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15話
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「あなたたち、ちょっといいかしら」
昼休みの中庭。マリアが声をかけたのは、ティアラの取り巻きのうちでも特に調子が良く、噂話に熱心だった令嬢二人だった。
彼女たちは驚いた顔で振り向き、そして気まずそうに目をそらす。
「マリアさん……何の用かしら」
マリアは優しい顔つきをしながらも、言葉には揺るぎない意志が宿っている。
「もうご存じでしょう? ティアラ様が学園からいなくなった原因は、あなたたちが流した噂にもある。私自身、ティアラ様から何かされた覚えはないのに、どうしてこんな騒ぎになってしまったのか」
問い詰められた令嬢のひとりが、ばつの悪そうに口を開く。
「それは……私たちはただ、周りで言われていることを少し広めていただけで……」
マリアはその言葉を最後まで聞かず、首を横に振る。
「少しじゃないわ。あなたたちが“ティアラ様が悪事を働いている”と断定的に言い触らしていたのを知っています。私、聞いたもの」
もう一人の令嬢が焦ったように口を挟んだ。
「わ、私たちだけじゃないのよ。みんなが噂していたわ。平民出身のマリアさんを陥れようとしているって。それに、ティアラ様ならやりかねない、なんて」
「それはただの推測でしょう。自分の妄想をさも事実のように語って、人を傷つける。そんなの、絶対に許されない」
マリアの声は震えていた。
普段は穏やかな彼女だが、今回ばかりは感情を抑えきれない。
「ティアラ様が戻ってきても、彼女をどう弁明させればいいの? あなたたちは責任を取るつもりがあるの?」
令嬢たちは言葉に詰まる。
ようやく一人が、弱々しく答えた。
「……ごめんなさい。私たちも少し、いや、かなり浮かれていたの。ティアラ様を悪者にすれば、自分たちが脚光を浴びるんじゃないかって」
マリアは苦い表情で頷く。
「それがあなたたちの本音なのね。分かったわ。じゃあ今からでも遅くない。王子殿下や学園長に、噂が嘘だったときちんと話してちょうだい」
二人は戸惑うように目を合わせ、黙り込む。
だが、マリアのまなざしは厳しく、同時に哀しみに満ちていた。
「私も、あなたたちが嫌いなわけじゃない。でも、嘘をついたままでは何も解決しない。ティアラ様が傷ついたままじゃ、学園全体が後味の悪い状態のままだわ」
そう言われて、令嬢たちは肩を落とした。
「……そうね。私たちだって、こんな空気の中で過ごすのはしんどい。分かったわ。殿下に謝罪して、事実を話す勇気を出す」
もう一人も、苦渋の表情で頷いた。
「本当は怖いけど、噂を流した責任を取らないと。私たちもいつまでも逃げるわけにはいかない」
マリアは深く息をつき、うなずく。
「ありがとう。私も協力するわ。ティアラ様が無事に戻ってきたとき、一番傷つくのは彼女自身なんだから」
そうしてマリアは二人と別れ、中庭を後にした。
心の奥にはまだ重苦しい痛みがあるが、一歩前進した手応えもある。
周囲がやっと、自分たちのやってきたことの重大さに気づき始めたのだ。
「ティアラ様、どうか無事でいてください。私も勇気を出すから、あなたも戻ってきてくれますよね」
空に向かって小さく呟き、マリアは決意を新たに教室へと戻っていった。
昼休みの中庭。マリアが声をかけたのは、ティアラの取り巻きのうちでも特に調子が良く、噂話に熱心だった令嬢二人だった。
彼女たちは驚いた顔で振り向き、そして気まずそうに目をそらす。
「マリアさん……何の用かしら」
マリアは優しい顔つきをしながらも、言葉には揺るぎない意志が宿っている。
「もうご存じでしょう? ティアラ様が学園からいなくなった原因は、あなたたちが流した噂にもある。私自身、ティアラ様から何かされた覚えはないのに、どうしてこんな騒ぎになってしまったのか」
問い詰められた令嬢のひとりが、ばつの悪そうに口を開く。
「それは……私たちはただ、周りで言われていることを少し広めていただけで……」
マリアはその言葉を最後まで聞かず、首を横に振る。
「少しじゃないわ。あなたたちが“ティアラ様が悪事を働いている”と断定的に言い触らしていたのを知っています。私、聞いたもの」
もう一人の令嬢が焦ったように口を挟んだ。
「わ、私たちだけじゃないのよ。みんなが噂していたわ。平民出身のマリアさんを陥れようとしているって。それに、ティアラ様ならやりかねない、なんて」
「それはただの推測でしょう。自分の妄想をさも事実のように語って、人を傷つける。そんなの、絶対に許されない」
マリアの声は震えていた。
普段は穏やかな彼女だが、今回ばかりは感情を抑えきれない。
「ティアラ様が戻ってきても、彼女をどう弁明させればいいの? あなたたちは責任を取るつもりがあるの?」
令嬢たちは言葉に詰まる。
ようやく一人が、弱々しく答えた。
「……ごめんなさい。私たちも少し、いや、かなり浮かれていたの。ティアラ様を悪者にすれば、自分たちが脚光を浴びるんじゃないかって」
マリアは苦い表情で頷く。
「それがあなたたちの本音なのね。分かったわ。じゃあ今からでも遅くない。王子殿下や学園長に、噂が嘘だったときちんと話してちょうだい」
二人は戸惑うように目を合わせ、黙り込む。
だが、マリアのまなざしは厳しく、同時に哀しみに満ちていた。
「私も、あなたたちが嫌いなわけじゃない。でも、嘘をついたままでは何も解決しない。ティアラ様が傷ついたままじゃ、学園全体が後味の悪い状態のままだわ」
そう言われて、令嬢たちは肩を落とした。
「……そうね。私たちだって、こんな空気の中で過ごすのはしんどい。分かったわ。殿下に謝罪して、事実を話す勇気を出す」
もう一人も、苦渋の表情で頷いた。
「本当は怖いけど、噂を流した責任を取らないと。私たちもいつまでも逃げるわけにはいかない」
マリアは深く息をつき、うなずく。
「ありがとう。私も協力するわ。ティアラ様が無事に戻ってきたとき、一番傷つくのは彼女自身なんだから」
そうしてマリアは二人と別れ、中庭を後にした。
心の奥にはまだ重苦しい痛みがあるが、一歩前進した手応えもある。
周囲がやっと、自分たちのやってきたことの重大さに気づき始めたのだ。
「ティアラ様、どうか無事でいてください。私も勇気を出すから、あなたも戻ってきてくれますよね」
空に向かって小さく呟き、マリアは決意を新たに教室へと戻っていった。
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