セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

今卓&

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本編

84話 貴人の虜囚 その64

所変わって寮である、夕食後となり、モニケンダムは夜の帳に包まれ、生徒達はまったりとしたゆるやかな時間と入浴を楽しむ、大人達もまた同様で、今日の式典がどうの、タロウの木板がどうのと愚痴っぽく話していたりする、そこへ、

「戻ったよー」

ノソリとタロウが階段から下りて来た、

「お疲れ様」

ニヤニヤと薄ら笑いで迎えるソフィア、

「遅かったわね・・・」

ムッと睨み上げるユーリと三人の助手、

「ミナちゃんがブーブー言ってましたよー」

ミシェレにニコリーネ、生徒達は柔らかい笑みであった、

「そう?」

「はい、もう寝ちゃいましたけど」

ミシェレがニコリと振り返る、寝台ではミナがクークーと寝息を立てており、ハナコもだらしなく前足を投げ出して伸びていた、

「そっか、遅くなるって言ったんだけどな・・・」

やれやれとミナを見つめるタロウ、

「そうねー、でもまだマシだったわよ、今日は」

ゆっくりと腰を上げるソフィア、

「そう?」

「ですねー、前よりかはマシですねー」

ケイスがニコリと微笑む、

「少しは慣れたのかなー」

タロウは肩に担いだ荷物をドサリと置いてコタツに座り込む、

「夕食あるけどどうする?」

さてと厨房へ向かうソフィア、

「あっ、適当に済ませて来たからいいよ、ありがとね」

背中を丸めて顔を上げるタロウ、

「そっ、じゃ、明日の朝食にしますか・・・」

厨房に入りつつ呟くソフィア、

「で、何よそれ」

ユーリがジロリと荷物を睨む、如何にもこれ見よがしに置いたあたり、タロウが意図したものと思われた、

「んー・・・まぁ、いろいろだよー」

ニコーと微笑むタロウ、

「そのいろいろが問題なんでしょ」

ムッとユーリが睨みつけ、カトカとゾーイとサビナはそれもそうだと苦笑する、

「確かにねー、で、その前に・・・あっ、エレインさんは風呂?」

さてと一同を見渡すタロウ、エレインとオリビア、サレバとコミンが不在で、生徒達がゴシゴシと髪を乾かしたり湯たんぽにお湯を入れたりしている、ここ最近の見慣れた光景であった、

「そうよ、なに?用事?」

「うん、じゃ、テラさんでいいか」

「はいはいなんです?」

白湯を片手に微笑むテラ、

「明日・・・は早いな、明後日かな?早い方がいいよね、染髪の実験、っていったらあれだけど、勉強会的な感じのを開けたらなーって思ってね」

タロウがニコリと微笑む、ナヌッと瞳を輝かせる女性達、

「マジですか!!」

ジャネットが立ち上がり、

「本気ですか!!」

サビナも珍しく色めき立つ、

「マジだし本気だよ、実はなんだけどさ、染髪のね、職人さんと知り合ってねー」

タロウがニコーと微笑むと、職人さん?と顔を見合わせる女性達である、

「・・・もしかして、帝国の人?」

ユーリがんーと考えて呟いた、

「御名答、帝国の人」

タロウがあっさりと答えると、エッと静まり返る一同、ん?とタロウは首を傾げ、アッと気付くと、

「大丈夫、良い人達だよ、ちょっとあれだ、キーキー甲高い声で話すのと、王国語が分からない点以外は?」

慌てて口にするも、どうやらより悪印象であったらしい、ムーと眉を顰める女性達、これは難しいかなとタロウは思うも、

「すんごい、髪の綺麗な人達でね、で・・・まぁ、会ってみれば大丈夫、可愛らしいし・・・まぁ・・・ちょっとあれかな、見慣れないと違和感あるかもだけど・・・」

とさらに言葉を重ねてみるが、まるで効果は無いようで、立ち上がったジャネットは渋い面相でゆっくりと腰を下ろし、サビナもまた見事に表情を暗くしている、そこへ、

「さて・・・ん、どした?」

ソフィアが厨房から戻ってくる、一変した食堂内の雰囲気に大きく首を傾げてしまう、

「あー・・・タロウがね、帝国の人を連れて来るって言っててねー・・・」

難しそうに答えるユーリ、ソフィアはヘーと気の無い様子でコタツに入ると、

「それがどうしたの?」

と問い返す、

「どうしたのって・・・だって、帝国の人でしょ・・・」

「そりゃ帝国にも人はいるでしょ、っていうか当然じゃない、魔族のあれじゃないんだから」

「そうだけど、そういう意味じゃなくてさ」

「ならなによ、別にわざわざ連れて来るんだから、そんな変な人達じゃないんでしょ、で、連れて来てどうするの?」

「染髪の職人さんなんだよ、だから、御教示頂ければと思ってね」

タロウがさらに背を丸めて答えた、

「あら・・・それはいいわね、なに?あんたが職人さんって呼ぶほど達者な人なの?」

「そだねー、俺よりも全然詳しいし、技術もあるみたいだよ、あと・・・うん、向こうの貴族とか金持ちの人達の染髪もやってるらしくてね、それを活かしてこっちでも仕事したいって言ってる感じ?」

