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本編
72話 初雪 その27
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それから暫くして寮である、午後の中ほどの時間にタロウが疲れた顔を隠しもせずに転送部屋からノソリと出てきた、
「あっ、お疲れ様です」
それに気付いたゾーイが顔を上げ、カトカもウーンと両手を大きく上げて伸びをしながら振り返る、
「おつかれー、あら、まだ仕事してた?」
「そう・・・ですね、まだそんな時間かと思いますが・・・」
とゾーイは不思議そうにタロウを見てからカトカへ振り返る、カトカもまぁそう言えばそろそろ今日は切り上げてもいい頃合いかもなと木窓を覗いた、今日は珍しくも陽光が差している、朝少しばかり雪が降り、しかし昼を過ぎた頃合いで日差しがでてきた様子で、久しぶりの陽光に幾分か明るい気分になったような気がしていた、
「そっか、あっちに行くとね、どうもほら、時間の感覚がズレちゃって・・・向こうはまだ正午過ぎでね、時差ボケってやつだな」
「ジサボケですか?」
「なんですそれ?」
カトカとゾーイが同時に首を傾げた、
「あー・・・ほら、話したろ、こっちの方が日が暮れるのが早いって、同時に朝が早いって事なんだけどさ、そうなるとほら、何て言うか、あらゆる行動にね、時間的な差が出てくるんだよ、今日もだってこっちの仕事始めの頃合いは向こうの起き抜け?って感じでね、聞いてみたらイザークさん達朝飯も食べてなかったんだよ、陛下も来たもんだからそれどころじゃなかったみたいで、申し訳ない事をしてしまったよ」
あら・・・とそれは可哀そうな状況だなと小さく驚くカトカとゾーイである、
「まぁ、その穴埋めじゃないけど、それなりのものは提供したつもりだから、まぁいいかと思うんだけどさ」
タロウはやれやれと階段に向かい、サンダルを脱ぎだす、
「あっ、フィロメナさん来てますよ、所長も下に行ってます」
「あっ、そうなんだ、ありがとう・・・そっか、アルコール持ってきてくれたのかな、あっ、カトカさん、昨日のガラスの容器とかどう?」
「はい、用意してますよ、下に持っていきますか?」
「ごめん、頼む、あっ、今ちょうだい、カトカさんに力仕事をさせては男が廃る」
ヒョイと立ち上がるタロウに、
「そんな事言ってー、たいしたものではないですから、先に下りていて下さい、私も興味があるので」
カトカがニヤリと微笑み腰を上げた、ゾーイもそういう事ならと腰を上げる、今日の仕事はここまでとした方が良さそうだ、どうせ、またなんだかんだと騒がしくなるであろう、
「そっか、悪いね、じゃ、下で」
タロウはニコリと微笑みスリッパをひっかけるとパタパタと階段を下りた、そのまま食堂に入ると、
「ごめんね、待たせたかな?」
と一声かける、
「お疲れさまー」
ユーリののんびりした声と、
「お疲れ様です」
快活な女性の声が数人分続いた、そして、
「タロー、来たー」
「タローだー」
「タローだー」
ミナとノールとノーラの声も続く、
「おう、戻ったぞ」
「おみやげはー」
ミナが寝台の上にピョンと立ち上がった、
「こりゃ危ない、お土産は無いよ」
「えー、ブーブー」
「そう言うな、無いものは無い」
「つまんなーい」
「だなー」
とタロウは微笑み、ミナはすぐさま勢いよく座り込む、ボンボンと寝台が波打ち、レインがミナを睨みつけ、ノールとノーラはウフフとはしゃぎ、どうやら眠っていたサスキアがハッと顔を上げ、キョロキョロと周囲を確認して再び倒れ込んだ、どうやらミナ達は寝台の上で読書中らしい、双六も広がっているところを見れば、一頻り遊んで落ち着いた後なのであろうか、
「待たせたねフィロメナさん、ヒセラさんも」
タロウはニコリと微笑み女性達のテーブルに向かった、テーブルで茶を囲んでいるのはユーリとエルマ、フィロメナにヒセラとどこかで見た記憶があるような感じの若い女性である、
「そうよー、しっかり待ってたわよ、今日は早く帰るんじゃなかったの?」
ユーリがジロリと睨み上げ、フィロメナ達は苦笑いであった、
