生き残りBAD END

とぅるすけ

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終章

全ては奈落へ

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 「やぁ、生きてたのか…レヴィ…」

「っ!!」

 そこはスカイネクスト最深部。
 帝 臨の体を纏った嫉妬の悪魔レヴィアタンは目の前に訪れた人物に戦慄を覚えていた。

「な、なぜ…ここが分かった…ルシファー!!」

「まぁね、ボクは生存者《サバイバー》を統べる者だから…キミの居場所が分かって当然だろ…だけど、サタンの行方が分からない…キミ知ってる?」

「し、知らないね…」

「アスモデウスもここの近くにいるはずなんだけど、よく分からないや…。さてと? 今日のターゲットはキミだよ? レヴィアタン? アスモデウスに壊されたボクの力の代わりを集めている最中なんだ…今は強欲の力が主さ…」

「……そ、それは乗れない相談だぜ…ルシファー…アッチだって…今は生きてる…!!」

 レヴィアタンは持っていた銀槍を構える。

「へぇー…じゃあいいよ…殺り合おうじゃん……」

 ルシファーの両腕は計6本に枝分かれし、先に扇状の刃を生成する。

「…(大丈夫…傲慢の力がない今なら…逃げれる!────)」

────刹那







「楓彩…? な、何を言ってるの?」

 ショウは楓彩の発言に唖然としていた。

────はやと…って誰ですか?

 この言葉に、その場にいた皆が目を見開いて、真希菜の膝から上体を上げている楓彩に目線を向ける。

「……? 皆さん? ど、どうしました?」

 彩楓はそっと、ショウから貰ったお茶をすする。
 直後、盛大にお茶を吹き出してむせ始めた。

「ちょっ! 彩楓!?」

「んだよっ! これ!!」

「じゃなくて! 楓彩!! 何を言ってるの!?」

 ショウは楓彩の両肩を掴み、緊迫した表情で楓彩の顔をのぞき込む。

「っ! え、えぇ!? な、なんですか!」

「剣得! 剣得だよ! あんたの大事な人でしょ!?」

「……え? すみません…分かりません…」

 楓彩の残念そうな表情から楓彩は本気で言っていることがわかった。



 その後、小雨が起床し、居間にショウ、彩楓、小雨、真希菜、そして楓彩が集結した。

「楓彩に今、何が起こっているのか私にはよく分からないけど、解離性障害だと推測している。だから今からどこまでを覚えているかテストする…いい? 楓彩…」

「はい…」

 ショウはそう言って、小雨を指し、

「この人の名前は? フルネームで」

「雨地 小雨さんです」

「次」

 ショウは彩楓を指した。

「鬼月 彩楓さんです」

「次は…」

 ショウは真希菜を指した。

「り、里宮 真希菜さんです…」

 楓彩は少し自信なさげに真希菜を見る。
 真希菜は優しい表情で頷いていた。

「うん次、私ね?」

「ショウさんです!」

 楓彩は少し自身が出たのかさっきよりもいい声でショウの名を呼んだ。

「それフルネームじゃないよ?」

「そ、そうでしたね…えーっと…ショウムート………? あれ? ショウムート……」

 楓彩は首をかしげて悩み始めた。

「……おっけ…まぁ、私のフルネームを言える奴のほうが少ないしね…じゃあ、あなたのお母さんの名前は?」 

「………え?」

「?」

「私のお母さん? ………あれ…」

 その時、楓彩の中で矛盾が起こっていた。
 自分の母親の名前はおろか、顔や存在すらも思い出せない。
 『いなければならない人』としか思い出せなかった。

「楓彩?」

「あれ…? あれ!? …思い出せない…!」

 楓彩は頭を抱え込んでしまった。
 知ってないなければならない事が分からないのだ、誰でもそうなるだろう。

「楓彩? 落ち着いて…」

「思い出せない…私を産んでくれた人…! 助けてくれた人…! なんで!」

「最後の質問…」

「……は、はい…」

「この島に来た人、この場にいる人以外の人の名前を言ってみて?」

「はい…………え、瑛太さん……と……あれ…」

「楓彩?」

「だめです…分かりません…」

「なるほどね…これは甚大だな…」

「……」

「ごめんね、楓彩…お疲れ様、じゃあ、彩楓…話があるから私と一緒に来て」

 ショウはそう言って部屋から出て行った。
 彩楓も、渋々立ち上がり、ショウの後を追う。


 
「どうした…ショウムート」

 ショウは誰もいない一室で彩楓を後ろから抱きしめていた。

「ごめんね…ごめん…もう私…耐えられないよ…」

 震えた声でショウは彩楓に訴えてきた。
 
「どうすればいいのよ…」

 ショウからしたら、思いを寄せる剣得を失い、皆を勇気づけ、ショウ自身も頼りにしていた花麗を失い、期待していた瑛太も手元から離れた今、楓彩の記憶消失は心に来るものだった。

「たぶん…楓彩は存在しないものや、遠い過去のものを忘れてしまう病気だと思うの…」

「また、厄介な病気だな…それはそうと、なぜ、抱きつく?」  

「もう、本当にデリカシーが無いね…良いじゃん…あんたに甘い顔されたんだ…本気で甘えるから宜しく…」

「はいはい…」

 
 しばらく、彩楓はショウの呼吸が落ち着くまで優しくショウの頭を撫で続けた。

「ん、そうだ! 彩楓! これあげる!」

 ショウは彩楓から離れ、近くにあった縦長のケースを寄せる。

「それは?」

「義手だよ…」

 ショウはその箱を開いて、銀色の義手を取り出す。

「渡しそびれちゃったからさ…」

「話っていうのはこれが本題か?」

「うん、そうだよ?」

「ふっ…なんだそれは…」

「なによ…」

 ショウの膨れっ面をみて、彩楓はイタズラに笑を浮かべる。

「いや、出会った頃とだいぶ変わったなと思って…」

「それはあんたもでしょ…! ったく…ほら、付けてあげるから服脱いで」


 半裸になった彩楓の左肩に義手を取り付ける作業をする中、彩楓は質問をこぼす。

「楓彩の記憶…治るのか…」

「分からない…」

「そうか…あの時、一瞬だが、俺も“王志の顔を思い出せなくなった”」

「っ!?」

「?」

「そ、それ…私も一瞬だけ記憶が飛んだ…!」

「お前もなのか!? 俺はてっきり、お前に飲まされたお茶のせいかと思っていたが…」

「失礼な!!」

「…だが、この調子だと俺ら以外もこれを経験しただろう…」

「うん…でも、楓彩の記憶の消失が周りに影響を及ぼすなんて…これは病気と言うよりは…」

「能力…だな…」

「うん、それも人知を超えているということは彼らの言う“大罪の力”だろう…」

「……」

「同じ境遇の人を知って確信を持てたよ…病気じゃない…能力だ。命名するなら……『存在消失』? かな?」

「……なぜそうなった?」

「“存在がない人”を皆の記憶から消す…つまり初めから無かったことにしてしまう…。末恐ろしいな…」

「じゃあ…つまり…あいつの中では“もう俺らしか”ではなくて、“俺らしか居ない”という扱いなのか…」

「うん、じきに瑛太の存在も薄れていくと思う…早く瑛太を見つけて呼び戻さないと…」


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