セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

今卓&

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本編

64話 縁は衣の元味の元 その2

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その頃寮の食堂では、

「難しいよー」

「難しいねー」

「じゃのう」

「なんか変」

「変だねぇ」

「しっくりこんな・・・」

「こないねー」

テーブルに色とりどりのタイルを並べてミナとレインとニコリーネはうんうんと頭を悩ませており、厨房では、

「これはいいわね、知らなかったわ」

「だろう?」

「美味しいですね、このお塩」

「うん、湿っぽいけど、味が違うね」

「わかる?そのまま炒って水分を飛ばせばサラサラで使いやすくなるぞ、焦げないように注意だな」

「じゃ、やります」

とマフダがコンロに向かい、

「これはこれでいいんですか?」

リーニーが小さな壺を手にした、中身は海水を煮詰めて塩と分離した液体である、

「うん、いいよー、それが大事なんだよねー」

タロウがニヤリと微笑む、マフダは、

「塩も買うと高いんですよねー」

「そうなのよねー」

「安いのは美味しくないしなー」

「それ分かりますー」

と所帯じみた会話を交わしながら慣れた手付きでコンロに鍋を置き、アッと声を上げ、

「ごめん、リーニーさん、火付けて」

と振り返る、はいはいとリーニーはコンロに火を灯し、火力調整も必要かとマフダの隣に立った、

「でもこんなに簡単に塩を取れるなら、向こうでもやらせれば?ちゃんとお金になるんじゃないの?」

ソフィアが手を動かしながら誰ともなしに問いかける、

「そうだねー、っていうか、やってるんじゃないかな?・・・でもあれか、漁師の数が減って困ってるって言ってたからな、それに商売としてやるのであればもっと効率的なやり方があるからね、それこそ都市国家ではこっちの方が普通の塩だからね、一度見たほうが良いかもしれん、結構大変なんだよな、味は良いけど・・・もしくは商売としてはやってないだけかも・・・良く分からんね、テラさんに聞いてみようか、あっち出身なんだろあの人、まっ、ティルさんに教えとけば勝手にやるんじゃないの?」

タロウが取り留めも無く思いついた事を適当に答える、四人は朝からタロウの言う料理の試作に取り掛かっていた、ソフィアはどうせだからミーンとティルに教えて欲しいと頼んだが、タロウは午後からイフナースの修練であった、ソフィアはそれでは仕方ないかとあっさりと事情を理解する、それを耳にしていたエレインがそういう事ならマフダとリーニーを手伝いに寄越すとなり、ジャネット達も午後から参加すると息巻いていた、そこまで大騒ぎするような代物ではないのだがとタロウは渋い顔となるが、まぁ、好きにすればいいかなと特に口出しする事は無かった、そして、タロウは朝一で樽一個分の海水を北ヘルデルから汲んで来た、これにはソフィアも海水で料理するの?と怪訝そうな顔となり、マフダとリーニーは海水とはと首を傾げる、二人は共に海を見た事は無い、話しでは聞いた事がある程度である、そうして取り合えず海水を煮詰める所から作業は始まった、その工程はリーニーの得意とする所であり、見事に塩が生成されそれとは別にタロウ曰くの特別な液体も抽出される、而して塩の方は好評のようであった、

「・・・それもそうかな?」

「そうだと思うよ、クロノスも報告書は呼んでるって言ってたぞ、ティルさんの」

「ありゃま・・・あれも暇ね」

「そうでもないと思うが、姫様がギャーギャーうるさいんだとさ」

「ありゃ・・・仲良いわね」

「うん、良い事だ」

「まったくだわねー、で、これはこれでいいの?」

とソフィアは手を止めて手にしたすり鉢をタロウに見せた、その中身は白濁したドロドロの液体である、

「良いと思うけど、もうちょっとかな・・・出来るだけ細かくして欲しい・・・かな?」

「はいはい」

ソフィアは再びすりこぎを手にしてゴリゴリとやり始める、タロウは昨日帰寮した後、時間が無かった中でも大量の大豆を水洗いし、そのまま水に漬けていた、忙しい時にまったくとソフィアは目くじらを立てるがタロウは涼しい顔で作業を終え、今日はその大豆を使っての料理である、タロウの指示の下、ソフィアは水を吸って膨れた大豆を擦り下ろし、タロウは綺麗に洗った藁箱にわざわざ熱湯で洗った木綿の布を敷き詰めていた、

