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第四章.救えない
6.尾行
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「……そちらはどうかしら?」
『問題ないであります!』
様子を確認するべく尋ねれば、適当な時計塔に登らせたシーラ少尉から無線で返事が返ってくる。……頂上の鐘がある部屋、そこの窓から距離を取って、反対側の壁に接する様に置いたテーブルの上でうつ伏せになり、対戦車ライフルと化した『猟犬』のスコープから私と対象の魔法使いの子どもを見張っていてくれる。
……本当はあまり距離を離れての行動は良くないとは思うけれど、何あった時に狭い路地等で二人並んでの戦闘は厳しいし、むしろ遠くから援護狙撃してくれた方が逃走率も上がる。単独の方が相手から発見される確率も下がるし……何よりも、シーラ少尉が突っ走って相手を殴りに行きかねなかった……というのが大きいけれど。
「そう、こっちも今のところ問題はないわ」
『ウィーゼライヒ市』のガナリア区を襲撃した疑惑が掛けられている人物がどこへ向かうのか……もしかしたらマークしていない肥沃する褐色の大地の別の拠点を突き止められるかも知れないと尾行しているこちらにも問題は無く、一先ず安堵する……シーラ少尉を一人にするのは酷く不安なのよね。
『ふぁ~……ではこのまま続行するであります!』
「ちょっと待ちなさい、あなた今欠伸をしたでしょ?」
やっぱりシーラ少尉にじっと動かず、変わり映えしない景色を観察し続けるというのは難しかったかしら? ……でもシーラ少尉の『猟犬』が一番監視をしながら、私や相手に何かが起きた時に対処できて、これ以上ない適任だったのよね。
『し、してないでありますよ! これぽっちも! 全然!』
「……何かあったら大変なんだから、しっかりしなさい?」
『もちろんでありますよ!』
はぁ~、一応この子って私よりも階級が上で先輩なのよね……扱いに困るわ。……もう既に上官に対する態度ではないけれど困るわ。
「……本当にわかっているのかしら?」
『ホントホント! シーラは天才なので!』
本当に調子が良いわね……もしも事態が急変して、何かが起きた時に『寝てました!』は通じないんだから。
「念の為にこのまま無線を繋げておくわね」
『え』
「何か問題でもあるの? 寝れないとか」
『無敵のシーラにそんな問題など……ないのです!』
繋げたままの無線から聞こえてくるシーラ少尉の声に呆れながら、対象の幼い魔法使いの後を尾ける……一見何も武器を持たず無防備に見えるけれど、どこに仕舞っている何が『供物』なのか判らないし、最悪自身の身体の一部を『対価』として魔法を行使できるから全く油断が出来ない。
「……どこまで行く気よ」
先ほどから男の子は入り組んだ路地裏を宛もなく彷徨うかのように歩き回るばかり……もしかして尾行に気付かれた?
