生き残りBAD END

とぅるすけ

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終章

目覚めた世界は地獄その物

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 翌朝。
 楓彩は平然と目を覚まし、起き上がる。
 いつの間にか白のワンピースに着替えさせられていた。
 楓彩はカーテンを開けて窓の外に出て、ベランダの柵に手をかける。
 今自分達がいるのは風が気持ちいい森に建てられたコテージだろうか。
 正確な場所や状況は分からない。
 ただ風が気持ちいい。
 そして、伸びた髪の毛が風に揺られ顔や足にあたってくすぐったい。

「鬼月さん? 起きた?」

 後ろから瑛太の声が聞こえてくる。

「……」

「朝ごはん置いておくよ?」

「……」

 楓彩は振り向きもしない。

「? 鬼月さん?」

 瑛太もベランダに出て、楓彩の右側に立つ。

「昨日から何も食べてないでしょ? 少しは食べないと体に悪いってショウさんが言ってたよ?」
 
「……」

 瑛太は楓彩の横顔に目線を移す。
 その目に感情は見て取れず、虚ろだった。

「…鬼月さん…」

「…私…」

「?」

「……私……なんで生き残ったんですかね……」

「っ!!」

 楓彩の口には似合わない台詞を吐く。



 次の日、楓彩は横になったまま誰の声にも反応しなかった。

 
 その次の日、みるみる楓彩の体は細くなっていく。


 そして一週間、楓彩は見違えるほど窶れ、ほぼ別人になっていた。

「楓彩!! 食べなさい!!」

 痺れを切らしたショウは寝たきりの楓彩に怒鳴りつけていた。
 その背後を瑛太、臨、彩楓、小雨、そして、花麗が見守っていた。

「楓彩…」

 花麗は心配そうに声を上げる。
 ショウは尚、楓彩にスープをすくったスプーンを楓彩の口元に近づけ続ける。

「………」

「楓彩……!」

 ショウはついに涙を流し始める。
 感極まったショウは何をするか分からない。そう思った彩楓はショウの肩に手を添えて優しく部屋の外へ連れて行く。

「……楓彩…あんたは何をしたいの?」

 その冷徹な声音を最後に臨は部屋を去ってしまった。

「ちょっ、待ってよ臨!!」

 それを追いかけて小雨も部屋から出て行ってしまった。

「……ぅぅ…瑛太ぁ……」

 花麗の弱々しい声に、瑛太は花麗の頭を撫でて「大丈夫…」と声をかける。

「気分転換に散歩でもしよう…鬼月さん…も……」

 瑛太は楓彩の無機物めいた表情に言葉を飲み込んだ。

 そして、部屋には楓彩を残して静寂が訪れる。





 瑛太達が外に出るとコテージのすぐ近くでうずくまる白衣の女性、ショウとその側に着物を着た男性、彩楓が立っていた。
 瑛太は木の影に花麗と隠れ、バレないように話を聞いた。

