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第3章
第45話 高校生たちの発見
ソラ視点
「何これ!しょうゆじゃない!」
ある日、帝都の市場をうろついていた私は叫んだ。市場の片隅に、しょうゆを発見したからだ。この世界にやってきてからニホン食を一度も食べていなかった私は、つい大声を出してしまう。
私と同じくニホン食に飢えていたアヤノやシズネたちも、私の言葉を聞くとあわてて走り寄ってきた。それくらいに、私たちは異世界で見るニホン製品に驚いている。
そんな私たちの焦った態度を見て、帝都内の市場を一緒に歩き回っていたグレオールとロイの二人も興味津々な顔で私たちに話しかけてきた。
「ショーユとは、勇者の国の調味料だったか?」
「たしか竜人族の里の特産品ですが、帝国ではあまり数が出回っていませんね」
ここにきて異世界にしょうゆがあるという新事実にも驚きだが、今はそれどころではない。
だって帝都の市場で見かけたしょうゆは、明らかにプラスチックのボトルに入っている。さらにパッケージにはニホンのブランドである、カッケーマンとも書いてあった。
つまりは、この世界のどこかでニホンの製品が手に入るということだ。そのことに気づいた私たちは、しょうゆの入手先を売り場の店主に聞いてみる。
「おじさん。このしょうゆは、どこで手に入れたのですか?」
「た、たしか新しく発見されたダンジョンで手に入るって話だが……」
異世界でニホンの商品が手に入るという奇跡の事態に、ニコニコ顔のルナが率先してとんでもないプレッシャーを放ちながら店主のおじさんに話しかけていた。いつもほんわかとしている、ルナにしては珍しい態度だ。それくらいに、彼女も必死だということだろう。
「ダンジョン!この異世界に、ニホンの商品が手に入るダンジョンがあるっていうの!?」
「これは、攻略しにいかなければならないわね!」
でもこれで、しょうゆの入手先がわかった。この異世界で、ニホンの製品が手に入るダンジョンが最近になって発見されたらしい。とんでもないラッキーである。
ニホン製品が、ダンジョンに行けば思う存分に手に入ると聞いた私とアヤノが色めきだつ。これはぜひにでもそのダンジョンを攻略して、ニホンの商品を大量にゲットしなくてはならないわね。
しかし、そんなウハウハな計画を立てる私たちに対して、慎重派のシズネが待ったをかけた。こういうときに一歩引いて冷静な考え方ができる彼女は、退魔忍者の中でできごとを分析する貴重な役割を担当してくれている。
「でも帝国の許可無くダンジョンに出かけたら、後々トラブルにならない?今から申請しても、ダンジョンに行くまですごく時間がかかりそう……」
「うう……そうだった……」
シズネがうんざりとした顔で発した言葉に、私たちは帝国から押し付けられた嫌なルールを思い出す。
実は私たちを操り人形にしたい帝国は、高校生勇者の行動を厳重に管理していた。なんと私たちは、帝都から外に出るために書類を提出しなければならないのだ。
しかもその書類作成がこまかくて面倒くさいし、揚げ足取りみたいな不備を見つけては再提出を要求されまくる。さらには、書類審査にとんでもない時間がかかるという最悪な代物だった。
だから私たちは、基本的に帝国の依頼を受けることでしか外には出れない。他は完全に、帝都内に閉じ込められている。
この世界に戸籍がない私たちを保護するためという名目を使って帝国はいい人の顔をしているが、高校生勇者を手元に都合よく置くためだということは明らかだった。
「ぐぬぬぬ!どうしようかしら……」
帝国に押し付けられたルールなど無視してもいいのだが、そうすると連帯責任と称して高校生全体に対する帝国からの嫌がらせが始まる。実に陰湿だ。
そうなってしまうと、帝国に従順になることで手に入る様々な利益を享受している側の高校生たちが怒り狂う。自分が楽しんでいるハーレムのような環境を、一時的に取り上げられることになるからだ。
数少ない、同郷のもの同士がいさかいを起こすのは良くない。それに高校生勇者の中には、街に住む平民は勇者である特別な自分たちのために犠牲になって当たり前という考え方を持つ人間もちらほら出てきている。
そんな他人を見下し、自分がまわりに特別扱いされることが当たり前になってしまった彼らからハーレムを取り上げたら、そのあと街でどんな悲劇が起きてしまうかわからない。
