生き残りBAD END

とぅるすけ

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第4章 見えた世界 偏

さて、仕事開始ですかね…

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 二人の格闘はもつれにもつれて、あれから20分はたった。

「ゼェ…ゼェ…あ…当たりません!」
「ゼェ…なんでかわせるんだよ!」

 2人とも、肩で息をしていた。
 それもそのはず、2人とも、攻撃の速度は速いが、お互いに予測しあっているため、攻撃が当たらないでいる。

「もぉー! 本気出しますよぉー!」
「あぁ、俺も出すよ本気…」

 と、その時、

「最初っから本気を出せ! テメーら!」

 と、剣得からヤジが飛んでくる。

「「はーい」」

 2人は再び構え直す。
 そして、

「ふっ!」「ふっ!」

 スタートはほぼ同時。
 スピードも互角。
 瑛太の腹に、めり込んでいたのは楓彩の右足だった。

「くっ!!」
「にひぃ…私に速さで敵うわけありません!」

 と、勝ち誇った顔をする楓彩。
 しかし、

「甘いよ! 鬼月さん!」

 瑛太は自分の腹にめり込んでいる楓彩の足を脇に挟み、右腕で楓彩に殴りかかるが、

「そぉい!」

 楓彩は逆の足で、瑛太の顔面に蹴りを浴びせた。

「───ぶくっ!!」
「私の勝ちです!───」

「────シッ!!」

「へ?」

 ───刹那

 楓彩が蹴りを終えて着地した瞬間、楓彩の顔面に瑛太の付けているグローブが鈍い音を立てて直撃していた。

「───べふっ!!」

「あっ! (やっべぇー…割とマジでなぐっちまった!)」

 楓彩はよろめいて、後ずさる。

「…お…鬼月…さん…?」
「……ふっ…ふぇぇ…ぐすっ……痛いよぉ……!」

 楓彩は顔を赤くして、鼻を抑えていた。

「あらら…重いのもらったねぇ」

 剣得は呆れた様子で楓彩が泣きそうになっているのを見ていた。

「ふぇぇぇ!!」

 ついに、楓彩は泣き叫んで剣得に駆け寄って、泣きすがった。

「あぁ、よしよし、痛かったなぁ…」

 剣得は楓彩の頭を撫でながら、立ち尽くす瑛太を見ていた。
 
「(瑛太…今日はありがとうな)」

 と、表情で訴える剣得。
 瑛太は会釈をして、退室する。

「ほら…楓彩? みっともないぞぉー?」

 


 その後、泣き止んだ楓彩はいつも通り、ショウの工房の仮眠用ソファでお菓子を食べながら、Tシャツに短パンという、何ともくつろぎやすそうな服装でくつろいでいた。

「ったく、女の子に手を出すなんて…瑛太も酷いことするね?」
「いえいえ、成り行きなので仕方ありませんよ…私が弱いのがいけないんです…(それにしてもさっきのパンチ…速くて見えなかった…)」

 楓彩はポテトチップスを手に取り、あぐらで食べながらパソコンの方を向いて仕事をしているショウと話していた。

「ショウさんは何をしてるんですか?」
「ん? ちょっとね…大人な仕事してる…(楓彩に言っても理解してもらえないからなぁ…)」

 と、その時、

「失礼するぞー」

 剣得が入室してきた。

「剣得さん? どうしたんですか?」
「ん? 大人な仕事だ…」
「むぅ…みんなそればっか…です…」

 楓彩はムスッとする。

「楓彩? 頼むから席を外してくれるか?」
「どうしてですか?」

 剣得は上着を抜けて、タンクトップ姿になり、不完全ながら、左腕の立派な上腕二頭筋を見せる。
 途切れた右腕をみた楓彩の表情は少し暗くなる。

「…って、なんで脱ぐんですか?」
「ほら出た出た…」

 剣得はそんな楓彩を工房の外に追いやる。

「東区に戻ってやってくれ…」

 と、ドアが閉まる。



 剣得は丸椅子に座って半裸で、ショウの診察を受けていた。

「ほら、そこに寝て…」
「おう」

 ショウは仮眠用ソファに剣得を寝かせる。

「相変わらずいい体してるね…」

 ショウは剣得の胸筋を指で優しくなぞる。

「くすぐったいぞ…」
「あっ…ごめん…! つい」

 ショウは少し後ずさる。

「じゃ…じゃあ…始めるよ…?」
「あぁ頼む」





 楓彩が、エントランスへ向かって歩いていると、一人の女性が青い自販機の前で、高そうな白い財布の中を除いていた。

「あっ…臨さん!」

 白い制服の前を開けて、黒いTシャツを覗かせている、茶髪のショートボブを下で二つにまとめている女性、帝 臨だ。

「ん? 楓彩…」

 臨は財布から目線をあげて、声のするほうを見る。

「臨さんお仕事ですか?」
「うんん、休憩だよ?」
 
 臨は再度、高そうな財布に目線をおとす。

「楓彩? 何か飲みたいものある?」
「え?」
「いいよ? 奢ってあげる…」
「そんな悪いですよ…」
「いいから」


 楓彩はその後、コーラを買ってもらい、自販機の隣にあった水色のベンチでコーヒーを片手にしている臨と並んで座っていた。

「臨さん…コーヒー好きなんですか?」 
「んー…たまに気分で飲むよ…楓彩は相変わらず甘党だね」
「はい! 甘いは正義ですよ!」

 と、満面の笑を見せる楓彩。

「ははっ…そ、そうだね」
「あっ! そうだ…臨さんの妹さんをこの前見ましたよ? とっても臨さんに似て可愛かったです!」
「え? 私妹なんか───」

《オレ──わ、私は臨お姉ちゃんの様子を見に来たんです》

「(あぁ、そーいえばそうか)うん…そうね…」

 臨が以前、能力の副作用で小さくなってしまった際に、楓彩についた嘘だ。

「今どこにいるんですか?」
「んー分かんない…実家じゃない?」

 臨はソワソワしながら楓彩と目を合わせようとはしない。
 と、その時、

「鬼月さん?」

 目の前を瑛太が通り過ぎる。

「あっ…瑛太さん…どこに行くんですか?」
「ん? 東区に戻るんだよ?…って帝さん!」

 瑛太は楓彩の隣に座っている臨の姿に気づき、赤面する。

「(やっぱり美人だなぁ帝さん…)」

 瑛太はしばらく臨に見とれると、

「はっ…行かなきゃ!」

 と言って、歩き始める。
 すると、

「瑛太さん! 私も行きます! ……臨さん失礼します…ありがとうございました…」

 と、立ち上がって臨にお辞儀をすると、臨は「バイバイ」と言って手を振ってくれた。

「瑛太さん、まって下さいよぉ」

 瑛太に駆け寄っていく楓彩を見ていた臨は、

「なんか…平和が少し戻ったって感じ…?」

 そんな事を感じていた。
 臨はコーヒーを飲み干すと、立ち上がり、仕事へ戻った。



 その頃、とある場所では

『SABERは《鬼月 楓彩》の奪還に失敗したのか…ふっ…やはり使えぬ連中よな…』

『所詮は寄せ集め集団…使えないことは目に見えていた…』

『我らの《使者》に食わせれば良いだけ…』

『人間どもの絶望は我らの餌だな…いつの時も…』

『なぁに…すぐにこちらの手に渡るさ…《鬼月 楓彩》…』
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