生き残りBAD END

とぅるすけ

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終章

追い風は荒々しく

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 ────いつからだったかなぁ…剣得のことを気にかけるようになったのは…

────一番大きいのは独りになった私を助けてくれた時かな…

────その後は酷いなぁ…どんな権限使ったか知らないけど、私に部屋を一つくれたら放ったらかしだもんなぁ…

────剣得の所に楓彩がやって来てすぐ、剣得の親父さんが死んで、さらに距離が開いた…

────ずっと、楓彩が隣にいた。剣得の右腕を抱きしめている楓彩の姿。それが私の持っている剣得の記憶

────なんか…寂しいな…でも…亡くしたくない…。大切な記憶だし…




 ショウと彩楓は居間に戻り、皆に推理を話した。

「の、能力…?」

「うん、それも世界規模に影響する…災厄の“存在抹消能力”…」

「……そ、そんな…」

「推測だけど、楓彩の失った記憶、それに比例するかのように周りの記憶、いや、世界からも、その記憶(存在)は失われる」

 ショウの推理はぶっ飛んでいても大体正しい。そんなこと、その場にいる誰もが分かっていた。
 そのせいか、実感のわかない話でも緊張感が迸る。

「わ、私は…どうすれば…」

 楓彩の表情は不安でいっぱいになっていた。
 
「まだ、詳しいことがわからない以上、何も対策のしようがない…。けど、楓彩の記憶が関係するなら、“楓彩の記憶が亡くならない、もしくは思い出させる”努力をしようと思う」

「…え?」
 
 ショウの強気な言葉に楓彩や、その他の皆も顔を上げる。

「でも、これからは少し楓彩には辛い日々になるかもしれない。どうか、楓彩とみんなには覚悟を決めてほしい…。嬉しいこと、嫌なこと、全てを…思い出させて手放させないから…」




 その後、ショウは以外にもすぐには治療を行わなかった。
 小雨、真希菜は素朴ながらも朝食を作るために台所へ、ショウは楓彩や、その他の今後の方針を考えるために自室にこもった。
 楓彩と彩楓は神ヶ丘邸の広大な庭を利用して、楓彩の剣術の訓練をしていた。

 楓彩は動きやすい服装に着替え、着物を着た彩楓の隣であることに気がつく。

「い、彩楓さん…? その腕……!」

「あぁ…これか?」

 彩楓は左袖をまくり上げ、銀腕をあらわにする。
 
「ショウムートが作ってくれたんだ…イカすだろ?」

「あぁ…はい…(なんだろう…何か…。何か…懐かしい…)」

 楓彩は少し、彩楓の左腕に見とれた。
 
「? どうかしたか? 楓彩…」

「い、いえ…なんでもありません…」

「そうか…。じゃあ今日はハンデ無しの本気の勝負をしようじゃないか」

「え?」

 今までは隻腕というハンデと能力無しのハンデがあったが、今は義手があり、仮ではあるが五体満足の彩楓。
 
「さて…俺の本気に近い装備でやらせてもらうぞ」

 彩楓は木刀を主装備に、木短刀を数本腰に差した。
 楓彩も彩楓の主装備より少し短い木刀を手に取り、彩楓と6m程の距離をあける。

「お、お願いします!」

「あぁ────」

 直後、彩楓は珍しく楓彩から先制をもらった。
 能力無しとは言え、人間離れした足の速さの後に縦に振り下ろされた木刀は凶器だ。しかし、その凶器は空振りにおわった。
 楓彩が体を右に反らしてかわしたのだ。
 以前までなら自分の木刀で受けるか、直撃していたのだが、攻撃をかわす楓彩に彩楓は成長を感じていた。

 だからこそ、彩楓は次の攻撃を放つより先に、後ろにステップを踏んだ。
 予想通り、楓彩は水平切りに右回転の遠心力を乗せた割と強烈な一撃を放ってきた。

「っと…!」

「そぉい!!」

 楓彩はその後、背面で木刀を持ち替えながら、連続して攻撃しながら彩楓に距離を詰めてくる。
 彩楓はその全ての攻撃に応えた。

「(さすがだな…少し教えただけで、どんどん自分で派生していきやがる…。天才かよ…)」

 楓彩が元から持っていた能力無しでも高い身体能力に加え、戦闘になると頭の回転が早くなる性質。彩楓もそれには才能を感じていた。
 
「(ま、やられてばかりじゃないけどな───!)」

 彩楓は楓彩の回転にわずかな隙を見つけ、楓彩の開けた胸に向けて鋭い突きを繰り出す。

「───!!」

 直後、彩楓は驚愕した。
 楓彩は上体を反らして突き出た彩楓の木刀を蹴りあげたのだ。
 だが、彩楓はこの技に見覚えがあった。以前、楓彩に彩楓がやった技だ。

「────」

 楓彩はそのまま、片腕でバク転し、彩楓が投げ放ってきた木短刀2本を切り伏せる。

「やるじゃねぇか…」

「はぁ…はぁ…(目が回りました……気持ち悪い…)」

「(…さて、大人気なく行くか…)」

────刹那

 彩楓は先程よりも早いスピードで楓彩に急接近し、楓彩の水平切りをかわして懐に潜り込む。

「───っ!!」  

 素早い手さばきで、楓彩の木刀を持つ手を取り、楓彩の首元に自らの木刀を当てたかと思うと、鋭いローキックで、楓彩の体勢を崩し、そのまま楓彩を背負い投げた。

「───きゃあ!!」

 楓彩は唖然としたまま仰向けになり、脱力する。

「あ、あれ?」 

「ま、少し本気出した…」


 彩楓は楓彩の手を取り、立ち上がらせる。

「す、少しですか…」

 楓彩は顔を少し青くして彩楓を見つめる。

「そ、そうだ! 彩楓さん…彩楓さんの必殺技! 教えてください!」

「必殺技? …何のことだ?」

「え、えっと…複数の攻撃を同時にやるって言う!」

「あぁ、あれか…いいぞ? 別に」

「やった…! (割とすぐ出来るものなのかな?)」

「(結構前の事だけど、それは覚えてるんだな…)」

「ん?」

 彩楓が変な目で楓彩を見てい事に気付き、楓彩は小首をかしげた。

「いや、何でもない、さぁ…やるぞ」




 その後、2人は泥だらけになって玄関に戻ってきた。
 
「だいぶ筋がいいじゃないか…」

「えへへ…」

「ちょ、あんた達…汚な!!」

 2人が靴を脱いでいる途中で、後ろからショウの声が聞こえてくる。

「風呂入ってこい!」






 南区海岸。

「隊長…ケルト隊長!」

「んあ? あぁ、揃ったか?」

 南区の海岸に集結した30人ほどの軍隊。

「少数先鋭と言ったはずだが…皆どれだけ自信あるんだよ…」




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