「焦げないようにしなきゃだね」

「うん、もう少し下げる?」

「お願い」

マフダとリーニは阿吽の呼吸で塩を炒めている、王国における塩は岩塩である、市場でそれを購入し、家で使うときはゴリゴリとすり鉢で磨り潰したり、固まりのままお湯で溶かして使用している、しかし今海水から作られた塩はドロドロの状態ではあるが一目で磨り潰す必要が無いとわかる代物で、さらに水分を飛ばせばサラサラになると言う、マフダとリーニーがこれはと目を輝かせるのも必然であった、

「こんなもん?」

再びソフィアがタロウに確認すると、

「うん、いいんじゃない?取り合えずやってみようか、試作だしねー」

とタロウは気楽に答えて、さて次はと鍋を用意し水を入れマフダの隣に立つと、

「ここからが重要なんだけど、一煮立ちしたら火を弱くして、煮た豆の香りあるだろ?あの匂いになるまで茹でる」

「ふーん」

「へー」

「火加減大事なんですか?」

「うん、そこが味の秘訣、煮立たせちゃ駄目」

「はいはい、じゃ入れていいのね?」

「頼む」

タロウの説明を聞きながらソフィアは擦り下ろした大豆をトロトロと鍋に入れ、タロウはその隣でヘラを片手にゆっくりと攪拌する、これはこれで息の合った作業のように見えた、マフダとリーニーは塩はまぁこんなもんかと作業を止め、大豆の鍋に集中する、やがて、

「おっ、良い感じ、ここで弱火に」

タロウはユックリと鍋をかき回しながら火力を調整する、煮立ったために大量の泡が発生しており、

「このあぶくは取った方がいいね」

とボールを取り出してそちらへ器用に泡だけを掬いあげ移していく、

「なんか変わるんですか?それで?」

リーニーの純粋な疑問であった、

「そだねー・・・俺も教えてもらったからそうしてるって感じかな?多分灰汁なんだと思うけど、味を良くする為だと思うよ、煮物でも灰汁はとるでしょ」

「なるほど・・・灰汁ですか・・・」

「灰汁なんだ・・・」

「まぁ、豆だもんね」

三人は一応と納得したらしい、そして、フワリと大豆の甘く柔らかい香りが匂い立つ、

「わっ、これですか?」

「これだね、うん、じゃ、こんなもんで」

タロウは火を止めると、

「で、ここからが大変、火傷しないように注意だぞ」

と次の工程に移るのであった。



「うー、タロー」

ミナが悲しそうな顔で静かに厨房に入って来た、厨房ではやっと大豆料理の最終工程となっており、タロウはその間にとマフダに小麦粉を捏ねて貰い、リーニーとソフィアと共に帝国で買って来た調理具を洗浄し組み立てていた、

「どした?」

タロウがサッと、ソフィアもあらっと振り返る、

「うー・・・難しいー」

「そっかー、難しいかー、ニコ先生は?」

「イマヒトツー」

「今一つか、難しい言葉使うなー」

ミナは律儀にツッカケに履き替えテテッとタロウに駆け寄るとその足にしがみ付いた、

「うー、タロウまだー」

タロウの太腿に顔面をこすりつけるミナである、

「あー、もうちょっとだな・・・うん、じゃ、あれだ、そっちはまた明日でいいから今日はこっち手伝うか?」

「うー、いいのー?」

「おう、タイルはいつでも・・・ってわけでもないが、明日でもいいぞ、だからほれ、落ち込むな、それよりも美味しいもの作るぞー」

「ホント?」

「勿論、アマアマでフワフワなのな」

「アマアマでフワフワ?」

「そ、アマアマでフワフワ」

ニヤリと微笑みタロウはミナを見下ろす、ミナは不安そうな顔が徐々に笑顔に変わり、

「わかったー、えっと、えっと、ニコとレイン呼んで来るー」

「よし、じゃ、頑張って作らないとな」

「わかったー」

ミナはダダッと食堂へ駆け戻った、

「何?甘いもの作るの?」

ソフィアがそうだったんだと確認する、マフダとリーニーも聞いていなかった為そうなんだと嬉しそうに笑顔となってしまった、

「んー、そういうのもある」

タロウはニヤリと微笑む、

「この道具はね、こっちではあまり見ないし、帝国・・・その国でもあまり使われていない様子でね」

タロウは一転真面目な口調となる、

「土地柄かもしれないけどね、これも雑貨屋の隅に転がってたんだ、見付けた時は思わず叫んじゃったよ」

マフダとリーニーは成人男性でもそうなるんだーと顔を上げ、ソフィアは、

「で、どういう仕組み?」

と水を張った大振りの鍋に積み重なった丸い木枠を見上げた、その木枠はタロウが帝国から買って来た代物であり、肉挽き機と共に荷物の大半を占めていたものである、ソフィアは何に使うものかまるで分らず放置しており、今日やっとお披露目となった、

