生き残りBAD END

とぅるすけ

文字の大きさ
63 / 159
第4章 見えた世界 偏

あれから…

しおりを挟む
 剣得は楓彩を自分達の寝る部屋に敷いた布団に寝かせると、客間に戻る。

「楓彩寝た?」
「あぁ」

 剣得は楓彩以外の人が囲んでいるテーブルに正座で入る。

「で? 剣得くんは誰と話してきたの?」
「草善さんの所にな」
「あぁ、大統領さんねぇ…剣得くんってやっぱり大物なんだね」

 小雨は大きな胸をテーブルで潰しながら頬杖をついた。

「あぁ、お前の胸もな…」
「死ね」

 剣得は尚も、ショウには草善との関係を話さない。
 
───ショウにとってはやっと手に入れた自由なのだから──



 翌朝

「剣得さーん…起きてくださーい…」

 朝、剣得が目を覚ますと、楓彩の柔らかい体が上に馬乗りになっていた。

「楓彩か…もうちょっと寝かせてくれ…」

 と、左腕の前腕を両目に当てる。

「むぅーー! 剣得さんーー!」

 楓彩は剣得の胸に小さな手を置いて、大きく揺さぶり始めた。

「あぁ…わかった…わかったから…どいてくれ…」

 楓彩さ剣得から降りて近くで正座をする。

「おはようございます♪」 
「あぁ、おはよ…。今日は用事があるからな…忙しいぞ」
「?」



 楓彩と剣得が訪れたのは自分達の普段生活している我が家となるアパート。

「は…剣得さん…これ…」

 楓彩は荒れ果てた我が家を初めて見た。

「あぁ、片付けするぞ…」
「…はい」

 楓彩は進んでいく剣得の後を暗い表情で追いかける。

 玄関のドアは外れ、黄色い規制線が貼られていた。
 それを掻い潜って部屋の中に入る。
 中の破損具合から、恐らく、反対側のベランダから、手榴弾を投げ入れられ、それを機にドアを蹴破られたと言う感じだろう。
 2人は物置から片付けを始めた。

「酷いことしますね」
「まぁな…焼けてない物を出しとけ…これから瑛太の家で世話になるからな」

 幸いなことに、剣得達を怖がって、両隣には人は住んでいない。
 少し避けられていたことが助けになったようだ。
 しかし、今回の事件は剣得が関係していると、住民達には分かっているらしく、実際に、ここに来るまでに住民の何人かに睨まれている。

