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本編
74話 東雲の医療魔法 その35
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そうしてバタバタと集められた軍と学園の要職者、生徒達に向けて講義が始まった、タロウとしては数度目になる講義内容であった為、それ自体は慣れたく無くとも慣れてしまうもので、それなりに流麗かつ分かりやすいものになったと自画自賛するも、やはり少々困ったのが寒天培地を実際に見せながら説明できなかった事であった、後程じっくり見て欲しいとしてバルテルがガラス容器を机に並べ、近くの者は首を伸ばして覗き込み、なるほど確かにと頷くものだから我も我もと立ち上がる者が出始め、クロノスが一喝する場面があった、混乱と言えばその程度で、微生物については今後検証が必要で、検証自体はそれほど難しく無い事、アルコールの作り方とその特性、既に用途は異なるが実験的に製造されている事、スライムについてはその生態と医療にどのように使えるかの要点に絞り、最後に麻酔魔法と治療魔法について解説をし、
「取り合えず、こんなもので、私からは以上になりますが、質疑があれば、起立頂きたく思います」
タロウがそう締め括り一同を見渡す、一同は当初、微生物の説明については実に懐疑的な顔で、しかしクロノスや各軍団長の手前もあり席を立つ者も声高に異議を唱える者もなかったが、それがアルコールからスライム、魔法関連へと進むにつれその重要性を理解したようで、目の色が変わっていくのが壇上のタロウにも分かる程で、しかし、シンと静まり返った教室に動く者は無かった、タロウはいいのかな?と首を傾げるも、やがてザワザワと隣の者と小声で話し始める者が増えていく、そして、
「失礼」
恐らく医者であろう、タロウと同年代の男が席を立つ、はいどうぞと促すと、
「まずは、そのカンテンですか、その製法と入手方法をお教え願いたい、それとアルコール、貴殿は製造を始めているとの事であったが、いずこで入手できるであろうか、また是非に検証したいと思う故、少量でも構わないからお譲り頂きたい、それからスライムに関してはどこで捕獲したものか、取り合えずこの三点を確認したいと思うのですが」
手元の黒板をチラチラと見つめながらハキハキと質問する、タロウはあー、言ってなかった事ばかりだなーと思いつつ、
「はい、まずは寒天ですね、こちらですが・・・あっ、クロノス・・・殿下、どうなってます?」
そう言えばと壁際の席に控えるクロノスを伺う、
「おう、貴様の助言に従って生産地に確認に行かせている、少しばかり時間がかかっているが、もう暫くすれば判明するだろう、向こうは雪が深い、往来そのものが難儀するものでな」
「あっ、そうなのね」
タロウは軽く受けてしまい、これは駄目だとゴホンと咳ばらいをいれ、
「ありがとうございます、殿下・・・お手を煩わせて申し訳ない」
とハッキリと言い直すと、クロノスはニヤリとタロウを睨みつけ、タロウはフンと鼻で笑い、
「そういう事ですので、寒天そのものは手つかずのものがまだ少量ですが手元に確保しております、殿下の調査が終わりましたら、恐らくさらに多くそれなりの量を確保できるものと思いますし、生産量も増やせるかと思います・・・あっ、但しなのですが、この寒天、海の草から作っております、なので、大量に作れるかどうかも未だ未知数・・・その点、少々不明な部分になるかなと思います・・・私もつい先日気付きましてね、まさか存在するとは、と・・・思ってもいませんで・・・まぁそれは良いとして、取り急ぎ・・・そうですね、私が確保してある分を少量になりますが学園長にお渡ししておきますので、それで検証作業を行えるものと思います、製法については・・・寒天培地の事としてよいですよね、であれば、申し訳ない、報告書に記載されておりますのでそちらを参照下さい、ここで実践して見せれば尚良いかと思いますが・・・ただの調理になってしまいます、工程そのものはまさに、はい、料理そのものなので・・・まぁ、その寒天培地そのものも研究対象となると思われますので、皆さまの思考錯誤に期待したいところ、あくまで叩き台と考えて頂ければ幸いと思います、次に・・・」
