生き残りBAD END

とぅるすけ

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第6章 頂点に立つ

消失

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 剣得達が自分たちの家の周辺についた頃には、日は沈む寸前で、空を赤く染めていた。

「はぁ、はぁ…」

 剣得と朝日の運動神経が良かったことが救いとなり、日が沈む前に辿り着けそうだ。
 しかし、剣得の方は美桜をずっと抱き抱えて走っていたので疲れがピークに達していた。

 その時、剣得達の頭上を巨大な鳥の様な生物が飛んでいき、近くのアパートの屋上に避難していた人々を食い荒らし始めた。

「っ…」

 しかし、すでに見慣れた光景だ。
 ここに来るまでに幾度となく見てきた人が死ぬ瞬間。
 中には胸が張り裂けそうになるような喰われ方もあった。

「後ちょっとだ…迂回していこう…」

「くっ…美桜? 歩けるか?」

「…うん…もう大丈夫…」

 剣得は美桜を下ろし、美桜の右手を握ると歩き始める。
 

 さらに進んでいくと街は騒然とし、いたるところから悲鳴が聞こえてくる。
 その時、剣得達の頭上を軍のヘリや、戦闘機が飛んでいく。

「…剣得…帰ったらどうするんだ?」

「いや、軍に向かう。そこに俺の父親がいるだろ…匿ってもらおう」

 爆撃音や、雨のように鳴り響く銃声の中、剣得達3人は海沿いにある軍基地への道を走り始める。
 
 幸い、剣得達のいる場所から見える範囲に軍基地があり、まだ、無事なようだ。
 しかし、広く目立つ場所ゆえ、バケモノも集まっていた。
 それに、度々聞こえる銃声や爆音も、その方角から聞こえてくる音だ。


 軍基地直前、剣得達の周りには同じ考えを持った人々で溢れかえっており、あっという間に身動きが取れない状況になってしまった。

「っ!!」

「おい! 押すな!!」

 剣得は美桜の手を強く握りしめて、離さないようにし、人の波の向こう側にいる朝日もしっかり見ていた。

「ちっ…このままじゃ───」

 剣得が試行錯誤していたその時、剣得の後ろの方から悲鳴とバケモノの鳴き声が響く。

 剣得は振り返らずに、美桜の手を強く引き、人混みから引っ張り出すと、朝日の後ろ襟を掴んで人混みを強引に進んでいく。

「っ!? 剣得!?」

「はやくん! い、痛い!!」

「───」

 人混みを抜け、軍機地に入ると、滑走路を疾走し、軍人の静止の命令を無視して建物に近づいていく。

 その時。

「───っ!!」

 一発の銃声。

「止まれ!!」

 その声に、剣得は我に帰り足を止める。

「貴様…何者だ…!」

 あっという間に緑色の迷彩服を着た隊員達に取り囲まれてしまった。
 それぞれ、拳銃やアサルトライフルをこちらに向けている。

「…錯乱した市民が基地に侵入…」

「戻れ!」

 「「「っ!?」」」

 変な行動を取れば撃たれるだろう。
 剣得は右腕にしがみつく美桜と、唖然としている朝日を見て、2人を救う方法を模索した。

───戻れは死ぬ

───行っても死ぬ

───なら…戦うしか…

「何をしている! 早く戻れ!」

 兵隊が拳銃を構えて歩み寄ってきた。次の瞬間。

 鳥と犬の鳴き声を混ぜたような鳴き声が響くと隊員たちの外側をバケモノが囲むように降り立って来た。
 見た目はバラバラで、鳩と犬を混ぜたような見た目の様な生物や、コウモリと犬など。
 共通するのは翼があるという点だけ。

「しまった! 撃て!!」

 隊員達の注意が外側のバケモノへ向いたその隙を剣得は見逃さなかった。
 美桜の右腕を握りしめ、朝日の左腕を取るとレーシングカー顔負けのスピードで建物まで一気に駆け抜ける。

