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第2章
閑話 高校生たちの冒険
ソラ視点
私たち高校生勇者「退魔忍者」の4人組は、エルドス帝国のはずれにある小さな村へとやって来ていた。帝国から依頼があったためだ。
私たちの目的は、最近この村の周囲に発生するようになったアンデッドの討伐と、その原因の調査と解決をすることである。
エルドス帝国に課せられた、一通りの基礎訓練を終えて戦う術を身につけた私たち高校生勇者は、今は実践経験を積むとの名目で帝国内へと散らばり、様々なトラブルの解決をさせられていた。
なんだか帝国に都合よく扱われてしまっているような気もするけど、目の前にいる困っている人を放ってはおけない。私たちは人々を救いながら、帝国についても調査を続けていくことにしていた。
「皆さん。お疲れではないでしょうか?」
でもここで、私たちに新たな出会いがあった。それで、私たちはツイてるということにしよう。
私たちは、アンデッドの異常発生事件を解決するためにこの村に訪れてきていた、リンネさんという女性と知り合ったのだ。実は同い年だということもあって、すぐに私たち4人は彼女と友達になり、今はリンネちゃんと気軽に呼ばせてもらっている。リンネちゃんも、自分と同い年の友達が欲しかったと喜んでくれていた。
そして、リンネちゃんはなんと、聖女と呼ばれるすごい存在だった。
聖女と言っても公のものではなく、高い治療魔法の能力とアンデッド浄化の技術を持つ彼女は、国々を旅しながら病気や怪我をしている人に救いの手を差し伸べており、その慈愛とやさしさから、気がついたら民草の間で聖女と呼ばれるような存在になっていたらしい。
リンネちゃんを見た村の人々が聖女様だと騒いでいて、最初は何事かと思った。
そんなリンネちゃんは、旅をしている途中にアンデッドが異常発生している村があるとの噂を聞き、私たちとは別口で原因を調べるために村にやってきたのだそうだ。
「ここが、発生源ですね」
アンデッドが出す瘴気を見ることができるというリンネちゃんの先導で、私たちは村の近くの湖にある小さな小屋へとたどり着く。リンネちゃんいわく、この小屋の中から禍々しい瘴気が漏れ出てきているとのことだ。
そして、その瘴気の発生源をたどっていくと、私たちは小屋の中に隠された地下へと続く、怪しげな階段を発見することになった。
リンネちゃんが言うには、地下室を隠すように閉じられた床の隙間から、おぞましい瘴気が漏れ出続けているらしい。私たちは慎重に地下室に続く階段を閉じてある蓋を開けると、警戒をしながら中に下りていく。
「……タスケテェェェ」
地下室の中には透明なゴースト系モンスターがあふれかえっており、苦しそうにうめき声をあげていた。今にも私たちに襲いかかってきそなくらいに、地下室は緊張感に満ちている。
「みんな!気をつけて!戦闘開始よ!」
「……みなさん。少しだけ、待ってもらってもいいですか?」
しかし、迎撃体勢を取る私たちの前に出たリンネちゃんが、私たちを静止するとゴーストたちに向かって優しい言葉をかけ始める。彼女は少しだけ、私たちに戦闘を待ってほしいのだそうだ。
そして、リンネちゃんは慈愛の祈りとともに、浄化の魔法を唱え始めた。私たちは彼女の魔力によって彩られていく、心が洗われるように美しい聖なる魔法に見とれながら、アンデッドたちの襲われないようにと警戒を続けていくことになる。
「もう大丈夫ですよ。安らかにお眠りなさい」
「……アリガトウ」
優しい光が暗い地下室を明るく照らすと、一瞬で、地下室を満たしていた鳥肌が立つような瘴気を帯びた空気とアンデッドたちが浄化されていく。リンネちゃんが、浄化の呪文を唱え終わった瞬間の出来事であった。
リンネちゃんが聖女と言われるのもうなずける、納得の浄化能力と慈愛である。
「さて、行きましょう」
「ええ!もう、モンスターと人の気配は何もないわ!」
アヤノの持つ探索スキルに引っかかるような生物やモンスターも、もう地下室には存在しないらしい。地下室は完全な無人になったようだ。私たちは一応不意の事態に備えながら、それぞれ地下室内を探索していく。
そして、しばらく調査をした結果、地下室にあった牢屋の中に押し込められたおびただしい数の人骨と、リビングルームのような場所で死亡している男女5人の遺体が見つかることとなる。
「どうやら、彼らは被害者のようです」
私たちは地下室の中にあるテーブルの上に、実験レポートと書かれた日記を発見することとなった。その日記を読むことで、私たちはこの場所で、どのような非道がなされていたかを知ることになる。
この地下室では密かに、秘密結社キマイラという組織によって非道な人体実験が行われていたようだ。その実験の内容は、各地から誘拐してきた人をアンデッド化して、休憩の必要ない奴隷として利用できないかというものだった。