とタロウは真摯に答えていく、質問者は立ち上がったまま黒板に書き付けているようで、回答が終わると、ありがとうございますと腰を下ろした、すると別の男が立ち上がる、こちらも中々に的を射た質問で、タロウは確かになー等と思いながら答えた、そして、次に席を立ったのが、
「よいかな?」
イフナースである、
「おわっ、殿下、どうされました」
タロウは思わず一歩仰け反った、その様をニヤニヤと笑いながら見つめるイフナース、クロノスも今更なんだと目を細めるも、
「より重要かつ、緊急な事項は魔法だな、マスイ魔法と治療魔法か、その理屈は魔法を扱える者なら多少は理解できる、実に分かりやすい説明であった、しかし、それほどに難しいのか?人を選ぶと貴様言っていたが、その選ぶとはどういう意味だ」
イフナースが落ち着いた声音となり、その内容も確かにそれもそうだと頷けるもので、特に軍団長のお歴々は大きく頷き理解を示し、また、医者の多くもその通りとイフナースへ振り返っている、
「そう・・・ですね、確かに」
タロウは再びゴホンと咳ばらいを入れると、さて、どう話したものかと沈思する、そして、
「まず魔法に関する基礎的な知識、これはこの場にいる皆様であれば当然理解しているものとしてお話します」
と始めると、二つの魔法を扱う際の魔力量から始まり、相性の問題、その魔力操作の難しさ、人体の理解度と続け、
「となりまして、最後に練習するのが大変に・・・難しいのかなと考えます、何故かと言えば・・・特に麻酔魔法、こちらなのですが、慣れないうち・・・かな・・・いや、うん、やはり慣れないうちはですね、まず麻酔魔法を扱える人物を立ち会わせる必要があると考えます、それはあれです、人体の方ですね、こちらが大変にデリケート・・・だと伝わらんかな、繊細な構造であるという事は理解されていると思いますが、その繊細な中でもより繊細な神経に働きかける魔法となっております、故に少し間違えると、一生に渡って不具合を生じさせる場合があると考えます、また使い方を転じれば、患者をその場で永眠させる事も可能でしょう、まさに永眠です、二度と目覚めない・・・故に・・・今回お伝えした麻酔魔法は部分麻酔と呼ばれる体躯の一部に作用するものとなります、知恵の回るものであれば・・・恐らくその本質を理解し、悪用する事もまた簡単かと思いますし、それほどに器用な者でないと今後の発展は勿論、使いこなす事も難しい・・・かもしれません」
ナントと顔を顰める者が多数、それほどに危険な魔法であったかとタロウを睨みつける者多数となる、
「確かにそう聞いている、しかし、貴様の指導で学園の女生徒が実際に扱ったと聞いたが」
エッと観衆の視線がイフナースに集まる、タロウは何もここでそれを口にしなくてもと口元をへの字に曲げ、ユーリとクロノスもまたイフナースの真意が理解できずに困惑し鋭い視線をイフナースへ向けてしまう、
「・・・確かに、先日の手術では魔法を使ったのは女生徒になります、私は指導というか練習台にはなりましたね」
エッと今度はタロウへ向き直る一同、タロウとしてはここは素直に認めるべきだなとの判断である、
「女生徒に出来て、他の者には扱えない魔法なのか?」
続くイフナースの質問に、
「あー・・・殿下も御存知のように魔法、そのものは大変に個人の資質による所が大きいと考えます、私の知るその女生徒はその点において大変に優秀であると付け加えます」
「・・・そうか・・・となると、その二つの魔法、重要で緊急であると俺も思うし、クロノスもそう言っている、しかし、それほどに人を選ぶとなると現場で扱うのは難しいと思うぞ、どう考える?」
ジッとタロウを見つめるイフナース、先程までの薄ら笑いは既に無い、また政治的な、権力者的な思考でもって発言している訳でも無い、あくまで真摯かつ、誠実で、その役職と立場に相応しいものであった、
「はい、そこは・・・あー・・・」
と一旦クロノスを伺うタロウ、なんだと睨み返すクロノス、タロウはすぐにその隣のユーリを伺い、こちらも何か用かと睨み返され、タロウは仕方ないかなーと頬をかくと、
