8 / 28
8
ヴァレンタイン城の地下、かつては武器庫として使われていた部屋。
そこは今、怪しげな薬草の匂いと、私の熱気で満たされていた。
「――温度よし。攪拌速度、上げて!」
「承知した」
「次は抽出液の投入よ。慎重に、三滴だけ垂らして!」
「三滴だな。……一、二、三。完了だ」
私の指示に、完璧なタイミングと手際で応える助手。
白衣(調理用の割烹着)を纏ったその男性は、他でもない、この領地の主、シリウス・ヴァレンタイン公爵である。
「……素晴らしいですわ、シリウス様。初めてとは思えない手際です」
私は鍋の中身を覗き込みながら感嘆した。
緑色のドロドロだった液体が、化学反応を起こして白く輝き始めている。
「私は元々、魔法薬学の成績はトップだったからな。……それに、君との共同作業だと思うと、不思議と力が湧いてくる」
シリウス様は、割烹着姿でも隠しきれない色気を漂わせながら、爽やかに汗を拭った。
「共同作業というか、タダ働きさせて申し訳ありません。人手が足りなくて」
「構わない。宰相の私を助手としてこき使えるのは、世界で君だけだ。……悪くない気分だ」
「ドMですか?」
「君限定だがな」
サラリと爆弾発言を流しつつ、私は完成したクリームを小瓶に移した。
「できた……! 試作品第一号!」
小瓶の中で、真珠のような光沢を放つ白いクリーム。
あの雑草『シズク草』から抽出した成分を、アロエや蜂蜜と配合して安定化させたものだ。
「さあ、実験台が必要です。……グランさん、ちょっと腕を出して」
部屋の隅でオロオロしていた執事のグランを呼ぶ。
「えっ、わ、私ですか!? 爆発したりしませんよね?」
「失礼な。爆発はしません。……たぶん」
「たぶん!?」
「いいから出す!」
私はグランのしわがれた腕に、クリームをたっぷりと塗り込んだ。
そして、シリウス様の魔法で少し風を送って乾かす。
数分後。
「……こ、これは!」
グランが叫んだ。
クリームを塗った左腕だけが、まるで赤ちゃんの肌のようにツルツル、スベスベになり、しかもワントーン白く輝いているではないか。
右腕の乾燥した肌との対比が凄まじい。
「なんてことだ……! 六十年の歳月が、一瞬で巻き戻ったようです!」
グランが自分の腕を撫で回して感動している。
「成功ね!」
私はガッツポーズをした。
「保湿、美白、アンチエイジング。全ての効果が確認できたわ。これなら王都の貴族女性相手に、言い値で売れる!」
「『言い値』か。……君は本当にブレないな」
シリウス様が苦笑する。
「当然です。原価はタダ同然の雑草。容器は領内のガラス工房で作らせた安価な品。……利益率は驚異の98%よ!」
「もはや詐欺に近い数字だな」
「人件費(シリウス様の労働力)が入っていないからですけどね。さあ、商品名を決めましょう」
私は黒板にキュキュッと文字を書いた。
『ヴァレンタインの奇跡 ~スノー・ホワイト・クリーム~』
「どうかしら? 『冷徹公爵領の雪解けのような白さ』というイメージ戦略でいきます」
「私の名前を使うのか」
「宣伝効果は抜群です。『あの氷の宰相も愛用!?』というキャッチコピーもつけましょう」
「私は使っていないが……まあいい。君がそうしたいなら許可しよう」
シリウス様は寛大に頷いた。
「よし、生産ラインの構築よ! 農村の女性たちを集めて草の採取を依頼! ガラス工房にはフル稼働で容器を発注! 王都の商会には『限定品』として煽りの広告を出すわ!」
私は次々と指示を飛ばす。
私の脳内は今、完全に「経営シミュレーションゲーム」のモードに入っていた。
◇
それから一ヶ月後。
結果から言おう。
『スノー・ホワイト・クリーム』は、爆発的に売れた。
「アジュカ様! 王都の商会から追加注文です! 『在庫が瞬殺された、次はいつ入荷するんだ』と悲鳴が上がっています!」
「北の隣国からも引き合いが来ています! 『金貨二倍出すから優先的に回せ』と!」
