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第3章
第43話 みかじめ料
「みかじめ料を、取りにきたのじゃ!」
俺がのんびりとしたスローライフを送るある日、宿屋のカウンターに一人の女の子があらわれる。
白い髪をツインテールにした青い瞳のちびっ子が、白いドレスを着て笑顔でみかじめ料を要求していた。
(あ、やばい)
彼女を見た瞬間に、俺は異世界にきて一番の危機を感じる。身長140センチメートルくらいの小さな女の子だが、その能力は凄まじかった。
ステータス鑑定
レーネ 古龍種(※人化中)
能力値
測定不能
俺が白いドレス姿の女の子を鑑定した結果には、能力値が測定不能と記載されていた。彼女の正体は、人化したレーネという名前の古龍らしい。
今は能力を隠しているが、古龍レーネは人化した状態でも俺たちの中でぶっちぎりに強いユルハさんを小指で倒せるくらいに強いのがわかる。この異世界には、強い生き物がどれくらい存在するというのだ。めちゃくちゃすぎるだろ!
どうやら俺がダンジョンを建設したことで、ここら辺一体を縄張りにしているレーネがみかじめ料を要求しにきたようだ。つまり対応を間違えれば、俺の宿屋が消滅する。
「こちらへどうぞ」
「うむ!わかったのじゃ!」
そのことをいち早く察した俺は、彼女をすぐさまスイートルームへと案内することにした。都合のいいことに、今日はお客さんが誰もいない。人化したレーネの対応に集中できる。
他の女の子もレーネが出すプレッシャーに緊張しているが、彼女の能力をうまく測りきれない様子だった。
どうやら古龍レーネは、高い隠蔽スキルを持っているみたいだ。その辺りからも、彼女が単純に強いだけではなく戦闘技術もはるか高みに達していることが推し量れる。
レーネをスイートルームへと案内しながら、宿屋の中では仲間たちが不測の事態に備えていった。
「うまいのじゃぁ!」
――パクパクパク!
スイートルームに案内したレーネに対して、俺はみかじめ料としてとある物を提出する。それは、お子様ランチだ。
ハンバーグ、エビフライ、オムライス、プリンの乗った特製のランチプレートを見たレーネは、瞳をキラキラと輝かせながら料理にぱくついている。どうやら彼女は、お子様ランチを大変お気に召したらしい。さすが、チート大国ニホンの食事である。
「うむ!しかと受け取ったのじゃ!」
そして食後のクリームソーダを美味しそうに飲み干しながら、レーネが満足そうにうなずく。俺から贈られたみかじめ料に、レーネはとてもご機嫌であった。俺は無事に、この危機を乗り切ることができたようだ。
これで機嫌を損ねた古龍に、宿屋を破壊されるという悲劇は起こらないだろう。そう考えて安心した俺は、ホッと胸をなでおろす。
「腹を満たしたら、ちと動きたくなった。お前、相手をせい」
(――何で今なんだよ!家に帰ってから、自由に暴れてくれ!)
しかし何のきまぐれか、攻撃的な態度に変わったレーネが突然俺と勝負をしたいと言い出した。どうやら俺はまだ、この危険を乗り越えていないらしい。
「ひさしぶりに、美味いものを食べさせてもらえたからのう。わらわが、特別に相手をしてやる!」
(……これだから、戦闘狂は嫌なんだ。この世の生物全員が、戦いが好きだと思っていやがる)
ドヤ顔をし始めたレーネが、ふざけたことを宣言しながら今まで体内に抑えていた魔力を解き放っていく。するとスイートルームの中には、重力が歪んでしまったような空気が急激に充満していった。まるで、重い魔力に全身が押しつぶされていくような感覚だ。
古龍レーネが、自分の能力を披露し始めていく。そして彼女の魔力はあっというまに宿屋全体に広がり、不測の事態に警戒をしていた仲間たち全員を行動不能にしていった。
「……ぐっ……なにこれ」
すでに俺以外のみんなは、レーネが放つ強すぎる魔力のプレッシャーによってその場からまったく動けなくなっている。強さが上位すぎる生物に出会うと、近くにいるだけでも動けなくなるという話は本当だったようだ。
「ほう、お前。わらわの魔力の中を動けるのか。これは楽しみじゃ!」
唯一、莫大な魔力のプレッシャーの中で自由に動ける俺の姿を見て、レーネが舌なめずりをしながら嗜虐的に笑っている。俺は寝取りスキルのおかげで、魔力によるデバフはいっさい受け付けない。そのおかげだった。
俺はレーネと一対一で向かい合うこの状況を、どうやって乗り越えるかを懸命に考える。純粋な戦いでは、まったく彼女には敵わないだろう。
そして冷や汗を垂らしながら成り行きをうかがう俺に対して、レーネが楽しそうに口を開く。どうやら彼女に、何か提案があるらしい。
「何の勝負をするかは、お前に選ばせてやるとしようかのう」
余裕そうな態度を見せながら、レーネが俺に向かって勝負の方法を選ばせてくれると宣言する。古龍である自分の実力に対して圧倒的な自信を持っている彼女は、ハンデとして俺に勝負方法を決めさせてくれるようだ。
できれば彼女との勝負を回避したいが、それは許してもらえないらしい。レーネの攻撃的な立ち振る舞いが、俺を絶対に逃さないと物語っている。
こうなったら、あれしかないか。
「では、密室で俺と一対一で戦ってもらいます」
「ほう!わらわと、誰の助けもなしに一対一で戦うと申すか!」
人化した古龍レーネ対してとある勝負方法を提示した俺は、彼女と試合をするための特別会場へと向かう。強力なレーネの魔力に押しつぶされて動けなくなってしまったみんなには、その場に残ってもらった。
今からする勝負は、できれば誰にも邪魔されずに二人っきりで行ないたい。そのためには、静かな密室が必要である。
これから俺がレーネに挑む勝負は、激しい体のぶつかり合いが予想されるからな。大きな音が出ても、周囲に聞こえない配慮が必要だろう。
そんなことを考えながら、俺は宿屋の中を歩く。当のレーネは一対一で戦いたいを提案する俺にワクワクとしながら、試合会場に案内されて俺のあとをついてきていた。
そして俺たちは、宿屋の中にある特別な部屋へとたどり着く。ここが俺と彼女が、今から全身を使った生の勝負をする場所だ。
「ここで、俺はあなたと戦います」
「ほう。不思議な場所じゃな!ピンク色の明かりが部屋の中で光っていて、壁と天上に大きな鏡がついておる!さて、何して戦う?」
特別な試合会場に指定した部屋に入ると、俺はレーネと一対一で向かい合う。
「俺は魔力リンクによる、純粋な戦闘を欲します」
「ほほう!魔力量が膨大なわらわに、魔力リンクで勝負を挑むとはおもしろい!ではお前の魔力を、このレーネが受け止めてやるとしようか!」
……
……
……
……にゅうううううううん♡
「……あっ♡……あっ♡……くぅぅぅ♡……えっ♡……うそっ♡……イク♡」
ヒク♡ヒク♡ヒク♡
俺と人化した古龍レーネの、とある勝負が始まった。
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