「本題から外れる事になりますが、現在、私と縁を深くする学園のとある研究室にて魔力の増大、それを主題においた研究をしております」
途端にザワザワと蠢きだす一同、クロノスがムゥと唸り、エーそれをここで言うのかとユーリが眉を顰める、
「そちらの研究、どちらかと言えば検証になるのですが、それもある程度まとまりましたら、然るべき方法で公表されると考えます・・・ですので、そちらと合わせれば麻酔にしろ治療にしろ、扱える者が増える可能性があります、あくまで可能性なのですが・・・両殿下共にこの魔法、これが緊急で重要である事を御理解頂き大変に結構であると思いますが、市井に広まる、若しくは都合良く使えるようになるのはまだまだ先の事であるとも考えます」
「失礼、それはどのような方法によるものか・・・」
学園の講師であろう者が思わず立ち上がるも、すぐに軍関係者がギロリと睨みつけ、アッと呻いて恐る恐ると腰を下ろした、軍団長であり、王太子であるイフナースが立ち上がったままなのである、その言葉を遮る事は何人にも許されないし、してはならない行為であった、
「あー・・・えっと・・・」
タロウもその雰囲気を察してイフナースを伺うと、
「良い質問だ、どう答える?」
特に咎める事は無く、タロウに答えを促す、ホッと安堵したように見える先程の質問者、
「はい、申し訳ありません、この場で申し上げるのは難しいかと思います、あくまで検証中となりますので・・・但し、より大人数での検証作業が必要かなとも・・・考えておりました、これもまた人により大きく結果が異なりますので、個々人による相性等も研究対象としております、故に、現時点に於いて軽々しく答える事は難しいと考えます、やってみたが分らない、効果が無いとされますと、例え有効な方法であったとしても無下にされる事もありましょう・・・それは本意ではありません」
「そうか・・・うむ、学園長、この件は無論把握していような」
イフナースの視線が学園長に向かい、学園長がバッと立ち上がると、
「ハッ、確かに報告されております、現状はタロウ殿の説明の通り、研究所内での小規模な検証となっております、今後学生達を含め、学園全体を上げて研究する事も懸案しております」
「なるほど、宜しい、経過報告・・・まではいらんが、なるべく早く結果が欲しい」
「ハッ、対応致します」
大きく頭を下げる学園長に、イフナースは満足そうに頷くと、
「では、その二つの魔法、そう遠くない先で、平民でも気軽に受けられるものとなるのであろうな、兎角研究者らは難しいだの、危険だのと言って便利な魔法を表に出さん、それも無論理解できる点は多いが、この魔法、これは貴族や研究者らの遊び道具にしておくわけにはいかん、王国に住む全ての者に有益であると考える、この場でいつまでにやれとは言わんが、できるだけ早く使える者を増やせ、良いか?」
エッと聴衆の視線が再びイフナースに集まる、次期王と目されるイフナースが兵でも貴族でも無く、まず平民の事を口にしたのだ、軍人が多く集まっているこの場にあって、それは大変に奇妙に聞こえるものであったが、同時にイフナース本人の政治哲学が滲み出ているように思えた、
「・・・はっ、確かに、殿下のおっしゃる通りかと思います、力不足とは思いますが尽力する事を約束します」
タロウは反射的にそう答えて畏まるも、少し言い過ぎたとすぐに後悔した、これでは魔法研究を大衆の面前で次期王であるイフナースに誓ったようなものである、正直そこまでのやる気は更々ないタロウであったりする、
「うむ、期待して待つ、でだ」
イフナースは満足そうに微笑むと、
「最後だ」
とニヤーと意地悪そうに口元を歪め、
「どうせだ、その二つの魔法、実践して見せろ、俺もまだ見ていないからな」
確かにと色めき立つ聴衆、タロウもそうなるよなーと顔を上げ、
「・・・正論ですね・・・では、どうしましょうか」
とクロノスとユーリへ視線を向ける、二人もまたまったくその通りだと納得しているようで、しかし何とかしろとばかりにタロウを睨み返した、
「・・・じゃぁ・・・俺の腕でやるか、ユーリ頼めるか?」
ギリギリでユーリに届く声で問いかけるも、エッ私?とユーリの目が愕然と開かれる、
