セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

今卓&

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本編

66話 歴史は密議で作られる その1

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翌朝、朝食を終えたタロウとミナとレイン、ニコリーネは一階の増築部分、風呂場となる部屋に入った、

「おおー、良い感じじゃない」

「でしょー、ガンバッター」

「そっかー、偉いぞミナー」

「えへへー、でしょー」

タロウがミナの頭を撫で回し、ミナは嬉しそうにタロウの足に縋りつく、昨日、タロウが食事会の準備で忙しい中、この場では三人が集まってタイル画の制作を続けており、ニコリーネが中心となったそれは床に乱雑に並べられた状態であったが見事に美しいと言える壁画が出来上がっていた、

「えっと、こちらの壁とかはこの程度でいいのですか?」

ニコリーネがその作業中に感じた疑問を改めて口にする、

「そうだよ、内壁に関してはね、使い方を考えると、こっちの洗い場にあたる所は座って使うから、濡れやすい所だけタイルを貼る感じで充分なんだよ」

タロウはミナの頭を撫で回しながら答える、

「なるほど・・・そうするとこちらの壁が全面なのは・・・」

「そっちは立って使う予定の場所だからね、まぁ、あれだ全部の壁にタイルを貼っても勿論いいんだけどさ、一応別けてみた、そういうもんだってのを理解してもらう必要もあるかなって思ってね」

「なるほど、分かりました」

ニコリーネはニコリと納得して微笑む事とした、そういうものなのだなと飲み込んでいる、タロウの指示によるとお湯を溜める湯舟には全面タイルを貼り、その周囲の壁も天井の際までタイルを貼って巨大なタイル画になるのであるが、タロウが洗い場と表現した空間には人の胸程度の高さまでタイルを貼ってそれより上は漆喰のみであるらしい、そしてその隣、湯舟と正対する壁もまた天井までタイルを貼る事になっており、そちらが立って使う予定の場所であるらしいが、ニコリーネとしてはまず立って使うという事がどうゆう事なのか理解できず、と同時にこの部屋の使い方そのものがまるで想像出来ていない、入浴という習慣の無い王国人としてはそれは仕方のない事であろう、

「じゃ、これでやってもらおうか、少しあれかな騒がしい感じもするけど・・・まぁ、暗いよりはいいよね」

タロウは床に並べられたタイル画を見下ろす、床一面に並べられたそれは浴槽側の大樹と、胸程度の壁の方には猫にメダカに馬に犬が戯れ、上品だなと思えるのは浴槽の対面にあたる壁に描かれる、六花商会の意匠となるユーフォルビアの六つの花だけであった、

「床とかどうなるんですか?」

「幾何学でいいと思うよ、それは作業次第かな・・・ブラスさんと打合せしながらが良いと思う」

「幾何学か、楽しみじゃな」

レインがニヤリと微笑む、どうもレインは単純な形を組み合わせた造形が好みらしい、ガラス鏡店の壁画にしてもそうであるが、藍染の作業のときもそういった模様を作ってはニヤついていた、

「だねー、そっちはどうしようかな、案は作っておいてもらって・・・ブラスさんと調整しようか」

「うむ、それで良いぞ」

フンスと胸を張るレインである、

「んじゃ、それでいこうか、手間かけさせたね」

「そんなことないです、すんごい楽しかったです」

ニコリーネが柔らかく微笑み、

「うん、楽しかったー、またやりたいー」

ミナがピョンと飛び跳ねる、

「そうか、そうか、じゃ、何かあったら頼むぞー」

「わかったー」

ミナがニパーとタロウを見上げた、当初タロウはタイル画について生徒達も巻き込もうと考えていたのであるが、色々と立て込み始めてしまい、工事そのものも終盤となってきた為、ここはニコリーネに任せてしまうのが良さそうだと考え直すに至っている、寮の風呂場という事もありそれはそれでどうかとも思うが致し方無い所でもあった、

