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第1章
第7話 アマンダさんと食事
「へへ!ここだぜ!」
アマンダさんに案内をされてたどり着いた建物の入り口には、腹ペコのあなぐま亭と書かれている。どうやらここが、彼女が行きつけにしている食堂らしい。扉をくぐって店内に入ると、腹ペコのあなぐま亭は、テーブル席がいくつか用意された雰囲気のいい食堂であった。
「いらっしゃいませー!」
17歳位のかわいい女の子の店員が、愛想のいい接客で俺たちに対応をしてくれる。昼飯の時間より少し早めにたどり着いたので、店内には俺たちの他にお客さんが二組しかいない。これならすぐに食事が出来そうだ。
「注文はどうしますか?」
「私は今日の昼飯セットを。アマネはどうする?ここのランチはおいしくて安いから、私はこれをオススメするぜ!」
「俺も今日の昼飯セットをお願いします」
「かしこまりましたー!」
店員の女の子が、厨房へ俺たちの注文を伝えにその場を離れる。俺とアマンダさんは、会話をしながら食事が来るのを待つことにした。
「ここの昼飯は量が多くて美味くて安いんだよ。それに大きな通りから少し離れてるから、早めの時間に来ればあまり混雑してない状態で食べられる。この店に来るまでの道が分からなくなったらまた案内してやるからな!」
「ありがとうございます!」
この店に来るまで、冒険者ギルドから細い道をぐねぐねと通った。アマンダさんいわく、近道らしい。俺は一回で行き方を覚えられなさそうだと困っていたので、ありがたい提案だった。食後の帰り道は大きな通りを通って、この店までの覚えやすい道を覚えておくのもいいかもしれない
「おまたせしましたー!」
注文をしてからアマンダさんと会話をしていると、すぐに俺たちの昼飯が運ばれてきた。女の子の店員さんが両手に持つ木のランチプレートに乗りやって来たのは、鶏肉のようなステーキと、野菜がたっぷりと入ったスープにパンのセットだった。この世界の肉の種類が分からないので、見た目が似ている鶏肉を例えに出しておく。
「これは――うまい!……はむっ!はむっ!」
「だろ~」
はらぺこのあなぐま亭で食べた昼食は、メチャクチャにうまかった。ステーキの食感も、まさに鶏肉だ。
俺がはむはむと食べている鶏肉のステーキの上には、玉ねぎのような野菜をみじん切りにしたものと茶色のソースが掛かっていて、その味付けが絶妙に美味しい。多分、果物系のソースだろう。
そのソースが、お皿としてランチプレートに乗せられた鉄板の上でステーキごとジュージューと湯気を立てていて、いい香りが俺の食欲を刺激するのだ。しかも、ステーキがデカイ。
俺は夢中になって、腹ペコのあなぐま亭の料理にかぶりつくのであった。
俺がありついている今日の昼食は、しっかりと濃い目の味付けがしてある。一般的な食堂でこの味付けが食べられるということは、この世界の食事事情はそれほど悪くはないらしい。
香辛料も塩も高価で、料理に味付けがないみたいな世界ではなくてよかった。俺は自分の幸運を喜ぶ。せっかくだし、これから、この世界の名物料理を食べ歩いてもいいかもしれないな。
「そうだ!アマネの冒険者証を見せてくれよ!」
食事を終え一息をついた段階で、アマンダさんが俺の冒険者証を見たいとお願いをしてくる。俺は特に気にすることもなく、手に入れたばかりの冒険者証を彼女に見せてあげることにした。
「Gランク冒険者か。アマネ。何か困ったことがあったら、遠慮なく私に言ってくれよ!」
実はアマンダさんも、俺と同じく冒険者なのだ。アマンダさんは新人だった頃の自分を思い出したのか、懐かしいものを見るように俺のGランク冒険者証を眺めている。先輩として彼女は、困ったことがあったら俺に助け舟を出してくれるそうだ。素晴らしい先輩である。
「アマネは魔法使いなのか。じゃあ、私のパーティーメンバーの魔法使いに、冒険者としての心得を教えてもらうのもいいかもな!」
「いいんですか?是非、お願いしたいです!」
冒険者証に記載された職業欄を見て、俺の戦い方が魔法使いだと知ったアマンダさんが、彼女の仲間の魔法使いに冒険者としての戦い方を教えてもらうといいと提案をしてくれる。
俺は冒険者に登録をする際に、自分の職業を魔法使いと記載していた。戦いなど今までしたことのない俺には、遠距離攻撃が合っていると思ったからだ。
平和な国から転移をさせられた俺には、戦い方なんて一切、何も分からない。だから、渡りに船とばかりに俺はアマンダさんの提案に乗らせてもらうことにする。それといい機会だし、俺は彼女の冒険者証をお返しに見せてもらうことにする。アマンダさんがどんな冒険者なのかも気になるしな。そう思い立った俺は、彼女に言葉をかけた。
「アマンダさんの冒険者証も見せてもらってもいいですか?」
「ん~、いいけど……」
少し渋り始めたアマンダさんに彼女の冒険者証をみせてもらうと、なんと、そこにはAランク冒険者と記載がされていた。アマンダさんは、実は凄腕の冒険者だったらしい。
「へー!アマンダさんってすごいんですね!」
「……アマネは私がAランクの冒険者だって分かったら、顔色をうかがいだしたり、逆に恐れ多いって離れていったりしないのか?」
しかし、Aランクの冒険者だと知っても彼女への態度を変えない俺に、アマンダさんが恐る恐るといった様子で質問をしてくる。どうやらアマンダさんは、自分がAランク冒険者だとバレることで、俺の態度が変わってしまうかどうかが不安だったようだ。
確かに、新人のGランク冒険者が凄腕のAランク冒険者に出会うというのは、社会に出たばかりの新入社員が、年収1億くらいのビジネスマンに出会うようなものなのかもしれない。
急に、媚びたり変にかしこまったりと、そういう態度に変わってしまう人にアマンダさんはこれまで何度も出会ってきたのかもしれないな。だから、俺もそうなってしまうのではないかと、彼女は不安だったと。
「大丈夫です!俺も、すぐに追いつきますから!」
「――ははは!冒険者はそうでなくっちゃな!……気に入った!アマネ、今から飲みに行こうぜ!」
俺がアマンダさんの不安を払拭させるようなことを宣言すると、元気を取り戻した彼女から酒場に行こうと誘われる。まだ昼すぎだが、アマンダさんは今からお酒を飲みたい気分のようだ。
「え~、まだ昼過ぎですよ~」
「うっせ!いいんだよ!」
俺はアマンダさんと近くの酒場に入り、お酒を飲みながら他愛もない話をしていく。すると、あっという間に夕方過ぎの時間になってしまった。もうすぐ、日も沈みそうである。
「今から宿屋を探すのも大変だろうし、せっかくだ、私の家に泊まるか?一軒家だし、特に困るようなことも起きないぜ?それに、こんな時間までアマネを連れ回した私にも責任があるからな!」
するとアマンダさんが、彼女が所属する冒険者パーティーが住んでいるという一軒家に、俺を招待してくれることになった。
彼女は、田舎から出てきたばかりの俺に行くところもないだろうし、しばらくその家に泊まっていいとも言ってくれている。今の時間から宿屋を探すのは大変だと思っていたところだから、本当にありがたい提案であった。
こうして俺は、アマンダさんの所属する冒険者パーティーの所有している一軒家に、お邪魔することになるのであった。
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