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本編
25話 銀色の作法 その7
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「まったく、エレイン嬢もあれだな、火が付くと燃え上がるのだな」
それから暫くしてレアンの姿は寮の食堂にあった、結局打合せはエレインとライニールが盛り上がってしまい、レアンは疲れたと言ってケイランを連れて寮へと避難したのである、
「そうね、人を引っ張る人には必要な資質ですよ」
ソフィアが優しく答えた、
「む、今日のソフィアさんは優しいな、な、ミナ、そう思わんか?」
「んー、ソフィはいつも優しいよー、時々、怖いけどー」
「それはそうじゃろ、こんなお転婆娘を相手にしておるのだ、しかたの無い事だろ」
「むー、それはお嬢様もでしょー」
「何をー、このがきんちょめー」
レアンがミナを抱え込んで脇腹をまさぐった、
「きゃー、こそばいー、レイン助けてー」
我関せずと黒板を見つめるレインに助けを求めると、
「こりゃ、お嬢様、これでいいのか?十分可愛いと思うぞ」
レインが黒板をレアンに向ける、黒板には猫型のスリッパの図が描かれており、実に可愛らしい絵となっていた、
「ほう、確かに可愛いな、では、どうすればいいのだ?」
「そうね、あとは、布を選んでもらって、それで、縫い合わせるのね」
ソフィアが端切れの詰まった籠をテーブルに置いた、
「ふむふむ、そうなると、黒猫かの白猫かの?」
ミナを開放してレアンが籠の中をかき回す、
「うーんとね、三毛、三毛可愛いよ、だから三毛」
「それは、良い布があればだなー」
「これ、それとこれ、で、これが耳?どう?」
「それなら、こっちじゃろ、で、目はボタンにするのじゃ」
「あ、それ可愛いかも」
「うむ、レインは流石じゃなー、ミナとは違うなー」
「むー、お嬢様、意地悪だー」
「そうか?じゃ、こうじゃ」
再びレアンがミナを拘束しようとするが、ミナはヒョイと抜け出して、
「へへーんだ、捕まえてみろー」
舌を突き出すミナ、
「このー」
レアンが勢いに任せて席を立つ、
「はいはい、で、これでいいの?」
ソフィアが静かに場を宥め、
「じゃ、お嬢様やってみる?楽しいわよ」
と続けた、
「うむ、しかし、針仕事は初めてじゃ、どうしたらいいのか」
「では、わたくしがしっかり指導致しますよ」
微笑ましく見ていたケイランが名乗りを上げる、
「そうね、では、お願いして、あ、ケイランさん、ご自分でやってしまっては駄目ですよ」
ソフィアが察して釘を差す、
「勿論です、お嬢様がご自分で作りたいとおっしゃったのですから」
「むー、うん、では、どうすればよい?」
「はい、まずは針に糸を通しまして」
ケイランの親身な指導にレアンは真面目に頷きながらスリッパ制作が始まった、
「ミナもやるー」
レアンが作業に集中した為、ミナがソフィアに飛びつき、
「はいはい、じゃ、タロウの作るか」
とソフィアとレインの指導の下にミナはタロウのスリッパの制作を始めた、そうして静かな食堂には時折優しい指導の声が響きつつ作業は進む、ケイランは嬉しそうにレアンの作業を見つめながら、
「そうですね、ユスティーナ様に御教示頂いても宜しいかと思いますよ」
と呟いた、
「母上にか?それはどうしてだ?」
レアンは手元に集中しつつ問い返す、
「はい、実は私もユスティーナ様に針仕事を教わったのです」
「なに?どういうことだ?」
レアンが驚いて顔を上げた、
「ユスティーナ様がお若い頃、床に伏せる前ですか、針仕事がお得意で、特に刺繍とレース編みがお上手なのです」
「へー、それは初耳だぞ」
「それこそ、レアン様がお腹にいる時などは、侍女を集めてはレース編みをしていたものですよ」
ケイランが懐かしそうに語る、
「む、生まれる前の事か、それは、どうしようもないの」
「そうですね、でも、お人形とかレアン様が幼児の頃に来ていた服はユスティーナ様が作ったものですよ」
「あの人形か?む、今でも大事にしておるぞ、そうか、それは知らなんだ」
レアンは何とも複雑な表情となり、
「教えてくれるだろうか・・・」
と寂しそうに呟いた、
「勿論です、先日お話した感じですとすっかり昔のユスティーナ様でした、今は体力を回復される事に専念されているとの事でしたので、お願いすればきっと喜んで教えてくださいますよ」
「そうか、そうかの?」
「はい、きっと大丈夫です、それどころか、当時はお腹をさすりながら、一緒に針仕事されるのを楽しみにしていらっしゃいましたから」
ケイランはやや遠い目をして語った、
「うむ、分かった、では、どうすればいいかの?何か必要な物はあるか?」
「それもどうでしょう、一緒にお買い物に行かれれば良いかと思いますよ」
