生き残りBAD END

とぅるすけ

文字の大きさ
145 / 159
終章

追い風は荒々しく

しおりを挟む
 ────いつからだったかなぁ…剣得のことを気にかけるようになったのは…

────一番大きいのは独りになった私を助けてくれた時かな…

────その後は酷いなぁ…どんな権限使ったか知らないけど、私に部屋を一つくれたら放ったらかしだもんなぁ…

────剣得の所に楓彩がやって来てすぐ、剣得の親父さんが死んで、さらに距離が開いた…

────ずっと、楓彩が隣にいた。剣得の右腕を抱きしめている楓彩の姿。それが私の持っている剣得の記憶

────なんか…寂しいな…でも…亡くしたくない…。大切な記憶だし…




 ショウと彩楓は居間に戻り、皆に推理を話した。

「の、能力…?」

「うん、それも世界規模に影響する…災厄の“存在抹消能力”…」

「……そ、そんな…」

「推測だけど、楓彩の失った記憶、それに比例するかのように周りの記憶、いや、世界からも、その記憶(存在)は失われる」

 ショウの推理はぶっ飛んでいても大体正しい。そんなこと、その場にいる誰もが分かっていた。
 そのせいか、実感のわかない話でも緊張感が迸る。

「わ、私は…どうすれば…」

 楓彩の表情は不安でいっぱいになっていた。
 
「まだ、詳しいことがわからない以上、何も対策のしようがない…。けど、楓彩の記憶が関係するなら、“楓彩の記憶が亡くならない、もしくは思い出させる”努力をしようと思う」

「…え?」
 
 ショウの強気な言葉に楓彩や、その他の皆も顔を上げる。

「でも、これからは少し楓彩には辛い日々になるかもしれない。どうか、楓彩とみんなには覚悟を決めてほしい…。嬉しいこと、嫌なこと、全てを…思い出させて手放させないから…」




 その後、ショウは以外にもすぐには治療を行わなかった。
 小雨、真希菜は素朴ながらも朝食を作るために台所へ、ショウは楓彩や、その他の今後の方針を考えるために自室にこもった。
 楓彩と彩楓は神ヶ丘邸の広大な庭を利用して、楓彩の剣術の訓練をしていた。

 楓彩は動きやすい服装に着替え、着物を着た彩楓の隣であることに気がつく。

「い、彩楓さん…? その腕……!」

「あぁ…これか?」

 彩楓は左袖をまくり上げ、銀腕をあらわにする。
 
「ショウムートが作ってくれたんだ…イカすだろ?」

「あぁ…はい…(なんだろう…何か…。何か…懐かしい…)」

 楓彩は少し、彩楓の左腕に見とれた。
 
「? どうかしたか? 楓彩…」

「い、いえ…なんでもありません…」

「そうか…。じゃあ今日はハンデ無しの本気の勝負をしようじゃないか」

「え?」

 今までは隻腕というハンデと能力無しのハンデがあったが、今は義手があり、仮ではあるが五体満足の彩楓。
 
「さて…俺の本気に近い装備でやらせてもらうぞ」

 彩楓は木刀を主装備に、木短刀を数本腰に差した。
 楓彩も彩楓の主装備より少し短い木刀を手に取り、彩楓と6m程の距離をあける。

「お、お願いします!」

「あぁ────」

 直後、彩楓は珍しく楓彩から先制をもらった。
 能力無しとは言え、人間離れした足の速さの後に縦に振り下ろされた木刀は凶器だ。しかし、その凶器は空振りにおわった。
 楓彩が体を右に反らしてかわしたのだ。
 以前までなら自分の木刀で受けるか、直撃していたのだが、攻撃をかわす楓彩に彩楓は成長を感じていた。

