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 「アリア、ミッシェル。王子主催のパーティーへの招待状が二人に届いた。これは、王子の婚約者を探すパーティーでもあるんだ。このパーティーを断れないが王子に気に入られようとはしなくていい。もちろん、王子を気に入ったというのなら、私に出来ることはしよう」


 そう言って、父は私たちに招待状を手渡した。ちゃんと2枚あり、金色のそれは神々しい。

 王子を気に入ったらなんて、父は王族をなんだと思っているのだろうか?と思いつつ、招待状を眺める。
 王子かぁ、会ったことは無いけど、ちょっと前に令嬢と夫人のお茶会で、凄くかっこいいと言ってたなぁ。

 そもそも私たちが普段いるのは王都から馬車で4日ほど掛かるシュタワイナ領だ。海と接しているこの領は、王都に行って帰ってくるだけでどんなに頑張っても一週間は掛かる。

 お陰で王都なんて片手数えるくらいしか行ったことが無いし、いまいち記憶もない。

 令嬢とのお茶会だって、シュタワイナ領の近くの令嬢だからか、歳はバラバラだ。
 なぜか私やミッシェルの周りの令嬢は弟のリトと歳が近い子ばかりで令息や王子についての話はろくにした事がない。
 話すことというか遊ぶことが多かった。私とミッシェルは歳が上だからか、おままごとではよく意地悪な継母やおばあちゃん役をやらされたり、駆けっこでよく追いかけ回った。
 お母様が夫人同士の話で仕入れてくる程度でしか知らないのである。

 「……ミッシェルは王子と結婚したい?」

 取り敢えず、妹に聞く。正直言って王子妃はめんどくさい。最終的には王妃だ。とても大変そう。勝手なイメージでしか無いけど、ちょっとなりたくは無い。

 「私もこのまま新しい料理を考えて、楽しく暮らしたいですわ」
 「そう言うと思ったわ」

 ミッシェルが嬉々として活動するのは好きなことに挑戦することだ。その時の目の輝きようと言ったら、犬を彷彿とさせる。

 「お姉様は?」
 「私もちょっとね……、お父様が仕留めて来なさいと言ったら考えるけど、出来ればミッシェルの料理を食べていたいわ」
 「まぁ、お姉様ったら!」

 ふふふ、と微笑むミッシェルは随分なにやけ顔だった。令嬢有るまじき顔をしている。

 「ま、せっかくの王都ですもの。楽しみましょう」


 こうして、1ヶ月後の王子主催のパーティーに向けての準備と、3ヶ月後の寮生活になる学園入学に向けての準備が始まった。
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