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序章.美しき想い出
6.狩人 ボーゼス・マクフォドルその2
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「次だ、被害者たちはどんな時間帯にどんな場所で被害に遭った?」
地下牢から出て開口一番にボーゼス様はさらに詳しく状況説明を求めてきますね、やはり仕事に真面目な……真面目すぎる方のようです。
「……最初は深夜の路地裏や橋の下など暗い場所で起きていました」
「……最初は?」
「それが、最近では深夜というのに変わりはありませんが大通りなどでも被害が出始めて……」
そうなのよね、最近では犯行が大胆になってきているのよね……けれど不可解なのは首を浅く切られただけとか、腹部や足を刺されただけとか、今までと比べて被害の程度が低い気もするのよね……。
「……あぁ、おそらく『共感』したのだろう」
「……共感、とは?」
「魔物の『願望』や『目的』という強い思念の伴った魔力に一般人が当てられて、同じような行動に出てしまう……いわば模倣犯のようなものだな」
共感……例えばある魔物が『肉が食べたい』という『願望』によって産まれ、長いこと同じ場所に留まると、その魔物から発せられた魔力に乗った魔物の根源とも言うべき思念に当てられて、周囲の人間が『人肉だろうが構わず肉を食べ始める』ということらしい……。
「『共感者』が出たということは……産まれてから大分時間が経っているな」
「……それだと、やはり不味いのですか?」
「あぁ、人の欲望や願望に際限などないからな……一時満たされれば加速度的に次も次も、さらにより多くと被害が増えるぞ」
……まさか、さらに被害が増えるだなんて……それどころかその共感者たちも魔物予備軍として殺されてしまうのかしら?
「……アリシア嬢、安心しなさい。共感しただけでは魔物予備軍とは言えない」
「っ! ……そう、ですか」
どうやらこちらの表情から考えていることが読まれてしまったようですね、気を付けないとクレルの事もバレてしまうわ。
「……ただ、このまま放っておくと処分しなければならなくなるのも確かだ」
「っ?! ……で、では」
「安心しなさい、そうならないために私が派遣されて来た」
「……はい」
そうなのね、共感者たちも今はまだ平気なだけでいずれは……時間が経ちすぎれば魔物予備軍として扱われるのね。
「では早速──あれはなんだ?」
「? どれですかな?」
どうしたのかしら? ボーゼス様が急に立ち止まり、指を指した先には──
「あぁ?! あなたまたクレルを殴ってるわね?!」
「げっ、やっべ!」
「げっ、やっべ! じゃないわよ!」
ま~たディンゴがクレルを殴って虐めていたわ! もう! クレルも少しは反撃すればいいのに!
「大丈夫? クレル……」
「ぼ、僕は大丈夫だよ……それよりもお客様が来てたんじゃ?」
「あっ!」
ま、不味いわ……どうやってクレルを隠し通すか考えていたのに、うっかり飛び出してきてしまったわ……どうしよう……。
「アリシア嬢、そちらは? 見たところガナン人のようですね」
「あ、これは……その……」
どうしよう……頭が真っ白になっちゃってなにも言い訳が思いつかない。
「……ボーゼス様、こちらの少年がなにか? ガナン人というのがなにか関係が?」
「……田舎では貴族であろうとろくに教育を受けていられないと見える。……先ほど地下牢で話したように、魔法使いは全てガナン人だ……ガナン人しか魔法を行使できない」
「つまりこいつが……」
「ち、違うわ! 彼は魔法使いではないの!」
「……アリシア?」
早くなにか言い訳を、彼を助ける言い訳を考えないと……なにか……なにかないの……? お父様とボーゼス様の私に向ける視線が段々と険しくなって来て、恐怖で震えてしまう。
「……アリシア、狩人が来たのなら仕方ないよ、君の立場まで悪くなってしまうよ」
「クレルは黙ってて!」
庇わなくていいと伝えてくるクレルに小声で怒鳴る。……そんな、クレルを見捨てるなんてできるわけないわ! どうにかして彼が魔法使いでないと──
「──おい、クレル! なにかは知らないけどお前が魔法使いな訳ねぇだろ!! 魔法が使えるんなら今ここで飛んでみろよ!」
「ディンゴ……?」
何を言っているの? 今はそんな時ではないし、ここで彼に魔法を使わせようとするなんて……いや、まさか?
「そんな、空なんて飛べるわけないだろ?」
「なんだと? お前旦那様やお客様に嘘ついたのか! こうしてやる!」
「痛い! 痛いよ! どうしていつも同じところばかり殴るのさ!」
これ、は……止めるべきなのかしら?
「ふん! 俺に殴られた痣すら治せないのに魔法使いを自称するからだ! いいか? この辺にしといてやるが二度と嘘つくんじゃないぞ! わかったな?!」
そう言ってディンゴは物凄い勢いで逃げていく……見ればお父様とボーゼス様も呆気にとられているわね?
「……って、あの子またクレルのこと殴って! 大丈夫? すいません、お父様、ボーゼス様、途中で抜けることをお許しください」
「あ、あぁ……私は構わないが」
「あのディンゴとやらには私からお仕置きしておこう、アリシアはその子を医務室に連れて行ってあげなさい」
「ありがとう存じます、では……クレル行くわよ」
「う、うん……?」
クレルは未だに状況について行けてないけど、大丈夫。なんとかお父様とボーゼス様を誤魔化す事ができたわ、癪だけれどこの時ばかりはディンゴに感謝しなくちゃいけないわね?