「領内の雇用申し込みが殺到しています! 『草むしりで金貨が貰えるなんて夢のようだ』と農民たちがやる気満々です!」
執務室は、嬉しい悲鳴に包まれていた。
机の上には、書類の山ではなく、売上の金貨袋の山が築かれている。
「フフフ……笑いが止まらないとはこのことね」
私は金貨の山を崩さないように、そっと撫でた。
「借金返済どころか、屋敷の改修、道路工事、さらにはシリウス様の私兵団の装備一新まで賄えるわ」
「凄まじいな」
ソファでくつろいでいたシリウス様が、呆れたように、しかし誇らしげに言った。
「まさか、たった一ヶ月で領地の財政が黒字化するとは。……君は錬金術師か?」
「いいえ、ただの『守銭奴』です」
「違いない」
シリウス様は立ち上がり、私の机に近づいてきた。
「さて、アジュカ社長。大成功の報酬についてだが」
「あ、そうでした。成功報酬として、シリウス様には『スノー・ホワイト・クリーム』一生分を差し上げます」
「いらない」
即答された。
「私が欲しいのはクリームではない。……覚えているだろう? 『一日デート』の約束だ」
シリウス様が、机越しに身を乗り出してくる。
至近距離で見つめられ、私は思わずのけぞった。
「あ、あれ……本気だったんですか?」
「当然だ。私は契約には厳しい男だぞ」
逃げ場がない。
いや、正直に言えば、嫌ではない。
この一ヶ月、共に働き、共に笑い(主に売上を見て)、彼の有能さと優しさは嫌というほど分かった。
「……分かりました。約束は守ります」
私は観念して頷いた。
「次の日曜日、スケジュールを空けます。……どこへでも連れて行ってください」
「言ったな? では、とびきりのプランを用意しておこう」
シリウス様は、子供のように無邪気に笑った。
「仕事の話は一切なしだぞ。帳簿も電卓も持ち込み禁止だ」
「うっ……努力します」
「それと、もう一つ」
シリウス様が、私の手元の金貨袋を指差した。
「この売上の一部を使って、新しいドレスを仕立てなさい。日曜日は、それを着てくること」
「え? そんな無駄な……今ある服で十分じゃ」
「『業務命令』だ。……私のためにお洒落をしてくれ、アジュカ」
甘い声で囁かれ、私は顔が熱くなるのを感じた。
この男、本当に心臓に悪い。
「……は、はい。ボス」
「『ボス』はやめろと言っているだろう。『シリウス』でいい」
「……善処します、シリウス……様」
私が蚊の鳴くような声で名前を呼ぶと、彼は満足げに目を細めた。
こうして、私たちの領地経営は順風満帆なスタートを切った。
しかし、光が強ければ影も濃くなる。
この『スノー・ホワイト・クリーム』の大ヒットの噂は、当然ながら王都にも届いていた。
そして、金欠に喘ぐ「彼ら」の耳にも――。
(まあ、あっちがどうなろうと知ったことじゃないけど)
私は金貨の輝きを見つめながら、これから訪れるであろうトラブルの予感に、武者震いをしたのだった。
そこは今、怪しげな薬草の匂いと、私の熱気で満たされていた。
「――温度よし。攪拌速度、上げて!」
「承知した」
「次は抽出液の投入よ。慎重に、三滴だけ垂らして!」
「三滴だな。……一、二、三。完了だ」
私の指示に、完璧なタイミングと手際で応える助手。
白衣(調理用の割烹着)を纏ったその男性は、他でもない、この領地の主、シリウス・ヴァレンタイン公爵である。
「……素晴らしいですわ、シリウス様。初めてとは思えない手際です」
私は鍋の中身を覗き込みながら感嘆した。
緑色のドロドロだった液体が、化学反応を起こして白く輝き始めている。
「私は元々、魔法薬学の成績はトップだったからな。……それに、君との共同作業だと思うと、不思議と力が湧いてくる」
シリウス様は、割烹着姿でも隠しきれない色気を漂わせながら、爽やかに汗を拭った。
「共同作業というか、タダ働きさせて申し訳ありません。人手が足りなくて」
「構わない。宰相の私を助手としてこき使えるのは、世界で君だけだ。……悪くない気分だ」
「ドMですか?」
「君限定だがな」
