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召喚
ウィルsideもしくは独白2
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軽くノックとして、扉を開けた時だった。
驚いたなあ…なんて、仰りながら部屋を見渡し、僕の足元を見て目を見張った。
「ドラゴンが見えちゃってるんだもんな」
(あ!レイがどうしてここに!)
いつの間にか後ろにいたのは水龍のレイだ。平和な時は北の海岸に親子で住み着いていたんだけど、人間たちがそれを見つけて不吉だとか、危険だとかで、レイのお父さんとお母さんを討伐してしまったのだ。僕はなんとか子供だけでも助けようと、必死に硝煙の中をかいくぐり、岩場の陰に震えて隠れていたこの子を助け出したのだ。
そして、名前をレイとつけて、こっそりと人間たちに隠れて育てていたのだけど…それがどうしてここまでついて来ちゃったんだ!
人間は生まれ持っての本能で竜が恐ろしいのだとルーカス兄さんは言っていた…だからきっと、守護天使様も…
慌ててルーカス兄さんがレイを抱き上げ、無礼を詫びる。僕はどうかどうかご慈悲をと祈るようにぎゅっと目を閉じた。
(お許しください!見逃して下さい!レイは最後の水龍なのです)
「かわいいなあ…」
嗚呼、やっぱり…って、あれ?
「そのうち抱っこさせてくれるかなあ…あ、外に行っちゃうのか。ばいばい」
きっと無意識につぶやいたのだろう。小さな声でそう言った守護天使様は、レイに軽く手を振る。レイも、守護天使様の優しい心に気が付いていたのか、残念そうな顔をしながらも、最後は嬉しそうに「またね」と鳴いて、僕が開けた扉の隙間からするりと出て行ってしまった。
守護天使様への誤解が解けていく。守護天使様は人間だけど、そうだけど…きっと全然違う人間なんだ。まだまだ守護天使様のことはわからないけど、色眼鏡で見ちゃいけない。僕は守護天使様とちゃんと向かい合わなくちゃいけないと気が付いた。
「ご慈悲を感謝します」
震えるような声でルーカス兄さんがお礼を言うのを聞いて、僕もあわててありがとうございますと頭を下げた。
そのあとは部屋を移動して、守護天使様に軽食をお出しした。
美味しい!と言って間食してもらったときは思わず涙が出てしまった。
これまでの苦しさや辛さをすべて溶かしていくような涙だった。僕と同じようにルーカス兄さんもスティーブ兄さんも涙をながしている。きっと、僕が大好きだった料理が嫌いになって、辛くて、悲しいのを知っていたからだ。報われることってこんなに嬉しいんだ。僕の料理を食べて、美味しいって言ってもらえる喜びを僕は何年もぶりに思い出していた。
さらには僕たちの分もお茶をすすめてくださって、手ずからお茶をいれて僕たちの前に出してくれた。なんというお人なんだろう!怖いに違いない、不安に違いない。知らない世界にいきなり呼び出されて、見ず知らずの人魚に訳の分からないことを言われているだろうに、何時だってこのお方は僕たちを気遣ってくださる!!
光が差した。
もう大丈夫、そう神がおっしゃっているようだった。
「だから怖くないよ」
手と足につけられた手錠は重く冷たい。
冷たい檻の中で、外から聞こえる怒声や悲鳴が響くのはどこか遠い夢の中の出来事のようだ。
僕はきっと大陸に売られてしまうのだろう。檻の中には僕と同じように適当な理由で捕まった人魚の子供が寝き疲れた様子で眠っている。少しでも寒くないようにと、その子のそばに身を寄せる。
ママ…と小さく彼がつぶやくのが聞こえる。
「大丈夫だよ。きっと大丈夫。僕たちがダメになったとしても、きっとそれは礎になるから」
あの、美しい守護天使様はどんな審判を下すのだろう。
僕はその答えを穏やかな気持ちで受け入れると決めた。あの優しい人が決めたことだ。だから大丈夫。
そう自分に言い聞かせる。
ただ心配なのは、ルーカス兄さん。あれから僕と離れ離れになってしまった。人間たちに連れていくなら僕をと名乗ったのはいいものの、果たしてルーカス兄さんは無事だろうか。
でも、ルーカス兄さんは一族の長だからきっと…
「嗚呼、どうか、守護天使様…」
驚いたなあ…なんて、仰りながら部屋を見渡し、僕の足元を見て目を見張った。
「ドラゴンが見えちゃってるんだもんな」
(あ!レイがどうしてここに!)
