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終章
嵐の前の静けさは殺伐と
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「わぁ…ラーメン!!」
楓彩は湯気を立てているラーメンの前に目を輝かせる。
「さぁ、伸びないうちにどうぞ?」
真希菜はラーメンを皆の前に並べると、厨房へ戻った。
「んふーー! 美味しいー! ……あっついーーっ!!」
「落ち着いて食べなよ…ふーっ…ふーっ…アチっ!」
ショウも熱々のラーメンに顔を離す。
皆は無言でラーメンを啜り、その食の速さで美味しさを表していた。
その後、食堂の上の階にある居住区の家具屋に戻ると、彩楓はショウを呼び寄せて皆から離れた。
2人は家具屋と同じかいにある暗い廊下に訪れる。
「どうしたの? 彩楓」
「……不味いことになった…」
「ん?」
彩楓は急に体を傾けて、ショウの体を使ってバランスをとる。
「──ちょっ! 彩楓!?」
「はぁ…はぁ…すまねぇ…体の様子がおかしいんだ…」
「…そんな…」
彩楓にはそんな素振りは無かった。
今の今まで、普通に歩き、食べ、話していた。
ショウは彩楓の額に手を当てて熱を測る。
「熱は無い…」
ショウは彩楓の頭が自分の太ももに乗るように腰を下ろす。
「頼むから…楓彩や、皆にはこの事を伝えるな…迷惑は掛けたくない…」
「分かった…でも、無理はしないでね…。多分だけど、症状から見るに能力の酷使のしすぎだね…」
「こんなに辛いものなのか…」
「うん…。私には能力と呼べる能力は無いけど、分かるよ…医者だから」
「はっ…」
「とにかく、これからは能力の使用を控えてね? 私たちも努力するから」
「わかった…。すまなかったな…もう大丈夫だ」
彩楓は立ち上がり、ショウの右手を引っ張って立ち上がらせる。
「私も極力、治そうとは試みるけど、今の状況で薬の製造は難しいから…自分でも、注意はしっかりしてね」
「了解」
ショウは更に念を推す。
────彩楓は…絶対に亡くしたくない…
「あっ! ショウさん! 彩楓さん! どこに行ってたんですか…!」
家具屋に着くなり、楓彩はムスッとした顔でショウ達を出迎える。
「ごめんごめん…なにかするの?」
「はい! こんなものを見つけてきました!」
『人生ゲーム』と、書かれた色とりどりな箱を手に、明るい笑顔を向けてくる楓彩。
「へぇ、ボドゲか…いいよ…気分転換になりそう」
その後、皆でテーブルを囲んで人生ゲームを展開した。
「よーし、じゃあ私からだね」
ショウは1から6までの数字が書かれた丸いルーレットの中心の摘みを軽く回した。
「3…ね」
ショウは車をもした赤い駒を3マス進める。
「就職…医者…!」
「まんまじゃねぇか…」
「ショウさんらしいですね」
「次は私か」
続いて、小雨がルーレットを回す。
「5…タレント…か」
「小雨なら有り得るかもね…」
「はい! スタイルいいですし!」
「そう…かな…」
暗かった小雨の表情が少し明るくなる。
「じゃあ次はいっくんだよ…」
小雨は彩楓にルーレットを渡す。
「1か…さい先転ぶ、1000払う……」
「ぶっふぉ!!」
ショウは彩楓の、渋い顔を見て吹き出す。
「クスッ…彩楓さん! ドンマイです!」
「……ええい! 次は楓彩だ!」
彩楓は楓彩にルーレットを回す。
「いよーっし! ……4です!」
楓彩は駒を進めた。
「迷い猫を拾い、飼い主に感謝される…2000貰う!」
「楓彩らしいね……なんか…すごいわ…このゲーム…」
「次は真希菜さんですね」
「はい…6ですね…撫でようとした犬に噛まれ怪我、1000払う……ですか…」
「ドンマイです…」
────開発した便利グッズが大ヒット
────剣道を始め、手首を負傷
────猫を飼い始める
────友達の恋愛相談に苦労
────恋人に貢ぐ
何気ないマスはそれぞれの過去に近く、何かと思い出させる。
「ゴール!」
最後は楓彩がゴールし、ゲームを終了した。
「ふぅ、なんか、楽しかったけど疲れたね」
「そうですね…」
その時、ショウの持っていた携帯がアラームを鳴らす。
