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あの娘には近づくな
あの娘には近づくな①
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楠ノ瀬と過ごした後――。
心地よい倦怠感に苛まれた俺は、いつのまにか眠ってしまったみたいだった。
次に目覚めたとき、俺は自分の部屋にいた。
使い慣れたベッド。
見慣れたインテリア。
見上げた先にはいつもの天井……。
――誰が送ってくれたのだろう?
家の者に聞いて回ったが、誰も彼もが「俺はずっと家にいた」と口を揃えた。
――夢、だったのか?
俺は自分の掌を広げて、見つめた。
あいつの髪の感触が甦る。長くてしっとりとした、楠ノ瀬の髪の感触が……。
――あんなにリアルな夢があってたまるか……!!
俺は何度も何度も自問した。
あれが現実でないわけがない、と。
――だって。
俺の腹の上で柔らかくつぶれた胸の感触も。
貪るように絡み合わせた舌の味も。
そして、俺のものを咥え込んで吸いついたあの唇も。
……何もかも鮮明に思い出せるというのに。
俺はすぐにでも楠ノ瀬に会って確かめたかったが、彼女は翌日から三日間ほど学校を休んだ。
*****
楠ノ瀬が休んでいる間、俺は悶々と日々を過ごした。
家でも学校でも、寝ている時でさえも……。
あいつの艶めかしい肢体が、頭にこびりついて離れない。離れてくれない。
もう一度……。
あいつの白桃のような胸にむしゃぶりつきたかった。肉厚で甘い舌を吸いたかった。そして、ぬめぬめと蠢く生き物のようなあの唇に、全身を這い回されたかった。
俺は何度もあの夜の彼女を思い出しては、自分で自分を慰めた。
しかし――。
久しぶりに登校してきた現実の楠ノ瀬は、俺の記憶の中のあいつとは全く違っていた。
あれ以来、隣のクラスの様子をさりげなく伺うのが俺の日課となっていたわけだが。
窓際の後ろから二番目の席で、頬杖をつきながら窓の外を見つめる楠ノ瀬からは、あの夜の色気も艶めかしさも何も感じられない。
着崩すこともなく規程通りに身につけた制服。
グレーのきっちりとしたブレザーは、あの夜の赤い襦袢のイメージとはかけ離れている。
――いや、そもそも楠ノ瀬はこういう女だった。
表情と口数の乏しい人形のような女。
教室の隅でひっそりと目立たない観葉植物のような女。
それが学校での彼女の印象だったはずだ。
――やっぱり夢だったのだろうか?
現実のあいつを前にすると、わからなくなった。
「直接、確かめるしかないよな……」
放課後。
教室から出てくるあいつを捕まえようと待ち伏せする。
掃除当番に当たっているのか、気怠げにホウキを動かす楠ノ瀬は、なかなか教室から出てこない。
あいつは家が遠い上に毎日送り迎えの車が決まった時間にやって来るから、授業が終わるとすぐに帰ってしまう。
なんとかここで捕まえないと、二人きりになるチャンスはない……。
俺は廊下の柱に隠れて彼女を待った。
「来た……!」
重そうなゴミ袋を手に下げた楠ノ瀬が、教室から出てくる。
行き先はきっと校舎裏にあるごみ捨て場だよな……。
「よしっ」
あそこなら人気も少ないし、二人で話すのにちょうどいい。
俺は廊下をふらつきながら歩く楠ノ瀬の後を追いかけた。
心地よい倦怠感に苛まれた俺は、いつのまにか眠ってしまったみたいだった。
次に目覚めたとき、俺は自分の部屋にいた。
使い慣れたベッド。
見慣れたインテリア。
見上げた先にはいつもの天井……。
――誰が送ってくれたのだろう?
家の者に聞いて回ったが、誰も彼もが「俺はずっと家にいた」と口を揃えた。
――夢、だったのか?
俺は自分の掌を広げて、見つめた。
あいつの髪の感触が甦る。長くてしっとりとした、楠ノ瀬の髪の感触が……。
――あんなにリアルな夢があってたまるか……!!
俺は何度も何度も自問した。
あれが現実でないわけがない、と。
――だって。
俺の腹の上で柔らかくつぶれた胸の感触も。
貪るように絡み合わせた舌の味も。
そして、俺のものを咥え込んで吸いついたあの唇も。
……何もかも鮮明に思い出せるというのに。
俺はすぐにでも楠ノ瀬に会って確かめたかったが、彼女は翌日から三日間ほど学校を休んだ。
*****
楠ノ瀬が休んでいる間、俺は悶々と日々を過ごした。
家でも学校でも、寝ている時でさえも……。
あいつの艶めかしい肢体が、頭にこびりついて離れない。離れてくれない。
もう一度……。
あいつの白桃のような胸にむしゃぶりつきたかった。肉厚で甘い舌を吸いたかった。そして、ぬめぬめと蠢く生き物のようなあの唇に、全身を這い回されたかった。
俺は何度もあの夜の彼女を思い出しては、自分で自分を慰めた。
しかし――。
久しぶりに登校してきた現実の楠ノ瀬は、俺の記憶の中のあいつとは全く違っていた。
あれ以来、隣のクラスの様子をさりげなく伺うのが俺の日課となっていたわけだが。
窓際の後ろから二番目の席で、頬杖をつきながら窓の外を見つめる楠ノ瀬からは、あの夜の色気も艶めかしさも何も感じられない。
着崩すこともなく規程通りに身につけた制服。
グレーのきっちりとしたブレザーは、あの夜の赤い襦袢のイメージとはかけ離れている。
――いや、そもそも楠ノ瀬はこういう女だった。
表情と口数の乏しい人形のような女。
教室の隅でひっそりと目立たない観葉植物のような女。
それが学校での彼女の印象だったはずだ。
――やっぱり夢だったのだろうか?
現実のあいつを前にすると、わからなくなった。
「直接、確かめるしかないよな……」
放課後。
教室から出てくるあいつを捕まえようと待ち伏せする。
掃除当番に当たっているのか、気怠げにホウキを動かす楠ノ瀬は、なかなか教室から出てこない。
あいつは家が遠い上に毎日送り迎えの車が決まった時間にやって来るから、授業が終わるとすぐに帰ってしまう。
なんとかここで捕まえないと、二人きりになるチャンスはない……。
俺は廊下の柱に隠れて彼女を待った。
「来た……!」
重そうなゴミ袋を手に下げた楠ノ瀬が、教室から出てくる。
行き先はきっと校舎裏にあるごみ捨て場だよな……。
「よしっ」
あそこなら人気も少ないし、二人で話すのにちょうどいい。
俺は廊下をふらつきながら歩く楠ノ瀬の後を追いかけた。
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