エッとタロウを見つめる女性達、

「そっか、ならいいじゃない、折角だもん教えてもらえば?」

ソフィアがサビナに微笑むも、眉を顰めてゆっくりと首を傾げてしまうサビナ、ん?とソフィアも首を傾げ、

「・・・なに?どうかした?」

とタロウ同様困惑してしまう、

「なにって・・・だって、王国語も話せないらしいですし・・・なにより、その・・・帝国の人なんですよね・・・」

サビナがゆっくりと確認し、

「ですよ、帝国の人って聞くと・・・」

「うん、ちょっと・・・」

「怖いかな・・・」

「不安ですね・・・」

「あまり良い印象・・・無いですね・・・」

「そうですね・・・なんか・・・うん・・・」

ザワザワと顔を見合わせる女性達である、あーこうなるのかーとタロウは再度認識し、ソフィアもあっそっちの懸念があるのかとやっと気付く、

「なので・・・うん、その・・・タロウさんの事は信用してますけど・・・帝国の人となると・・・」

サビナが不安そうにタロウを見つめる、

「そっか・・・そこまでは考えてなかったなー、あれ?そんなに怖い感じ?かな?」

「です・・・ね・・・」

サビナがカトカへ視線を移し、カトカは頷きつつゾーイに確認する、ゾーイもゆっくりと頷いた、他の生徒達、大人達も渋い顔である、

「・・・そう言われてもな・・・」

さてどうしようかとタロウは腕を組む、タロウが帝都で知り合ったその染髪の職人達、王国に帰属する事を決めた獣使い達の家族である、セストルと共に荒野の東の街ですったもんだの末に段取りを組み、タロウはセストルと要塞に戻り、そこから転移魔法で帝都へ向かった、帝都はすでに夕刻となっており、大急ぎで帝都の中心部の宿を押さえると転送陣を設置し、セストルと獣使いの中心人物であるエルゾを連れて帝都に入る、セストルはこんな事が可能なのかと改めて目を丸くし、エルゾはキャーキャーと喜んでいた、見慣れた街並みを目にし、本来であれば行軍速度でも10日はかかる遠方の地である、それが数歩で行き来できるのであるから驚愕するのも理解できるし、歓喜するのも理解出来る、そうして三人は帝都の中心部にドカンと築かれた城へと向かった、エルゾはあれがなんだこれがこうだと嬉しそうにタロウに話しかけ、タロウもそうだったんだーと完全に物見遊山である、この巨大な城にも何度か忍び込んだタロウであったが、こうして案内される事は初めてであり、素直に感心するものだからエルゾはいよいよ有頂天で、セストルも悪い気はしなかったようである、どこか嬉しそうに頬を緩めるも、その瞳は厳しいものであった、なにせセストルに任された仕事は大変に困難なものとなる、帝国の為政者達に現状を説明するだけなのであるが、それがどこまで信用され、はたまた理解されるものか未知数であった、敗残軍が集まった駐屯地からも帝都へ馬を走らせたらしいのであるが、恐らくまだその報せは届いていない、いくら馬を飛ばしたとしても5日はかかる距離である、挙句雪道を通るとなると数日は余分に見なければならない、無論帝都には雪なぞ振る素振りも無かったが、寒い事は寒いし、東の端の街は雪に覆われていた、つまりはまだ敗戦の報は届いておらず、そこへひょっこりと近衛騎士団長のみが帰還しては何をどう言われるか、場合によっては敵前逃亡を疑われても不思議ではない状況である、それでも皇帝も提督もセストルであれば任せられるとの事で、二人がしたためた議会充ての親書も懐に忍ばせている、大変な仕事だなーとタロウは他人事であったが、ここは気張って貰わないとなとそれなりに優しく接していたりした、

