生き残りBAD END

とぅるすけ

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終章

日は登り生は沈む

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────雪が…降っている

────また…此処に…戻ってきた

────孤独という名の場所

────寂しさと寒さが支配するこの場所


────楓彩…?


 その暖かい声が楓彩を包む。

「剣得…さん…」

「何やってんだ? 風引くぞ?」

 剣得は持っていた黒い傘の下に楓彩を入れる。

「す、すみません…」

 剣得は楓彩に積もった雪を払い落とす。

「さ、帰るぞ…飯にしよう」

「……あ…あの…」

「ん?」

 

─────違う…だめだ…剣得さんに着いていけない

─────なにか、やり残したことがある


「い、行けません…まだ、やり残したことことがあるんです…」

「…そうか…じゃあ、先に帰ってるぞ…?」

「はい…」

「楓彩…? 1人で帰ってこれるか?」

「…まだ…少し怖いです…」

「そうか…」

「でも、私…頑張ります…」

「じゃあな…」

「……」

 楓彩の上から傘が退けられ、再度、楓彩に降り注ぐ冷たい雪。

「……ぐっ……うっ…うぅぅ……えぐっ……」

「楓彩!」

「!」

「お前なら出来る…頑張れよ」

「…はい!!」







 楓彩が目を覚ますと若干の寒さと共に見慣れない天井が視界を支配する。

「………? …ここは…」

 ベージュのカーテンから漏れる光だけで部屋の中は薄暗い。
 楓彩は起き上がろうにも力が入らず、ずっと天井を見ていた。

 その時、プラスチック製のお盆を落とす音が響き、楓彩は驚いて目線をそちらに移す。
 そこにはぼやけてハッキリと顔は見えないが瑛太だろうか、青年が立っていた。

「…お、鬼月さん……!!」

「瑛太…さん?」

 瑛太は後ずさりして「ショウさーーん!!」と言って部屋のから飛び出して行った。




 その後すぐに駆けつけたショウの診察が始まる。
 ショウは楓彩の目にライトを当てて脳が正常か調べると、「はぁ」と安堵のため息を漏らす。

「よかった…起きたね…楓彩…」

 気がつけば、その部屋にはショウと瑛太の他にも彩楓、小雨、臨の姿が見えた。

「よかっだぁぁぁ!! 楓彩ぢゃぁぁ!!」

 泣きながら小雨は突進してくるが、彩楓の持っている刀が前に飛び出してきて小雨を止める。

「…ショウさん? ここはどこですか…? あと、なんで私の髪の毛…こんなに長いんですか?」

 楓彩は腰あたりで自分の髪の毛を持ち上げる。
 楓彩の胸元までの髪の毛はすっかり伸びてふくらはぎ辺りまでの長さになっていた。

「……」

 楓彩の質問にその場にいた誰もが回答を躊躇う。

「…?」

「……ここは…ハワイだよ…楓彩が寝てから…半年は経った」

 口を割ったのはショウだった。

「……え……あはは…なんの冗談ですか?」

 楓彩は少し笑って聞き直す。

「楓彩…冗談じゃない」

 臨は少し前に出て真剣な眼差しで言う。

「………は、剣得さんは!!」

 恐れていた質問だ。
 そう、剣得はもう居ない。
 実のところ、ショウは重要な事を黙っていた。


 半時前、楓彩が昏睡状態になり、剣得が脳死判定された時。

「ショウさん! 楓彩の心臓が……」

「あぁ、ぐちゃぐちゃだね…(まずいな…もう…あの手しか残っていないのか…)」

 楓彩の体はあの時、最後に放った一撃に耐えきれず、ところどころが通常ではつかない負傷を負っていた。
 一番酷いのは心臓だった。無いに等しい。

 出来る手は一つ。

「…移植しよう…」

 脳死した剣得の体から取り出された「心臓」。
 それは、今も楓彩の体の中で脈打っている。

 その事をショウはまだ明かしていない。



「あの…剣得さんは…?」

「───楓彩…落ち着いて聞いて欲しい…剣得は───」








─────………え?
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