サラリと爆弾発言を流しつつ、私は完成したクリームを小瓶に移した。
「できた……! 試作品第一号!」
小瓶の中で、真珠のような光沢を放つ白いクリーム。
あの雑草『シズク草』から抽出した成分を、アロエや蜂蜜と配合して安定化させたものだ。
「さあ、実験台が必要です。……グランさん、ちょっと腕を出して」
部屋の隅でオロオロしていた執事のグランを呼ぶ。
「えっ、わ、私ですか!? 爆発したりしませんよね?」
「失礼な。爆発はしません。……たぶん」
「たぶん!?」
「いいから出す!」
私はグランのしわがれた腕に、クリームをたっぷりと塗り込んだ。
そして、シリウス様の魔法で少し風を送って乾かす。
数分後。
「……こ、これは!」
グランが叫んだ。
クリームを塗った左腕だけが、まるで赤ちゃんの肌のようにツルツル、スベスベになり、しかもワントーン白く輝いているではないか。
右腕の乾燥した肌との対比が凄まじい。
「なんてことだ……! 六十年の歳月が、一瞬で巻き戻ったようです!」
グランが自分の腕を撫で回して感動している。
「成功ね!」
私はガッツポーズをした。
「保湿、美白、アンチエイジング。全ての効果が確認できたわ。これなら王都の貴族女性相手に、言い値で売れる!」
「『言い値』か。……君は本当にブレないな」
シリウス様が苦笑する。
「当然です。原価はタダ同然の雑草。容器は領内のガラス工房で作らせた安価な品。……利益率は驚異の98%よ!」
「もはや詐欺に近い数字だな」
「人件費(シリウス様の労働力)が入っていないからですけどね。さあ、商品名を決めましょう」
私は黒板にキュキュッと文字を書いた。
『ヴァレンタインの奇跡 ~スノー・ホワイト・クリーム~』
「どうかしら? 『冷徹公爵領の雪解けのような白さ』というイメージ戦略でいきます」
「私の名前を使うのか」
「宣伝効果は抜群です。『あの氷の宰相も愛用!?』というキャッチコピーもつけましょう」
「私は使っていないが……まあいい。君がそうしたいなら許可しよう」
シリウス様は寛大に頷いた。
「よし、生産ラインの構築よ! 農村の女性たちを集めて草の採取を依頼! ガラス工房にはフル稼働で容器を発注! 王都の商会には『限定品』として煽りの広告を出すわ!」
私は次々と指示を飛ばす。
私の脳内は今、完全に「経営シミュレーションゲーム」のモードに入っていた。
◇
それから一ヶ月後。
結果から言おう。
『スノー・ホワイト・クリーム』は、爆発的に売れた。
「アジュカ様! 王都の商会から追加注文です! 『在庫が瞬殺された、次はいつ入荷するんだ』と悲鳴が上がっています!」
「北の隣国からも引き合いが来ています! 『金貨二倍出すから優先的に回せ』と!」
「領内の雇用申し込みが殺到しています! 『草むしりで金貨が貰えるなんて夢のようだ』と農民たちがやる気満々です!」
執務室は、嬉しい悲鳴に包まれていた。
机の上には、書類の山ではなく、売上の金貨袋の山が築かれている。
「フフフ……笑いが止まらないとはこのことね」
私は金貨の山を崩さないように、そっと撫でた。
「借金返済どころか、屋敷の改修、道路工事、さらにはシリウス様の私兵団の装備一新まで賄えるわ」
「凄まじいな」
ソファでくつろいでいたシリウス様が、呆れたように、しかし誇らしげに言った。
「まさか、たった一ヶ月で領地の財政が黒字化するとは。……君は錬金術師か?」
「いいえ、ただの『守銭奴』です」
「違いない」
シリウス様は立ち上がり、私の机に近づいてきた。
「さて、アジュカ社長。大成功の報酬についてだが」
「あ、そうでした。成功報酬として、シリウス様には『スノー・ホワイト・クリーム』一生分を差し上げます」
「いらない」
即答された。
「私が欲しいのはクリームではない。……覚えているだろう? 『一日デート』の約束だ」
シリウス様が、机越しに身を乗り出してくる。
至近距離で見つめられ、私は思わずのけぞった。
「あ、あれ……本気だったんですか?」