「そう言わんでくれよ、今日はあれだ、下手な事を口走ったら駄目な日なんだ、酷い目にあったよ」
タロウが溜息を突きつつ空いた席に腰を下ろすと、
「普段からそうでしょうよ、下手な事言っていらん手間を増やすのはアンタの得意技じゃない」
「なんだよそれ・・・いや、その通りか・・・」
「でしょうよ、ほれ、なんだっけ、フィロメナさんが持ってきてくれたわよ」
ユーリがこいつもまったくと眉を顰めてテーブルに数本並んだ陶器の瓶の一つをタロウに押しやった、
「おっ、ありがとう、どうかないい感じ?」
タロウは笑顔で受け取りフィロメナに確認する、
「はい、御指示通りの品になっていると思います、先方曰く、3回ほど処理を繰り返して、どんどん・・・その少なくなっていって、できたのはこれだけとの事で・・・」
「そっか、そういうもんだよね、でもこれだけ出来れば大したもんだ、じゃ早速」
とタロウは瓶の蓋を外し覗き込む、しかしそれで中身が見える筈も無く、中身を手の平にゆっくりと垂らして匂いを嗅ぎ、左目を閉じてジッと見つめ、軽く伸ばすとその液体はあっという間に揮発した、アルコール独特のヒヤッとした感覚をも確認すると、
「・・・うん、いいね、これなら使える、うん、ありがとう、上出来だ」
嬉しそうに微笑み、瓶に蓋をして強く締め直す、
「良かった・・・」
「そだね、向こうも頑張ったみたいだもんねー」
フィロメナがホッと安堵し、ヒセラがニヤリと微笑む、
「じゃ、これがあれば・・・どうしようか、エルマさんの治療を始めてもいいけど・・・ちゃんと予定を組まないとだね」
タロウがユーリとエルマを伺う、エルマはゆっくりと頷き、ユーリは、
「そうね、私はいつでもいいんだけど、他に用意するものはないの?始めた瞬間にあれが無いこれが欲しいは駄目よ」
と目を細めた、
「それは・・・あとはほら、綺麗な布・・・ちゃんと煮沸消毒したものがあればだし、スライムやら薬草やらは用意したし・・・あっ、あれか、ケイスさんが必要だし、あっ、生徒さん達は?今日はまだ戻ってないの?」
「商会みたいね、あっちはあっちで忙しいのよ」
「そうだったね、じゃ、少し余裕を見て、明後日からなら動けるかな?」
とそこへゾーイが顔を出し、カトカも木箱をガチャガチャ鳴らして下りてくる、
「あっ、その前に寒天培地があれば尚良しだな、うん、じゃ、今日は寒天培地を用意して・・・明日それの実験をやってみるか?」
ジッケン?とミナがピョンと顔を上げた、同時にノールとノーラも顔を上げる、ゾーイはそのまま厨房に入った、フィロメナらの茶を見て、こちらにも欲しいなと思った為で、カトカは近場のテーブルに木箱を置いて腰を落ち着ける、
「昨日も言ってたけど、それどんな実験よ」
「んー・・・何て言うか・・・見えない物を見えるようにする実験」
「なによそれ?」
「そういうものなの、となると・・・やっぱりあれかな明後日から本格的に治療をすることにしようか、エルマさんごめんね、もう少し待って」
済まなそうに微笑むタロウに、ニコリと微笑み頷くエルマである、こうなったらじっくり確実に治療をしてもらいたいとすっかり肝も据わっている、何よりこちらの生活にゆっくりとであるが慣れてきていた、大変に快適で両親や子供達の目も無い、それ故に何気に解放された状態で、心労が遥かに減っている事を実感し、また教師としての喜びも感じている、このまま子供達の勉強を見ながら改めて数学の研究に打ち込むのも悪くないなと昨晩一人考えていたりする、
「あっ、それで・・・」
とフィロメナが会話の区切りだなとオズオズと口を挟む、ん?とタロウがフィロメナを見つめ、アッとユーリは呟くと、
「ごめん、そっちもあったわね、タロウ、こちら、ヘラルダさん、楽師さんだそうよ」
ユーリがあっさりと紹介し、ヘラルダと呼ばれた女性が緊張しているのか固い顔でゆっくりと会釈する、
「あら・・・あっ、そっか、先生の件?」
「そうよ、先生の件」
「へー・・・あっ、もしかしてあれか、もう一人の楽師さん?」
「はい、彼女の妹弟子になるのかな?うちで二人とも働いてもらってます」
「そっか、どっかで見たなーって思ってた、なるほどヘラルダさんね、宜しく」
