「失礼いたしますわ」と唇を噛む悪役令嬢は、破滅という結末から外れた?

パリパリかぷちーの

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25話

王都リュミエール、王宮中央議場。  
そこは王国の政務を司る、貴族たちの意志が交差する正式な“審議の場”。

荘厳な天蓋の下、百席を超える椅子に重鎮たちが並び、  
玉座席には国王不在の代行として、王妃と王太子ユリウスが臨席していた。

そして今、その壇上に映し出された議題に、誰もが息を呑む。

「本日の主要審議項目:  
 エーデルハイト侯爵令嬢レオノーラ殿に関する神殿断罪処分の是非、および制度的再調査の件」

静かなざわめき。  
けれどそれは混乱ではなかった。  
“かつての悪役令嬢”の名が、ついにこの王国の政治の中心に現れたのだ。

証言台に立つレオノーラの姿は、堂々としていた。

深緋のドレスに、装飾を控えた銀の髪飾り。  
余計な装いはなかったが、それがむしろ“語る者”としての気高さを引き立てていた。

「令嬢、改めて問う。あなたは、聖女ミレーユ殿が神の声を偽ったと断じるのか?」

議長の問いに、場の空気が張り詰める。

レオノーラは一度だけ目を伏せ、そしてはっきりと顔を上げた。

「わたくしが断じるのは、“制度の構造”においてです。  
 聖女個人の善意や感情ではなく、奇跡と呼ばれた出来事が“誰かの手で整えられた可能性”に、証拠が積み重ねられております」

「証拠とは?」

「契約文における第三者署名の欠落、神託記録の二重記載と日付不一致、  
 そして“奇跡の泉”に記された不在記録と、同時刻に発せられた神託との矛盾です」

彼女の声は淀みなかった。  
一言ごとに場の空気が揺れ、幾人かの貴族が書記に指示を飛ばす。

「では貴女は、自らが受けた断罪について、無実を訴えるか?」

問いは鋭い。  
だが、それに対する彼女の答えもまた明快だった。

「いいえ、わたくしは“無実”を主張する者ではありません。  
 “裁きを受ける機会すら与えられなかった者”として、その正当性を問うのです」

静まり返る議場。

王妃が軽く目を細め、王太子ユリウスの喉が一度だけ動いた。

レオノーラは言葉を続ける。

「この場に立てたこと、それ自体が“変化”の証です。  
 そしてわたくしは、本日ここにおいて“悪役”ではなく、  
 “語るに足る者”として扱われていることを誇りに思います」

議場の一隅から、誰かが静かに拍手を始めた。  
それに追うように、二人、三人と音が重なっていく。

やがて、それは決して大きくないが、確かな“肯定”として広がった。

王宮議会の中心で、“悪役令嬢”の名が、  
初めて真っ当な議題として認められた日。

断罪ではなく、対話として。  
沈黙ではなく、言葉として。

レオノーラ=ヴァン=エーデルハイトは、ついに“自らの声”で問いに答える者となった。
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