「───っ!」
ショウはすぐさま携帯を取り出し、確認する。
「あぁ…そんな!」
「どうしたんですか!?」
「もうこの場所がバレた…!」
ショウは立ち上がり、携帯を凝視する。
「まだ13階か…ここ(32階)に来るのも時間の問題だな…よし! 皆! 迎え撃つぞ!」
「正気か! ショウムート! 奴らは聞いた所、能力者殺しのスペシャリストじゃないのか!?」
彩楓も立ち上がり、ショウに訴える。
その時、彩楓は大体を察していた。
自分の気を使っての発言だろう。能力者殺しのスペシャリストだからこそ、彩楓の出る幕はない。
ショウ、真希菜を中心にした作戦を展開するはずだ。
「うん、このまま逃げ続けても、この狭い島の中、いつか追い詰められる。なら、この絶好の場所で奴らを潰そう…幸い、私と真希菜は能力者じゃない…。私達で奴らを撹乱し、ケルト・ローレンスを集団から引き剥がした後、小雨と彩楓に数を削いでもらう。即席の作戦だけどやるしかない…」
「待ってください、シロンがいません!」
「っ!」
楓彩は辺りを見回しながら叫ぶ。
「小雨、真希菜、まだ時間はある…シロンを楓彩と一緒に探してきて」
「「了解」」
「彩楓は私と来て…敵の武装、正確な数を知りたい」
「分かった」
ライトを持つ楓彩を先頭に、薄暗い中、シロンを探して歩く真希菜と小雨。
「シローン…出てきてくださーい!」
「鬼月さん…もう少し、静かにお願いします」
「あ、ごめんなさい…」
しばらく歩き回っていると、楓彩は何やら水たまりを踏む。
「ん?」
楓彩は持っていたライトを足元に向ける。
「………え…」
水たまりだと思っていたそれは鮮血だった。
「…血?」
「や、やだ…シロン…! シロン!!」
「お、落ち着いて! 楓彩ちゃん! まだシロンの物と決まった訳じゃ」
「臭いが! シロンのものです!」
「───っ!!」
忘れていた。楓彩の人間離れした嗅覚を。
楓彩は臭いを辿るように走り始めた。
そして
『グルルルっ……』
「…あ……」
突如、姿を現したタコのような無数の足で歩行する犬の頭をした生存者《サバイバー》。
目に映った。その足の1本にあった血に染まった白猫の姿が。
楓彩は湯気を立てているラーメンの前に目を輝かせる。
「さぁ、伸びないうちにどうぞ?」
真希菜はラーメンを皆の前に並べると、厨房へ戻った。
「んふーー! 美味しいー! ……あっついーーっ!!」
「落ち着いて食べなよ…ふーっ…ふーっ…アチっ!」
ショウも熱々のラーメンに顔を離す。
皆は無言でラーメンを啜り、その食の速さで美味しさを表していた。
その後、食堂の上の階にある居住区の家具屋に戻ると、彩楓はショウを呼び寄せて皆から離れた。
2人は家具屋と同じかいにある暗い廊下に訪れる。
「どうしたの? 彩楓」
「……不味いことになった…」
「ん?」
彩楓は急に体を傾けて、ショウの体を使ってバランスをとる。
「──ちょっ! 彩楓!?」
「はぁ…はぁ…すまねぇ…体の様子がおかしいんだ…」
「…そんな…」
彩楓にはそんな素振りは無かった。
今の今まで、普通に歩き、食べ、話していた。
ショウは彩楓の額に手を当てて熱を測る。
「熱は無い…」
ショウは彩楓の頭が自分の太ももに乗るように腰を下ろす。
「頼むから…楓彩や、皆にはこの事を伝えるな…迷惑は掛けたくない…」
「分かった…でも、無理はしないでね…。多分だけど、症状から見るに能力の酷使のしすぎだね…」
「こんなに辛いものなのか…」
「うん…。私には能力と呼べる能力は無いけど、分かるよ…医者だから」
「はっ…」
「とにかく、これからは能力の使用を控えてね? 私たちも努力するから」
「わかった…。すまなかったな…もう大丈夫だ」
彩楓は立ち上がり、ショウの右手を引っ張って立ち上がらせる。
「私も極力、治そうとは試みるけど、今の状況で薬の製造は難しいから…自分でも、注意はしっかりしてね」
「了解」
ショウは更に念を推す。
────彩楓は…絶対に亡くしたくない…
「あっ! ショウさん! 彩楓さん! どこに行ってたんですか…!」
家具屋に着くなり、楓彩はムスッとした顔でショウ達を出迎える。
「ごめんごめん…なにかするの?」