タロウが柔らかい笑顔を向けるとヘラルダは恥ずかしそうに微笑む、タロウが見る限りまだ若い娘であった、恐らくこの寮の学生達と同じ年代であろう、タロウが指導した楽師は20代後半だったはずで、妹弟子との事であったが、なるほどそういう事もあるのかなとタロウは自然と納得する、
「子供達に教えると聞きまして、そうなると若い方がいいのかなってなったのです、この子もまだこれから修行が必要なんですけどね・・・」
とフィロメナが事の次第を説明した、曰く、タロウが楽曲を指導した楽師は子供がまだ幼く、仕事以外で家を空けるのは難しかったこと、また、ヘラルダ自身がその楽曲を自分も習いたかったと不満を口にしていた事が大きな要因で、さらにはマフダとも仲が良く、ノールとノーラ、主にサスキアが慣れていることもあって、修行半分、指導半分で世話になれないかとの事であった、
「へー、いいと思うよ、エルマ先生としてはどう?」
タロウがじっくりとヘラルダを見つめる、
「私としては嬉しい限りです、ただ、楽器となると完全に門外漢なので、どう指導するのが良いのか・・・その点はお任せするしかないかなと・・・」
「そうだよね・・・あっ、ヘラルダさん、子供用の楽曲とかあるもんなの?」
タロウの問いに、ヘラルダはえっとと言葉を飲み込み、少し考えた様子で、
「・・・その・・・私達が師匠から・・・これはその、父になるのですが、手習いという形で教わる曲はあります、とても簡単なものなのですが・・・それを基礎・・・にして、より複雑な曲に移っていくって感じです」
やはり緊張しているのであろう、固い言葉と表情のままで、しかしその目をしっかりとタロウとエルマ、ユーリと順に向けている、
「そっか、で、あれだよね、楽譜のようなものってないんだよね」
「ガクフですか?」
キョトンと首を傾げる様はやっと年齢相応のものになった、大変柔らかく可愛らしい、
「そうなんだよな・・・楽師さんにも聞いたけど・・・うん、まぁ、そういうもんなんだろうな、楽器って・・・えっとね」
とタロウはどうしたもんだかと右目を閉じて首を傾げ、ウーンと唸りつつ腰を上げて黒板に向かうと、
「これもほら、君らで適当に作り変えて欲しいんだけどさ」
と五本の線を引き、白丸を並べた、なんじゃそれはと大人達の視線が向かい、茶道具を持って戻ったゾーイも今度はなんだろうと足を止める、
「これがね、楽譜ってやつ、で、この丸い点がドの音、次がレ、で次が、ミ、続けて、ファ、ソ、ラ、シ、ドーなんだけどね」
と振り返る、ポカンと口を開けて見つめる者多数、楽師であるヘラルダも何のことやらと不思議そうにしている、
「・・・そうなるよなー・・・えっとね、なんか楽器ある?貸していただけると嬉しい」
「あっはい」
とヘラルダがすぐさまルートを取り出す、何かあればと思って持って来たのだがどうやら正解のようであった、タロウはありがとうと受け取ると、
「まずね」
とボロンとかき鳴らしてルートの調子を確認し、流石手入れが行き届いているなと微笑むと、
「これがドの音」
ボンと一音鳴らす、
「次がレの音」
さらにボンと一音鳴らし、そのままミファソラシドと続け、
「こんな感じでね、曲を視覚化したのがこの五線譜とか楽譜ってやつなんだな、なんていうか・・・慣れればね、見やすいんだけど、初めて見るとね、なんだこりゃって感じだよねー・・・俺もそうだったよ」
と黒板を眺めてから振り返る、唖然とした顔はそのまま、しかし、ヘラルダは理解できたらしい、
「・・・えっと・・・音を書いちゃうんですか?」
「そうだね」
「あの、音を重ねるときは?」
「あぁ、同じようにね、丸を重ねて書いちゃう、こんな感じ」
「あの、旋律は・・・」
「うん、それもね・・・あー、曲によるからだけど、幾つかあるテンポ、速さだね、これを先に指示して、単純にこんな感じで区切っちゃう、わかるかな?」
「・・・わかります、はい、なんとなくですが・・・はい」
タロウは楽譜に記号を書き足し、また妙な記号だなと目を細める者が多数、しかし徐々に明るくそして目を大きく見開くヘラルダであった、
「良かった、で、これに歌詞を合わせるんだけど・・・あっ、そっか、童謡もないよね?」