 それを追いかけようとした隊員達が次々と食われていく。
 そして、剣得の前に立ちはだかったバケモノを剣得は

「───どけぇぇぇ!!!!」

 渾身の飛び蹴りで、粉砕していく。

 やっとの思いで、窓ガラスを突き破り、軍基地の中に入ることが出来た。
 しかし、そこでも、銃を持った人々に取り囲まれてしまう。

「動くな!」

「っ!!」

 剣得は身構え、周りの人々を睨みつける。
 その時、

「銃を下ろせ…」

 隊員達の後ろから金髪の中年男性。剣得によく似ている男性。
 剣得の父親、王志 豪永が歩いてくる。
 
「お、親父…」

「お前ら、そこの3人と、外の市民を船に乗せ、セラフィスへ向え」

「はっ!」

 隊員達は敬礼をすると、その場から離散した。
 外からは依然として銃声が聞こえてくる。

「……剣得…無事だったか…」

「……」

「その2人は、船に乗れ、お前は俺と来い」

「「「っ!?」」」

 豪永のその言葉に美桜と朝日は目を見開き、立ち上がる。

「まっ、待ってください!! 剣得を連れていくんですか!?」

「あぁ、君は凍海さんの家の子か、あぁ、貴重な戦力だ」

「そ、そんな…」

 朝日は剣得の肩を掴み、

「お、お前はどうするんだよ…剣得…」

「……そうだな…これは俺に出来ることなのかもしれない…俺は行くよ…」

「やだよ!!」

 突然、美桜は叫ぶ。

「やだよ! はやくんと離れたくない!!」

「美桜…」

 美桜は強く剣得に抱きつく。

「朝日…美桜を頼む…」

「剣得…それでいいのか…」

「あぁ、俺は死なねぇよ…」

 剣得は美桜の頭を優しく撫でる。
 

 
 その後、朝日と美桜は軍の支持に従い船に乗せられると、他の市民達と共にセラフィスへの航海を始めた。

「あっくん…」

「大丈夫だ…剣得は…」

 波に揺られる暗い船内は先程とは違って静かだった。
 その時、朝日は甲板、上の方から何やら騒がしさを感じる。
 
「?」

「? あっくん?」

「美桜──」

 次の瞬間、船内は大きく揺れる。
 続いて銃声と悲鳴が鳴り響き騒然とする。
 朝日はもしやと思い、美桜の右手を引いて出口の近くに行く。

「美桜! 掴まれ!」

「!!」  

 朝日は慌てて外に出ると、イカのゲソのようなものが船の周りを囲んでいた。

「っ!!」

「さ、下がってください!!」

 アサルトライフルを持った隊員達がパニックに陥った市民たちを中へ押し戻してくる。

「くっ!」

「下がってくだ───うっ!? うわぁぁぁぁあ!!!!」

 朝日の目の前を塞いでいた隊員が巨大なゲソに巻き付かれ、あっという間に海に消えていった。
 さらに、周りをよく見るといくつもの白く巨大なゲソが甲板に居た人々を海へ引きずり込んでいく。

「────くっ!」

 その時、朝日の右足しが強く引っ張られ、状況を把握する前に朝日の体は宙吊りになった。

「──うわぁぁ!?」

 そして、振り回されたあと、海に引きずり込まれる。
 朝日は咄嗟に、全身から冷気を放出する。
 その冷気は海を一瞬にして凍らせ、ゲソの動きも止まる。

「ぷはぁ!」

 朝日は水面に顔を出し、船の方を見る。
 辺りには冷気のせいで濃い霧がたっており、うっすらとしか船の位置を確認出来なかった。
 位置としては割と近く、朝日は海に厚い氷を張り巡らせ足場を作ると、這い上がり歩いて船へ向かう。

 その後、朝日は軍の人に事情を説明し、能力での移動を任された。
 しかし、朝日が出した条件として美桜は朝日の近くに置くことにした。

 セラフィスまであと1km、大勢の人々は暗闇の中、朝日が作り出した氷の上を身震いしながら歩き、軍の護衛もあり、順調だった。
 目指できる距離にセラフィスの放つきらびやかな光。
 否、それはマズルフラッシュだろう。
 度々、銃声が聞こえてくる。
 1歩ずつ、確実に進んでいく。

