「失礼いたしますわ」と唇を噛む悪役令嬢は、破滅という結末から外れた?

パリパリかぷちーの

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7話

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王宮の中庭――

今日の午後は、貴族子女たちによる小規模な茶会が開かれていた。  
王太子の断罪から日が浅いとはいえ、こうした場の流れは止まることがない。

そこに、レオノーラの姿があった。

「……あら、あの方……」

「まさか来るなんて……でも、招待は正式に届いていたはずよ」

「本当に“あの件”のままだったなら、さすがに来ないと思っていたけれど……」

囁き合う声が、あえて聞こえるように発せられているのは分かっていた。  
レオノーラは何も言わず、ゆっくりと歩を進める。  
周囲の視線を一身に浴びながらも、その歩みに乱れはない。

そこにいたのは、かつての学友たち。  
学術院で共に学び、笑い合った貴族の令嬢たち。  
いずれも良家の子息令嬢であり、王宮との繋がりも強い。

だが今、彼女たちの誰も、レオノーラに声をかけようとはしなかった。

目が合えばすぐに逸らされ、笑顔は不自然に凍りつく。  
話しかけられることを恐れているようでもあり、あるいは――話しかけたいのにできないようにも見えた。

「……そのままでいいのよ。わたくしも、無理に話すつもりはございませんもの」

レオノーラはひとり、会場の隅に用意された椅子に腰を下ろした。  
香茶にそっと口をつける。  
その香りすら、今はどこか冷たく感じる。

ミーナが控えめにそばに立ち、震える声で呟く。

「皆様……昔はあんなに、仲良しだったのに……」

「だからこそ、でしょうね」

レオノーラの声は穏やかだった。  
過去に繋がっていた人間だからこそ、今、真正面から自分と向き合うことができない。  
真実が見えているのに、それを認めることができない者の沈黙。  
それは“敵意”ではなく、“弱さ”という名の優しさだった。

「もしも誰かが、わたくしに『何もしていないと信じている』と言えば――その人もまた標的にされる。……それだけのこと」

「……悔しく、ないのですか?」

「悔しさよりも……彼女たちの目を見て、哀しいですわ」

ミーナは黙った。  
沈黙がまた、空気のように場を覆う。

レオノーラはそっと目を閉じた。  
茶の香りが、風に乗って遠くへ流れていく。  
それはまるで、過去との訣別を告げるような香りだった。

真実はここにある。  
けれど、それを正面から見るには、勇気がいる。

沈黙する者たちの背中は、それを雄弁に物語っていた。

そしてレオノーラは静かに立ち上がる。  
再び歩き出すその姿に、誰も声をかけなかった。  
けれどその足取りは、確かに重く、そして誇り高かった。
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