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13話
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「殿下、私にできることがあれば何でも申し付けください」
翌朝、王子の執務室を訪れたアルフレッドはそう申し出た。
普段は実直で口数も多くない人物だが、ティアラが失踪した件で積極的に協力しようとしている。
「アルフレッド、お前がそこまで言ってくれるとは心強い。すでに学園での調査は進めているが、外部との連携を強めたい」
王子は机の上の資料を一つ手渡す。
そこには学園周辺の地図や、最近寄せられた目撃情報が記されていた。
「これによると、ティアラらしき姿を見かけたという宿屋がいくつかあるようだが、確証が得られていない。公爵家からの要請もあって、捜索は慎重に行わざるを得ないんだ」
アルフレッドは地図を鋭い眼差しで見つめ、頷く。
「確かに、公爵家の意向は理解します。しかし、ただ待っているだけでは事態は好転しないでしょう。私も休日を利用して、この付近を回ってみます」
王子は感謝の言葉を述べようとしたが、その前にアルフレッドが続ける。
「ティアラ様は優秀ですが、常に周囲に誤解されてきました。時折、私のところに相談に来られたこともあります。ひとりで抱え込みすぎる傾向があるのです」
その言葉を聞き、王子は少なからず胸が痛んだ。
ティアラのことを分かっているつもりで、実は何も知らなかったのではないか――
そんな自責の念が湧き上がる。
「俺自身、彼女としっかり話したことは少ない。子どもの頃から将来の婚約者候補だという話はあったが、成長してからは忙しさを理由に距離を置いてしまった」
アルフレッドは小さく首を振る。
「殿下、それは決して殿下だけのせいではありません。ティアラ様も、殿下や周囲との距離感を測りかねていたのだと思います。いずれにせよ、今は捜索を急ぎましょう」
王子は決意を込めたまなざしでうなずいた。
「そうだな。まずは外へ向かう必要がある。オスカー隊長に指示を出してあるが、俺自身も足を運ぼう。学園だけでは得られない情報がきっとある」
話し合いを終え、アルフレッドが部屋を出ようとするとき、王子は低い声で呟いた。
「アルフレッド、もしティアラを見つけたら、まずは俺に知らせてくれ。彼女に謝りたいことが山ほどあるんだ」
アルフレッドは振り返り、静かに微笑む。
「もちろんです。殿下の思いが彼女に届くといいですね」
そう言い残して去っていく教官の背中を見つめながら、王子は固く拳を握りしめる。
「ティアラ、俺は……君のことを何も分かっていなかった。戻ってきたら、今度こそきちんと話をしたい」
その願いを叶えるためには、まず彼女を見つけねばならない。
王子が抱く後悔と決意は、ティアラを失った学園の騒ぎ以上に、彼自身の胸をかき乱していた。
翌朝、王子の執務室を訪れたアルフレッドはそう申し出た。
普段は実直で口数も多くない人物だが、ティアラが失踪した件で積極的に協力しようとしている。
「アルフレッド、お前がそこまで言ってくれるとは心強い。すでに学園での調査は進めているが、外部との連携を強めたい」
王子は机の上の資料を一つ手渡す。
そこには学園周辺の地図や、最近寄せられた目撃情報が記されていた。
「これによると、ティアラらしき姿を見かけたという宿屋がいくつかあるようだが、確証が得られていない。公爵家からの要請もあって、捜索は慎重に行わざるを得ないんだ」
アルフレッドは地図を鋭い眼差しで見つめ、頷く。
「確かに、公爵家の意向は理解します。しかし、ただ待っているだけでは事態は好転しないでしょう。私も休日を利用して、この付近を回ってみます」
王子は感謝の言葉を述べようとしたが、その前にアルフレッドが続ける。
「ティアラ様は優秀ですが、常に周囲に誤解されてきました。時折、私のところに相談に来られたこともあります。ひとりで抱え込みすぎる傾向があるのです」
その言葉を聞き、王子は少なからず胸が痛んだ。
ティアラのことを分かっているつもりで、実は何も知らなかったのではないか――
そんな自責の念が湧き上がる。
「俺自身、彼女としっかり話したことは少ない。子どもの頃から将来の婚約者候補だという話はあったが、成長してからは忙しさを理由に距離を置いてしまった」
アルフレッドは小さく首を振る。
「殿下、それは決して殿下だけのせいではありません。ティアラ様も、殿下や周囲との距離感を測りかねていたのだと思います。いずれにせよ、今は捜索を急ぎましょう」
王子は決意を込めたまなざしでうなずいた。
「そうだな。まずは外へ向かう必要がある。オスカー隊長に指示を出してあるが、俺自身も足を運ぼう。学園だけでは得られない情報がきっとある」
話し合いを終え、アルフレッドが部屋を出ようとするとき、王子は低い声で呟いた。
「アルフレッド、もしティアラを見つけたら、まずは俺に知らせてくれ。彼女に謝りたいことが山ほどあるんだ」
アルフレッドは振り返り、静かに微笑む。
「もちろんです。殿下の思いが彼女に届くといいですね」
そう言い残して去っていく教官の背中を見つめながら、王子は固く拳を握りしめる。
「ティアラ、俺は……君のことを何も分かっていなかった。戻ってきたら、今度こそきちんと話をしたい」
その願いを叶えるためには、まず彼女を見つけねばならない。
王子が抱く後悔と決意は、ティアラを失った学園の騒ぎ以上に、彼自身の胸をかき乱していた。
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