「……もう来たのか?」
「っ! ……」
一瞬だけ自分に話し掛けられたと思ったけれど違ったようね……ビックリさせないで欲しいわ? こっちはシーラ少尉みたいな鋼の心臓を持っていないんだから。……まぁあの男の子の声じゃくて、大人の男性の声だったから、落ち着いて聞いていれば変な勘違いもしなかったんだけれど。
「お前らのボスが呼んだんだろうが?」
「あー、そうだっけか? 覚えてねぇや」
「……」
ここは入り組んだ路地の突き当たり、ではないわね……頭の後ろを掻きながら首を捻る男性の後ろに、よく目を凝らさなければ見失ってしまいそうな程に存在が希薄な扉がある。
「あぁ? 用心棒に雇ったくせに何言ってやがる」
「へいへい、先生にはお世話になってますよぉ~? 飴ちゃん要る?」
「……俺はガキじゃねぇ」
……どうやら一時的に雇われているだけみたい? こんな所でなんの用心棒をしているのかは知らないけれど、これで肥沃する褐色の大地に協力しているのが、ほぼ確定してしまったわね。
「お、そうか……ったく上もなんでこんな〝咎人〟を雇ったかね?」
「…………喧嘩売ってんのか? 今なら安く買うぞ、コラ」
「おぉー、怖い怖い」
……どうやらただの雇われ関係ってだけで、そこまで深い間柄じゃないみたい? むしろ険悪とさえ思えてくるわね。……これは、乗り込んだ時に上手くこちら側が優勢だと思い込ませれば、魔法使いの戦力を一人は確実に減らせるわね。
『ふぁ~……アリシア准尉殿? いきなり黙ってどうしたのでありますか?』
「あー……そういえば繋げたままだったわね」
もうこの際また欠伸をしている事に関しては目を瞑り、その場から少しだけ離れた所からシーラ少尉に小声で状況を説明する。
『なるほどぉ~、では今から殲滅ですね?』
「……今彼らを殺したら、こちらの存在に勘づかれるじゃない」
『…………ハッ! も、もちろん天才シーラは冗談で言ったんですよー!』
「……」
本当に大丈夫かしら? まさか怪しいからっていきなり銃弾をぶち込んだりは……流石にしないわよね? ……ちょっと不安になってきたわ。
「人手も足りないし、今は何も出来ないから一度そっちに戻るわ。ひとまずガイウス中尉達が戻るまでに、こちら側の拠点の準備をするわよ」
『シーラ、理解しました!』
…………早急に戻らないと! 本当に理解しているのか、まったく分からないシーラ少尉をこれ以上一人にしてはおけない……ガイウス中尉達も、敵の新たな拠点、もしくはあの飲食店に繋がる新たな出入口を発見したとなれば、深追いするよりもその事実を報告した方が良いと判断するでしょうしね。
『あ、今なら頭を狙えそうでありますね……』
「……」
本当に、早急に戻らないと……特になるだけ早く、シーラ少尉と合流しなくては……!!
▼▼▼▼▼▼▼
『問題ないであります!』
様子を確認するべく尋ねれば、適当な時計塔に登らせたシーラ少尉から無線で返事が返ってくる。……頂上の鐘がある部屋、そこの窓から距離を取って、反対側の壁に接する様に置いたテーブルの上でうつ伏せになり、対戦車ライフルと化した『猟犬』のスコープから私と対象の魔法使いの子どもを見張っていてくれる。
……本当はあまり距離を離れての行動は良くないとは思うけれど、何あった時に狭い路地等で二人並んでの戦闘は厳しいし、むしろ遠くから援護狙撃してくれた方が逃走率も上がる。単独の方が相手から発見される確率も下がるし……何よりも、シーラ少尉が突っ走って相手を殴りに行きかねなかった……というのが大きいけれど。
「そう、こっちも今のところ問題はないわ」
『ウィーゼライヒ市』のガナリア区を襲撃した疑惑が掛けられている人物がどこへ向かうのか……もしかしたらマークしていない肥沃する褐色の大地の別の拠点を突き止められるかも知れないと尾行しているこちらにも問題は無く、一先ず安堵する……シーラ少尉を一人にするのは酷く不安なのよね。
『ふぁ~……ではこのまま続行するであります!』
「ちょっと待ちなさい、あなた今欠伸をしたでしょ?」
やっぱりシーラ少尉にじっと動かず、変わり映えしない景色を観察し続けるというのは難しかったかしら? ……でもシーラ少尉の『猟犬』が一番監視をしながら、私や相手に何かが起きた時に対処できて、これ以上ない適任だったのよね。
『し、してないでありますよ! これぽっちも! 全然!』
「……何かあったら大変なんだから、しっかりしなさい?」
『もちろんでありますよ!』
はぁ~、一応この子って私よりも階級が上で先輩なのよね……扱いに困るわ。……もう既に上官に対する態度ではないけれど困るわ。
「……本当にわかっているのかしら?」
『ホントホント! シーラは天才なので!』
本当に調子が良いわね……もしも事態が急変して、何かが起きた時に『寝てました!』は通じないんだから。
「念の為にこのまま無線を繋げておくわね」
『え』
「何か問題でもあるの? 寝れないとか」
『無敵のシーラにそんな問題など……ないのです!』
繋げたままの無線から聞こえてくるシーラ少尉の声に呆れながら、対象の幼い魔法使いの後を尾ける……一見何も武器を持たず無防備に見えるけれど、どこに仕舞っている何が『供物』なのか判らないし、最悪自身の身体の一部を『対価』として魔法を行使できるから全く油断が出来ない。
「……どこまで行く気よ」
先ほどから男の子は入り組んだ路地裏を宛もなく彷徨うかのように歩き回るばかり……もしかして尾行に気付かれた?
