乙女ゲームの悪役令嬢は妹に振り回されています！

25

　私と目が合うことにより、ゆっくり近づいてきたエリーは私たちのところに来ると困ったような顔をして口を開いた。

　「キース様、アリア様。ご機嫌よう、あの……お二人どうかされたんですか？」

　その言葉に私はキース様の顔を見た。気づけばキース様の顔がとても近くにあって、目を見開く。
　慌てて勢いよくエリーの横に並んだ。

　「し、失礼しました、キース様。つい熱くなってしまったようで……」
　「こちらこそ、つい話しをできるのが嬉しくてね」

　本当に私は何を呑気に餌付けされていたのだ。気づけば周りからの視線が痛いくらいになっているし。

　「お姉様！」
　「ミッシェル！？」

　こんな視線を集めているところに走ってくるという令嬢らしかぬミッシェルは勇者といっても差し支えない。
　この子心臓強いな。

　「遅れてしまってごめんなさい！　なんとか参加できて良かったですわ！」
　「ええ、良かったわ！　貴方を待っていたの。それではキース様、楽しかったですわ」
　「あっ、キース様！　おひさしぶりですわ！」
　「ああ、今日は楽しかったよ。ミッシェル嬢も楽しんでいってね。エリー嬢もまた」

　そう言って、集団の中に入っていった。どうやら同じクラスの人たちのようである。
　ミッシェルとエリーが挨拶し合うのを見ながら思う。キースは知り合いがあんなにいるのに私とわざわざいるとは、なにか探られているのだろうか。

　「アリア様」

　考え込んでいると、エリーに呼ばれてた。

　「どうしました？」
　「……さっきのお二人はまるで、婚約者のように距離が近かったです。気をつけた方がいいかもしれません」
　「……ええ、そうね」

　やっぱり身分重視。私が侯爵令嬢なおかげで誰もキースと話している間割ってくることは無かったが、キースをはじめとした上位貴族子息を狙ってる令嬢なんてたくさんいる。なにが処刑やら悪い方向に繋がるか分からない。
　気を引き締めなければと意気込んでいると、エリーは私に悩んだ顔をしながら、

　「……あの、キース様はなにか隠しておられます。それがアリア嬢になにか関係があるのかもしれません」
　「……私に関係がある？」
　「ええ、勘ですが……」

　隠しているとは、実は魔導師ということとはまた別のことだろうか。私に関係があることとはどんなことだろう。

　やはり私はなにも知らないから、考えても答えを出せないのだと思う。

　ミッシェルとエリーと一緒に殿下に挨拶をしに行き、すぐに終わったためミッシェルは来たばかりでなんだけど、もう帰ろうかと思い始めた。
　ただ、エリーは知り合いを見つけたらしく、いくらでも待てるので待ってるというと、すぐに戻ってきますから、と行ってしまった。
　ついでにミッシェルもちょっと迷ったふりをして、王族の厨房を見たいですわ！　と面白そうなことを言い、早めに戻ってくると約束して行ってしまった。

　1人になると、なんだか自分が浮いているようである。
　私って友達本当にいないんだな……。
　先に馬車に戻るかと、出入り口の方に歩いていくと、前を塞がれた。

　避けようとすると、相手もこっちに避ける。逆に行こうすると、相手もくる。
　ま、こんな時もあるよね。と立ち止まると、そいつは一歩私に近づいてきた。

　「ねえ、アンタがアリア・シュタワイナ？　ちょっと来て欲しいんだけど」

　早速呼び出しですか！？
　思わず顔を上げると、そこに居たのはこの国の第2王子で、その整った顔をとても歪めて私を見ている。

　え、私なにかした……？

　まさかの初呼び出しは令嬢ではなく、王子だった。