「だって・・・お前・・・」
しかいないじゃないのとタロウは言いかけ、ユーリも確かにそうなるのだなと察してムーと顔を顰めて腰を上げる、タロウはさてそうなるとと腕まくりをし、先程これが実物ですと見せつけたアルコール入りの瓶の中身を確認する、半分程度であるが入っていた、まぁ腕の一本や二本であれば十分な量となっている、すると、
「おう、俺でやってみせろ」
と野太い声が響き、立ち上がる影が一つ、
「ヘッ?」
とタロウが振り返ると、メインデルトであった、エッと目を見開く軍関係者、イフナースが起立したままニヤニヤとメインデルトに笑いかけ、メインデルトもニヤリと微笑み返したようで、まるで示し合せたかのようであった、
「エッと・・・軍団長自らですか?」
「おう、勿論だ、良い機会だからな、貴様の実力を見てみたいと思っておったしな、まー充分に役に立ってはいるがな」
ガッハッハと笑いながらノシノシと教壇に近づくメインデルト、事務官が慌てて止めようとするが間に合わず、他の軍団長達はそれは面白そうだと微笑む有様で、
「確かに・・・自分の身でやるよりかは分かりやすいと思いますが・・・」
タロウは変に断るよりもここは対応した方が良かろうと袖を直す、
「だろうな、ほれ、どうするのだ?」
メインデルトがあっという間にタロウの隣りに立つと右袖をまくり上げ、その丸々と太く毛むくじゃらの腕を露わにする、
「はい、では・・・あー・・・バルテルさんがいいかな、椅子と手拭い・・・はあるな、椅子を頼む、立ったままでは難しい」
バルテルがすぐさま自身が座っていた椅子を持って教壇に向かい、他に必要なものは?とタロウに耳打ちした、
「取り合えず、大丈夫そう、あっ、側で助手を頼むよ、血で汚すのはまずそうだしね、大切な教室だろうからね」
「はい」
と大きく頷くバルテル、医師としてこの学園に席があるが、助手の経験も十分に積んでいる、任せろとばかりに鼻息が荒い、何を張り切っているんだかとタロウは苦笑しつつ、教壇にタオル数枚とナイフ、大振りの針を並べると、
「では、軍団長、御協力感謝します」
粗末な椅子に座り踏ん反り返るメインデルトにニコリと微笑み、
「おう、宜しく頼むぞ」
心底楽しそうに微笑むメインデルト、まったくこれだからとタロウはアルコールで湿らせたタオルで両手を拭い、メインデルトが差し出す太い腕の消毒に取り掛かるのであった。
「取り合えず、こんなもので、私からは以上になりますが、質疑があれば、起立頂きたく思います」
タロウがそう締め括り一同を見渡す、一同は当初、微生物の説明については実に懐疑的な顔で、しかしクロノスや各軍団長の手前もあり席を立つ者も声高に異議を唱える者もなかったが、それがアルコールからスライム、魔法関連へと進むにつれその重要性を理解したようで、目の色が変わっていくのが壇上のタロウにも分かる程で、しかし、シンと静まり返った教室に動く者は無かった、タロウはいいのかな?と首を傾げるも、やがてザワザワと隣の者と小声で話し始める者が増えていく、そして、
「失礼」
恐らく医者であろう、タロウと同年代の男が席を立つ、はいどうぞと促すと、
「まずは、そのカンテンですか、その製法と入手方法をお教え願いたい、それとアルコール、貴殿は製造を始めているとの事であったが、いずこで入手できるであろうか、また是非に検証したいと思う故、少量でも構わないからお譲り頂きたい、それからスライムに関してはどこで捕獲したものか、取り合えずこの三点を確認したいと思うのですが」
手元の黒板をチラチラと見つめながらハキハキと質問する、タロウはあー、言ってなかった事ばかりだなーと思いつつ、
「はい、まずは寒天ですね、こちらですが・・・あっ、クロノス・・・殿下、どうなってます?」
そう言えばと壁際の席に控えるクロノスを伺う、
「おう、貴様の助言に従って生産地に確認に行かせている、少しばかり時間がかかっているが、もう暫くすれば判明するだろう、向こうは雪が深い、往来そのものが難儀するものでな」
「あっ、そうなのね」
タロウは軽く受けてしまい、これは駄目だとゴホンと咳ばらいをいれ、