「……もう来たのか?」
「っ! ……」
一瞬だけ自分に話し掛けられたと思ったけれど違ったようね……ビックリさせないで欲しいわ? こっちはシーラ少尉みたいな鋼の心臓を持っていないんだから。……まぁあの男の子の声じゃくて、大人の男性の声だったから、落ち着いて聞いていれば変な勘違いもしなかったんだけれど。
「お前らのボスが呼んだんだろうが?」
「あー、そうだっけか? 覚えてねぇや」
「……」
ここは入り組んだ路地の突き当たり、ではないわね……頭の後ろを掻きながら首を捻る男性の後ろに、よく目を凝らさなければ見失ってしまいそうな程に存在が希薄な扉がある。
「あぁ? 用心棒に雇ったくせに何言ってやがる」
「へいへい、先生にはお世話になってますよぉ~? 飴ちゃん要る?」
「……俺はガキじゃねぇ」
……どうやら一時的に雇われているだけみたい? こんな所でなんの用心棒をしているのかは知らないけれど、これで肥沃する褐色の大地に協力しているのが、ほぼ確定してしまったわね。
「お、そうか……ったく上もなんでこんな〝咎人〟を雇ったかね?」
「…………喧嘩売ってんのか? 今なら安く買うぞ、コラ」
「おぉー、怖い怖い」
……どうやらただの雇われ関係ってだけで、そこまで深い間柄じゃないみたい? むしろ険悪とさえ思えてくるわね。……これは、乗り込んだ時に上手くこちら側が優勢だと思い込ませれば、魔法使いの戦力を一人は確実に減らせるわね。
『ふぁ~……アリシア准尉殿? いきなり黙ってどうしたのでありますか?』
「あー……そういえば繋げたままだったわね」
もうこの際また欠伸をしている事に関しては目を瞑り、その場から少しだけ離れた所からシーラ少尉に小声で状況を説明する。
『なるほどぉ~、では今から殲滅ですね?』
「……今彼らを殺したら、こちらの存在に勘づかれるじゃない」
『…………ハッ! も、もちろん天才シーラは冗談で言ったんですよー!』
「……」
本当に大丈夫かしら? まさか怪しいからっていきなり銃弾をぶち込んだりは……流石にしないわよね? ……ちょっと不安になってきたわ。
「人手も足りないし、今は何も出来ないから一度そっちに戻るわ。ひとまずガイウス中尉達が戻るまでに、こちら側の拠点の準備をするわよ」
『シーラ、理解しました!』
…………早急に戻らないと! 本当に理解しているのか、まったく分からないシーラ少尉をこれ以上一人にしてはおけない……ガイウス中尉達も、敵の新たな拠点、もしくはあの飲食店に繋がる新たな出入口を発見したとなれば、深追いするよりもその事実を報告した方が良いと判断するでしょうしね。
『あ、今なら頭を狙えそうでありますね……』
「……」
本当に、早急に戻らないと……特になるだけ早く、シーラ少尉と合流しなくては……!!
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