生き残りBAD END

とぅるすけ

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第6章 頂点に立つ

感じることを大事に

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 とある組織の根城。

『貴様! 何をしているか! 命令を待てと言っただろう!』

「えー…アスモデウスを見に行っただけだよぉ…そんなに怒らなくてもいいじゃん…」

『貴様はまだ不安定だ! 我々の目の届く場所にいろ! ルシファー!』

「へーい」



 その頃、楓彩と瑛太が目覚めないまま、G,S,Aの本部で小規模の会議が開かれた。もちろん、議題は「少女」のことについてだ。
 剣得は大勢の前に立ち、巨大なスクリーンを背に暗い集会室で話し始める。

「ショウの解析結果によると、『少女』は能力者と断定。それに一瞬だが生存者《サバイバー》反応も見られることから、『七つの大罪』に関わる人型 生存者《サバイバー》である可能性が大いに高い」

 剣得の右に座っていたショウはパソコンを操作し、スクリーンに画像を映し出す。
 その画像に映し出されていたのは、真希菜に襲いかかる白銀で扇形の刃を先に形成した小豆色の触手を、鋭い刀を手にした楓彩が防いでいる光景だった。

「この触手の形状から、敵の能力はM《メタル》及び、T《テンタクル》のハイブリッドが予想される」

 それだけではない、あの細身から楓彩を吹き飛ばし、コンクリートを粉砕及び、地面の陥没。異常な筋力からP《パワー》も予測されるが、その可能性は薄い。
 なぜなら、能力は持てても二つまでだ。それ以上は体が持たない。

 その後、対策法など、「少女」に遭遇した際にとる行動などを話し、およそ1時間余りで解散となった。

 剣得は楓彩の様子を見に、病棟エリアへ向かった。
 
「楓彩ー…ん?」

 剣得が病室のドアを開けると左腕にギプスをはめられた楓彩が上体を起こして一点を見つめていた。

「楓彩…起きてたの……か…」

 様子がおかしい。生気がない。

「楓彩?」

 楓彩はゆっくり剣得に乾いた光のない瞳を向ける。
 その直後、楓彩の瞳に光が灯り、

「あっ! 剣得さん? どうしたんですか?」

 と、柔らかい笑を浮かべる。

「か、体は大丈夫か? (なんだ…今のは)」

「はい! 左腕はまだ少し安静にしなきゃいけないらしいです…もう痛く無いんですけどね?」

 剣得は楓彩のベッドに腰をかけ、左手で手刀を作り楓彩の前頭に軽く落とす。

「大丈夫なわけねぇだろ」

「うっ痛っ…んもぉー…」

 楓彩は右手で叩かれた部分を抑える。

「そうだ、楓彩? もう家に帰れるみたいだから…」

「あっ! 本当ですか!? いやぁ…これで瑛太さん達に迷惑かけなくて済みますね!」

「そうだな! 退院したら、何か…ピザでも買うか」

「はい!!」
 

 その頃、瑛太の病室では、

「んー…っ!!」

 目覚めと同時に腹部に痛みが走る。

「いてぇ…」

 それと同時に司会の左側に人影があることに気がつく。

「ん? あっ、起きた? 瑛太くん」

 その綺麗な声、臨だ。

「えっ!? 帝さん!? ───いててて!!」

 起き上がろうとするが、激痛が走り、無気力になる。

「そんなに、驚かなくてもいいのに」

「ど、どうして……その…仕事は?」

「うーん…いやぁね? オレ…まだ瑛太くんに言ってなかった事があった…」
 
「?」

 臨は少し照れ臭そうに、目をそらす。

「えっとね? この前、ベルフェゴールの襲撃があったでしょ? その時、た、た…」

「た?」

「助けてくれて…あり、がとう…」

「え、あぁ、こちらこそ…それに…悪いことしましたし、帝さんが気にする必要ないで───」

「───忘れて」

 瑛太が気がつくと、臨の真っ赤な顔が目の前にあった。

「え、あ、はい…」

「本当に! あの時はパンツ履き忘れただけだから! 本当に!痴女とかじゃないから!!」

「わ、わかりましたって! いてて!」

 少しでも気を緩めると痛みが襲うようだ。

「あっ! ごめんごめん! 大丈夫!?」

「えぇ、はい…」

「…さてと、まぁ、今度一緒にご飯でも行こうか」

「あ、はい………………………え?」

「じゃあ、安静にね」

 臨はそのまま、出て行き、唖然とした瑛太だけが静かな昼下がりの病室に残された。



 翌日

 剣得は朝に楓彩を迎えに、病室を訪れる。

「よ、楓彩? 準備出来てるか?」

「はい!」

 楓彩は普段の制服姿ではなく、「帰る!!」と黒文字で書かれた意味のわからない、楓彩にとっては丈が長いTシャツに、それに隠れるほど短い短パンという、なんとも楓彩の美脚が際立つ夏らしい服装だ。
 どうやら完治したらしく、ギプスが取れている。相変わらずショウの治療が良いのか、楓彩の再生力が凄いのか。

 その後、早朝の街を剣得達が住んでいるアパートへ向けて歩く楓彩と剣得。

「うぅー…お腹すきました…剣得さーん…」

 楓彩は上半身を折り、両腕をぶら下げる。

「そうだな…まだ朝飯時だからカルボンは開いてないしなぁ…どうするか…」

「久しぶりに剣得さんの手料理が食べたいです!!」

 楓彩の満面の笑み。いつ見てもドキッとさせられる。
 随分前に、同じようなことがあった。
 その時は、楓彩は9歳くらいだっただろうか。剣得が大きく体調を崩し、小雨達に食べさせてもらい、たった1週間ほど剣得の料理を食べれなかっただけで、剣得の料理が解禁された時には嬉し泣きした事を剣得はよく覚えていた。
 もう、今ではそんなことは無いだろうが。

「そうだなぁ…久しぶりに作るか!」

「やったぁ! そうと決まれば早く帰りましょう!!」

 楓彩は剣得の左手を握り、歩く速度を上げる。

「楓彩? 転ぶなよ」

「大丈夫ですよ!」

────思い出す…楓彩との出会いを。

────思い出す…剣得さんとの出会いを。

────枯れた心に水をくれた…

────ふさぎ込んだ心を開けてくれた…


────本当に、会えてよかった───
 
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