「ありがとうございます、殿下・・・お手を煩わせて申し訳ない」
とハッキリと言い直すと、クロノスはニヤリとタロウを睨みつけ、タロウはフンと鼻で笑い、
「そういう事ですので、寒天そのものは手つかずのものがまだ少量ですが手元に確保しております、殿下の調査が終わりましたら、恐らくさらに多くそれなりの量を確保できるものと思いますし、生産量も増やせるかと思います・・・あっ、但しなのですが、この寒天、海の草から作っております、なので、大量に作れるかどうかも未だ未知数・・・その点、少々不明な部分になるかなと思います・・・私もつい先日気付きましてね、まさか存在するとは、と・・・思ってもいませんで・・・まぁそれは良いとして、取り急ぎ・・・そうですね、私が確保してある分を少量になりますが学園長にお渡ししておきますので、それで検証作業を行えるものと思います、製法については・・・寒天培地の事としてよいですよね、であれば、申し訳ない、報告書に記載されておりますのでそちらを参照下さい、ここで実践して見せれば尚良いかと思いますが・・・ただの調理になってしまいます、工程そのものはまさに、はい、料理そのものなので・・・まぁ、その寒天培地そのものも研究対象となると思われますので、皆さまの思考錯誤に期待したいところ、あくまで叩き台と考えて頂ければ幸いと思います、次に・・・」
とタロウは真摯に答えていく、質問者は立ち上がったまま黒板に書き付けているようで、回答が終わると、ありがとうございますと腰を下ろした、すると別の男が立ち上がる、こちらも中々に的を射た質問で、タロウは確かになー等と思いながら答えた、そして、次に席を立ったのが、
「よいかな?」
イフナースである、
「おわっ、殿下、どうされました」
タロウは思わず一歩仰け反った、その様をニヤニヤと笑いながら見つめるイフナース、クロノスも今更なんだと目を細めるも、
「より重要かつ、緊急な事項は魔法だな、マスイ魔法と治療魔法か、その理屈は魔法を扱える者なら多少は理解できる、実に分かりやすい説明であった、しかし、それほどに難しいのか?人を選ぶと貴様言っていたが、その選ぶとはどういう意味だ」
イフナースが落ち着いた声音となり、その内容も確かにそれもそうだと頷けるもので、特に軍団長のお歴々は大きく頷き理解を示し、また、医者の多くもその通りとイフナースへ振り返っている、
「そう・・・ですね、確かに」
タロウは再びゴホンと咳ばらいを入れると、さて、どう話したものかと沈思する、そして、
「まず魔法に関する基礎的な知識、これはこの場にいる皆様であれば当然理解しているものとしてお話します」
と始めると、二つの魔法を扱う際の魔力量から始まり、相性の問題、その魔力操作の難しさ、人体の理解度と続け、
「となりまして、最後に練習するのが大変に・・・難しいのかなと考えます、何故かと言えば・・・特に麻酔魔法、こちらなのですが、慣れないうち・・・かな・・・いや、うん、やはり慣れないうちはですね、まず麻酔魔法を扱える人物を立ち会わせる必要があると考えます、それはあれです、人体の方ですね、こちらが大変にデリケート・・・だと伝わらんかな、繊細な構造であるという事は理解されていると思いますが、その繊細な中でもより繊細な神経に働きかける魔法となっております、故に少し間違えると、一生に渡って不具合を生じさせる場合があると考えます、また使い方を転じれば、患者をその場で永眠させる事も可能でしょう、まさに永眠です、二度と目覚めない・・・故に・・・今回お伝えした麻酔魔法は部分麻酔と呼ばれる体躯の一部に作用するものとなります、知恵の回るものであれば・・・恐らくその本質を理解し、悪用する事もまた簡単かと思いますし、それほどに器用な者でないと今後の発展は勿論、使いこなす事も難しい・・・かもしれません」
ナントと顔を顰める者が多数、それほどに危険な魔法であったかとタロウを睨みつける者多数となる、
「確かにそう聞いている、しかし、貴様の指導で学園の女生徒が実際に扱ったと聞いたが」
エッと観衆の視線がイフナースに集まる、タロウは何もここでそれを口にしなくてもと口元をへの字に曲げ、ユーリとクロノスもまたイフナースの真意が理解できずに困惑し鋭い視線をイフナースへ向けてしまう、