「ドウヨウ?」
再び顔を見合わせる大人達に、
「うん、大丈夫、無いのは知ってる」
タロウはウーンと右目を閉じて近場の椅子に腰を下ろした、なら聞くなよとユーリが睨む、
「じゃ、一曲、ねこふんじゃった」
タロウがボロンとルートをかき鳴らす、猫?とミナが背筋を伸ばし、ネコーとノールとノーラもピクリと反応した、サスキアまでがうーんと起き出し眠そうに目をこすっている、
「ねこふんじゃった、ねこふんじゃった、ねこふんずけちゃったら、ひっかいた」
軽快に始まった曲と何とも気の抜ける歌詞である、大人達はエッと肩をずらすも、子供達は目を輝かせてタロウを見つめ、レインは突然なんじゃと眉を顰める、
「ねこひっかいた、ねこひっかいた、ねこびっくりしーた、ひっかいた」
と楽し気にタロウは続け、何事かと厨房からソフィアとティル、ミーンも顔を出す、そして、
「あしたのあーさー、おりといでー」
所々の歌詞を修正しタロウは歌い上げた、こちらの世界に無いものが何気に存在する、かつぶし然り、傘然り、眼鏡然りである、少し合わないかなと思いながらもそこは勢いで乗り切るしかない、以前に披露した曲もその辺は気分で乗り切っている、
「どかな?これが童謡、子供の為の楽曲で、子供が歌って子供が演奏できる・・・かどうかは分からないけどそういう曲だね」
ニヤリと微笑むタロウに、ポカンとする大人達、しかしヘラルダは目を輝かせてタロウを見つめ、子供達は、
「かわいいー、ニャンコの歌?ニャンコの歌?」
「ニャンコー」
「ふんじゃうの?」
「ふんじゃったのー」
と大盛り上がりである、起き抜けのサスキアでさえ満面の笑みをタロウに向けていた、
「おう、楽しい歌だろ?」
「うん、えっと、ねこふんじゃった?」
「そうだ、ねこふんじゃった」
「ねこふんじゃった、ねこふんじゃった、ねこふんずけたら?」
「ひっかいた」
「ひっかいたー」
すぐに耳に馴染む曲と分かりやすい歌詞、子供達はふんじゃった、ひっかいたーと大騒ぎで、タロウは楽しそうに微笑み、
「なっ、子供に大うけ、いい曲だろ?」
ニンマリと大人達に微笑むのであった。
「あっ、お疲れ様です」
それに気付いたゾーイが顔を上げ、カトカもウーンと両手を大きく上げて伸びをしながら振り返る、
「おつかれー、あら、まだ仕事してた?」
「そう・・・ですね、まだそんな時間かと思いますが・・・」
とゾーイは不思議そうにタロウを見てからカトカへ振り返る、カトカもまぁそう言えばそろそろ今日は切り上げてもいい頃合いかもなと木窓を覗いた、今日は珍しくも陽光が差している、朝少しばかり雪が降り、しかし昼を過ぎた頃合いで日差しがでてきた様子で、久しぶりの陽光に幾分か明るい気分になったような気がしていた、
「そっか、あっちに行くとね、どうもほら、時間の感覚がズレちゃって・・・向こうはまだ正午過ぎでね、時差ボケってやつだな」
「ジサボケですか?」
「なんですそれ?」
カトカとゾーイが同時に首を傾げた、
「あー・・・ほら、話したろ、こっちの方が日が暮れるのが早いって、同時に朝が早いって事なんだけどさ、そうなるとほら、何て言うか、あらゆる行動にね、時間的な差が出てくるんだよ、今日もだってこっちの仕事始めの頃合いは向こうの起き抜け?って感じでね、聞いてみたらイザークさん達朝飯も食べてなかったんだよ、陛下も来たもんだからそれどころじゃなかったみたいで、申し訳ない事をしてしまったよ」
あら・・・とそれは可哀そうな状況だなと小さく驚くカトカとゾーイである、
「まぁ、その穴埋めじゃないけど、それなりのものは提供したつもりだから、まぁいいかと思うんだけどさ」
タロウはやれやれと階段に向かい、サンダルを脱ぎだす、
「あっ、フィロメナさん来てますよ、所長も下に行ってます」
「あっ、そうなんだ、ありがとう・・・そっか、アルコール持ってきてくれたのかな、あっ、カトカさん、昨日のガラスの容器とかどう?」
「はい、用意してますよ、下に持っていきますか?」
「ごめん、頼む、あっ、今ちょうだい、カトカさんに力仕事をさせては男が廃る」
ヒョイと立ち上がるタロウに、
「そんな事言ってー、たいしたものではないですから、先に下りていて下さい、私も興味があるので」
