断頭台から始まる、やり直し公爵令嬢の再誓

めろんちゃん

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第一章

1.白き断頭台の上で

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銀の器が砕けた音が、まだ耳の奥に残っている。
あれは晩餐会の夜、王家主催の春の舞踏会でのことだった。
祝宴のざわめきと楽団の旋律の中、あの音だけがやけに澄んで響いた。
きっと、あの瞬間に全てが終わっていたのだろう。

そして今、私リシェル=セシリア・ヴァロアはその“終わり”の続きを見ている。
朝靄に包まれた処刑台の上で。

広場に集まった無数の人々が興味と軽蔑の眼差しでこちらを見ていた。
誰もが私を「裏切りの令嬢」「公爵家の恥晒し」と呼び、唇の端を歪めている。
彼らは信じている。この場に立つ私こそが、王国を脅かす悪だと。
しかし、愚かしいのはどちらだろう。
見たいものだけを見て、信じたいものだけを信じる彼らの姿が、滑稽にすら思えた。

玉座の階段の上に目をやると両親の姿が見えた。
父は公爵としての威厳を保ったまま、しかしどこか悔しそうに眉を顰めている。その理由を問う気力すら残っていない。
母は顔を覆い、泣いていた。最後まで私の無実を信じてくれた。1番の理解者だ。こんな別れになって、申し訳ないと思っている。

そして、彼。
セドリック=ラファエル・アルヴァン。この国の第一王子であり私の元婚約者。そして私が初めて恋をしたお方。
淡い金の髪が朝日を受けて輝く。昔はあの光を見るだけで胸が痛くなった。
けれど今、その瞳はもう私を見てはいない。
隣には、私の“妹”…養子として公爵家が迎えた少女。白いドレスに包まれ、震える肩を王子に抱かれている。その頬を伝う涙は完璧で、まるで舞台の幕間に見せる女優のそれだ。
彼女が私を貶め、証拠を偽り、世間からの信用を奪った夜の笑みを、私は忘れはしない。
あの時の笑顔と、今の泣き顔は同じ形をしている。

処刑台の下では、群衆が歓声を上げた。
「悪女に罰を!」「殿下と新しい姫君に祝福を!」
その声が波のように押し寄せ、風が髪を攫っていく。
私は目を閉じ、ゆっくりと息を吸い込んだ。

ああ、冷たい。けれど、その冷たさがこの世界の美しさをより一層際立てた。

血の匂い、鉄の軋み、祈りのざわめき。
世界はいつだって、残酷なほど精巧にできている。
私は俯瞰の中で、その全てをただ見つめていた。

処刑人が無言で剣を構える。
空が、淡く白んでいく。
その光の中で、私はふと思った。

「次があるのなら、今度こそ――」

その続きを言葉にする前に、刃が落ちた。
そして世界は、音もなく崩れた。
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