「・・・確かに、先日の手術では魔法を使ったのは女生徒になります、私は指導というか練習台にはなりましたね」
エッと今度はタロウへ向き直る一同、タロウとしてはここは素直に認めるべきだなとの判断である、
「女生徒に出来て、他の者には扱えない魔法なのか?」
続くイフナースの質問に、
「あー・・・殿下も御存知のように魔法、そのものは大変に個人の資質による所が大きいと考えます、私の知るその女生徒はその点において大変に優秀であると付け加えます」
「・・・そうか・・・となると、その二つの魔法、重要で緊急であると俺も思うし、クロノスもそう言っている、しかし、それほどに人を選ぶとなると現場で扱うのは難しいと思うぞ、どう考える?」
ジッとタロウを見つめるイフナース、先程までの薄ら笑いは既に無い、また政治的な、権力者的な思考でもって発言している訳でも無い、あくまで真摯かつ、誠実で、その役職と立場に相応しいものであった、
「はい、そこは・・・あー・・・」
と一旦クロノスを伺うタロウ、なんだと睨み返すクロノス、タロウはすぐにその隣のユーリを伺い、こちらも何か用かと睨み返され、タロウは仕方ないかなーと頬をかくと、
「本題から外れる事になりますが、現在、私と縁を深くする学園のとある研究室にて魔力の増大、それを主題においた研究をしております」
途端にザワザワと蠢きだす一同、クロノスがムゥと唸り、エーそれをここで言うのかとユーリが眉を顰める、
「そちらの研究、どちらかと言えば検証になるのですが、それもある程度まとまりましたら、然るべき方法で公表されると考えます・・・ですので、そちらと合わせれば麻酔にしろ治療にしろ、扱える者が増える可能性があります、あくまで可能性なのですが・・・両殿下共にこの魔法、これが緊急で重要である事を御理解頂き大変に結構であると思いますが、市井に広まる、若しくは都合良く使えるようになるのはまだまだ先の事であるとも考えます」
「失礼、それはどのような方法によるものか・・・」
学園の講師であろう者が思わず立ち上がるも、すぐに軍関係者がギロリと睨みつけ、アッと呻いて恐る恐ると腰を下ろした、軍団長であり、王太子であるイフナースが立ち上がったままなのである、その言葉を遮る事は何人にも許されないし、してはならない行為であった、
「あー・・・えっと・・・」
タロウもその雰囲気を察してイフナースを伺うと、
「良い質問だ、どう答える?」
特に咎める事は無く、タロウに答えを促す、ホッと安堵したように見える先程の質問者、
「はい、申し訳ありません、この場で申し上げるのは難しいかと思います、あくまで検証中となりますので・・・但し、より大人数での検証作業が必要かなとも・・・考えておりました、これもまた人により大きく結果が異なりますので、個々人による相性等も研究対象としております、故に、現時点に於いて軽々しく答える事は難しいと考えます、やってみたが分らない、効果が無いとされますと、例え有効な方法であったとしても無下にされる事もありましょう・・・それは本意ではありません」
「そうか・・・うむ、学園長、この件は無論把握していような」
イフナースの視線が学園長に向かい、学園長がバッと立ち上がると、
「ハッ、確かに報告されております、現状はタロウ殿の説明の通り、研究所内での小規模な検証となっております、今後学生達を含め、学園全体を上げて研究する事も懸案しております」
「なるほど、宜しい、経過報告・・・まではいらんが、なるべく早く結果が欲しい」
「ハッ、対応致します」
大きく頭を下げる学園長に、イフナースは満足そうに頷くと、
「では、その二つの魔法、そう遠くない先で、平民でも気軽に受けられるものとなるのであろうな、兎角研究者らは難しいだの、危険だのと言って便利な魔法を表に出さん、それも無論理解できる点は多いが、この魔法、これは貴族や研究者らの遊び道具にしておくわけにはいかん、王国に住む全ての者に有益であると考える、この場でいつまでにやれとは言わんが、できるだけ早く使える者を増やせ、良いか?」
