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 「君……」

 ローブを羽織り、フードを被った男の子が口を開く。男の子の紫の瞳と目が合う。

 それと同時に、檻から一段と激しい音が聞こえ思わず視線を戻すと、氷の檻は壊れていた。魔物は私に向かって吠え、氷の破片を払って走ってくる。

 「うそっ! どうしよう!!」

 向かってくる魔物に声を上げる事しかできない。

 と、横で男の子が手を振った同時に魔物は吹っ飛び、周りの植物が蔓の様に伸び魔物に絡んだ。
 しばらく暴れていたが、増えていく蔓に動きが鈍り、ついには魔物は眠るように目を閉じた。

 「え!? 死んだ……?」
 「いや、気絶させただけだよ」

 そんな会話と同時に複数の足音が聞こえてきた。私たちの前に現れたのはローブを被った人たちと騎士の格好をした人たちだった。

 「大丈夫か!」

 慌てたように馬に乗った騎士が口を開く。唖然と見ていると、横の男の子が前に出た。

 「ええ、僕たちは大丈夫です。この魔物は一体どこから?」

 え、私はだいぶボロボロなんだけど。と口を挟めるほど私に冷静さは戻ってなかった。恐怖からか身体は震えていた。

「ああ、この魔物は施設から逃げ出してな」

 ぼんやりと話を聞き流しながら、脚に力を込めるが、立てない。

 今は気絶しているが初めて見た魔物はすごく怖かった。男の子が助けてくれなきゃ私はどうなっていたか。考えていると視界が滲んで上手く息も吸えない。

 「ねえ、君」
 「え、うっわ!」

 声を掛けられたと思ったら思いっきり抱き上げられる。しかも樽のように肩に乗せられ、お腹に肩が食い込んで痛い。

 「い、痛……!」
 「治療室に連れいってあげるよ」

 それは有り難いけど、そこはお姫様抱っことかおんぶじゃないの?

 上手く声が出ず、抗議できないまま歩くたびに揺れて痛む身体に泣きそうだった。



 昨日は本当に散々だった。
 侍女たちに着替えを手伝って貰いながらため息をつく。あれから、名前を聞かれ答えると、治療中に母とミッシェルが迎えに来てくれたが、めちゃくちゃ怒られた。
 護衛も付けずに出るなと言ってるでしょう! と言う母の顔はこの世のものでは無かった。
 こんな目にあったからパーティを欠席出来たりしないかなと思ったけど、母が許すはずもなく。

 「お姉様、行きたくありませんわ……」
 「私もよ、ミッシェル……」

 お腹はきついし、頭は色々乗って重い。首が痛くて今すぐ寝転びたいし、ヒールで脚はふらふらする。
 馬車も乗り慣れていないからかすぐ酔うし、憂鬱で仕方がない。

 「アリア、ミッシェル行くわよ!」
 「「はい……」」





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