「当然だ。私は契約には厳しい男だぞ」
逃げ場がない。
いや、正直に言えば、嫌ではない。
この一ヶ月、共に働き、共に笑い(主に売上を見て)、彼の有能さと優しさは嫌というほど分かった。
「……分かりました。約束は守ります」
私は観念して頷いた。
「次の日曜日、スケジュールを空けます。……どこへでも連れて行ってください」
「言ったな? では、とびきりのプランを用意しておこう」
シリウス様は、子供のように無邪気に笑った。
「仕事の話は一切なしだぞ。帳簿も電卓も持ち込み禁止だ」
「うっ……努力します」
「それと、もう一つ」
シリウス様が、私の手元の金貨袋を指差した。
「この売上の一部を使って、新しいドレスを仕立てなさい。日曜日は、それを着てくること」
「え? そんな無駄な……今ある服で十分じゃ」
「『業務命令』だ。……私のためにお洒落をしてくれ、アジュカ」
甘い声で囁かれ、私は顔が熱くなるのを感じた。
この男、本当に心臓に悪い。
「……は、はい。ボス」
「『ボス』はやめろと言っているだろう。『シリウス』でいい」
「……善処します、シリウス……様」
私が蚊の鳴くような声で名前を呼ぶと、彼は満足げに目を細めた。
こうして、私たちの領地経営は順風満帆なスタートを切った。
しかし、光が強ければ影も濃くなる。
この『スノー・ホワイト・クリーム』の大ヒットの噂は、当然ながら王都にも届いていた。
そして、金欠に喘ぐ「彼ら」の耳にも――。
(まあ、あっちがどうなろうと知ったことじゃないけど)
私は金貨の輝きを見つめながら、これから訪れるであろうトラブルの予感に、武者震いをしたのだった。
あなたにおすすめの小説
異世界に逃げたシングルマザー経理は、定時退勤だけは譲れない
木風
恋愛
DV夫から一歳の娘を抱えて逃げた鈴木優子は、光に飲まれて異世界の王宮へ転移してしまう。
生きるために差し出した武器は簿記と経理経験――崩壊寸前の王宮会計を『複式簿記』で立て直すことに。
ただし譲れない条件はひとつ、「午後五時の定時退勤」。娘の迎えが最優先だからだ。
その姿勢に、なぜか若き国王ヴィクトルが毎日経理室へ通い始めて――仕事と子育ての先に、家族の形が芽吹いていく。
【完結】婚約破棄される前に察して距離を置いていたら、幼なじみの第三王子が本気になっていました〜義妹と元婚約者? もう過去の人です〜
井上 佳
恋愛
婚約者に裏切られた侯爵令嬢は、
嘆くことも、復讐に走ることもなかった。
彼女が選んだのは、沈黙と誇り。
だがその姿は、
密かに彼女を想い続けていた第三王子の心を動かす。
「私は、国よりも君を選ぶ」
婚約破棄、王位継承、外交圧力――
すべてを越えて選び取る、正統な幸福。
これは、
強く、静かな恋の物語。
2026/02/23 完結
すみっこ婚約破棄同盟〜王子様による婚約破棄のすみっこで〜
まりー
恋愛
ある夜会で王子とその側近達の婚約破棄が行われた。腕に恋人をぶら下げて。所謂、王道断罪劇である。
でもこのお話の主役は麗しのヒロインでも、キラキラ王子でも、学園一の秀才や騎士団期待のホープでもない。これは王道のすみっこで行われた、弱小貴族と商人の子息たちの婚約破棄のお話である。
_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _
「もう俺ら、恋なんてしない!」と言う小学生の息子の話を参考に書きました。登場人物の男子たちの頭は小学生レベルだと思って読んでください。
転生したら魔王のパートナーだったので、悪役令嬢にはなりません。
Y.ひまわり
恋愛
ある日、私は殺された。
歩道橋から突き落とされた瞬間、誰かによって手が差し伸べられる。
気づいたら、そこは異世界。これは、私が読んでいた小説の中だ。
私が転生したのは、悪役令嬢ベアトリーチェだった。
しかも、私が魔王を復活させる鍵らしい。
いやいや、私は悪役令嬢になるつもりはありませんからね!