「うん、これも簡単でね、ブラスさんに同じの作ってもらおうかと思っているんだけど」

とタロウはそれの構造から仕組み、使う際の注意点等を説明する、マフダは手を止め、ソフィアとリーニーはなるほどと清聴したが、

「それでホントに火が通るの?前にも聞いた事があるけど・・・正直怪しいのよね・・・」

ソフィアは純粋な疑問を口にした、マフダとリーニーも確かにとソフィアに同意のようである、タロウの説明は理解しやすいものであったが、湯気で食品を調理するというその根本的な仕組みは想像すら難しい、

「ん、うん、通るぞ」

タロウは何を言っているのやらと首を傾げる、

「ホントに?」

「あー、そう疑うなよ、あれだ、肉の丸焼きとかは出来ないけどさ、パンとかちょっとした料理ならこっちのが簡単だし、焼き過ぎて失敗するって事が少ないな・・・いや、そうでもないかな?」

どうだろう、と首を傾げるタロウであった、

「まっ、それでもほら、いろいろ出来るしな、取り合えずやってみるべさ」

「そうね、折角だしね」

「はい、楽しみです」

「そうですね」

と三人は納得できないままに前向きとならぜるを得ない、なにせ先程の豆料理では豆乳なるものを口にし、その味も好き好きはあれど概ね好評で、さらにその豆乳は先程作った海水の煮汁を加えると柔らかい固形物に変化している、リーニーはこのような反応は初めてだと大いに興奮し、ソフィアもマフダもこれは信じられないと目を見張った、

「ん、じゃ、どうしようかな・・・甘いものを作らないとだから・・・」

タロウはウーンと悩みながら右目を閉じる、当初の予定では蒸しパンを作ればいいかなと思っていたが、ミナの悲しそうな顔に思わずアマアマでフワフワ等と口にしてしまった、どうにもミナには甘くなってしまう、自分の方がアマアマでユルユルだなと思うが、言ってしまった以上それなりの物を作るかと思い直し、

「うーんとね、カスタードはもう作り方知ってるよね?」

タロウはマフダとリーニーへ顔を向ける、

「はい、毎日のように作ってます、お店用で」

「私達も時々手伝います」

聞き慣れた単語の為二人はサッと背筋を伸ばしてしまった、

「よかった、じゃ、それの応用になるかな、あれをね、こう、スプーンで掬って食べたいと思ったこと無い?」

タロウはニヤーと怪しい笑みを浮かべる、

「そりゃもう・・・」

「ねぇ・・・」

「うん、作っててもこれの中に顔を入れたいとか・・・」

「えっ、マフダさんそんな事考えてたの?」

「えっ、思いません?絶対幸せですよ」

「そうかもだけど、鍋に顔は違うかな・・・ほら、独り占めして舐めたいとは思うけど・・・」

「それは嘘ですよ、絶対顔を入れたいと一度は思ったはずです」

「いや、それはだってさ・・・」

「あー、良い子ちゃんになってるー」

「良い子ちゃんって、それは酷いよー」

キャーキャーと騒ぎ出す二人であった、そこへ、

「なにがー、どうしたのー」

とミナがレインとニコリーネと共に戻って来た、

「ん、マフダさんがねー、カスタードまみれになりたいんだって」

ソフィアがニヤリと微笑む、

「カスタード?ミナ、あれ好きー」

「ん、ミナも好きか?」

「うん、アマアマでトロトロなのー」

「そうかそうか、じゃ、どれ、ちゃんとやるか」

タロウは当初の計画とは違うけどさてどうするかと段取りを組み直し、

「うん・・・じゃ、やるか」

「ヤルー」

ミナがピョンピョン飛び跳ね、レインとニコリーネはどういう事なのかと首を傾げる、ソフィアはタロウはミナに甘すぎるのよねと溜息を吐くのであった。
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