「そうだの、そうだの、うん、そうなると、ある程度は出来るようになって母上を驚かせたいの」
「そうですね、その意気です」
レアンは鼻息を荒くしてより作業に集中し、ケイランも嬉しそうにその手元を見つめるのであった。
「こちらでしたか、丁度良かった、ソフィアさんも、相談があります」
漸く片方のスリッパが出来上がる頃合いにエレインとライニールが食堂へ入ってきた、
「むう、なんだ、折角良い感じになっておった所に」
レアンはあからさまに不機嫌な顔になる、
「レアン様、えっ、針仕事ですか?」
ライニールがレアンの手元を見て大袈裟に驚いた、
「そうじゃ、専用スリッパを作っておったのじゃ、どうだ片方できたぞ」
レアンが完成したスリッパをライニールに見せた、
「これは可愛らしい、ニャンコですか、愛らしいですね」
ライニールは絶賛しつつ、
「なるほど、縫い目がチグハグですね、あ、ここ、外れそうです」
細かい点を指摘すると、
「にゃー、これから直すのじゃ、口出しするでないわー」
レアンが憤然と叫んだ、
「あー、お嬢様がニャーって言ったー」
ミナがすかさず突っ込むと、
「ニャーと言って悪いかー、ニャーはニャーじゃー」
「ニャー、ニャー?ニャ?ニャー、ニャ、ナー、ニャ?」
レインが突然猫語を話しだす、大人達が不思議そうにレインを見ると、
「ニャ?ニャ、ニャ、ニャ?ナー、グニャー」
ミナがそう答え、
「グニュー、ニャ、ニャーー、ニャ、ニャ?」
レアンもニャーニャー言い出した、
「ニャー、ナ、グヌ、ニャー」
「グルル?ニャニャ、ニャーニャー」
「ニャ?ニャ?」
「ニャー、ニャ、ニャ、グルー」
「ニャ、ニャー、ニャ」
レアンが不意にライニールを睨み、
「ニャー」
と一言叫ぶと、
「ニャー」
ミナとレインがライニールに向かって両手を獣のように構えた、
「あ、ごめんなさいお嬢様、勘弁をー」
ライニールが3人の眼光に気付いてその身を仰け反らせると、
「ニャー」
レアンが勝利の雄叫びであろうか高らかに宣言し、ミナは、
「アオーン」
と叫ぶ、
「こりゃ、ミナ、それでは狼じゃ」
レインの冷静な言葉に、
「ニャ?」
ミナはハッとして振り返り、
「まったく、まだまだのようじゃのう、ミナ」
レアンはしたり顔である、
「ニャー」
寂しそうに俯いたミナに一同は耐えていた笑いを爆発させたのであった。
それから暫くしてレアンの姿は寮の食堂にあった、結局打合せはエレインとライニールが盛り上がってしまい、レアンは疲れたと言ってケイランを連れて寮へと避難したのである、
「そうね、人を引っ張る人には必要な資質ですよ」
ソフィアが優しく答えた、
「む、今日のソフィアさんは優しいな、な、ミナ、そう思わんか?」
「んー、ソフィはいつも優しいよー、時々、怖いけどー」
「それはそうじゃろ、こんなお転婆娘を相手にしておるのだ、しかたの無い事だろ」
「むー、それはお嬢様もでしょー」
「何をー、このがきんちょめー」
レアンがミナを抱え込んで脇腹をまさぐった、
「きゃー、こそばいー、レイン助けてー」
我関せずと黒板を見つめるレインに助けを求めると、
「こりゃ、お嬢様、これでいいのか?十分可愛いと思うぞ」
レインが黒板をレアンに向ける、黒板には猫型のスリッパの図が描かれており、実に可愛らしい絵となっていた、
「ほう、確かに可愛いな、では、どうすればいいのだ?」
「そうね、あとは、布を選んでもらって、それで、縫い合わせるのね」
ソフィアが端切れの詰まった籠をテーブルに置いた、
「ふむふむ、そうなると、黒猫かの白猫かの?」
ミナを開放してレアンが籠の中をかき回す、
「うーんとね、三毛、三毛可愛いよ、だから三毛」
「それは、良い布があればだなー」
「これ、それとこれ、で、これが耳?どう?」
「それなら、こっちじゃろ、で、目はボタンにするのじゃ」
「あ、それ可愛いかも」
「うむ、レインは流石じゃなー、ミナとは違うなー」
「むー、お嬢様、意地悪だー」
「そうか?じゃ、こうじゃ」
再びレアンがミナを拘束しようとするが、ミナはヒョイと抜け出して、
「へへーんだ、捕まえてみろー」
舌を突き出すミナ、
「このー」
レアンが勢いに任せて席を立つ、
「はいはい、で、これでいいの?」
ソフィアが静かに場を宥め、
「じゃ、お嬢様やってみる?楽しいわよ」
と続けた、
「うむ、しかし、針仕事は初めてじゃ、どうしたらいいのか」
「では、わたくしがしっかり指導致しますよ」
微笑ましく見ていたケイランが名乗りを上げる、
「そうね、では、お願いして、あ、ケイランさん、ご自分でやってしまっては駄目ですよ」
ソフィアが察して釘を差す、
「勿論です、お嬢様がご自分で作りたいとおっしゃったのですから」
「むー、うん、では、どうすればよい?」
「はい、まずは針に糸を通しまして」