「美桜?」

「……」

 美桜の表情から疲れが見て取れた。

「まて、止まれ…前方からなにか来る」

 隊員のひとりが、朝日を呼び止めた。
 その言葉通り、前方から波がこちらに向かっているのがわかる。

「(明かりを消せ…止まれ)」

 隊員は後方の市民を側近をしている隊員達にモールス信号を送る。
 その後、「(了解)」 と、返事が帰ってるくる。

 明かりは消え、氷の下を何かが通っていくのを静かに待った。

「クジラ……か」
 
 朝日が接近していた生物の招待を確認した次の瞬間。

「っ!!」

 朝日達を巨大な光が照らす。
 明かりの方向には巨大な軍用艦が接近していた。

「はっ…はやく……ん…?」

 朝日の服を掴んでいた美桜はその方向に歩き始める。
 朝日もそれに釣られるように美桜の先に足場を作っていく。
 
「美桜! 朝日!!」

 緑色の迷彩服を着た剣得は相当な高さから飛び降り、それに合わせて朝日は足場を作っていく。

「はやくん!!」
 
 美桜と剣得は冷たい氷の上で熱く抱き合った。

「…よかった! 船が沈没しているのを発見した時は心臓が止まりかけたぞ!」

「うぇぇぇん…!」

 

 その後、皆は軍用艦に乗り、剣得、美桜、朝日は甲板で再会の感動に浸っていた。

「いや、本当に生きててよかったよ…お前ら…」

「死ぬかと思ったけどな」

「朝日…本当にありがとう…美桜を助けてくれて…」

「なに、当たり前のことだろ?」 

「あっくん、かっこよかったよー」

 朝日は少し、照れる素振りを見せるが、咳払いをして口笛を始める。

「ん? まて…なんだあれ…」

 剣得が、少し海の方を眺めていると何かの影を見つける。
 暗い海にうっすらと影を浮かばせる巨人のような物。

「なに? はやくん…?」

「なんだよ! またかよ!」

 その姿を辛うじて見えた美桜と朝日も、その巨大な影に目を丸くする。
 続いて周りの人達もその存在に気づく。

「おい! なんだよあれ!」

「何あれ!」

「でかいぞ!」

 近くにいた隊員達は行動に移り、その巨体を避けるようにセラフィスへの接近を余儀なくした。

 その時だった。

 船が大きく揺れ、剣得達も体制を崩す。

 セラフィス目前。

 目の前には過去最大の敵。

 そんな状況下、事件は起こってしまった。

 剣得がそのバケモノに気を取られていた瞬間、鳥型のバケモノ数匹がが、美桜と朝日を含め、大量の人をさらっていく。

「────」

───美桜!! 朝日!!

 剣得は船の一番高いところまで上り、全力のジャンプで、近くにいた一体目を飛び蹴りで粉砕すると、その個体を踏み台に朝日を捉えている個体に近づく。

「───返せ!」

 剣得の渾身のパンチはバケモノの頭部を簡単に吹き飛ばした。
 開放された朝日は下に向かっていた長い氷を張り、落下を阻止して剣得の新たな足場を作る。

「いけ!! 剣得!!」

「美桜ぁぁあ!!!!」

 剣得のかかと落としは見事命中。
 後は美桜をキャッチするだけ───

「───くっ!」

 剣得を他のバケモノが掴み、自由を奪われる。

「朝日!!」

 朝日を見るが朝日も他のバケモノに襲われ、身動きが取れない状況にあった。

「──クソっ!!」

 剣得は最後の力を振り絞りバケモノの足を引きちぎると体を畳んで落ちていく美桜を追いかける。

「────とどけぇぇぇ!!!! ────」




────? あぁ、これが走馬灯か…

 気がつけば剣得の目の前は空色の氷に覆われ、身動きが取れない状況にあった。

────あの時、俺が美桜の手を取っていれば…。あの時俺に力があれば…

────美桜は救えた

────そして今も、俺が非力だから…お前《朝日》という大事な友も失いかけてる

────ごめん…朝日…美桜…




「ボス…G,S,Aを完全に制圧しました」

「分かった…」

 巨大な氷山に飲み込まれたG,S,A本部の建物は武闘派集団SABERによって占拠された。
 朝日はその中心、総督室の辺りに陣取って氷漬けになった剣得を見ていた。

「俺は変えてやるよ…お前を…」

────刹那

 剣得は氷の中から飛び出し、朝日の右頬にストレートを軽くかます。
 それでも朝日の体は吹き飛び近くの氷壁に背中を打ち付けた。
 その後、近くにいたSABERの隊員を手荒く手刀で気絶させる。

「っ!!」

「俺は死なねぇよ…朝日…」

 燃え盛る剣得の体。
 朝日が目にしたのは友の涙だった。
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