トワイライト・ラブ(陽炎)

流理(ルリ)

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トワイライト・ラブ(陽炎)

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東京で英一に再会して、一週間が経った。
美紀は、英一に会いたくなって
「とても会いたいので東京に行く」とメールした。
美紀は、自分でもおかしくなったのか、英一への気持ちがどんどん素直になってきていて、一週間経っても余韻が残っていて、さらに会いたくなる気持ちが抑えきれないでいた。
英一はすぐに
「もちろん大歓迎ですよ!東京に来ていただけるなら、またゆっくり会いましょう」と返事をした。
英一は、どこで会おうかと考えながら、美紀の気持ちがますます自分に寄り添ってきていることを実感し、嬉しさがこみ上げた。

美紀からは、迷惑にならない様に行くけど、もしダメなら来月にしましょうかと返事がきた。
英一はすぐに返信した。
「迷惑なんてとんでもない。美紀さんに会えるなら、いつでも大歓迎ですよ。でも無理して来るのじゃなくて、美紀さんの気持ちとして本当に会いたいと思った時に来てくださいね。」
英一も嬉しかった。里美さんは遠くから来てくれるので、日時は全て合わせますとメールした。
「ありがとう英一さん。そう言ってもらえて嬉しいです。じゃあ、さっそく今週末に行こうかな。詳しいことはまた相談させてね。」
英一も返信した。
「了解しました。予定が決まったらすぐ教えてくださいね。楽しみに待っています!」

美紀と、品川駅で待ち合わせした。
英一は品川駅の新幹線改札口の前で、美紀が来るのをじっと待っていた。
大勢の人が行き交う中、心なしか胸が高鳴る。時刻は約束の時間を少し過ぎた頃。スーツケースを引くビジネスマンや旅行客が続々と改札を出てくるたびに、英一は目を凝らして美紀の姿を探した。
しばらくして、見慣れた笑顔が人ごみの中に見えた。美紀はトランクと、いつものように小さなバッグを肩にかけ、少し恥ずかしそうに、でも確かな足取りで英一に近づいてきた。
「お待たせしました。」と、笑顔で言った。
英一も笑顔で、
「来てくれてありがとう。」と優しく声をかけた。
美紀は出張を一日多くした事にして、英一に会いに来たのだった。

美紀は名古屋に出張ついでに、東京に来た。
いつも美紀が来てくれるので、ちょっと悪い気がしていたが、美紀からは
「私が勝手に、押しかけてくるので気にしないでね」と、言った。

品川駅は、月曜日だけど、多くの人が急ぎ足で行き交って熱気を帯びていた。英一は、たまに来るためか息苦しなって、早くこの場所を離れたかった。

「美紀さん、この前と同じところのお寿司で良いですか」と、聞いた。
「はい。良いですよ。」と言ったので、人込みの息苦しさから抜け出すため、エスカレータで駅ビルの上に向かった。
お店に着いて、美紀のために生ビールを頼んだ。少し飲んだがこの前と同じく美味かった。
英一は、何故かこの店の生ビールは美味しいと思った。
美紀との再会だから美味しいのかもと、思っていた。

二人は久しぶりの再会を喜び合って、スペイン旅行などの話で盛り上がった。
でも、会話はどこか上の空で、お互いの視線がふと重なるたびに、心が早鐘を打つのを感じていた。食事を終えると、英一はそっと美紀に目配せして「行きましょうか」と声をかけた。

美紀も小さくうなずき、二人は自然と早足になってホテルへと向かった。東京の5月の外の風は生暖かかった。二人は、はやる気持ちを抑えきれずにいた。          
前回のホテルに入ったら、何と昼間なのに満室で、ロビーで待っている人がいた。恥ずかしいので直ぐに出て、たくさん立ち並ぶホテル街まで歩いて来て、最初の目に入ったホテルに入った。ここは4時間まで同じ料金だった。
ホテルの部屋に入るなり、英一と美紀は言葉もなく強く抱き合った。扉が閉まる音も忘れて、二人はそのままベッドに倒れこむようにして重なり合った。

前回は、お互いに少し遠慮があった。でも、今日はこれまで募らせてきた想いが一気に溢れ出し、お互いを求める手は止まらなかった。年齢を忘れるかのように、ただ相手の存在だけが全てで、むさぼるように唇を重ね、求めあい、心も身体もひとつに溶け合っていった。

どれほどの時間が経ったのだろう。熱気が残る部屋の中で、二人は静かに抱き合ったまま、やがて少しずつ落ち着きを取り戻していった。
このホテルは、滞在時間が4時間もあり、英一は今まで2時間と制限されてきたホテルばかりだったので、今時はこんなホテルもあるんだと思い、急ぐ必要が無いので、ゆっくり出来ると思った。
英一は、美紀の肩を優しく撫でながら、話を聞いていた。しばらく会えなかったこれまでの時間を埋める様にイロイロ話をして、里美は楽しそうに声を出して笑った。

ふとこれまで触れられなかったことを思い出した。ずっと胸に引っかかっていた。美紀の過去はおおよその事は聞いていたけど、思い切って、「美紀さん…無理にとは言わないけど、家庭のことを少し聞かせてくれませんか」と、言った。

美紀は少しだけ体をこわばらせ、目を閉じた。しばらく沈黙が流れた後、小さく首を振って、
「今は…まだ話せない。心の中が、ぐちゃぐちゃで…」と絞り出すように答えた。英一はそれ以上聞かず、美紀を抱きしめた。ただそっと背中をさすりながら、「大丈夫、無理しないで。話したくなった時で良いんですよ」とだけ囁いた。
美紀は、「もうDVは無いから、安心して」と、だけ言った。

英一の、やさしさとぬくもりに身を任せ、目を閉じた。英一の深い思いやりが、少しだけ彼女の心を和らげていくようだった。そして、またお互い身を寄せ合い愛し合った。英一は、身体の心配をしていたのだが何とか復活して、美紀が絶頂に達するのを確認したので役割を果たしたと少し安堵していた。
美紀は、「そんなことは気にしない。英一さんの顔を近くで見て一緒にいるだけで良いの」と言いながらも、英一にとっては、年齢的にも最も重要な事だった。

ホテルに入ってから既に3時間になっていたので、英一はそろそろ出ましょうかと、言った。二人の名残惜しい時間が過ぎて、別れの時が来た。
美紀は前回とは少し違っていた。

ホテルを出て、美紀に
「サングラスは、もうかけないの」と聞いたら、
「持っているけど、今日はもう良いの」と答えが返って来た。そして美紀から
「今度は、ゆっくりお酒を飲みましょう。そしてカラオケもしたい」と言ったので、
「そうしましょうか。楽しみにしています。」と、言った。そして、
「私、少し変わったでしょ!」と言ったので、
「そうですね。少し慣れて来たみたいですね。」と、言ったら
「私、苦しかった辛い過去は消えないから仕方ないけど、これからは少しづつ普通を取り戻そうと変わって行くの」と、言って微笑んだ。

美紀を品川駅まで見送った。
この時は、お互いに普通に暖かく通じ合ったものを感じながら美紀は、
「明日の名古屋でのお仕事を頑張る」と改めて自分に言い聞かせる様に、笑って手を振った。

英一は、美紀を改札で見送ってから、まだ多くの人々が行き交う熱気のある品川駅の長い通路をゆっくりと歩いて、湘南行きのホームに向かった。
英一は、疲れが出て頭の中に何かがよどんでいた。
電車は通勤ラッシュだったが、とにかく座りたかった。

美紀と別れてから、またメールのやり取りの日常に戻った。
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