「はい! こんなものを見つけてきました!」
『人生ゲーム』と、書かれた色とりどりな箱を手に、明るい笑顔を向けてくる楓彩。
「へぇ、ボドゲか…いいよ…気分転換になりそう」
その後、皆でテーブルを囲んで人生ゲームを展開した。
「よーし、じゃあ私からだね」
ショウは1から6までの数字が書かれた丸いルーレットの中心の摘みを軽く回した。
「3…ね」
ショウは車をもした赤い駒を3マス進める。
「就職…医者…!」
「まんまじゃねぇか…」
「ショウさんらしいですね」
「次は私か」
続いて、小雨がルーレットを回す。
「5…タレント…か」
「小雨なら有り得るかもね…」
「はい! スタイルいいですし!」
「そう…かな…」
暗かった小雨の表情が少し明るくなる。
「じゃあ次はいっくんだよ…」
小雨は彩楓にルーレットを渡す。
「1か…さい先転ぶ、1000払う……」
「ぶっふぉ!!」
ショウは彩楓の、渋い顔を見て吹き出す。
「クスッ…彩楓さん! ドンマイです!」
「……ええい! 次は楓彩だ!」
彩楓は楓彩にルーレットを回す。
「いよーっし! ……4です!」
楓彩は駒を進めた。
「迷い猫を拾い、飼い主に感謝される…2000貰う!」
「楓彩らしいね……なんか…すごいわ…このゲーム…」
「次は真希菜さんですね」
「はい…6ですね…撫でようとした犬に噛まれ怪我、1000払う……ですか…」
「ドンマイです…」
────開発した便利グッズが大ヒット
────剣道を始め、手首を負傷
────猫を飼い始める
────友達の恋愛相談に苦労
────恋人に貢ぐ
何気ないマスはそれぞれの過去に近く、何かと思い出させる。
「ゴール!」
最後は楓彩がゴールし、ゲームを終了した。
「ふぅ、なんか、楽しかったけど疲れたね」
「そうですね…」
その時、ショウの持っていた携帯がアラームを鳴らす。
「───っ!」
ショウはすぐさま携帯を取り出し、確認する。
「あぁ…そんな!」
「どうしたんですか!?」
「もうこの場所がバレた…!」
ショウは立ち上がり、携帯を凝視する。
「まだ13階か…ここ(32階)に来るのも時間の問題だな…よし! 皆! 迎え撃つぞ!」
「正気か! ショウムート! 奴らは聞いた所、能力者殺しのスペシャリストじゃないのか!?」
彩楓も立ち上がり、ショウに訴える。
その時、彩楓は大体を察していた。
自分の気を使っての発言だろう。能力者殺しのスペシャリストだからこそ、彩楓の出る幕はない。
ショウ、真希菜を中心にした作戦を展開するはずだ。
「うん、このまま逃げ続けても、この狭い島の中、いつか追い詰められる。なら、この絶好の場所で奴らを潰そう…幸い、私と真希菜は能力者じゃない…。私達で奴らを撹乱し、ケルト・ローレンスを集団から引き剥がした後、小雨と彩楓に数を削いでもらう。即席の作戦だけどやるしかない…」
「待ってください、シロンがいません!」
「っ!」
楓彩は辺りを見回しながら叫ぶ。
「小雨、真希菜、まだ時間はある…シロンを楓彩と一緒に探してきて」
「「了解」」
「彩楓は私と来て…敵の武装、正確な数を知りたい」
「分かった」
ライトを持つ楓彩を先頭に、薄暗い中、シロンを探して歩く真希菜と小雨。
「シローン…出てきてくださーい!」
「鬼月さん…もう少し、静かにお願いします」
「あ、ごめんなさい…」
しばらく歩き回っていると、楓彩は何やら水たまりを踏む。
「ん?」
楓彩は持っていたライトを足元に向ける。
「………え…」
水たまりだと思っていたそれは鮮血だった。
「…血?」
「や、やだ…シロン…! シロン!!」
「お、落ち着いて! 楓彩ちゃん! まだシロンの物と決まった訳じゃ」
「臭いが! シロンのものです!」
「───っ!!」
忘れていた。楓彩の人間離れした嗅覚を。
楓彩は臭いを辿るように走り始めた。
そして
『グルルルっ……』
「…あ……」
突如、姿を現したタコのような無数の足で歩行する犬の頭をした生存者《サバイバー》。
目に映った。その足の1本にあった血に染まった白猫の姿が。
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