いつの間にか後ろにいたのは水龍のレイだ。平和な時は北の海岸に親子で住み着いていたんだけど、人間たちがそれを見つけて不吉だとか、危険だとかで、レイのお父さんとお母さんを討伐してしまったのだ。僕はなんとか子供だけでも助けようと、必死に硝煙の中をかいくぐり、岩場の陰に震えて隠れていたこの子を助け出したのだ。
そして、名前をレイとつけて、こっそりと人間たちに隠れて育てていたのだけど…それがどうしてここまでついて来ちゃったんだ!
人間は生まれ持っての本能で竜が恐ろしいのだとルーカス兄さんは言っていた…だからきっと、守護天使様も…
慌ててルーカス兄さんがレイを抱き上げ、無礼を詫びる。僕はどうかどうかご慈悲をと祈るようにぎゅっと目を閉じた。
(お許しください!見逃して下さい!レイは最後の水龍なのです)
「かわいいなあ…」
嗚呼、やっぱり…って、あれ?
「そのうち抱っこさせてくれるかなあ…あ、外に行っちゃうのか。ばいばい」
きっと無意識につぶやいたのだろう。小さな声でそう言った守護天使様は、レイに軽く手を振る。レイも、守護天使様の優しい心に気が付いていたのか、残念そうな顔をしながらも、最後は嬉しそうに「またね」と鳴いて、僕が開けた扉の隙間からするりと出て行ってしまった。
守護天使様への誤解が解けていく。守護天使様は人間だけど、そうだけど…きっと全然違う人間なんだ。まだまだ守護天使様のことはわからないけど、色眼鏡で見ちゃいけない。僕は守護天使様とちゃんと向かい合わなくちゃいけないと気が付いた。
「ご慈悲を感謝します」
震えるような声でルーカス兄さんがお礼を言うのを聞いて、僕もあわててありがとうございますと頭を下げた。
そのあとは部屋を移動して、守護天使様に軽食をお出しした。
美味しい!と言って間食してもらったときは思わず涙が出てしまった。
これまでの苦しさや辛さをすべて溶かしていくような涙だった。僕と同じようにルーカス兄さんもスティーブ兄さんも涙をながしている。きっと、僕が大好きだった料理が嫌いになって、辛くて、悲しいのを知っていたからだ。報われることってこんなに嬉しいんだ。僕の料理を食べて、美味しいって言ってもらえる喜びを僕は何年もぶりに思い出していた。
さらには僕たちの分もお茶をすすめてくださって、手ずからお茶をいれて僕たちの前に出してくれた。なんというお人なんだろう!怖いに違いない、不安に違いない。知らない世界にいきなり呼び出されて、見ず知らずの人魚に訳の分からないことを言われているだろうに、何時だってこのお方は僕たちを気遣ってくださる!!
光が差した。
もう大丈夫、そう神がおっしゃっているようだった。
「だから怖くないよ」
手と足につけられた手錠は重く冷たい。
冷たい檻の中で、外から聞こえる怒声や悲鳴が響くのはどこか遠い夢の中の出来事のようだ。
僕はきっと大陸に売られてしまうのだろう。檻の中には僕と同じように適当な理由で捕まった人魚の子供が寝き疲れた様子で眠っている。少しでも寒くないようにと、その子のそばに身を寄せる。
ママ…と小さく彼がつぶやくのが聞こえる。
「大丈夫だよ。きっと大丈夫。僕たちがダメになったとしても、きっとそれは礎になるから」
あの、美しい守護天使様はどんな審判を下すのだろう。
僕はその答えを穏やかな気持ちで受け入れると決めた。あの優しい人が決めたことだ。だから大丈夫。
そう自分に言い聞かせる。
ただ心配なのは、ルーカス兄さん。あれから僕と離れ離れになってしまった。人間たちに連れていくなら僕をと名乗ったのはいいものの、果たしてルーカス兄さんは無事だろうか。
でも、ルーカス兄さんは一族の長だからきっと…
「嗚呼、どうか、守護天使様…」
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