エッと聴衆の視線が再びイフナースに集まる、次期王と目されるイフナースが兵でも貴族でも無く、まず平民の事を口にしたのだ、軍人が多く集まっているこの場にあって、それは大変に奇妙に聞こえるものであったが、同時にイフナース本人の政治哲学が滲み出ているように思えた、
「・・・はっ、確かに、殿下のおっしゃる通りかと思います、力不足とは思いますが尽力する事を約束します」
タロウは反射的にそう答えて畏まるも、少し言い過ぎたとすぐに後悔した、これでは魔法研究を大衆の面前で次期王であるイフナースに誓ったようなものである、正直そこまでのやる気は更々ないタロウであったりする、
「うむ、期待して待つ、でだ」
イフナースは満足そうに微笑むと、
「最後だ」
とニヤーと意地悪そうに口元を歪め、
「どうせだ、その二つの魔法、実践して見せろ、俺もまだ見ていないからな」
確かにと色めき立つ聴衆、タロウもそうなるよなーと顔を上げ、
「・・・正論ですね・・・では、どうしましょうか」
とクロノスとユーリへ視線を向ける、二人もまたまったくその通りだと納得しているようで、しかし何とかしろとばかりにタロウを睨み返した、
「・・・じゃぁ・・・俺の腕でやるか、ユーリ頼めるか?」
ギリギリでユーリに届く声で問いかけるも、エッ私?とユーリの目が愕然と開かれる、
「だって・・・お前・・・」
しかいないじゃないのとタロウは言いかけ、ユーリも確かにそうなるのだなと察してムーと顔を顰めて腰を上げる、タロウはさてそうなるとと腕まくりをし、先程これが実物ですと見せつけたアルコール入りの瓶の中身を確認する、半分程度であるが入っていた、まぁ腕の一本や二本であれば十分な量となっている、すると、
「おう、俺でやってみせろ」
と野太い声が響き、立ち上がる影が一つ、
「ヘッ?」
とタロウが振り返ると、メインデルトであった、エッと目を見開く軍関係者、イフナースが起立したままニヤニヤとメインデルトに笑いかけ、メインデルトもニヤリと微笑み返したようで、まるで示し合せたかのようであった、
「エッと・・・軍団長自らですか?」
「おう、勿論だ、良い機会だからな、貴様の実力を見てみたいと思っておったしな、まー充分に役に立ってはいるがな」
ガッハッハと笑いながらノシノシと教壇に近づくメインデルト、事務官が慌てて止めようとするが間に合わず、他の軍団長達はそれは面白そうだと微笑む有様で、
「確かに・・・自分の身でやるよりかは分かりやすいと思いますが・・・」
タロウは変に断るよりもここは対応した方が良かろうと袖を直す、
「だろうな、ほれ、どうするのだ?」
メインデルトがあっという間にタロウの隣りに立つと右袖をまくり上げ、その丸々と太く毛むくじゃらの腕を露わにする、
「はい、では・・・あー・・・バルテルさんがいいかな、椅子と手拭い・・・はあるな、椅子を頼む、立ったままでは難しい」
バルテルがすぐさま自身が座っていた椅子を持って教壇に向かい、他に必要なものは?とタロウに耳打ちした、
「取り合えず、大丈夫そう、あっ、側で助手を頼むよ、血で汚すのはまずそうだしね、大切な教室だろうからね」
「はい」
と大きく頷くバルテル、医師としてこの学園に席があるが、助手の経験も十分に積んでいる、任せろとばかりに鼻息が荒い、何を張り切っているんだかとタロウは苦笑しつつ、教壇にタオル数枚とナイフ、大振りの針を並べると、
「では、軍団長、御協力感謝します」
粗末な椅子に座り踏ん反り返るメインデルトにニコリと微笑み、
「おう、宜しく頼むぞ」
心底楽しそうに微笑むメインデルト、まったくこれだからとタロウはアルコールで湿らせたタオルで両手を拭い、メインデルトが差し出す太い腕の消毒に取り掛かるのであった。
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不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。
実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。
あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね?
