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第2章
第33話 レイチェルをナンパ
「こんにちは~」
大通りから少し路地裏に入り、人気のない細い道で俺はレイチェルに声をかける。ここが俺の調査により判明した、彼女をナンパするためのベストスポットだ。
レイチェルは、実はかわいいものが好きである。でも、男勝りな姉御のように振る舞う自分がそういったものを愛でている姿を周囲に見られたくないのか、彼女はこうして定期的に皆に隠れるようにして人気の少ない通りのお店で雑貨や小物を物色していた。
そして今は、通りに俺たち以外誰もいない。この状況は、人の目を気にするレイチェルをお持ち帰りできる数少ないタイミングなのだ。
「――ああ!何だお前は?」
人気のない通りで突然声をかけた俺に対して、レイチェルが威嚇するような態度で返答をする。彼女はかわいい雑貨を物色する自分の姿を、誰にも見られたくない様子だった。
「――ちっ、何だ坊やか。お姉さんと話していると怖いお兄さんが来ちゃうから、さっさとどこかに行きな!」
成人したばかりに見える若い姿の俺の姿を見て、レイチェルが素っ気なく追い払おうとしてくる。言葉遣いは乱暴だが、彼女は初対面の俺をやさしく気にかけてくれているようだ。
レイチェルはコロシアムの人気者であるが奴隷でもあるため、実は厳重な監視を受けていた。彼女に安易に声をかけるような男は、コロシアム側に雇われた暴力を生業にするものによって強制的に排除される。彼女はそのことを、俺に対して心配してくれていた。
しかし今は、かわいい雑貨を買う姿を誰にも見られたくないレイチェルが監視の目を撒いてしまっている。つまりはしばらくの間、こうして俺が彼女と会話をしていても誰にも邪魔されることはない。
だから今のタイミングが、本当に最高のタイミングなのだ。
「実は、お姉さんがすごくかわいかったので、つい声をかけてしまいました……」
「――は?!――私がぁ?か、かわいい???」
俺は挨拶代わりに繰り出した褒め言葉に、レイチェルが突然取り乱しながら慌てている。彼女はこういった言葉を言われ慣れていないのか、坊やだと下に見ていた俺に対してポーッと恥ずかしそうに顔を赤らめていた。
(あれ?これは、イケるのか?)
俺はそんな予感を感じながら、レイチェルとの会話を続けていく。
「お、お、お前!そういうお世辞は、簡単に言うもんじゃない!」
「お世辞じゃないです。本当です!」
「……はひぃ」
金色の髪をしたレイチェルの赤く澄んだ瞳を真剣に見つめながらかわいいと褒める俺に、彼女がついにはひるんでしまう。何やらこれは、俺が予想していた展開とは少し違うようだ。
どうやら俺の見た目が、姉御肌な彼女の庇護欲をくすぐるように若いことも影響しているらしい。それに男勝りの彼女は、実は異性からのアプローチに慣れていなかった。この状況をチャンスと見た俺は、このままレイチェルをナンパしてお持ち帰りするために行動を開始する。
「よかったら、俺と少しお茶しませんか?」
「すまねぇ。私には恋人がいるんだ」
俺がレイチェルをお茶に誘うと、今度は丁寧な態度に変わった彼女にあっけなく断られてしまうことになる。うーん。やはり何だかんだ、彼女は誠実だ。
レイチェルは律儀に、恋人との関係を守り続けている。ここは卑怯だが、彼女の持つやさしい性格を利用することにしよう。そう考えた俺は寝取りスキルの直感に従うと、今のレイチェルに対して一番効果的な言葉を発していった。
「お姉さんにお茶をしてもらえなかったら、実は人生を諦めようと思ってました。何も上手くいかない俺の、勇気を出した最後の挑戦だったんです。でも、これで踏ん切りがつきました。ありがとうございます!」
最低だが、姉御肌で面倒見のいいレイチェルの親切心を利用するのだ。普通の女性ならいきなり見ず知らずの男にこんな責任を押し付けられても逃げるだけだが、ダメ男に引っかかってしまうタイプのレイチェルならきっと俺のことを放っておけないと距離をつめてくるだろう。罪悪感はあるが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
「――待てって!おい!」
情に流されてしまったレイチェルが、どんよりと暗い雰囲気を出しながらその場を立ち去ろうとする俺を引き止めてきた。これはイケる。そう思った俺は、困り果てたような顔をしている彼女へのナンパを続行していく。
「……たく、今日だけ。それに、みんなには秘密だぞ?」