カトカがニヤリと微笑み腰を上げた、ゾーイもそういう事ならと腰を上げる、今日の仕事はここまでとした方が良さそうだ、どうせ、またなんだかんだと騒がしくなるであろう、
「そっか、悪いね、じゃ、下で」
タロウはニコリと微笑みスリッパをひっかけるとパタパタと階段を下りた、そのまま食堂に入ると、
「ごめんね、待たせたかな?」
と一声かける、
「お疲れさまー」
ユーリののんびりした声と、
「お疲れ様です」
快活な女性の声が数人分続いた、そして、
「タロー、来たー」
「タローだー」
「タローだー」
ミナとノールとノーラの声も続く、
「おう、戻ったぞ」
「おみやげはー」
ミナが寝台の上にピョンと立ち上がった、
「こりゃ危ない、お土産は無いよ」
「えー、ブーブー」
「そう言うな、無いものは無い」
「つまんなーい」
「だなー」
とタロウは微笑み、ミナはすぐさま勢いよく座り込む、ボンボンと寝台が波打ち、レインがミナを睨みつけ、ノールとノーラはウフフとはしゃぎ、どうやら眠っていたサスキアがハッと顔を上げ、キョロキョロと周囲を確認して再び倒れ込んだ、どうやらミナ達は寝台の上で読書中らしい、双六も広がっているところを見れば、一頻り遊んで落ち着いた後なのであろうか、
「待たせたねフィロメナさん、ヒセラさんも」
タロウはニコリと微笑み女性達のテーブルに向かった、テーブルで茶を囲んでいるのはユーリとエルマ、フィロメナにヒセラとどこかで見た記憶があるような感じの若い女性である、
「そうよー、しっかり待ってたわよ、今日は早く帰るんじゃなかったの?」
ユーリがジロリと睨み上げ、フィロメナ達は苦笑いであった、
「そう言わんでくれよ、今日はあれだ、下手な事を口走ったら駄目な日なんだ、酷い目にあったよ」
タロウが溜息を突きつつ空いた席に腰を下ろすと、
「普段からそうでしょうよ、下手な事言っていらん手間を増やすのはアンタの得意技じゃない」
「なんだよそれ・・・いや、その通りか・・・」
「でしょうよ、ほれ、なんだっけ、フィロメナさんが持ってきてくれたわよ」
ユーリがこいつもまったくと眉を顰めてテーブルに数本並んだ陶器の瓶の一つをタロウに押しやった、
「おっ、ありがとう、どうかないい感じ?」
タロウは笑顔で受け取りフィロメナに確認する、
「はい、御指示通りの品になっていると思います、先方曰く、3回ほど処理を繰り返して、どんどん・・・その少なくなっていって、できたのはこれだけとの事で・・・」
「そっか、そういうもんだよね、でもこれだけ出来れば大したもんだ、じゃ早速」
とタロウは瓶の蓋を外し覗き込む、しかしそれで中身が見える筈も無く、中身を手の平にゆっくりと垂らして匂いを嗅ぎ、左目を閉じてジッと見つめ、軽く伸ばすとその液体はあっという間に揮発した、アルコール独特のヒヤッとした感覚をも確認すると、
「・・・うん、いいね、これなら使える、うん、ありがとう、上出来だ」
嬉しそうに微笑み、瓶に蓋をして強く締め直す、
「良かった・・・」
「そだね、向こうも頑張ったみたいだもんねー」
フィロメナがホッと安堵し、ヒセラがニヤリと微笑む、
「じゃ、これがあれば・・・どうしようか、エルマさんの治療を始めてもいいけど・・・ちゃんと予定を組まないとだね」
タロウがユーリとエルマを伺う、エルマはゆっくりと頷き、ユーリは、
「そうね、私はいつでもいいんだけど、他に用意するものはないの?始めた瞬間にあれが無いこれが欲しいは駄目よ」
と目を細めた、
「それは・・・あとはほら、綺麗な布・・・ちゃんと煮沸消毒したものがあればだし、スライムやら薬草やらは用意したし・・・あっ、あれか、ケイスさんが必要だし、あっ、生徒さん達は?今日はまだ戻ってないの?」
「商会みたいね、あっちはあっちで忙しいのよ」
「そうだったね、じゃ、少し余裕を見て、明後日からなら動けるかな?」
とそこへゾーイが顔を出し、カトカも木箱をガチャガチャ鳴らして下りてくる、
「あっ、その前に寒天培地があれば尚良しだな、うん、じゃ、今日は寒天培地を用意して・・・明日それの実験をやってみるか?」
