禁じられた逢瀬

スケキヨ

文字の大きさ
67 / 100
観月祭

観月祭①

しおりを挟む
 観月祭かんげつさいは夕方から始まった。

 まずくすのき神社じんじゃわらべまい巫女みこまいが奉納される。
 この儀式は誰でも見ることができるので、神社は町の人で賑わっていた。

 俺はS高の連中に楠ノ瀬とのことで何か言われやしないかとヒヤヒヤしていたが、幸い誰にも話しかけられずに済んだ。

 そもそも中高生ぐらいの人間はあまり来ていない。

 みんな子供の頃は親や祖父母に連れられてやって来るが、大きくなるにつれて参加者は減っていく。格式ばった町の伝統行事に参加する十代が少ないのは仕方ないのかもしれないけど……。

 俺は少しの寂しさを感じながら、神社の境内にしつらえられた舞台へと目を移した。

 巫女舞の舞人はあやちゃんだった。

 大ぶりな鈴を両手に持ってしずしずと舞うおしとやかな姿は、いつもの勝気なあやちゃんからは想像もつかない。

 観客のざわめきも静まって、みんな、あやちゃんの舞姿に見入っているみたいだった。

 静かな山の神社に、シャンシャンという清冷な鈴の音が響く。
 鈴に沈みかけた夕陽が反射して、あやちゃんの姿がまばゆい金色の光に包まれていた。





 やがて夜が更けて、空に白々とした大きな満月が昇ると――。

 神社では町の人たちによる酒盛りが始まる。
 そして限られた人間だけが残りの神事を執り行うために「聖域」へと向かうのだ。
 限られた人間というのは、つまり楠ノ瀬くすのせ家と高遠たかとお家の直系の人間ということである。

 楠ノ瀬家と高遠家――昔は同じ氏族だったという二つの家が協力し、秋の満月の下で神様をもてなすのが祭の目的だ。

 俺は慣れない装束と草履に苦労しながら、祖父さんと父さんの後について「あの場所」へと歩いていった。

 もちろん楠ノ瀬も一緒だ。
 緊張のためか、唇を固く引き結んでいる。
 ばかま千早ちはやを纏ったその姿は神々しくさえあり、声をかけるのも憚られた。

 十一月の山頂は、清澄な冷気に包まれてひんやりと寒い。

 俺は祖父さんの指示に従って薪をくべ、火を焚く手伝いをした。
 甘い芳香を放つ泉のほとりでパチパチと火がぜる。焚き火の明かりが、翡翠色の泉を浮かび上がらせた。泉の真ん中には空に浮かぶ大きな月がゆらゆらと映りこんでいる。

 俺たちは焚き火を取り囲むように胡坐を組んで座った。
 火から少し距離を取る男衆を横目に、楠ノ瀬の婆さんが一歩前へ出る。
 婆さんが腰を下ろし横笛を構えたのを合図に、儀式が始まった。

「あ…………っ」

 笛の音に合わせて姿を現した楠ノ瀬の姿に、思わず声が漏れる。

 ――楠ノ瀬は、ほとんど何も身につけていなかった。

 肌も透けるような薄い羽織をかろうじて一枚身に纏っているだけで、やわらかな体の線が丸わかりだ。

 寒さのせいか、緊張のためか……楠ノ瀬の胸の先端はすでに固く尖っていた。

 楠ノ瀬は月の光と焚き火の明かりに照らされながら、緩やかに動き始める。
 素朴な笛の音に合わせて、まるで神をおびき出すかのように、くびれた腰と豊満な尻を淫らにくねらせた。

 だんだんと笛の音のテンポが速くなるにつれて、楠ノ瀬の動きも激しさを増してゆく。後ろで束ねた長い黒髪が体の動きに合わせて左右に振れる。

 恍惚の表情を浮かべて、ふるふると胸を揺らす楠ノ瀬の様子は、俺の上で乱れる時と全く同じで……。

 俺は、自分の体が熱くなるのを感じた。
 

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

清掃員と僕の密やかな情状

MisakiNonagase
恋愛
都心のオフィスビルで働く会社員の26歳・高城蓮(たかぎれん)。彼の無機質な日常に唯一の彩りを与えていたのは、夕方から現れる70歳の清掃員・山科和子だった。 青い作業服に身を包み、黙々と床を磨く彼女を、蓮は「気さくなおばあちゃん」だと思っていた。あの日、立ち飲み屋で私服姿の彼女と再会するまでは――。 肉じゃがの甘い湯気、溶けゆく氷の音、そして重ねた肌の温もり。 44歳の年齢差を超え、孤独を分かち合った二人が辿り着いた「愛の形」とは。これは、一人の青年が境界線の向こう側で教わった、残酷なまでに美しい人生の記録。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...