断罪前に“悪役"令嬢は、姿を消した。

パリパリかぷちーの

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17話

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「その娘さん、ちょっと疲れた顔していたけど、丁寧な言葉遣いだったわ。大きめの荷物を持っていたから、旅慣れしているのかと思ったわよ」

オスカーと部下が訪ねた雑貨屋で、中年の女店主がそう語る。
先ほどの宿屋の女将から得た情報を頼りに来てみると、確かにティアラらしき人物が買い物をしたという話が出てきた。

「どんなものを買っていたか覚えているか?」
「ええ、確か保存食に薬草、あと少し厚手の衣服ね。それから、地図も欲しいって言ってたけど、うちにはなかったから隣町の商人を紹介したの」

オスカーは地図が特に気になるポイントだと思った。
ティアラがわざわざ郊外に出て、地図を探しているということは、さらなる遠方へ向かおうとしているのかもしれない。

「その商人とやらはどこにいる?」
「ちょうど町外れの市場に滞在してるはずよ。明日の昼には隣の領地に移動するとか言ってたわね」

オスカーはすぐに部下の数名を市場へ向かわせるよう指示を出す。
店主は心配そうにオスカーの顔を見つめる。

「その娘さん、大丈夫かしら? 迷子ってわけでもなさそうだし、家出って感じでもなかったけど」

オスカーは苦い顔でうなずく。

「事情があるんだろう。ご協力に感謝する。もしまた何か思い出したら教えてくれ」

雑貨屋を出ると、オスカーは部下と手分けして町の情報を集め始めた。
しかし、これ以上の大きな手がかりは得られず、日も傾き始める。

「殿下に途中経過を報告しておかないとな」

オスカーはそう呟き、手持ちの書簡を取り出す。
馬を駆って王子のもとへ急ぎ戻るには、既に少し時間が遅いかもしれない。
だが、翌日になるよりは早い方がいい。

「ティアラ様、どうかご無事で」

オスカーは馬にまたがり、一刻も早くこの情報を王子に届けるべく、全速力で町を離れた。
夜風が吹き抜ける街道を駆け抜ける彼の耳には、馬のひづめの音だけが虚しく響いていた。

一方その頃――
ティアラは小高い丘の上に立つ古い別荘で、ひっそりと明かりをともしていた。
買い込んだ保存食や薬草を丁寧に整理し、地図を広げては、次の行き先を考えている。

「殿下やマリアに、何も言わずに消えてきてしまった……」

小さく呟き、胸を締めつける孤独と後悔に耐えながら、ティアラは自分自身に問いかける。
本当に、このまま離れ続けることが、みんなのためになるのだろうか――
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