ジッケン?とミナがピョンと顔を上げた、同時にノールとノーラも顔を上げる、ゾーイはそのまま厨房に入った、フィロメナらの茶を見て、こちらにも欲しいなと思った為で、カトカは近場のテーブルに木箱を置いて腰を落ち着ける、
「昨日も言ってたけど、それどんな実験よ」
「んー・・・何て言うか・・・見えない物を見えるようにする実験」
「なによそれ?」
「そういうものなの、となると・・・やっぱりあれかな明後日から本格的に治療をすることにしようか、エルマさんごめんね、もう少し待って」
済まなそうに微笑むタロウに、ニコリと微笑み頷くエルマである、こうなったらじっくり確実に治療をしてもらいたいとすっかり肝も据わっている、何よりこちらの生活にゆっくりとであるが慣れてきていた、大変に快適で両親や子供達の目も無い、それ故に何気に解放された状態で、心労が遥かに減っている事を実感し、また教師としての喜びも感じている、このまま子供達の勉強を見ながら改めて数学の研究に打ち込むのも悪くないなと昨晩一人考えていたりする、
「あっ、それで・・・」
とフィロメナが会話の区切りだなとオズオズと口を挟む、ん?とタロウがフィロメナを見つめ、アッとユーリは呟くと、
「ごめん、そっちもあったわね、タロウ、こちら、ヘラルダさん、楽師さんだそうよ」
ユーリがあっさりと紹介し、ヘラルダと呼ばれた女性が緊張しているのか固い顔でゆっくりと会釈する、
「あら・・・あっ、そっか、先生の件?」
「そうよ、先生の件」
「へー・・・あっ、もしかしてあれか、もう一人の楽師さん?」
「はい、彼女の妹弟子になるのかな?うちで二人とも働いてもらってます」
「そっか、どっかで見たなーって思ってた、なるほどヘラルダさんね、宜しく」
タロウが柔らかい笑顔を向けるとヘラルダは恥ずかしそうに微笑む、タロウが見る限りまだ若い娘であった、恐らくこの寮の学生達と同じ年代であろう、タロウが指導した楽師は20代後半だったはずで、妹弟子との事であったが、なるほどそういう事もあるのかなとタロウは自然と納得する、
「子供達に教えると聞きまして、そうなると若い方がいいのかなってなったのです、この子もまだこれから修行が必要なんですけどね・・・」
とフィロメナが事の次第を説明した、曰く、タロウが楽曲を指導した楽師は子供がまだ幼く、仕事以外で家を空けるのは難しかったこと、また、ヘラルダ自身がその楽曲を自分も習いたかったと不満を口にしていた事が大きな要因で、さらにはマフダとも仲が良く、ノールとノーラ、主にサスキアが慣れていることもあって、修行半分、指導半分で世話になれないかとの事であった、
「へー、いいと思うよ、エルマ先生としてはどう?」
タロウがじっくりとヘラルダを見つめる、
「私としては嬉しい限りです、ただ、楽器となると完全に門外漢なので、どう指導するのが良いのか・・・その点はお任せするしかないかなと・・・」
「そうだよね・・・あっ、ヘラルダさん、子供用の楽曲とかあるもんなの?」
タロウの問いに、ヘラルダはえっとと言葉を飲み込み、少し考えた様子で、
「・・・その・・・私達が師匠から・・・これはその、父になるのですが、手習いという形で教わる曲はあります、とても簡単なものなのですが・・・それを基礎・・・にして、より複雑な曲に移っていくって感じです」
やはり緊張しているのであろう、固い言葉と表情のままで、しかしその目をしっかりとタロウとエルマ、ユーリと順に向けている、
「そっか、で、あれだよね、楽譜のようなものってないんだよね」
「ガクフですか?」
キョトンと首を傾げる様はやっと年齢相応のものになった、大変柔らかく可愛らしい、
「そうなんだよな・・・楽師さんにも聞いたけど・・・うん、まぁ、そういうもんなんだろうな、楽器って・・・えっとね」
とタロウはどうしたもんだかと右目を閉じて首を傾げ、ウーンと唸りつつ腰を上げて黒板に向かうと、
「これもほら、君らで適当に作り変えて欲しいんだけどさ」
と五本の線を引き、白丸を並べた、なんじゃそれはと大人達の視線が向かい、茶道具を持って戻ったゾーイも今度はなんだろうと足を止める、
「これがね、楽譜ってやつ、で、この丸い点がドの音、次がレ、で次が、ミ、続けて、ファ、ソ、ラ、シ、ドーなんだけどね」