そういうトラブルに悩みながらも私たちがどうすればいいかを話し合っていると、グレオールとロイが救いの手を差し伸べてくれる。そのときの二人は、まさに輝いて見えた。
「それなら、俺たちに任せな!上手いこと、書類を通しておくから」
「ええ。それと、僕たちも少し遅れて向かいますから。ダンジョンを一緒に、攻略しましょう」
なんとグレオールとロイが帝国貴族の特権を使って、私たちの外出申請書類を通してくれるというのだ。
さらには帝都内の学園に通う彼らは近々行なわれる学期末テストを終えてから、少し遅れて私たちと一緒にダンジョンの攻略をしてくれるとも言っている。今の私たちには、ありがたい優しさだった。
「ありがとう!」
「ソラのためなら何でもするよ。だから、俺と結婚をしよう」
「いいや、ソラ。君のために何でもできるのは僕さ。だから、僕と結婚しよう」
相変わらず私へのプロポーズ攻勢は続くが、私は彼らの思いやりと親切に感激してしまっていた。
グレオールとロイの話によると、勇者である私たちがダンジョンに潜ると宣言しても危険だという理由で基本的には許可が下りないようだ。帝国はあくまで私たちを、自国の兵士として利用しようと考えている。
だからここで、グレオールとロイが偽物の依頼を私たち退魔忍者に出してくれることになった。これで私たちは、大手を振って帝国の外に出ていくことができる。
もちろん、他の高校生勇者のみんなにも迷惑はかからない。
さらには帝国貴族直々の依頼だということで、私たちには他の任務をすっぽかしてでもその依頼を達成する義務が課されることになる。帝国内には、そういう嫌なルールがたくさんあった。
でも今回は、その制度をうまく利用することで私たちが外出できるようになったというわけだ。まさに、帝国貴族さま様である。
グレオールとロイが、私たちのために立ててくれた計画はこうだ。まず彼らが、とある貴重な調合素材の入手という名目で帝国に偽物の依頼を出してくれる。それも、退魔忍者への指名依頼つきだ。
もちろん、帝国貴族からの依頼だということで、私たちにその依頼を拒否する権利はない。すぐにでも、出発する必要がある。
そうやって偽物のクエストに出発した私たちは、途中で目的地を変えることでダンジョンへと向かう。こうすることで、帝国からの監視の目をごまかす目的があった。
見つけにくい貴重な素材を探すという名目で私たちは長期間ダンジョンを探索することができるし、周囲に危険なモンスターが多く生息する場所での依頼とされているため帝国の監視もついてこれない。
だから私たちは、帝国内の誰にもバレることなくダンジョンへと向かうことができる。
依頼主であるグレオールとロイは口裏を合わせてくれるし、任務完了についても偽物の受領書をあとで彼らが提出してくれる。
帝国貴族の中でも上位の存在である彼らが出す書類に、文句を言える人間など現場にはいない。だから少しぐらい不備なところがあっても、今回の計画は権力によってゴリ押すことが可能だ。
二人のおかげで私たちは、無事に外出許可を手に入れることになった。そしてあっというまに、私たちが偽のクエストに出発する当日である。
「それじゃあ二人とも、行ってくるわね!」
「ソラ。くれぐれも、俺以外の男と浮気するなよ?」
「ああ、ソラ。僕以外の男と、絶対にベッドをともにしてはいけないよ」
「そんなことしないわよ!年齢イコール彼氏いない歴の私の防御力を、ナメないでよね!」
ダンジョンに向かうことを隠すために、私たちは帝都をこっそりと出発する。そんな私たちを、グレオールとロイは心配そうな顔で見送りにきてくれた。
そのときにおかしなこと心配してくる二人と変な約束をしてしまったが、私たちはグレオールとロイに感謝の挨拶をするとすぐさまダンジョンへと旅立っていく。
「てりやき、豚汁、お蕎麦、ラーメン。食べたいものをあげだしたら、きりがないわね!」
「プリンにケーキ、パフェなんかも忘れちゃいけないわよ!」
私たちはダンジョンに向かう旅の道中、これから手に入るであろうニホン製品のことを思い浮かべてワクワクとしながら食べたいものを語り合った。
ダンジョンで手に入れたニホンの商品は、高校生勇者のみんなにもお土産としてたくさん配ろう。そんなことを、道すがら私たちは楽しく会話する。
「待ってなさいな!ニホンの商品たち!」
こうして私たちは、帝国に秘密でとあるダンジョンへと旅立つことになった。
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