瑛太の拘束から逃れた花麗は楓彩に飛びかかる。

「きゃあ!」

 楓彩と花麗の取っ組み合いを瑛太はぼーっと見ていた。

「もぉーこんな朝っぱらから何ー? オレまだ眠いんだけどー」

 騒ぎを聞きつけた臨が目を擦りながら部屋を覗きに来る。

「おう…おはよう…臨」
「あっ、おはようございます…剣得さん…どうしたんですか」
「あぁ、なんだろうな…俺も頭の理解が追いついていなくてな」

 臨は「はぁ」っと息をついて念力で花麗と楓彩を引きはがす。

「むぅー! このバカもの!!」

 手が出せなくなった花麗は楓彩に向かって暴言を吐き始めた。

「むっ! ば、ばかとはなんですか!!」

 楓彩も顔を赤くして頬膨らませる。

「私はあなたの年上ですよ!?」
「関係ないぞ! マヌケ!!」
「うぅっ…れ…礼儀というものが…」
「バーカバーカ!」
「う、うわぁぁん!」

 楓彩は両拳で花麗の頭をポコポコと叩き始める。

「痛っ…痛っ! なにをする! このー」

 臨が引き離したにもかかわらず、またお互いを叩き合い始める2人。
 と、その時、

「ひゃあ!?」

 楓彩の幼い胸を包む柔らかいもの…。

「む?」
「ななななんですか!!」

 楓彩と花麗の胸は接触し、どうやら花麗の胸は楓彩の胸を包み込むほど大き……貧乳を包み込む程の貧乳。

「ふふ…年上…ね」
「うわぁぁぁん!! 剣得さぁん!!」
 
 

 その後、楓彩が戦意喪失して剣得に抱きついて離れないため、花麗は勝ち誇った顔で台所へ向かった。
 食事ができるまでの間、瑛太は「稽古をする」と言って格技場へ
 その他の皆は客間で座って待っていた。
 もちろん楓彩は剣得の腰に抱きついて嗚咽しながら。

「あれ? 臨? ショウは?」
「あ、はい…昨日『子供が壊された』と言ってずっと部屋で落ち込んでいます」
「そうか…(偵察機か?)」


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