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 しかし、それならミッシェルたちは生きてるし、私は王子の婚約者になる気はない。
 別に黒魔術にハマってないし、大丈夫ではないだろうか。

 「甘い! 甘いですわ! お姉様!」
 「甘いって……でも、不正もしていないでしょう? 分からないけど、お父様が不正するほど、お金に困ってる感じでもないし」
 「作中のアリアはヒロインを虐めていた具体的な証拠もないし、魔王を復活させた証拠もないのに、処刑されるのですわ! 過程はどうあれ、結果はお話しと同じようになる可能性もありますわ!」

 たしかに言われてみればそうだが、そんなことになるほどこの国が腐っているとも思わない。とはいえ自分はなにも知らないことも事実だった。

 「あ! そういえばミッシェル、私たちがパーティーで噂されていたのは、ミッシェルの料理がここ王都でお店を出していたからだったわ。お母様に昨日確認したら、私たちが知らないことに驚いていたけど……。お父様がやったのかしらね」
 「え!?」

 お店……? と唖然と呟くミッシェルに頷く。昨日、ミッシェルが寝ていたので、とりあえず近くのカレー屋2号店に行った。早めに来たおかげか空いていて、すぐに座れたが、料理を注文し食べ終わる頃には列を成していた。カレーはいつも家で食べる味と変わらなかった。最後に、店員にここは誰が作ったお店なのかときいたら、「シュタワイナ侯爵家ですよ! この料理はそこの令嬢である姉妹が作ったと言われています。いつか会ってみたいんですよね~!」と言われた。それを聞いていた近くの客が、「シュタワイナ侯爵家はすごい貴族だよなぁ! この間隣国に行った時にも俺がマラバントから来たって言ったら話題になったぜ! みんなに羨ましがられたんだ!」と笑顔で話してくれた。
 まさか、そんなに有名だと思わず、何度も聞き返してしまったが、事実らしい。お礼を言って帰ってきたというわけだ。

 「お姉様! それはなおさら危険では、ありませんか!」
 「危険?」
 「ええ、そう考えると王族からお姉様か私に婚姻の話が出ると思いますわ! お父様のおかげでかなりうちはお金があるようですし、権力もあることになりますわ。王族は取り込みたいに決まってますわ!」
 「そうね、いつのまにか他国でも有名みたいだし、私たち二人が結婚したら流石に国のバランスが悪くなるから、私たち2人で第1王子、第2王子に嫁ぐなんてことはないだろうけど、1人はあり得るかもね……」
 「もしお姉様が婚約者になったら、処刑真っしぐらかもしれませんわ! お姉様死なないでください!」
 「まだなにも始まってませんわよ!」

 勝手に殺さないで!  と叫びつつ、ここまで考えてきたが、頭はすっかり混乱状態だった。ここが物語の世界だなんて信じられない。しかし、ミッシェルが作った料理が前世の世界のものだと聞けば、そうとしか思えなかった。

 「とりあえず、あっちに戻ったらお父様に聞くしかないわ。私の入学までになんとか整理できればいいけど……」

 私たちのため息は思いの外部屋に響いたのだった。

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