悪役令嬢にならないように必死で努力するが、宮廷魔術師と組んだヒロイン聖女に色々と邪魔されて……。
魔王を倒すために、召喚された勇者はなんと転生前の私と関わりの深い人物だった。
やがて、どんどん気になってくる魔王の存在。前世に彼と私はどんな関係にあったのか。
そして、鍵とはいったいーー。
※毎日6時と20時に更新予定。全114話(番外編含む)
★小説家になろうでも掲載しています。
婚約破棄、しません
みるくコーヒー
恋愛
公爵令嬢であるユシュニス・キッドソンは夜会で婚約破棄を言い渡される。しかし、彼らの糾弾に言い返して去り際に「婚約破棄、しませんから」と言った。
特に婚約者に執着があるわけでもない彼女が婚約破棄をしない理由はただ一つ。
『彼らを改心させる』という役目を遂げること。
第一王子と自身の兄である公爵家長男、商家の人間である次期侯爵、天才魔導士を改心させることは出来るのか!?
本当にざまぁな感じのやつを書きたかったんです。
※こちらは小説家になろうでも投稿している作品です。アルファポリスへの投稿は初となります。
※宜しければ、今後の励みになりますので感想やアドバイスなど頂けたら幸いです。
※使い方がいまいち分からずネタバレを含む感想をそのまま承認していたりするので感想から読んだりする場合はご注意ください。ヘボ作者で申し訳ないです。
死ぬまでに叶えたい十の願い
木風
恋愛
「あなたを妻として、愛することはない。おそらく、生涯抱くこともないだろう」
三年間の白い結婚——捨て置かれた王太子妃エリアーナに、側妃が『死の呪い』をかけ余命一年を宣告する。
離縁を願うも拒否され、代わりに「死ぬまでに十の願いを叶えて」と契約する——
二人きりの外出、星空、海…ささやかな願いが王太子の心をほどいていく。
『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています
六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。
しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。
「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!
夫に捨てられた私は冷酷公爵と再婚しました
香木陽灯
恋愛
伯爵夫人のマリアーヌは「夜を共に過ごす気にならない」と突然夫に告げられ、わずか五ヶ月で離縁することとなる。
これまで女癖の悪い夫に何度も不倫されても、役立たずと貶されても、文句ひとつ言わず彼を支えてきた。だがその苦労は報われることはなかった。
実家に帰っても父から不当な扱いを受けるマリアーヌ。気分転換に繰り出した街で倒れていた貴族の男性と出会い、彼を助ける。
「離縁したばかり? それは相手の見る目がなかっただけだ。良かったじゃないか。君はもう自由だ」
「自由……」
もう自由なのだとマリアーヌが気づいた矢先、両親と元夫の策略によって再婚を強いられる。相手は婚約者が逃げ出すことで有名な冷酷公爵だった。
ところが冷酷公爵と会ってみると、以前助けた男性だったのだ。
再婚を受け入れたマリアーヌは、公爵と少しずつ仲良くなっていく。
ところが公爵は王命を受け内密に仕事をしているようで……。
一方の元夫は、財政難に陥っていた。
「頼む、助けてくれ! お前は俺に恩があるだろう?」
元夫の悲痛な叫びに、マリアーヌはにっこりと微笑んだ。
「なぜかしら? 貴方を助ける気になりませんの」
※ふんわり設定です