断罪前に“悪役"令嬢は、姿を消した。

パリパリかぷちーの

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18話

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「ご当主、このままでは殿下にも誤解を与えかねません。何としてもお嬢様の行方を掴む必要があるのでは」

公爵家の執務室で、家令が切迫した様子で進言する。
そこにはティアラの父、カーライル公爵が疲れた表情で椅子に深く腰掛けていた。

「分かっている。だが、下手に探し回って騒ぎを大きくすれば、娘の名誉にも傷がつく。あの子が何を思って出て行ったのか、私はそこを理解してやれなかった」

重々しく語るカーライル公爵の姿に、家令は憤りとも嘆きともつかない面持ちを浮かべる。

「しかし、公爵家としても放置はできませぬ。王子殿下がすでに捜索を始めておられるのはご存じでしょう? いずれ事態が大々的に動き出すのは確実です」

カーライル公爵は机に肘をつき、額に手を当てた。

「娘が夜明け前に出て行ったことは知っている。あの子なりに考えた結果なのだろうが……。馬車を用意させる間もなく、自ら道を進んだと聞いている。私からは具体的な行き先は知らない」

家令は困惑を隠せない。

「お嬢様のためには、早く連れ戻すべきだという意見もあります。しかし、もし強制的に引き戻す形になれば、かえってお嬢様の心を傷つけるかもしれません」

カーライル公爵は険しい顔でうなずく。

「分かっている。私としては、王子殿下にお任せするしかないと考えている。あの方はティアラの婚約候補として、真摯に娘を扱ってくださるはずだ」

そう言いつつも、公爵の声には迷いが混ざっている。
真実を見失わずに済むのか――
娘を想う親心と、公爵家の体面への配慮が、彼の判断を曖昧にしているようだ。

「ご当主、少なくとも街道沿いの宿や、領地内にある別荘などは内密に探らせましょう。何もしないわけにはいきません」

カーライル公爵はようやく重い腰を上げるようにして立ち上がる。

「分かった。必要最小限の人数で、派手にならないよう手配してくれ。あくまで、あの子の意思を尊重する形を維持しなければ」

家令は深く一礼し、すぐに部下へ指示を出すため廊下へと消えていった。

「ティアラ……お前が苦しんでいるのなら、父として何とかしてやりたい。だが、私はお前の人生を強制する権利はない。どうか、無事でいてくれ」

誰もいない執務室で、カーライル公爵の低い独白が響く。
厳粛な雰囲気の中、父の祈りにも似た想いは空虚にこだまするばかりだった。
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