「……クレル、これから少し話せる?」
「……別にいいけど?」
「そう、ならよかったわ」
とりあえず、話をする前にクレルを治療しなくちゃいけないわね……。
▼▼▼▼▼▼▼
地下牢から出て開口一番にボーゼス様はさらに詳しく状況説明を求めてきますね、やはり仕事に真面目な……真面目すぎる方のようです。
「……最初は深夜の路地裏や橋の下など暗い場所で起きていました」
「……最初は?」
「それが、最近では深夜というのに変わりはありませんが大通りなどでも被害が出始めて……」
そうなのよね、最近では犯行が大胆になってきているのよね……けれど不可解なのは首を浅く切られただけとか、腹部や足を刺されただけとか、今までと比べて被害の程度が低い気もするのよね……。
「……あぁ、おそらく『共感』したのだろう」
「……共感、とは?」
「魔物の『願望』や『目的』という強い思念の伴った魔力に一般人が当てられて、同じような行動に出てしまう……いわば模倣犯のようなものだな」
共感……例えばある魔物が『肉が食べたい』という『願望』によって産まれ、長いこと同じ場所に留まると、その魔物から発せられた魔力に乗った魔物の根源とも言うべき思念に当てられて、周囲の人間が『人肉だろうが構わず肉を食べ始める』ということらしい……。
「『共感者』が出たということは……産まれてから大分時間が経っているな」
「……それだと、やはり不味いのですか?」
「あぁ、人の欲望や願望に際限などないからな……一時満たされれば加速度的に次も次も、さらにより多くと被害が増えるぞ」
……まさか、さらに被害が増えるだなんて……それどころかその共感者たちも魔物予備軍として殺されてしまうのかしら?
「……アリシア嬢、安心しなさい。共感しただけでは魔物予備軍とは言えない」
「っ! ……そう、ですか」
どうやらこちらの表情から考えていることが読まれてしまったようですね、気を付けないとクレルの事もバレてしまうわ。
「……ただ、このまま放っておくと処分しなければならなくなるのも確かだ」
「っ?! ……で、では」
「安心しなさい、そうならないために私が派遣されて来た」
「……はい」
そうなのね、共感者たちも今はまだ平気なだけでいずれは……時間が経ちすぎれば魔物予備軍として扱われるのね。
「では早速──あれはなんだ?」
「? どれですかな?」
どうしたのかしら? ボーゼス様が急に立ち止まり、指を指した先には──
「あぁ?! あなたまたクレルを殴ってるわね?!」
「げっ、やっべ!」
「げっ、やっべ! じゃないわよ!」
ま~たディンゴがクレルを殴って虐めていたわ! もう! クレルも少しは反撃すればいいのに!
「大丈夫? クレル……」
「ぼ、僕は大丈夫だよ……それよりもお客様が来てたんじゃ?」
「あっ!」
ま、不味いわ……どうやってクレルを隠し通すか考えていたのに、うっかり飛び出してきてしまったわ……どうしよう……。
「アリシア嬢、そちらは? 見たところガナン人のようですね」
「あ、これは……その……」
どうしよう……頭が真っ白になっちゃってなにも言い訳が思いつかない。
「……ボーゼス様、こちらの少年がなにか? ガナン人というのがなにか関係が?」
「……田舎では貴族であろうとろくに教育を受けていられないと見える。……先ほど地下牢で話したように、魔法使いは全てガナン人だ……ガナン人しか魔法を行使できない」
「つまりこいつが……」
「ち、違うわ! 彼は魔法使いではないの!」
「……アリシア?」
早くなにか言い訳を、彼を助ける言い訳を考えないと……なにか……なにかないの……? お父様とボーゼス様の私に向ける視線が段々と険しくなって来て、恐怖で震えてしまう。
「……アリシア、狩人が来たのなら仕方ないよ、君の立場まで悪くなってしまうよ」
「クレルは黙ってて!」
庇わなくていいと伝えてくるクレルに小声で怒鳴る。……そんな、クレルを見捨てるなんてできるわけないわ! どうにかして彼が魔法使いでないと──
「──おい、クレル! なにかは知らないけどお前が魔法使いな訳ねぇだろ!! 魔法が使えるんなら今ここで飛んでみろよ!」
「ディンゴ……?」
何を言っているの? 今はそんな時ではないし、ここで彼に魔法を使わせようとするなんて……いや、まさか?
「そんな、空なんて飛べるわけないだろ?」
「なんだと? お前旦那様やお客様に嘘ついたのか! こうしてやる!」
「痛い! 痛いよ! どうしていつも同じところばかり殴るのさ!」
これ、は……止めるべきなのかしら?
「ふん! 俺に殴られた痣すら治せないのに魔法使いを自称するからだ! いいか? この辺にしといてやるが二度と嘘つくんじゃないぞ! わかったな?!」
そう言ってディンゴは物凄い勢いで逃げていく……見ればお父様とボーゼス様も呆気にとられているわね?
「……って、あの子またクレルのこと殴って! 大丈夫? すいません、お父様、ボーゼス様、途中で抜けることをお許しください」
「あ、あぁ……私は構わないが」
「あのディンゴとやらには私からお仕置きしておこう、アリシアはその子を医務室に連れて行ってあげなさい」
「ありがとう存じます、では……クレル行くわよ」
「う、うん……?」
クレルは未だに状況について行けてないけど、大丈夫。なんとかお父様とボーゼス様を誤魔化す事ができたわ、癪だけれどこの時ばかりはディンゴに感謝しなくちゃいけないわね?
「……クレル、これから少し話せる?」
「……別にいいけど?」
「そう、ならよかったわ」
とりあえず、話をする前にクレルを治療しなくちゃいけないわね……。
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