生き残りBAD END

とぅるすけ

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第5章 「罪」偏

沈黙

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 「じゃあ楓彩? 俺とショウは仕事を頼まれたから出るけど、暇なら総督室の掃除を頼んでいいか?」

「はい! じゃあ彩楓さんとやってますね!」

「は?」

 剣得は楓彩の返事を聞くと、ショウの工房からショウを引き連れて出ていった。

「おい…なぜ俺まで掃除をしなければならない…」

「いいじゃないですか…彩楓さん!」

 楓彩は自分で言ったことに顔を赤くして、隠すように彩楓の腕をつかみ、総督室へ向かう。

 残された瑛太は、

「はぁ、部屋に戻るか…」

 自分には今は何もできることがないと悟り、大人しく部屋に戻ることを決める。



 その後、楓彩と彩楓は両手に雑巾やほうき、モップといった掃除用具を持って総督室に入った。
 中に入ると資料と思われる紙が、いつもながら散らかっていた。

「散らかってますね…」

「俺は帰るぞ…」

「待ってくださいよぉ…」

 楓彩は彩楓の着ている着物の袖を力強く掴む。
 そして、最強の上目遣い。
 楓彩は自覚していないが…。

「っ!」

「?」

「なんでもない…始めるぞ…」

 



 その頃、剣得とショウはスカイネクスト地下深く、生存者《サバイバー》研究所の白い廊下を駆けていた。
 白衣を着た人々が騒がしく廊下を行き来している。

「草善さん!」

 剣得は研究者と話している白髪の中年男性、草善を見かける。
 剣得達を呼び出したのは草善だ。

「あぁ、王志君! ──」



 草善に案内されるままに、マモンが捕獲されていた巨大な部屋に連れていかれる剣得とショウ。

「こ、これは…」

 そこで剣得が目にしたのは前まで巨体が安置されていたマモンの姿が消えていたのだ。
 証拠に、研究所内は瓦礫で埋もれ、上の方からは外から瘴気が流れ込んでいた。

「外から見た穴はこれか…」
「剣得?」

 ショウは何が起こっているのかよく分からず、剣得の顔を見上げる。

「草善さん? まさか…」

「あぁ、ベルゼブブの姿も消えている」

「「っ!!」」

 
 剣得はガスマスクを付け、空いていた天井から外へ飛び出す。
 ショウは調べることがあると言って研究所に残った。

「ちっ! なぜこんな大事が今になって伝わった!」

 だが、その理由は剣得には一瞬で理解出来た。
 瘴気だ。
 瘴気のせいで、連絡網が停滞し、今回出動できたのも剣得やショウを含めて20人が限度だった。

「総督!」

 外でほかの仕事に当たらせていたガスマスクを装着した隊員達の中から、女性が地面に開いた穴から出てきた剣得を呼び止める。

「どうした?」

「街の様子が変です!」

「いや分かるけど…紫色だし…」

 隊員達が言うのは街中が騒がしいという。
 瘴気のせいで一般人は避難所の中から出れないはずなのだが。
 おまけに視界が悪く、何が起こっているのか正確に分からない。

 その時。

「ん?」

 辺りに耳障りの悪い警報が鳴り響く。
 生存者《サバイバー》の出現を知らせる音だ。

「こんな時に…。よし! お前ら! 一度本部に戻り、対応するぞ!」

 隊員達はマスクにこもった返事を聞かせると、スカイネクストに来る時に乗ってきた車両に乗る。
 剣得は少し、足を止めて楓彩のことを考えてから車両に乗り込む。

「(ま、大丈夫か…)」





 その頃、楓彩と彩楓は

「さてと、終わりましたね!」

 掃除を開始してから30分ほどで、部屋の中は輝き、散らかっていた床はチリ一つ落ちていなかった。

「楓彩…すげぇな…」

「えへへ」

 彩楓も少しは手伝ったのだが、大半は楓彩が掃除していた。
 むしろ、彩楓は邪魔だったかもしれない。
 その時、彩楓は例の楓彩が放つ「撫でたい頭」の魅了にかかり、楓彩の頭に手を伸ばそうとする。
 
「楓彩…」

「ん? なんですか?」

 楓彩は彩楓の顔を見上げる。
 彩楓の目に飛び込んできたのは澄んだ楓彩の青い瞳。
 楓彩は包帯だらけなのだ。
 それも、自分が負わせた傷のため。
 楓彩のため、だが、他にも方法はあっただろう。
 馴れ馴れしくする資格はないだろう。
 彩楓は頭を撫でようとしていた手を静かに下ろす。