と振り返る、ポカンと口を開けて見つめる者多数、楽師であるヘラルダも何のことやらと不思議そうにしている、
「・・・そうなるよなー・・・えっとね、なんか楽器ある?貸していただけると嬉しい」
「あっはい」
とヘラルダがすぐさまルートを取り出す、何かあればと思って持って来たのだがどうやら正解のようであった、タロウはありがとうと受け取ると、
「まずね」
とボロンとかき鳴らしてルートの調子を確認し、流石手入れが行き届いているなと微笑むと、
「これがドの音」
ボンと一音鳴らす、
「次がレの音」
さらにボンと一音鳴らし、そのままミファソラシドと続け、
「こんな感じでね、曲を視覚化したのがこの五線譜とか楽譜ってやつなんだな、なんていうか・・・慣れればね、見やすいんだけど、初めて見るとね、なんだこりゃって感じだよねー・・・俺もそうだったよ」
と黒板を眺めてから振り返る、唖然とした顔はそのまま、しかし、ヘラルダは理解できたらしい、
「・・・えっと・・・音を書いちゃうんですか?」
「そうだね」
「あの、音を重ねるときは?」
「あぁ、同じようにね、丸を重ねて書いちゃう、こんな感じ」
「あの、旋律は・・・」
「うん、それもね・・・あー、曲によるからだけど、幾つかあるテンポ、速さだね、これを先に指示して、単純にこんな感じで区切っちゃう、わかるかな?」
「・・・わかります、はい、なんとなくですが・・・はい」
タロウは楽譜に記号を書き足し、また妙な記号だなと目を細める者が多数、しかし徐々に明るくそして目を大きく見開くヘラルダであった、
「良かった、で、これに歌詞を合わせるんだけど・・・あっ、そっか、童謡もないよね?」
「ドウヨウ?」
再び顔を見合わせる大人達に、
「うん、大丈夫、無いのは知ってる」
タロウはウーンと右目を閉じて近場の椅子に腰を下ろした、なら聞くなよとユーリが睨む、
「じゃ、一曲、ねこふんじゃった」
タロウがボロンとルートをかき鳴らす、猫?とミナが背筋を伸ばし、ネコーとノールとノーラもピクリと反応した、サスキアまでがうーんと起き出し眠そうに目をこすっている、
「ねこふんじゃった、ねこふんじゃった、ねこふんずけちゃったら、ひっかいた」
軽快に始まった曲と何とも気の抜ける歌詞である、大人達はエッと肩をずらすも、子供達は目を輝かせてタロウを見つめ、レインは突然なんじゃと眉を顰める、
「ねこひっかいた、ねこひっかいた、ねこびっくりしーた、ひっかいた」
と楽し気にタロウは続け、何事かと厨房からソフィアとティル、ミーンも顔を出す、そして、
「あしたのあーさー、おりといでー」
所々の歌詞を修正しタロウは歌い上げた、こちらの世界に無いものが何気に存在する、かつぶし然り、傘然り、眼鏡然りである、少し合わないかなと思いながらもそこは勢いで乗り切るしかない、以前に披露した曲もその辺は気分で乗り切っている、
「どかな?これが童謡、子供の為の楽曲で、子供が歌って子供が演奏できる・・・かどうかは分からないけどそういう曲だね」
ニヤリと微笑むタロウに、ポカンとする大人達、しかしヘラルダは目を輝かせてタロウを見つめ、子供達は、
「かわいいー、ニャンコの歌?ニャンコの歌?」
「ニャンコー」
「ふんじゃうの?」
「ふんじゃったのー」
と大盛り上がりである、起き抜けのサスキアでさえ満面の笑みをタロウに向けていた、
「おう、楽しい歌だろ?」
「うん、えっと、ねこふんじゃった?」
「そうだ、ねこふんじゃった」
「ねこふんじゃった、ねこふんじゃった、ねこふんずけたら?」
「ひっかいた」
「ひっかいたー」
すぐに耳に馴染む曲と分かりやすい歌詞、子供達はふんじゃった、ひっかいたーと大騒ぎで、タロウは楽しそうに微笑み、
「なっ、子供に大うけ、いい曲だろ?」
ニンマリと大人達に微笑むのであった。
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仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
クラスで異世界召喚する前にスキルの検証に30年貰ってもいいですか?