 だからこそ、彩楓は次の攻撃を放つより先に、後ろにステップを踏んだ。
 予想通り、楓彩は水平切りに右回転の遠心力を乗せた割と強烈な一撃を放ってきた。

「っと…!」

「そぉい!!」

 楓彩はその後、背面で木刀を持ち替えながら、連続して攻撃しながら彩楓に距離を詰めてくる。
 彩楓はその全ての攻撃に応えた。

「(さすがだな…少し教えただけで、どんどん自分で派生していきやがる…。天才かよ…)」

 楓彩が元から持っていた能力無しでも高い身体能力に加え、戦闘になると頭の回転が早くなる性質。彩楓もそれには才能を感じていた。
 
「(ま、やられてばかりじゃないけどな───!)」

 彩楓は楓彩の回転にわずかな隙を見つけ、楓彩の開けた胸に向けて鋭い突きを繰り出す。

「───!!」

 直後、彩楓は驚愕した。
 楓彩は上体を反らして突き出た彩楓の木刀を蹴りあげたのだ。
 だが、彩楓はこの技に見覚えがあった。以前、楓彩に彩楓がやった技だ。

「────」

 楓彩はそのまま、片腕でバク転し、彩楓が投げ放ってきた木短刀2本を切り伏せる。

「やるじゃねぇか…」

「はぁ…はぁ…(目が回りました……気持ち悪い…)」

「(…さて、大人気なく行くか…)」

────刹那

 彩楓は先程よりも早いスピードで楓彩に急接近し、楓彩の水平切りをかわして懐に潜り込む。

「───っ!!」  

 素早い手さばきで、楓彩の木刀を持つ手を取り、楓彩の首元に自らの木刀を当てたかと思うと、鋭いローキックで、楓彩の体勢を崩し、そのまま楓彩を背負い投げた。

「───きゃあ!!」

 楓彩は唖然としたまま仰向けになり、脱力する。

「あ、あれ?」 

「ま、少し本気出した…」


 彩楓は楓彩の手を取り、立ち上がらせる。

「す、少しですか…」

 楓彩は顔を少し青くして彩楓を見つめる。

「そ、そうだ! 彩楓さん…彩楓さんの必殺技! 教えてください!」

「必殺技? …何のことだ?」

「え、えっと…複数の攻撃を同時にやるって言う!」

「あぁ、あれか…いいぞ? 別に」

「やった…! (割とすぐ出来るものなのかな?)」

「(結構前の事だけど、それは覚えてるんだな…)」

「ん?」

 彩楓が変な目で楓彩を見てい事に気付き、楓彩は小首をかしげた。

「いや、何でもない、さぁ…やるぞ」




 その後、2人は泥だらけになって玄関に戻ってきた。
 
「だいぶ筋がいいじゃないか…」

「えへへ…」

「ちょ、あんた達…汚な!!」

 2人が靴を脱いでいる途中で、後ろからショウの声が聞こえてくる。

「風呂入ってこい!」






 南区海岸。

「隊長…ケルト隊長!」

「んあ? あぁ、揃ったか?」

 南区の海岸に集結した30人ほどの軍隊。

「少数先鋭と言ったはずだが…皆どれだけ自信あるんだよ…」




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

追放悪役令嬢、辺境の荒れ地を楽園に!元夫の求婚?ざまぁ、今更遅いです!

黒崎隼人
ファンタジー
皇太子カイルから「政治的理由」で離婚を宣告され、辺境へ追放された悪役令嬢レイナ。しかし彼女は、前世の農業知識と、偶然出会った神獣フェンリルの力を得て、荒れ地を豊かな楽園へと変えていく。 そんな彼女の元に現れたのは、離婚したはずの元夫。「離婚は君を守るためだった」と告白し、復縁を迫るカイルだが、レイナの答えは「ノー」。 「離婚したからこそ、本当の幸せが見つかった」 これは、悪女のレッテルを貼られた令嬢が、自らの手で未来を切り拓き、元夫と「夫婦ではない」最高のパートナーシップを築く、成り上がりと新しい絆の物語。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

【完結】前代未聞の婚約破棄~なぜあなたが言うの?~【長編】

暖夢 由
恋愛
「サリー・ナシェルカ伯爵令嬢、あなたの婚約は破棄いたします!」 高らかに宣言された婚約破棄の言葉。 ドルマン侯爵主催のガーデンパーティーの庭にその声は響き渡った。 でもその婚約破棄、どうしてあなたが言うのですか? ********* 以前投稿した小説を長編版にリメイクして投稿しております。 内容も少し変わっておりますので、お楽し頂ければ嬉しいです。

アガルタ・クライシス ―接点―

来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。 九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。 同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。 不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。 古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。

【完結】まもの牧場へようこそ!~転移先は魔物牧場でした ~-ドラゴンの子育てから始める異世界田舎暮らし-

いっぺいちゃん
ファンタジー
平凡なサラリーマン、相原正人が目を覚ましたのは、 見知らぬ草原に佇むひとつの牧場だった。 そこは、人に捨てられ、行き場を失った魔物の孤児たちが集う場所。 泣き虫の赤子ドラゴン「リュー」。 やんちゃなフェンリルの仔「ギン」。 臆病なユニコーンの仔「フィーネ」。 ぷるぷる働き者のスライム「モチョ」。 彼らを「処分すべき危険種」と呼ぶ声が、王都や冒険者から届く。 けれど正人は誓う。 ――この子たちは、ただの“危険”なんかじゃない。 ――ここは、家族の居場所だ。 癒やしのスキル【癒やしの手】を頼りに、 命を守り、日々を紡ぎ、 “人と魔物が共に生きる未来”を探していく。 ◇ 🐉 癒やしと涙と、もふもふと。 ――これは、小さな牧場から始まる大きな物語。 ――世界に抗いながら、共に暮らすことを選んだ者たちの、優しい日常譚。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

商人の男と貴族の女~婚約破棄から始まる成り上がり~

葉月奈津・男
恋愛
「あなたとの婚約、破棄させていただきます!」 王立学院の舞踏会。 全校生徒が見守る中、商家の三男カロスタークは、貴族令嬢セザールから一方的に婚約破棄を突きつけられる。 努力も誠意も、すべて「退屈だった」の一言で切り捨てられ、彼女は王子様気取りの子爵家の三男と新たな婚約を宣言する。 だが、カロスタークは折れなかった。 「商人の子せがれにだって、意地はあるんだ!」 怒りと屈辱を胸に、彼は商人としての才覚を武器に、静かなる反撃を開始する。 舞踏会の翌日、元婚約者の実家に突如として訪れる債権者たち。 差し押さえ、債権買収、そして“後ろ盾”の意味を思い知らせる逆襲劇が幕を開ける! これは、貴族社会の常識を覆す、ひとりの青年の成り上がりの物語。 誇りを踏みにじられた男が、金と知恵で世界を変える――!

処理中です...