「いや、なんでもない…───っ!」

 その時、彩楓は何かを感じ取った。

「なにか来るな…楓彩? お前の刀はどこだ」

「え? ショ、ショウさんの工房ですけど…」

 彩楓は右手に楓彩の刀をテレポートさせ、左手に自分の愛刀をテレポートさせる。

「なんですか? どうしたんですか?」

 楓彩は刀を受け取ると若干パニックになった様子で彩楓に尋ねる。
 彩楓は無言のまま、総督室から楓彩の腕を掴んで出る。
 人々が行き交う白い廊下を早歩きで楓彩を引っ張る彩楓。

「どうしたんですかっ!?」

 楓彩が少し強い口調で彩楓に尋ねたその時。

「───っ!! 来るぞ!」

 人々のざわつきの向こうに、何か巨大な気配を感じる。

───刹那

 突如、楓彩と彩楓の歩く廊下の背後の天井が崩れ落ち、その下にいた人々が潰れる。
 砂煙を巻き立たせて楓彩達の背後に現れたのは身長が前かがみになっている時点でも3mほど。
 右腕がやけに長く、頭部、目のあたりはまるで蝿《はえ》のような集合体になり、背中からは昆虫の羽が6枚飛び出ていた。
 その他にも蝿を思わせる特徴を兼ね備えたその生物。

「…べ…ベルゼブブ…」

 彩楓は楓彩を庇うようにベルゼブブと楓彩の間に入る。

「楓彩…逃げてくれ…こいつ…前までとは何かが違う」

『ミツケタ』

────刹那

 彩楓とベルゼブブの姿が楓彩の目の前から消えた。
 次の瞬間、彩楓の瞬間的テレポートに速さで着いていくベルゼブブとの猛烈なぶつかり合いが狭い廊下で繰り広げられる。

「っ!!」

 楓彩は後ずさりする。
 その時、楓彩の目に飛び込んできたのは瓦礫に埋もれる人々だった。
 楓彩は後ずさりした足を前に戻し、駆けつけようとするが、ベルゼブブと彩楓の激しい戦闘が行く手を阻む。

「くっ!!」

 やがて、ベルゼブブが入ってきた穴から紫色の瘴気が流れ込んでくる。
 楓彩はその瘴気を吸わないように刀を持っていない右手で口を抑える。

「(彩楓さんが!)」

───刹那

 楓彩の左側を彩楓の体がもの凄いスピードで通過する。

「───!?」

 楓彩は振り返り、廊下に仰向けになっている彩楓を見る。

「彩楓さん!」

 楓彩は彩楓に駆け寄る。

「……楓彩…逃げるぞ…つかま───」

────刹那

 楓彩の首元まで迫っていたベルゼブブの手刀は彩楓がすんでのところで切り落とす。

「ひゃ!!」

 そして、楓彩に黒い血のような液体がかかる。

「──彩楓さん! しっかり捕まってください!」

 楓彩は彩楓の腰に手を回すと、ベルゼブブから距離を取るように、超速で廊下を走る。
 騒ぎを聞きつけ、その廊下には人がいなかった事が救いになった。


 ベルゼブブが姿を表した総督室前の廊下から遠く離れた病棟エリアに身を置く楓彩と彩楓。
 間もなく、怪我人を外に出す動きが始まるので、2人もそれに便乗してG,S,A本部から脱出を考えていた。 
 
「すまねえな」

 楓彩は医療用品が置いてある部屋で彩楓を手当していた。
 部屋の中には2人だけで、外からは人々が混乱に陥り、廊下を走っている音が断続的に続いていた。

「いえいえ、この位は…」

 その時、

「……」

「? 楓彩?」

 楓彩の彩楓の腕に包帯を巻く手が止まる。

「…あ……や…やめて…やめて!!」

 楓彩は急に両耳を塞ぎ込み、床に転がり悶え始めた。

「おい! どうした!」

「──やだ! やめて! 入ってこないで!!!!」

 彩楓は楓彩の方に触れ、様子を伺う。
 
「………」

 楓彩は目を見開いたまま、動かなくなる。

「おい…楓彩?」

 すると、楓彩はおもむろに立ち上がり、部屋から出ていく。

「…」

 彩楓は呆気にとられ、しばらくそれを見ていたが、ふと、我に帰り、楓彩を追いかける。



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