ばふぉりん
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中学三年のある朝、突然教室が光だし、光が収まるとそこには女神様が!
「貴方達は異世界へと勇者召喚されましたが、そのままでは忍びないのでなんとか召喚に割り込みをかけあちらの世界にあった身体へ変換させると共にスキルを与えます。更に何か願いを叶えてあげましょう。これも召喚を止められなかった詫びとします」
「それでは女神様、どんなスキルかわからないまま行くのは不安なので検証期間を30年頂いてもよろしいですか?」
これはスキルを使いこなせないまま召喚された者と、使いこなし過ぎた者の異世界物語である。
<前作ラストで書いた(本当に描きたかったこと)をやってみようと思ったセルフスピンオフです!うまく行くかどうかはホント不安でしかありませんが、表現方法とか教えて頂けると幸いです>
注)本作品は横書きで書いており、顔文字も所々で顔を出してきますので、横読み?推奨です。
(読者様から縦書きだと顔文字が!という指摘を頂きましたので、注意書をと。ただ、表現たとして顔文字を出しているで、顔を出してた時には一通り読み終わった後で横書きで見て頂けると嬉しいです)
聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!
ふぃえま
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「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません?
せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」
不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。
実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。
あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね?
なのに周りの反応は正反対!
なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。
勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
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アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
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『追放令嬢は薬草(ハーブ)に夢中 ~前世の知識でポーションを作っていたら、聖女様より崇められ、私を捨てた王太子が泣きついてきました~』
とびぃ
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追放悪役令嬢の薬学スローライフ ~断罪されたら、そこは未知の薬草宝庫(ランクS)でした。知識チートでポーション作ってたら、王都のパンデミックを救う羽目に~
-第二部(11章~20章)追加しました-
【あらすじ】
「貴様を追放する! 魔物の巣窟『霧深き森』で、朽ち果てるがいい!」
王太子の婚約者ソフィアは、卒業パーティーで断罪された。 しかし、その顔に絶望はなかった。なぜなら、その「断罪劇」こそが、彼女の完璧な計画だったからだ。
彼女の魂は、前世で薬学研究に没頭し過労死した、日本の研究者。 王妃の座も権力闘争も、彼女には退屈な枷でしかない。 彼女が求めたのはただ一つ——誰にも邪魔されず、未知の植物を研究できる「アトリエ」だった。
追放先『霧深き森』は「死の土地」。 だが、チート能力【植物図鑑インターフェイス】を持つソフィアにとって、そこは未知の薬草が群生する、最高の「研究フィールド(ランクS)」だった!
石造りの廃屋を「アトリエ」に改造し、ガラクタから蒸留器を自作。村人を救い、薬師様と慕われ、理想のスローライフ(研究生活)が始まる。 だが、その平穏は長く続かない。 王都では、王宮薬師長の陰謀により、聖女の奇跡すら効かないパンデミック『紫死病』が発生していた。 ソフィアが開発した『特製回復ポーション』の噂が王都に届くとき、彼女の「研究成果」を巡る、新たな戦いが幕を開ける——。
【主な登場人物】
ソフィア・フォン・クライネルト 本作の主人公。元・侯爵令嬢。魂は日本の薬学研究者。 合理的かつ冷徹な思考で、スローライフ(研究)を妨げる障害を「薬学」で排除する。未知の薬草の解析が至上の喜び。
ギルバート・ヴァイス 王宮魔術師団・研究室所属の魔術師。 ソフィアの「科学(薬学)」に魅了され、助手(兼・共同研究者)としてアトリエに入り浸る知的な理解者。
アルベルト王太子 ソフィアの元婚約者。愚かな「正義」でソフィアを追放した張本人。王都の危機に際し、薬を強奪しに来るが……。
リリア 無力な「聖女」。アルベルトに庇護されるが、本物の災厄の前では無力な「駒」。
ロイド・バルトロメウス 『天秤と剣(スケイル&ソード)商会』の会頭。ソフィアに命を救われ、彼女の「薬学」の価値を見抜くビジネスパートナー。
【読みどころ】
「悪役令嬢追放」から始まる、痛快な「ざまぁ」展開! そして、知識チートを駆使した本格的な「薬学(ものづくり)」と、理想の「アトリエ」開拓。 科学と魔法が融合し、パンデミックというシリアスな災厄に立ち向かう、読み応え抜群の薬学ファンタジーをお楽しみください。
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
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子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。
そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。
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オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
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※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
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