「えっとね・・・ほんとにさ、良い人達なんだよ・・・その・・・帝国では奴隷でね・・・」

訥々と口を開くタロウ、エッと何度目かの無言の驚きが女性達から発せられた、

「・・・なに?こっちに連れて来るの?」

「うん、っていうかもう要塞に来てる・・・」

「あらま・・・要塞ってその要塞?」

「うん、ユーリ達も行ったあそこ・・・」

「・・・あー・・・どういう事なのかしっかりと説明してくれる?」

ユーリがこりゃまたなにやら面倒な事になっているのかと座り直し、大人達もここはちゃんと聞くべきだと眉間に力が入る、生徒達も同様であった、

「説明って言ってもそれほどでもなくてね、ほら、その要塞にも奴隷の人達が仕事していてね、その中で、王国に移住してもいいって人は受け入れるって話をしたんだな、ほら、この国では奴隷っていう身分が無いし、陛下も殿下も嫌ってるしね、で、そこでこっちに住むって言った人達がいてね、アージェン族っていう部族の人達なんだけど、話したかな?でっかい蛇とかサイっていう獣を扱える貴重な人達・・・」

「私は聞いてるけど・・・ここでは話してないかしら?」

ハテ?とユーリが女性達を見渡し、確かにと頷く女性達、ソフィアもなんとなく聞いたかなーと天井を斜めに見上げる、

「そっか、まぁ、そういう特殊な技術を持った人達でね、俺としては嬉しい限りでさ、特にほら、牛と豚も馬もだけどそういう有益な獣・・・まぁ家畜・・・にはならないし、なれないような獣だね、それの飼育にも長けた人達でね、是非こっちでも飼育して欲しいって感じなんだけど」

「・・・そんなに凄い人達なんですか?」

カトカが恐る恐ると問いかける、

「うん、凄いよ、まぁ、話しだけでは理解できないからなんだけど、俺も改めて話し込んでね、そこまで出来るのであれば、もうそれだけで飯が食えるぞって・・・そんな感じ・・・」

ヘーとやっと感心の声が響いた、

「で、本題はその人達の家族、奥さんとか娘さんなんだけど、どうやらね、この人達が帝国に染髪の技術を持ち込んだ人達みたいでね、まぁ、持ち込んだ当人ではないんだけど、技術を継承した人達?って感じ?」

エッと今度は明確な驚きの声が響いた、

「俺もビックリしたんだけどね、その人達、銀色の綺麗な髪なんだな、で、成人女性はそれをね、こう・・・うなじの所から先にかけてね、赤とか黄色とか青とかに染めて、編みこむのが大人の証明なんだとか、その色と配色がね、家によって違うんだって、多分あれだな、嫁いだ先の家の染め方と結い方なんだろうね、それで、成人女性として認められる?既婚女性の証明って感じかな?その家の一員ですってのが明確になる・・・まぁ、ここら辺の文化的な風習は学園長の領分になるんだけどさ」

「・・・それは面白そうですね・・・」

サビナがズイっと前のめりになる、うんうんとエルマやテラも身を乗り出した、

「だねー、でだ・・・その奥さんや娘さん達も旦那がね、こういう事だからって説得して、もう要塞にね、移り住んじゃったんだ」

あっさりと口にするタロウ、しかし、これはどう考えてもどう聞いてもとんでもない大事のように思える、

「まぁ・・・その旦那さんがね、エルゾさんっていうんだけど、やっぱりほら、帝国の奴隷扱いが心底嫌だったみたい、それに彼らの言葉も禁止されてたっていうし・・・他にも・・・あれだな、やっぱり見た目がね、目立つ感じの人達だから・・・視線も嫌だったんだろうね・・・まぁ、そんなこんなでね、その家族ごとこっちに住む事になったのよ、で・・・」

「その人達に教えてもらおうってこと・・・」

ソフィアがやれやれと微笑む、

「そういう事、急な話であれだし、当の本人達も落ち着かない状況だとは思うけど、でも・・・うん、丁度良いなーって思ってね、今朝、レネイさんに会ったのも・・・そういうあれかなーって思って、示し合せっていうか、導きっていうか・・・まぁ、そういうのあるじゃない?で、話してみたら向こうさんも嬉しいって言ってくれたし、なにより、ほら、王国の街を見てみたいって事でね、じゃ、やるかって・・・なったんだな・・・」

どんなもん?とタロウは視線でもってテラに確認する、

「・・・えっと・・・はい、じゃ・・・その、会長と話して・・・と思いますが、その・・・その場には勿論あれですよね、タロウさんも同席下さるんですよね」

不安そうにタロウを窺うテラ、

「そうするつもり、通訳ならだいぶ慣れたしね、任せてもらって大丈夫よ、それにほらそこまで無責任じゃないからさ、俺だって・・・」

ニコーとタロウが微笑んだ、どの口が何を言うかと目を細めるユーリとカトカとゾーイとサビナ、そこへ、

「上がりましたー」

とサレバとコミンがタオルを頭に巻いて食堂へ入って来る、エレインとオリビアも続いており、

「・・・ん・・・どうしたんですか?」

自分に集まった視線を不思議そうに見つめ返すエレインであった。
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