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14話
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「いや、違う。そんなわけない」
王子エドワードは、ある噂を耳にしていた。
一部の生徒が、ティアラの失踪を“彼女が謀を巡らせた結果”だと邪推しているというのだ。
「ティアラが、わざといなくなることで同情を買おうとした、だと? そんな馬鹿な話があるか」
声を荒げる王子に、近くにいたマリアが静かに声をかける。
「殿下、お気持ちは分かります。私だって、そんなことをティアラ様がするとは到底思えません」
マリアの瞳には哀しみが宿っている。
彼女自身も、自分が“ヒロイン”と呼ばれ、ティアラが“悪役令嬢”とされる流れを望んでいたわけではない。
しかし、周囲の思惑が勝手に物語を作り上げてしまった。
「噂というものは恐ろしい。根拠がないのに、あっという間に広まってしまう。ティアラはどれほど苦しかっただろうな」
王子が低く呟く。
マリアは沈痛な面持ちでうなずく。
「殿下、もし私がもっと早く気づいていれば、こんなことにはならなかったかもしれません。何もされていないのに、周りが勝手に騒いでいるだけだって、声を上げるべきでした」
その言葉に王子は首を横に振る。
「責任を感じることはない。悪いのはデマを流した連中と、俺をはじめとする周囲の無関心だ。君も被害者のようなものだ」
すると、マリアは複雑そうに眉をひそめた。
「……確かに、私も噂によって騒がれていただけの存在かもしれません。でも、ティアラ様はもっと辛かったはず。今からでも遅くないなら、私は本当のことを伝えたいです」
王子は静かに頷き、マリアの肩に手を置く。
「君の気持ちは分かった。俺も、ティアラが戻ったときにはすべてを正す。だが、彼女をどこで探せばいいのか。公爵家にも確かな情報はないようだ」
マリアは少し考え込み、ぽつりと言う。
「……もしかしたら、ティアラ様は人里離れた場所にいるかもしれません。もともと控えめな方ですし、多くの人の目に晒されるのを嫌うでしょう」
王子はその言葉にうなずいた。
「オスカー隊長からの報告でも、街道沿いの宿屋に似た姿を見たという証言はあるが、どれも曖昧だ。人目を避けて移動している可能性は高い」
マリアは不安げに唇を噛む。
「もしティアラ様が、自分が殿下や学園にふさわしくないと思い込んでしまっていたら……」
その先は言葉にできなかった。
王子は重い沈黙の中で、焦る気持ちを必死に抑える。
「俺は今まで、ティアラとの婚約を当然のことのように捉えていた。彼女がどんな思いで過ごしていたか、まったく気にかけていなかったんだ」
後悔の念が、王子の声を苦くさせる。
マリアはそっと王子の腕に触れ、優しく語りかける。
「殿下、落ち込んでいる時間はありません。私たちがしっかりと動いて、ティアラ様を探し出しましょう。そして誤解を解くために、殿下が直接話をしてあげてください」
王子ははっと顔を上げ、マリアを見つめる。
そして、小さく息を吐き出すように微笑んだ。
「そうだな。まだ終わったわけじゃない。行こう、マリア。時間が惜しい」
こうして二人は、再び動き始める。
ティアラが背負わされてきた“悪役令嬢”という嘘を断ち切り、彼女を救うために。
王子エドワードは、ある噂を耳にしていた。
一部の生徒が、ティアラの失踪を“彼女が謀を巡らせた結果”だと邪推しているというのだ。
「ティアラが、わざといなくなることで同情を買おうとした、だと? そんな馬鹿な話があるか」
声を荒げる王子に、近くにいたマリアが静かに声をかける。
「殿下、お気持ちは分かります。私だって、そんなことをティアラ様がするとは到底思えません」
マリアの瞳には哀しみが宿っている。
彼女自身も、自分が“ヒロイン”と呼ばれ、ティアラが“悪役令嬢”とされる流れを望んでいたわけではない。
しかし、周囲の思惑が勝手に物語を作り上げてしまった。
「噂というものは恐ろしい。根拠がないのに、あっという間に広まってしまう。ティアラはどれほど苦しかっただろうな」
王子が低く呟く。
マリアは沈痛な面持ちでうなずく。
「殿下、もし私がもっと早く気づいていれば、こんなことにはならなかったかもしれません。何もされていないのに、周りが勝手に騒いでいるだけだって、声を上げるべきでした」
その言葉に王子は首を横に振る。
「責任を感じることはない。悪いのはデマを流した連中と、俺をはじめとする周囲の無関心だ。君も被害者のようなものだ」
すると、マリアは複雑そうに眉をひそめた。
「……確かに、私も噂によって騒がれていただけの存在かもしれません。でも、ティアラ様はもっと辛かったはず。今からでも遅くないなら、私は本当のことを伝えたいです」
王子は静かに頷き、マリアの肩に手を置く。
「君の気持ちは分かった。俺も、ティアラが戻ったときにはすべてを正す。だが、彼女をどこで探せばいいのか。公爵家にも確かな情報はないようだ」
マリアは少し考え込み、ぽつりと言う。
「……もしかしたら、ティアラ様は人里離れた場所にいるかもしれません。もともと控えめな方ですし、多くの人の目に晒されるのを嫌うでしょう」
王子はその言葉にうなずいた。
「オスカー隊長からの報告でも、街道沿いの宿屋に似た姿を見たという証言はあるが、どれも曖昧だ。人目を避けて移動している可能性は高い」
マリアは不安げに唇を噛む。
「もしティアラ様が、自分が殿下や学園にふさわしくないと思い込んでしまっていたら……」
その先は言葉にできなかった。
王子は重い沈黙の中で、焦る気持ちを必死に抑える。
「俺は今まで、ティアラとの婚約を当然のことのように捉えていた。彼女がどんな思いで過ごしていたか、まったく気にかけていなかったんだ」
後悔の念が、王子の声を苦くさせる。
マリアはそっと王子の腕に触れ、優しく語りかける。
「殿下、落ち込んでいる時間はありません。私たちがしっかりと動いて、ティアラ様を探し出しましょう。そして誤解を解くために、殿下が直接話をしてあげてください」
王子ははっと顔を上げ、マリアを見つめる。
そして、小さく息を吐き出すように微笑んだ。
「そうだな。まだ終わったわけじゃない。行こう、マリア。時間が惜しい」
こうして二人は、再び動き始める。
ティアラが背負わされてきた“悪役令嬢”という嘘を断ち切り、彼女を救うために。
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