禁じられた逢瀬

スケキヨ

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監視者

監視者③

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「…………ぁ」

 驚きの声が喉の奥で絡まった。

 言葉をなくした俺を見て満足したのか……梢江こずえ先生の琥珀こはく色の瞳が三日月みたいに細められる。

 淡い金色の光を放つその瞳に見つめられて――俺はその場に縛りつけられた。動けない。

「……ぁ…………ぁ…………っ」

 俺は地面に叩きつけられた金魚みたいに口をパクパクさせることしかできなかった。

「私の力は大したものじゃないけど、」

 先生は俺の目をじっと見つめたまま、自分の黄金きん色の目を見開いた。

「このまま、君の呼吸を止めることくらいなら、できるかもしれない」

「…………っ」

 喉が鳴った。
 宵闇よいやみの音楽準備室に、ごくりと息を呑む俺の浅い呼吸の音が響いた。

「まぁ今回は『警告』だけに留めておいてあげるから。君は自分の置かれた立場をよく考えなさい。……高遠たかとお家の跡を継ぐというのは、そういうことだからね」

 梢江先生はそう言うと、掴んでいた俺の胸倉を乱暴に突き放した。

……っ!」

 反動で後ろ向きに倒れこむと肩を強く打ち付けてしまう。

「今度は小規模な地震だけじゃ済まないかもしれない」

 痛みに顔をしかめる俺に、先生の冷酷な声が降ってくる。

「忘れるな……君たちはすでに一人殺している」

「…………ぇ」

 深まった夜の闇に、先生の黄金色の瞳が炯々けいけいと光った。

 ――すでに一人殺している。

 先生の言葉が胸を刺した。

 それは先日の地震で亡くなったお婆さんのことなんだろうか。

 ということは――

「やっぱりあの地震は……神様が、やったのか……?」

「そうだ。少なくともうちの家の人間はそう考えている」

「神様が、怒っているのか……? 俺たちのことを」

 ――あの日。

 ガタガタと震えながら謝っていた楠ノ瀬くすのせの姿が頭に浮かぶ。
「神様を怒らせた」と言って泣いていた彼女の姿が……。

「ああ。だからこうして伝えに来たんだ。お前たちのママゴトみたいな恋愛ごっこが、他人ひとの命を奪うこともあるということを……」

 念を押すように降ってくる先生の硬い声に、俺の顎がガクガクと震えた。なくなってしまった命の重さが、現実のものとして、のしかかってくる。

「……そんな……なんで、」

 俺はただ楠ノ瀬が……きよちゃんが好きなだけだ。
 楠ノ瀬だって、困っている俺のことを助けたいと思ってくれただけなんだ。

 ――なのに。

 なんで俺たちのささやかな想いが、誰かの命を奪わなきゃならないんだ……?

 俺の目から、じわりと涙がしみ出した。


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