インドラの箱

夏風涼

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序3

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「ハァハァハァ」
 
 辛い。二度とあやかし達を生かして逃がさないため、地下から絶対に出さないためとはいえ、あまりにも地上には遠すぎる。
 けれども、凍えそうな暗い場所にいながらも、彼が私を握りしめている手の温かさを感じることができ、それは私を落ち着かせてくれる。
 
 もちろん、昂ぶった気持ちを落ち着かせてくれる訳ではない。
 だが、彼と一緒にいるだけで、私はどんなに勇敢にも勇猛にもなれる。
 彼の体温が私に浸透してくればくるほど、あの幸せだった時を思い出す。



「凪紗・・・・・・」
「何?」
 
 そこは草原だった。
 どこまでいっても緑が広がり、軽やかな風に吹かれた草々が波打っていた。
 太陽の光が燦々と地上に降り注ぎ、そこに住む、数々の生命が幸せを感じるような昼下がりだった。

「凪紗」
「だから何?」

「インドラの箱って知ってる?」
「インドラの箱?」

 私は初耳だった。しかし、影縫がとても話したがっていることが見てとれる。

「インドラの箱はあやかしの神の神宝なんだ」
 
 私は立て板に水のように話す、影縫の話に耳を傾けた。
 何故、そんなに私にその話をしたいか分からないが、影縫、いや、あやかしの信仰にとって大事なことなようだ。
 
 それが分かったから俄然、よく聞かなければと思っていたが、しかし、私はその話を聞いて思ったことは、素敵な物ではあるが、とても儚い物だという印象を受けた。
 
 あやかしの神があやかしだけに与える希望。それはとても脆く哀しみを背負う。

「凪紗!!」
 
 私の意識が覚醒した。影縫の声だ。
 私はハッとして、前方に注意を払う。
 もう階段は登りきっていた。
 昔のことが頭によぎって、周りが見えなくなってしまったのだと気づく。
 だが、私は気を引き締める。

「影縫、行くよ」
 
 ここまでは、単に千年殺しから出しただけだ。
 しかし、千年殺しは王都の地下にある。地上にはあやかし狩りが王都を守って巡回している。そのため、私は都の外まで出なければ、救出させたことにはならない。
 
 地上、それも王都はあやかしたちと戦うことを想定して、あやかしは術を使えないように結界が張り巡らされている。
 影縫の翼は使うことはできない上に、治癒能力も使えない。
 
 また都の周りは高い壁に囲まれており、二カ所の門からしか基本出入りできない。
 だから、私は爆弾を設置した。
 ユーロピアン(西方諸国)製の爆弾を壁に設置し、時がくれば壁を壊してくれるはずだ。
 
 影縫が繋いだ手をぎゅっと握る。

「凪紗・・・・・・」
「大丈夫。私に任せて」
 
 影縫は私を信用してくれているようで、私の決意のこもった視線に頷いてくれた。
 
 私と影縫は千年殺しの入り口の両開きの扉を二人で押した。
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