その実験が失敗したことで地下室に瘴気が満ち、秘密結社キマイラの工作員と被害者が死亡することになる。地下室で見つけた5人の遺体は、逃げ遅れた工作員のようだ。そして地下牢に乱雑に置かれた人骨は、秘密結社キマイラが実施した非道な実験の被害者のものだった。
さらには地下室の他にも、村近くの湖の中にも被害者の人骨がゴミのように投げ捨てられているのを、私たちはその後の調査で見つけることになる。この村の周囲に、アンデッドが異常発生するようになった原因はそれだった。最悪の結末である。
私たちは、地下室にあった人骨と湖に不法投棄された遺骨を浄化して回るリンネちゃんの後を歩き、ただ祈りの捧げることしかできなかった。
リンネちゃんは、優しい言葉を掛けながら秘密結社キマイラの工作員の遺体も分け隔てなく浄化をすると、被害者の遺骨とは遠く離れた別の場所に埋葬をしてあげていた。お互いに近くにいると、安らかに眠れないでしょうからと彼女は教えてくれる。私たちもそれを手伝い、長い時間をかけて地下室にあったすべての遺体を埋葬した。
一応、これでこの村でのアンデッド異常発生の事件は解決ということになる。でも、なんだか納得ができない私の心には、こんな非道なことをする組織は絶対に許せないという気持ちが、怒りとともにあふれてきていた。
「こんなひどいことをする組織なんて、絶対に許せない!」
「ええ!最低よ!」
それには、ルナやアヤノとシズネちゃんも、同じ意見だったようだ。
私たちの目標の一つに、秘密結社キマイラについて調べるという目標ができる。こんな非道な実験を、世界各地で組織的に行っているなんて絶対に駄目だ。自分勝手だとわかっているが、私たちにはそんな組織がのさばっていることが許せなかった。
「私たちにできることは限られているけど、やれるだけのことはやりましょう!」
私たちの当面の目標は、強くなること。この世界では、強くならなくては何もできない。生き残れなければ、それで終わりの厳しい世界だ。この前、私たちが苦戦した、仮面を付けた爆乳魔族を倒せるくらいの実力がなくてはダメだろう。それが第一目標。まず、私たちが生き残るのが最優先。
そして次に、勇者として各地で困っている人を助ける。私たちはできる限り、目の前にいる助けることができる人たちは助けたい。だから、これが第二目標になる。
それと並行して、エルドス帝国の調査と秘密結社キマイラの調査もする。特に秘密結社キマイラの調査は長い時間がかかるだろうし、潰すのにはもっと長い時間がかかる。敵は大きい組織だ。焦っても良いことはない。私たちの危険が増えるだけだ。でもこれが、第三目標。
これらを同時にこなそうとするとすっごく忙しくなるけど、当面の目標ができたことで、私たちは心に強い気力を感じることができていた。
もちろん、最初の目標であったスウェット姿の男の子への差し入れも忘れてはいない。私たちのアイテムボックスに、あの時の料理が大切に保管されている。いつか彼にも、差し入れをすることができるといいな。
「リンネちゃん。もう行っちゃうの?」
「ええ。救いの手を待っている人々はたくさんいますから。それではみなさん。また、どこかでお会いしましょう」
村の調査も終わり、私たちがエルドス帝国の帝都に帰ることになると、世界各地を旅しているリンネちゃんともお別れをすることになった。この世界に来てから初めてできた友人との別れに、私たちは悲しい気持ちになる。
彼女はこの村と同じように、困っている集落や人々を助けるための旅を続けるそうだ。
でも私たちは、リンネちゃんの連絡先を手に入れることができた。この世界には魔導板というスマホと同じものがあって、魔力を使って通話もメッセージのやり取りもすることができる。だから、寂しい気持ちも少し和らぐ。
それに、私たちはリンネちゃんと、今度街で会えたら一緒にお茶でもしようと約束もしていた。
「絶対に、また会おうね!そしたらケーキを食べながら、恋バナでもしましょう!」
「うふふ。ぜひ、お願いしますね」
慈愛に満ちた優しい笑顔をしたリンネちゃんと別れ、私たち退魔忍者の4人は帰路へと就く。悲しい事件があったけど、嬉しい出会いもあった。複雑な思いの中に、達成感を感じながら私たちは街道を歩く。
「秘密結社キマイラ!あなた達の悪事は、全部まるっとお見通しよ!」
「お姉ちゃん、また変なこと言ってる……」
「ルナ、いちいちソラに突っ込まない!」
「ソラちゃんって、いきなり面白いこと言うよね~」
次の私たちには、どんな出来事が待っているのやら。こうして、私たちの異世界での一日が過ぎていくのであった。
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