「じゃ、次はー」

「次は?」

「ブラスさんが来るまで食堂でお絵描きかなー」

「何描くの?」

「んー、設計図?」

「なにそれー」

「ふふん、良いもの作るんだよー」

「良いもの?」

「そだよー」

タロウとミナが楽しそうに食堂に戻り、レインとニコリーネは次々と忙しい事だと苦笑いでその後を追うのであった、そして、食堂で四人がワイワイと始め、ソフィアが掃除にかかる頃合いに、ブラスと職人達が顔を出し、リノルトも姿を表す、タロウは軽く挨拶を交わしてまずはとブラスと共に現場に向かい相談を始めた、ニコリーネも交えて細かい部分を詰める、さらに浄化槽の準備が出来てる事も告げると、

「良かった、では、上下ともに繋げてみます、風呂場も下地処理を始めますね」

と背後に控えた職人達に指示を出し始めた、実に楽しそうである、そして、そっちは終わったのかなとリノルトが、

「これ出来ましたけど、いいですか?」

と小さな金具をタロウに差し出した、どうやらその小さな部品の為にわざわざ顔を出したらしい、

「わっ、ありがとう、あれに着ける事は出来る?」

「はい、径は合わせてあります、工場にある別ので試しましたから大丈夫かと思います」

「そっか、じゃ、早速使ってみるか・・・他には・・・」

タロウはその小さな管状の鉄塊を弄繰り回しながら首を捻る、どうやら注文通りらしいやっぱり職人さんは違うなと感心し、これがあればと思考を巡らす、上手くいけば今日の食事会でも使える筈であった、少々時間が無いが急げば出来なくはない、上手くいかなくてもリノルトを捕まえておけば改善点を出す事は容易であろう、

「うん、ちょっと上に行ってくる、ちょっと待ってて」

とタロウはバタバタと駆け回り、二人はあっという間に事務所の厨房に姿を移した、当然であるがミナとレインとニコリーネもまた何か始まったとまとわりついてくる、

「御免ね、エレインさん、忙しい所」

「そんな、構いません」

厨房は店舗の準備で奥様達が動き回っており、しかし、下準備の大半は終えたところのようで、さて開店となった頃合いである、タロウが何やら荷物を抱えて駆け込んできて、マフダが慌ててエレインを呼びに二階へ上がったのであった、

「では、早速やってみるか」

タロウは使っていない回転機構に向かった、厨房の片隅にポツンと置かれており、若干寂しげに見える、

「まずは・・・」

とタロウは走り回って集めた品を取り付け始めた、タロウの頭の中ではそれなりの形にはなっているが、その形通りにはなかなかいかず、リノルトも手伝って何とかその理想とする形になったらしい、なんのことは無い、回転機構の作業空間に底を作りそれを木の板で囲っただけである、

「これでいいんですか?」

手伝ったリノルトがまず首を傾げ、その場にいる他の女性達も当然であるが首を傾げる、正直な所この状態では泡立て器を装着する事も出来ず、ましてボウルを入れて作業することも難しい、

「たぶんね、で、これを着けて、この魔法石が大事」

リノルトから受け取った金具を装着し、赤い魔法石を小さな皿に乗せその直下に置いた、

「火を使うんですか?」

エレインが不安そうに見つめる、周囲を囲うのが木製の板である、何かあれば火事の懸念があった、

「そうだね、気を付けるけど、今日はあくまで実験だから」

タロウもその点はちゃんと気にしているらしい、赤い魔法石をわざわざ皿に乗せたのも配慮のうちなのであろう、

「で、このまま魔法石を起動・・・させる前に、飴だね」

タロウはブツクサ言いつつ金具を外し、その中に寮から持って来た飴玉を二つ入れた、これもまた注文通りの径である、

「で、魔法石を起動させて」

タロウは赤い魔法石に魔力を流した、実に慣れた感がある、赤い魔法石は音も無く小さな炎を吹き上げる、

「で・・・串、御免、長い串ある?」

タロウは慌てて振り返る、エレインは串ですか?と振り返り、マフダがバタバタと走り、串の束をタロウに手渡した、

「御免ね、ありがとう、じゃ、これをね」

タロウはその串を一本取り出すと、

「リノルトさん、回して貰える?」

「はい、えっと、どのくらい?」

「最初はゆっくりで」

「はい」

リノルトはゆっくりだよなと思いつつ回転機構を回しだす、最も初期に作られた品の為、若干ガタついているがそれは装置自体が軽い為でもあった、

「うん、そんな感じ」

タロウはうんうんと囲いの中を覗き込んでいる、一体何が始まるのかと女性陣は固唾を飲んだ、流石のレインも何をやっているのやらと不思議そうで、ミナはタロウがやる事だからと期待に満ちた視線を向けている、この騒動で結局カチャーやリーニーも厨房に顔を出しており、奥様達も何事なのかと手を停めてしまっていた、商会としてはいい迷惑であろう、