「私が悪いの…みんなで協力すれば隠し通せた……うくっ……」

「いや、いずれバレてたさ…」

「…ごめん…私がしっかりしないといけないのに……あんたのその腕だって…!」

「……俺はお前に負担を掛けた覚えは無い」

 その時に木々の間を通った風はショウの黒髪と腕の入っていない着物の左袖を悪戯に揺らして行く。




 次の日、事件は起きた。


 先日と同様、楓彩に反応は無く、皆がリビングに集まる中楓彩だけの姿がなかった。

「じゃあ、楓彩に朝飯持っていきますね?」

「…うん彩楓と臨、小雨は食料調達をお願い」



 瑛太はスープの入ったお椀が乗ったお盆をもってドアを開ける。
 ショウも今日の朝ご飯にはほとんど手をつけていなかった。

 「鬼月さん…入るよー」

 瑛太はドアを開け、目の当たりした光景に戸惑う。

「お、鬼月さん? 何をやって…」

「あ、瑛太さん? おはようございます」

 楓彩は自分の刀を抜刀し、鎬に手を当て
、反りの腹部分を首に当てていた。

「───死のうと思いまして!」

 と、笑顔を瑛太に向けてくる。



 その頃、リビングでは

「じゃあ、オレ達は行ってくるよ」 

「行ってきマース!」

 食事を終えた臨と小雨、彩楓は立ち上がり、コテージから出ていった。

「ショウ? 今日は何をするのだ?」

 花麗は少し元気の無い様子で白猫のシロンを抱き抱えてショウに訊ねる。

「そうだねぇ、私達は彩楓のテレポートでハワイ島に来たから、ハワイ島の住民票に入ってないから登録しに行かなきゃなんだけど…」

「ウチは何をしてればいいのだ?」

「花麗はお留守番かなぁ」

 その時、楓彩の寝ている部屋の方から「ガシャン!」と、食器が落下する音が聞こえる。

 ショウと花麗はすぐさま駆けつけた。

「返してください!! 瑛太さん!!」

「ダメだ!! 鬼月さん! 何をやろうとしているのかわかってんの!?」

「死なせてください!! もう嫌なんです!!」

 楓彩は刀を上に避けている瑛太の服に細い腕でしがみついていた。

「ちょっ!! 楓彩! 瑛太! 何やってんの!?」

「瑛太さん!! 返してください!!」

 泣きながら叫ぶ楓彩。
 
「鬼月さんっ……!!(くそ! こんな体…すぐに引き剥せる…けど、それだけじゃダメだ)」

「瑛太さん!!」

「───ふざけるな!!!!」

 次の瞬間、楓彩の左頬を瑛太の裏拳が捉える。
 楓彩の細く軽い体はベッドに横たわる。

「……」

「うっ…う…うぇぇぇん……!!」

 楓彩の嗚咽が聞こえる中、ショウと花麗は瑛太のとった行動に唖然として、手を口に当てていただけだった。

「おい…何が死にたいだ…寝言を言うのもいい加減にしろよ!」

 瑛太は容赦なくうつ伏せで悶える楓彩をひっくり返して右手で胸ぐらを掴みあげる。

「…あう…!!」

 楓彩は両手で左頬を抑えて目尻に涙を浮かべていた。

「オメェが死んで誰が喜ぶんだよ!! 言ってみろ! なぁ! “楓彩”!!」

「っ……!」

「誰も喜ばねぇだろ!!」

「う、うぅ……わ、私はぁぁ…!」 

「臨さんの質問をもう一度言うぞ…楓彩…。お前は何をしたいんだ……!」 

「わ、私はぁ……!」

「お前は1人じゃねぇだろ……?」

「……くない…」

「?」

「死にたくない…みんなと一緒にいたい…!!」

 瑛太はそっと楓彩の細い体を抱きしめる。

「それがみんなが望んで楓彩が望んだことだ…」

 瑛太は楓彩を殴った左手が震えている事に気がつく。

「う、うわぁぁぁぁぁん!!!!」

 楓彩の泣き声に抱きしめる力を強める。
 もう少し力を入れれば折れてしまいそうなくらいに弱々しく小さい。


────私は1人じゃない…みんながいた

────何だかこの感じ懐かしい…

────抱きしめられるこの感じ…剣得さんにも…似ている

────あぁ、温かい───



 その後、楓彩は左頬にガーゼを貼り、何日かぶりの食事を摂った。
 瑛太はというと、外に出て左手の震えを止めようと頑張っていた。

「くっ……」

「瑛太?」

「! 花麗か…」

 木の影から出てきたのは猫耳の少女、花麗。

「…」

 花麗は無言で座り込む瑛太に体を当ててくる。

「花麗?」

「怖かった……」

「っ…」

「瑛太はウチにはあんな顔したこと無い…」

「ごめんな」

 瑛太は花麗の頭を優しく撫でて謝る。
 花麗は瑛太の手を取って自分の後ろに引き、瑛太の頭の後ろに自分の手を回す。

「?」

 気がつけば花麗の胸に瑛太の頭は抱きしめられていた。

「大丈夫だぞ…瑛太にもウチがいる…」

 瑛太は花麗の背中に手を回し、

「きゃあ!」
 
 ひょいっと花麗を持ち上げて、あっという間にお姫様抱っこした。

「さぁ、コテージに戻ろう!」

「う、うぅ恥ずかしいぞぉ…」

「花麗!」

「ん?」

「ありがとうな!」



 瑛太達がリビングに入ると、見慣れない白のワンピースの女性が立っていた。
 楓彩と同じ夜色の髪の毛が肩をくすぐるほどの長さのショートボブ。

「え?」

 瑛太は花麗を下ろす。

「あ、え、瑛太さん…」

 その女性は振り向く。
 左頬に付いているガーゼが目に止まる。

「お、鬼月さん?」

「あ、もぉー、さっきは楓彩って呼んでくれたじゃないですか…」

「楓彩…髪の毛切ったのか?」

 花麗は瑛太が思った事を楓彩に訊ねた。

「は、はい…に、似合いますか?」

 楓彩は右頬に当たっている髪の毛をいじって少し照れている様子で2人に問いかける。

「「う、うん…」」

 あまりの変わりようにそのくらいしか返答できないのか、すごく見とれているのか、それは二人しか知らない。

 その時だった。

「みんな! 急いで準備して──ぬわぁっと! 楓彩? 髪切ったの!? っじゃなくて、早く! 逃げるよ!」 
 
 臨と彩楓、小雨がコテージに冷や汗をかいて駆け込んできた。

「どうしたの? 臨! みんな!」

 リビングのほうからショウが小走りで走ってくる。
 すると、彩楓は

「この島、能力者を排除し始めたぞ!」


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