ケイランの親身な指導にレアンは真面目に頷きながらスリッパ制作が始まった、
「ミナもやるー」
レアンが作業に集中した為、ミナがソフィアに飛びつき、
「はいはい、じゃ、タロウの作るか」
とソフィアとレインの指導の下にミナはタロウのスリッパの制作を始めた、そうして静かな食堂には時折優しい指導の声が響きつつ作業は進む、ケイランは嬉しそうにレアンの作業を見つめながら、
「そうですね、ユスティーナ様に御教示頂いても宜しいかと思いますよ」
と呟いた、
「母上にか?それはどうしてだ?」
レアンは手元に集中しつつ問い返す、
「はい、実は私もユスティーナ様に針仕事を教わったのです」
「なに?どういうことだ?」
レアンが驚いて顔を上げた、
「ユスティーナ様がお若い頃、床に伏せる前ですか、針仕事がお得意で、特に刺繍とレース編みがお上手なのです」
「へー、それは初耳だぞ」
「それこそ、レアン様がお腹にいる時などは、侍女を集めてはレース編みをしていたものですよ」
ケイランが懐かしそうに語る、
「む、生まれる前の事か、それは、どうしようもないの」
「そうですね、でも、お人形とかレアン様が幼児の頃に来ていた服はユスティーナ様が作ったものですよ」
「あの人形か?む、今でも大事にしておるぞ、そうか、それは知らなんだ」
レアンは何とも複雑な表情となり、
「教えてくれるだろうか・・・」
と寂しそうに呟いた、
「勿論です、先日お話した感じですとすっかり昔のユスティーナ様でした、今は体力を回復される事に専念されているとの事でしたので、お願いすればきっと喜んで教えてくださいますよ」
「そうか、そうかの?」
「はい、きっと大丈夫です、それどころか、当時はお腹をさすりながら、一緒に針仕事されるのを楽しみにしていらっしゃいましたから」
ケイランはやや遠い目をして語った、
「うむ、分かった、では、どうすればいいかの?何か必要な物はあるか?」
「それもどうでしょう、一緒にお買い物に行かれれば良いかと思いますよ」
「そうだの、そうだの、うん、そうなると、ある程度は出来るようになって母上を驚かせたいの」
「そうですね、その意気です」
レアンは鼻息を荒くしてより作業に集中し、ケイランも嬉しそうにその手元を見つめるのであった。
「こちらでしたか、丁度良かった、ソフィアさんも、相談があります」
漸く片方のスリッパが出来上がる頃合いにエレインとライニールが食堂へ入ってきた、
「むう、なんだ、折角良い感じになっておった所に」
レアンはあからさまに不機嫌な顔になる、
「レアン様、えっ、針仕事ですか?」
ライニールがレアンの手元を見て大袈裟に驚いた、
「そうじゃ、専用スリッパを作っておったのじゃ、どうだ片方できたぞ」
レアンが完成したスリッパをライニールに見せた、
「これは可愛らしい、ニャンコですか、愛らしいですね」
ライニールは絶賛しつつ、
「なるほど、縫い目がチグハグですね、あ、ここ、外れそうです」
細かい点を指摘すると、
「にゃー、これから直すのじゃ、口出しするでないわー」
レアンが憤然と叫んだ、
「あー、お嬢様がニャーって言ったー」
ミナがすかさず突っ込むと、
「ニャーと言って悪いかー、ニャーはニャーじゃー」
「ニャー、ニャー?ニャ?ニャー、ニャ、ナー、ニャ?」
レインが突然猫語を話しだす、大人達が不思議そうにレインを見ると、
「ニャ?ニャ、ニャ、ニャ?ナー、グニャー」
ミナがそう答え、
「グニュー、ニャ、ニャーー、ニャ、ニャ?」
レアンもニャーニャー言い出した、
「ニャー、ナ、グヌ、ニャー」
「グルル?ニャニャ、ニャーニャー」
「ニャ?ニャ?」
「ニャー、ニャ、ニャ、グルー」
「ニャ、ニャー、ニャ」
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と一言叫ぶと、
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ミナとレインがライニールに向かって両手を獣のように構えた、
「あ、ごめんなさいお嬢様、勘弁をー」
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「ニャー」
レアンが勝利の雄叫びであろうか高らかに宣言し、ミナは、
「アオーン」
と叫ぶ、
「こりゃ、ミナ、それでは狼じゃ」
レインの冷静な言葉に、
「ニャ?」
ミナはハッとして振り返り、
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※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
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