「出て来たねー」

タロウは嬉しそうにニヤリと微笑むと串を装置に突っ込み、

「徐々に早くして」

と指示を出す、リノルトは素直に手に力を込めた、

「良い感じ、そのまま」

タロウは串の先を動かしているらしい、その囲いの中で何が行われているのかは他の者からは見えず、しかし、飴が焙られた甘い香りが漂ってくる、

「甘い匂いだー」

ミナが嬉しそうに微笑み、

「だねー、なんだろうねー」

ミナとニコリーネがニコニコと微笑み合う、

「んー、こんなもんかなー」

一件順調そうに見えたその作業であったが、タロウの表情は一転して険しいものとなった、

「駄目ですか?」

リノルトが不安そうに問うと、

「んー・・・まぁ、最初はこんなもんだろうけどね、材料もだし、道具も・・・なによりほら、俺も道具から作ったのは初めてだから」

タロウはブツブツと呟く、リノルトとしては注文通りに作ったつもりの品で、タロウは当初から取り合えずやってみないと分らんと何とも不安な事を口にしていた事を思い出す、

「改良点があれば、直しますよ」

「うん、それもそうなんだけど・・・まぁ、こんなもんかな取り合えず、回転は停めていいよ」

リノルトに指示しつつタロウはサッと串を持ち上げた、すると、

「えっ・・・綿?ですか?」

「なにそれー」

「わっ、すんごい甘い香りだ・・・」

「・・・埃?」

「埃は酷いなー」

タロウが苦笑いで振り返る、タロウが手にする串の先には子供の拳大の綿のような物質がこんもりと生成されていた、先程までは何も無かった筈であり、埃を被っていた回転機構であるが、囲いを着ける前に軽く清掃はした筈で、それは皆がちゃんと目にしている、

「ふふーん、リノルトさんに感謝するように、ミナ、約束の品だよー」

「約束?」

ミナが不思議そうにその塊を見つめた、

「そっ、アマアマでフワフワ」

「アマアマでフワフワ?」

首を傾げるミナである、どうやらすっかり忘れていたらしい、

「前に約束しただろう、アマアマでフワフワなの作るって」

「・・・あー、思い出したー」

ミナが素っ頓狂な叫び声を上げた、

「なんだー、忘れてたのか・・・」

「覚えてるー、忘れてないー」

「えー、嘘だー」

「嘘じゃないー」

ニヤニヤとタロウはミナをからかい、ミナは必死の形相でタロウを見上げる、

「ふふん、じゃ、これ食べてみ、先尖ってるからな気をつけてな」

「いいの?」

「いいぞ、あっ、ちぎって皆で試してみなさい」

タロウはミナの手に串を預け、

「じゃ、もう一個か二個作ってみようか」

と回転機構に向かう、その瞬間、

「あまーい、アメだー」

その塊を恐る恐ると口にしたミナが歓喜の声を上げた、エッと皆の視線がミナに集まる、

「ふふーん、アマアマだろー」

「アマアマだー」

「フワフワだろー」

「フワフワだー」

ピョンピョン跳ねるミナを女性達はどういう事かと見下ろすしかなかった、確かに飴を使った事は確認しているし、漂う香りも甘ったるい、しかし、ミナの手にする串の先にあるのは綿のような塊で、悪い表現を選べば巨大な埃にしか見えない、

「綿飴っていうんだぞー」

タロウが次の串を用意し、

「ワタアメー」

「そっ、綿みたいだろ、だから綿飴」

「ワタアメー、好きー」

「甘ければなんでもいいんだろ?」

「なんでもよくないー」

「そっかそっか」

アッハッハとタロウは次の作業に取り掛かり、ミナは満面の笑みでそれを頬張る、今日は朝からかとエレインは嬉しくもあるが戸惑うしかなく、他の面々もいったいどういう事なのかと困惑するのであった。
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