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24話
静まり返った王宮審問の場に、重く、威厳ある足音が響いた。
「アデル=ヴァン=エーデルハイト侯爵、参上仕る」
朗々とした声が広間に満ちる。
ゆっくりと壇上に歩を進める男の姿に、会場の空気がざわりと揺れた。
レオノーラの父――アデル侯。
王国でも屈指の名門の当主であり、政務を支える実力派の重鎮としても知られる男。
だが、この一年、彼は一切の声明を出してこなかった。
娘が断罪され、家名が泥に塗れようとも、沈黙を貫いていた。
その理由は、誰にも明かされなかった。
だからこそ、今、この登壇は“意味”を持つ。
壇上で一礼を終えたアデル侯は、前を見据え、深く息を吐いた。
「この場において、私が語るのは父として、そして王国の臣としての言葉である」
低く、静かながらも、何より力強い宣言だった。
「本来、審問に貴族の家長が口を挟むことは無粋とされよう。
だが――国の根幹を揺るがす疑念がここにあるならば、
それに沈黙を貫くことは、すでに“忠誠”とは呼べまい」
壇上の神官たちが顔をしかめ、議員たちがざわつき始める。
だが、アデルはひるまなかった。
「わたしの娘は、“悪役令嬢”と呼ばれた。
だが、娘を悪役に仕立てたのは誰か。
証拠もなく、涙の演出ひとつで一人の人間を裁いたその構造こそが、
この国の“病巣”であったことを、ようやく王宮は見つめ始めている」
その言葉に、民衆の一部から小さな頷きがこぼれる。
「私は父として、娘の誇りを信じている。
だが、それ以上に、王国の未来に対して責任を負う者として、
この国が“感情”で裁きを下す場所であってはならぬと信じている」
声が、確実に会場を動かしていた。
沈黙していた貴族たちの目が、ゆっくりとアデル侯へと向けられる。
王族の席では、王妃が扇を胸元でゆるやかに閉じ、王太子ユリウスはまっすぐその背を見つめていた。
「法とは、信仰に対する否定ではない。
だが、信仰をもってしても、法に抗う正当性にはならぬ。
それを神殿が忘れたというのならば、神殿もまた、裁かれる側に立つべきであろう」
空気が、変わった。
言葉は刃ではない。
だが、真に重い言葉は、心の奥に沈み、やがて人を動かす。
沈黙していた者たちが、ゆっくりと視線を上げていく。
それは、誰かの涙ではなく――“理”に動かされた民の目。
アデルは最後に、視線を真正面に向けて言い放った。
「娘が沈黙を破った今、わたしも沈黙を終える。
これは“親の情”などではない。
――これは、王国に仕える者としての、正義だ」
その一言は、神殿の石壁よりも重く、静かに会場の芯を震わせた。
「アデル=ヴァン=エーデルハイト侯爵、参上仕る」
朗々とした声が広間に満ちる。
ゆっくりと壇上に歩を進める男の姿に、会場の空気がざわりと揺れた。
レオノーラの父――アデル侯。
王国でも屈指の名門の当主であり、政務を支える実力派の重鎮としても知られる男。
だが、この一年、彼は一切の声明を出してこなかった。
娘が断罪され、家名が泥に塗れようとも、沈黙を貫いていた。
その理由は、誰にも明かされなかった。
だからこそ、今、この登壇は“意味”を持つ。
壇上で一礼を終えたアデル侯は、前を見据え、深く息を吐いた。
「この場において、私が語るのは父として、そして王国の臣としての言葉である」
低く、静かながらも、何より力強い宣言だった。
「本来、審問に貴族の家長が口を挟むことは無粋とされよう。
だが――国の根幹を揺るがす疑念がここにあるならば、
それに沈黙を貫くことは、すでに“忠誠”とは呼べまい」
壇上の神官たちが顔をしかめ、議員たちがざわつき始める。
だが、アデルはひるまなかった。
「わたしの娘は、“悪役令嬢”と呼ばれた。
だが、娘を悪役に仕立てたのは誰か。
証拠もなく、涙の演出ひとつで一人の人間を裁いたその構造こそが、
この国の“病巣”であったことを、ようやく王宮は見つめ始めている」
その言葉に、民衆の一部から小さな頷きがこぼれる。
「私は父として、娘の誇りを信じている。
だが、それ以上に、王国の未来に対して責任を負う者として、
この国が“感情”で裁きを下す場所であってはならぬと信じている」
声が、確実に会場を動かしていた。
沈黙していた貴族たちの目が、ゆっくりとアデル侯へと向けられる。
王族の席では、王妃が扇を胸元でゆるやかに閉じ、王太子ユリウスはまっすぐその背を見つめていた。
「法とは、信仰に対する否定ではない。
だが、信仰をもってしても、法に抗う正当性にはならぬ。
それを神殿が忘れたというのならば、神殿もまた、裁かれる側に立つべきであろう」
空気が、変わった。
言葉は刃ではない。
だが、真に重い言葉は、心の奥に沈み、やがて人を動かす。
沈黙していた者たちが、ゆっくりと視線を上げていく。
それは、誰かの涙ではなく――“理”に動かされた民の目。
アデルは最後に、視線を真正面に向けて言い放った。
「娘が沈黙を破った今、わたしも沈黙を終える。
これは“親の情”などではない。
――これは、王国に仕える者としての、正義だ」
その一言は、神殿の石壁よりも重く、静かに会場の芯を震わせた。
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