「剣得さん……“これが私たちの辛さ何ですね”…」

 剣得がその声を聞いて、片付けから楓彩に目線を送ると、楓彩は焼けてしまった写真を見つめて悲しい表情をしていた。

「あぁ……早めに慣れろ」
「………」

 剣得は何度も経験している。
 この辛さを…。
 剣得は何を失ったのか…。
 何を得たのか…。
 楓彩は剣得の過去について何も知らない、話されないからだ。


 その後、2人は持てるだけの荷物をまとめ緑色の風呂敷に包み、外に出た。

「戻ってこれますか…?」

 楓彩は震えた声で見上げ、剣得に問いかける。
 剣得は楓彩と目を合わせようとはしなかったが、アパートの方を向いて、楓彩を安心させるかのように
 
「大丈夫だ…絶対に戻る」
「はい」

 と言って、楓彩を連れて神ヶ丘家に戻る。
 帰り道。
 朝から賑やかな商店街に差し掛かった時。

「剣得くん!? 楓彩ちゃん!?」

 割と聞き覚えのある声だ。
 風呂敷を背負った2人に近づいてきたのは、近所の薬局のオバチャンだった。

「あぁ、どうも」
「どうしたのよ! 最近顔は見ないし、あんた達の部屋は爆発するし! ほんとに心配だったんだから!!」

 オバチャンは2人を抱き寄せる。

「心配をかけて申し訳ございません」
「ごめんなさいです…」
「まったくもう! 今度ウチで買い物していってもらうからね!!」

 と、笑いながら強く抱きしめる。

「ははっ、敵いませんな…奥さんには…」
「うぅ、オバチャン…痛いですぅ…」



 その後、剣得と楓彩は神ヶ丘家の庭を借りて、荷物を下ろした後、G,S,Aの本部へ向かった。

「まだ、荒れてますね…」

 楓彩の言う通り、改装工事は進んでいるものの、まだ所々、傷が目立つ。

「さっ、入るぞ」

 二人が向かった先は第二戦闘実演室。
 第一ほど、広くはないが、楓彩が暴れられるほどの広さは十分にある。

「何をするんですか?」
「トレーニングだ…“もう一人の自分”とのな?」

 もう一人の自分…。
 楓彩の中の鬼。
 破壊の本能。

 剣得は約束した事を果たそうと、決行したようだ。

「…わ、わかりました…で…お相手は…───」
「すみません!! 神ヶ丘! 遅れました……って…鬼月…今日は東区じゃないの?」

 2人の背後から、黒髪の青年、神ヶ丘 瑛太が走ってくる。

「おぉいいところに来た…お前はボクシングやってるんだって?」
「あっ、はい! それが何か…?」
「準備しろ」


 数分後、楓彩は薄い素材のトレーニングウェアを着て、両足にサポーターを付けて立っていた。
 その向かいに、黒のタンクトップで、整った上腕二頭筋の先に、赤いグローブを付けて立っている瑛太の姿。

「え、これなんですか? 総督…」
「何するんですか? 剣得さん…」
「模擬戦闘だ…能力の使用は無し、楓彩は時速40キロ以上出したらゲンコツな。正々堂々と戦え」

 剣得は遠く、入口の近くで二人を見ていた。

「なんなんだよ…総督は…」
「まぁまぁ、よろしくお願いします! 瑛太さん! 」
「うん…(まぁ、先日ショウさんにボコされたし、鬼月さんには悪いけど、晴らさせてもらおう…)」

 瑛太は両腕を持ち上げて顔の位置で構え、フットワークをとり始める。

「瑛太さん? 私強いですよ?」

 楓彩は右足のかかとをあげ、いつでも蹴れる体制に入った。
 数秒の沈黙を破ったのは剣得のくしゃみ。

 瑛太は楓彩に突っ込み、左ストレート。
 続く右フックも、楓彩は鮮やかにかわしていく。

「鬼月さんやるね!」

 と、言った直後、瑛太の突き出した右腕の脇から、楓彩の鋭いハイキックと、回し蹴りが飛んでくる。

「───っ!」
 
 それを瑛太は体を反らすことでかわす。

「へぇ、かわせるんですね…今の(試験で負けてるからここでは負けられない…)」
「まぁね、鬼月さんも、いい蹴り出すね(手加減するべきだろうか…)」

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」 魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。 鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。 (な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?) 実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。 レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。 「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」 冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。 一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。 「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」 これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。

転生令嬢はやんちゃする

ナギ
恋愛
【完結しました!】 猫を助けてぐしゃっといって。 そして私はどこぞのファンタジー世界の令嬢でした。 木登り落下事件から蘇えった前世の記憶。 でも私は私、まいぺぇす。 2017年5月18日 完結しました。 わぁいながい! お付き合いいただきありがとうございました! でもまだちょっとばかり、与太話でおまけを書くと思います。 いえ、やっぱりちょっとじゃないかもしれない。 【感謝】 感想ありがとうございます! 楽しんでいただけてたんだなぁとほっこり。 完結後に頂いた感想は、全部ネタバリ有りにさせていただいてます。 与太話、中身なくて、楽しい。 最近息子ちゃんをいじってます。 息子ちゃん編は、まとめてちゃんと書くことにしました。 が、大まかな、美味しいとこどりの流れはこちらにひとまず。 ひとくぎりがつくまでは。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

追放悪役令嬢、辺境の荒れ地を楽園に!元夫の求婚?ざまぁ、今更遅いです!