なのに周りの反応は正反対!
なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。
勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
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アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
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⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
『追放令嬢は薬草(ハーブ)に夢中 ~前世の知識でポーションを作っていたら、聖女様より崇められ、私を捨てた王太子が泣きついてきました~』
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追放悪役令嬢の薬学スローライフ ~断罪されたら、そこは未知の薬草宝庫(ランクS)でした。知識チートでポーション作ってたら、王都のパンデミックを救う羽目に~
-第二部(11章~20章)追加しました-
【あらすじ】
「貴様を追放する! 魔物の巣窟『霧深き森』で、朽ち果てるがいい!」
王太子の婚約者ソフィアは、卒業パーティーで断罪された。 しかし、その顔に絶望はなかった。なぜなら、その「断罪劇」こそが、彼女の完璧な計画だったからだ。
彼女の魂は、前世で薬学研究に没頭し過労死した、日本の研究者。 王妃の座も権力闘争も、彼女には退屈な枷でしかない。 彼女が求めたのはただ一つ——誰にも邪魔されず、未知の植物を研究できる「アトリエ」だった。
追放先『霧深き森』は「死の土地」。 だが、チート能力【植物図鑑インターフェイス】を持つソフィアにとって、そこは未知の薬草が群生する、最高の「研究フィールド(ランクS)」だった!
石造りの廃屋を「アトリエ」に改造し、ガラクタから蒸留器を自作。村人を救い、薬師様と慕われ、理想のスローライフ(研究生活)が始まる。 だが、その平穏は長く続かない。 王都では、王宮薬師長の陰謀により、聖女の奇跡すら効かないパンデミック『紫死病』が発生していた。 ソフィアが開発した『特製回復ポーション』の噂が王都に届くとき、彼女の「研究成果」を巡る、新たな戦いが幕を開ける——。
【主な登場人物】
ソフィア・フォン・クライネルト 本作の主人公。元・侯爵令嬢。魂は日本の薬学研究者。 合理的かつ冷徹な思考で、スローライフ(研究)を妨げる障害を「薬学」で排除する。未知の薬草の解析が至上の喜び。
ギルバート・ヴァイス 王宮魔術師団・研究室所属の魔術師。 ソフィアの「科学(薬学)」に魅了され、助手(兼・共同研究者)としてアトリエに入り浸る知的な理解者。
アルベルト王太子 ソフィアの元婚約者。愚かな「正義」でソフィアを追放した張本人。王都の危機に際し、薬を強奪しに来るが……。
リリア 無力な「聖女」。アルベルトに庇護されるが、本物の災厄の前では無力な「駒」。
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【読みどころ】
「悪役令嬢追放」から始まる、痛快な「ざまぁ」展開! そして、知識チートを駆使した本格的な「薬学(ものづくり)」と、理想の「アトリエ」開拓。 科学と魔法が融合し、パンデミックというシリアスな災厄に立ち向かう、読み応え抜群の薬学ファンタジーをお楽しみください。
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※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
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