ついには俺を放っておけなくなったやさしい心を持つレイチェルが、俺とお茶をすることを受け入れてしまう。こうして少しずつ、俺は彼女の貞操を壊していく予定だ。
「私も有名だから、ひと目がないところがいいな……」
今のレイチェルは渋々としながらも真剣な態度で、俺とどこでお茶をするかを考えてくれていた。すでに彼女の頭の中には、俺からの誘いを断るという選択肢が消えている。
誠実な性格のレイチェルは、自分の言葉を反故するのが嫌いだ。だからこれは、好機である。そう感じた俺は彼女の弱点にもなる真面目だという長所につけ込むようにして、さらに悪魔の提案を重ねていった。
「あそこはどうですか?休憩所って書いてありますよ?」
「――ばっか野郎!お前、あそこは!」
俺が一切の罪悪感もなく指差した場所を見て、突然レイチェルが慌てだす。俺が指定したお店の看板には「休憩。二時間銀貨二枚」とだけ書かれていた。その看板を見て、彼女は混乱しながら言葉を濁したのだ。
俺がレイチェルをこの場所でナンパした理由は、これが大きかった。この場所ならひと目のない場所で彼女に声をかけた後すぐに、個室にベッドがある休憩所へと突入することができる。
有名人であるレイチェルと、街中でデートなんてできない。そんなことをしたら俺は様々なトラブルに巻き込まれるし、ましてや大勢の人の前で彼女をお持ち帰りするなんて絶対に無理だ。
しかし、この場所なら「レイチェルが警戒を解く」「ひと目がない」「すぐに個室に移動できる」という全ての問題を解決できるのだ。まさに、奇跡の立地条件である。
すでに俺とお茶をすることを了承してしまったレイチェルの意識は、どうやって俺とお茶を成立させるかを考えることしかできなくなってしまっていた。つまりあとは、彼女の心に安心感と言い訳を用意すればいい。そうすれば、俺はレイチェルを休憩所へと連れ込める。
ナンパしたレイチェルをお持ち帰りするまで、俺はすでにあと一歩のところまできていた。
「え?……休憩所じゃないんですか?お茶も飲めますって、あそこの看板に書いてありますけど」
俺はあくまで無知であるふりをして、単純な個室の休憩所だと勘違いした風にレイチェルとの会話を続けていく。こうして無知を装い、彼女の心から警戒心を取り除くのだ。
絶対に、ここで下心を出してはいけない。それでは警戒した彼女を、あそこの休憩所まで連れ込めないからな。俺は細心の注意を払いながらも、自分の提案を押し通していく。
「……はぁ?!……まじかよ」
年下で若い俺の素っ気ない態度を見て、レイチェルが苦い顔をしながらどうしようかと考えていた。彼女は自分の強さに自信を持っている。まさか格下に見ている俺に、コロシアムでスターな自分が戦いで負けるなんて思わないだろう。
そして今の俺は、レイチェルから見たら無知だ。
「たく、しょうがねーなー。これだから坊やの相手は……」
そんなことを言いながら自分の安全を計算し始めたレイチェルの心から、みるみる警戒心が解けていく。俺は黙って、彼女からの返答を待った。
「……はぁ。まぁ、いっか。私がお前に、襲われるわけもないだろうしなぁ」
そうポツリとつぶやくと、ついにレイチェルは俺からの提案を受け入れてしまうことになる。恋人に一途であった彼女の心が、流された瞬間だ。
「よし。わかった!お姉さんと、あそこでお茶をしようか」
「いいんですか!?やった!」
無知な坊や相手なら何もされないだろうと高をくくってしまったレイチェルが、俺からの提案を許可してくれる。こうして俺はレイチェルをナンパして、個室にベッドが用意されたとある目的で恋人たちがよく利用している休憩所へと彼女を連れ込むことに成功するのであった。
「いいか。絶対に誰にも言うなよ。ここは女の人を、気軽に誘っていい場所じゃないんだ。私が特別に、やさしくしているんだからな」
「はい!」
なんだかんだ、レイチェルはやさしい。休憩所に入りながら、無知な俺に対してやさしくマナーを教えてくれている。面倒見のいいお姉さんの顔になった彼女と、俺はそのまま会話を続けていった。
「絶対に、何もしないって約束できるか?」
「――はい!絶対に何もしません!」
ひと気がない通りに建設された休憩所へと無事にチェックインを済ませた俺とレイチェルは、二人で並んで個室へと入っていく。二時間だけという約束で、ついに俺は防音設備もバッチリな室内で彼女と二人っきりになった。
この部屋で俺は、レイチェルを寝取る。
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