黒崎隼人
ファンタジー
皇太子カイルから「政治的理由」で離婚を宣告され、辺境へ追放された悪役令嬢レイナ。しかし彼女は、前世の農業知識と、偶然出会った神獣フェンリルの力を得て、荒れ地を豊かな楽園へと変えていく。 そんな彼女の元に現れたのは、離婚したはずの元夫。「離婚は君を守るためだった」と告白し、復縁を迫るカイルだが、レイナの答えは「ノー」。 「離婚したからこそ、本当の幸せが見つかった」 これは、悪女のレッテルを貼られた令嬢が、自らの手で未来を切り拓き、元夫と「夫婦ではない」最高のパートナーシップを築く、成り上がりと新しい絆の物語。

貧乏奨学生の子爵令嬢は、特許で稼ぐ夢を見る 〜レイシアは、今日も我が道つき進む!~

みちのあかり
ファンタジー
同じゼミに通う王子から、ありえないプロポーズを受ける貧乏奨学生のレイシア。 何でこんなことに? レイシアは今までの生き方を振り返り始めた。 第一部(領地でスローライフ) 5歳の誕生日。お父様とお母様にお祝いされ、教会で祝福を受ける。教会で孤児と一緒に勉強をはじめるレイシアは、その才能が開花し非常に優秀に育っていく。お母様が里帰り出産。生まれてくる弟のために、料理やメイド仕事を覚えようと必死に頑張るレイシア。 お母様も戻り、家族で幸せな生活を送るレイシア。 しかし、未曽有の災害が起こり、領地は借金を負うことに。 貧乏でも明るく生きるレイシアの、ハートフルコメディ。 第二部(学園無双) 貧乏なため、奨学生として貴族が通う学園に入学したレイシア。 貴族としての進学は奨学生では無理? 平民に落ちても生きていけるコースを選ぶ。 だが、様々な思惑により貴族のコースも受けなければいけないレイシア。お金持ちの貴族の女子には嫌われ相手にされない。 そんなことは気にもせず、お金儲け、特許取得を目指すレイシア。 ところが、いきなり王子からプロポーズを受け・・・ 学園無双の痛快コメディ カクヨムで240万PV頂いています。

アガルタ・クライシス ―接点―

来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。 九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。 同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。 不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。 古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。

ゴミ鑑定だと追放された元研究者、神眼と植物知識で異世界最高の商会を立ち上げます

黒崎隼人
ファンタジー
元植物学の研究者、相川慧(あいかわ けい)が転生して得たのは【素材鑑定】スキル。――しかし、その効果は素材の名前しか分からず「ゴミ鑑定」と蔑まれる日々。所属ギルド「紅蓮の牙」では、ギルドマスターの息子・ダリオに無能と罵られ、ついには濡れ衣を着せられて追放されてしまう。 だが、それは全ての始まりだった! 誰にも理解されなかったゴミスキルは、慧の知識と経験によって【神眼鑑定】へと進化! それは、素材に隠された真の効果や、奇跡の組み合わせ(レシピ)すら見抜く超チートスキルだったのだ! 捨てられていたガラクタ素材から伝説級ポーションを錬金し、瞬く間に大金持ちに! 慕ってくれる仲間と大商会を立ち上げ、追放された男が、今、圧倒的な知識と生産力で成り上がる! 一方、慧を追い出した元ギルドは、偽物の薬草のせいで自滅の道をたどり……? 無能と蔑まれた生産職の、痛快無比なざまぁ&成り上がりファンタジー、ここに開幕!

商人の男と貴族の女~婚約破棄から始まる成り上がり~

葉月奈津・男
恋愛
「あなたとの婚約、破棄させていただきます!」 王立学院の舞踏会。 全校生徒が見守る中、商家の三男カロスタークは、貴族令嬢セザールから一方的に婚約破棄を突きつけられる。 努力も誠意も、すべて「退屈だった」の一言で切り捨てられ、彼女は王子様気取りの子爵家の三男と新たな婚約を宣言する。 だが、カロスタークは折れなかった。 「商人の子せがれにだって、意地はあるんだ!」 怒りと屈辱を胸に、彼は商人としての才覚を武器に、静かなる反撃を開始する。 舞踏会の翌日、元婚約者の実家に突如として訪れる債権者たち。 差し押さえ、債権買収、そして“後ろ盾”の意味を思い知らせる逆襲劇が幕を開ける! これは、貴族社会の常識を覆す、ひとりの青年の成り上がりの物語。 誇りを踏みにじられた男が、金と知恵で世界を変える――!

処理中です...