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「――今よ」
ワルツが終わり、会場が割れんばかりの拍手に包まれた瞬間。
私はドレスの隠しポケットから、魔道具『瞬間煙幕玉(パーティ用クラッカー改造版)』を取り出しました。
(ごめんあそばせ、皆様。この美しい夜会を、私が地獄に変えて差し上げますわ!)
私はそれを床に叩きつけました。
パンッ!!
乾いた破裂音と共に、真っ白な煙がダンスフロアの中央で巻き起こりました。
「きゃあああ!?」
「な、なんだ!?」
「火事か!?」
会場は一瞬でパニックに陥ります。
視界が遮られ、貴族たちが逃げ惑う混沌の中。
私はハンカチで口を覆い、迷いなくターゲットへと走りました。
目指すは、会場奥の台座に鎮座する『建国の宝玉』。
(警備兵が慌てている今がチャンス! キース様に教わった『気配を消す歩法』が役に立つわ!)
私は煙の中を滑るように移動し、ガラスケースの前へ。
そして、あらかじめ用意していた『ガラス切り(ダイヤモンド製)』で、ケースの裏側を円形に切り取りました。
カポッ。
音もなくガラスが外れます。
私は手を伸ばし、台座の上の青い宝石を鷲掴みにしました。
(ゲット! ……重っ! これ本当にサファイア? 漬物石くらいあるわよ?)
ずっしりとした重量感に驚きつつも、私はそれを高々と掲げました。
そして、煙が晴れ始めた絶妙なタイミングで、近くのテーブルの上に飛び乗りました。
「オッホッホッホッホ!!」
会場中に響き渡る高笑い。
煙がサーッと引いていき、衆人環視の中、テーブルの上で仁王立ちする私の姿が露わになりました。
「そこまでですわ! この茶番は!」
「……シュガー!?」
アレクセイ殿下が目を見開いて叫びました。
マリアさんも、口元を押さえて絶句しています。
会場中の視線が、私と、私の手にある青い宝石に釘付けになりました。
「あ、あれは……!」
「建国の宝玉!?」
「まさか、盗んだのか!?」
どよめきが広がります。
成功です。
完全に「ヤバイ奴」として認知されました。
私は扇で口元を隠し、悪役令嬢としての演説を開始しました。
「お聞きなさい、愚かな貴族ども! そしてアレクセイ殿下!」
私はビシッと殿下を指差しました。
「私は認めません! どこの馬の骨とも知れぬ平民娘が、次期王妃になるなど! この国の恥ですわ!」
「なっ……! シュガー、貴様何を言っている!」
「うるさいお黙んなさい! あまりに腹が立ったので、この国の平和の象徴……『建国の宝玉』は、私がいただきましたわ!」
私は宝石を見せびらかしました。
「返して欲しければ、今すぐその娘との婚約を破棄しなさい! さもなくば、この宝石を粉々に砕いて、魚の餌にしてやりますわよ!」
言った。
言ってやりました。
国家反逆罪スレスレの暴言です。
さあ、どうですか!
これほどの悪逆非道を見せつけられれば、誰だって怒るはずです。
特にマリアさん!
あなたは今こそ、聖女としての正義感を発揮し、「そんなことは許しません!」と私を断罪するのです!
そして殿下が「シュガー、お前には失望した」と言って私を捕らえ、二人の愛の勝利が確定する……!
(来い! 断罪イベント! 私を罵倒して!)
私は期待に胸を膨らませて、マリアさんを見下ろしました。
マリアさんが、震えながら一歩前へ出ました。
「シュガー様……」
(そうだ! 言え! 『最低です』と!)
「……どうして、そこまで……」
マリアさんの瞳から、涙が溢れ出しました。
「どうして、そこまでして……私たちのために、悪役を演じてくださるのですか……ッ!」
「……はい?」
私の高笑いがピタリと止まりました。
会場も静まり返ります。
「え、あ、いや……演じてませんけど? 本気で盗みましたけど?」
「嘘です!」
マリアさんが叫びました。
「だって、シュガー様の手……震えています! 本当はそんなことしたくないのに、私たちの愛を証明するために、わざと憎まれ役を買って出たんですね!?」
「ッ!?」
(ま、またそのパターンかあああああ!!)
震えているのは宝石が重すぎるからです!
漬物石サイズなんですよこれ!
しかし、マリアさんの「聖女フィルター」は、私の悪事をすべて「自己犠牲」に変換してしまいます。
「殿下! 気づいてあげてください!」
マリアさんは殿下にすがりました。
「シュガー様は、ご自分の身を犠牲にして、私たちに『試練』を与えてくださっているんです! 私たちがこの困難を乗り越えられるか、試してくださっているんです!」
「……な、なるほど!」
殿下もポンと手を打ちました。
「そうか……! 普通に考えれば、公爵令嬢が衆人環視の中で宝石を盗むなどありえない。逃げ道もないし、メリットもない。……つまり、これは『狂言』か!」
「違います! 本気です! ガチの犯行です!」
私はテーブルの上で地団駄を踏みました。
「見てくださいこの邪悪な顔! 今の私は完全に『国を滅ぼす魔女』の顔でしょう!?」
私は必死に変顔(悪役面)を作りました。
しかし。
「……悲しい」
殿下が涙ぐみました。
「なんて悲痛な表情なんだ……。心を殺して悪役になりきろうとする、その痛々しさ……。シュガー、お前はどこまで不器用なやつなんだ」
「だーかーらー!!」
伝わらない!
全く伝わりません!
私の「濡れ衣作戦」は、完全に「感動の自己犠牲ショー」として処理されようとしています。
周囲の貴族たちまで、
「そういえば、彼女は以前から殿下を陰ながら支えていたという噂も……」
「山賊から殿下を守ったのも彼女だろ?」
「なんて健気な……」
と、ざわめき始めました。
空気が「断罪」から「同情」へと変わっていきます。
(嘘でしょ……? 私の悪役引退公演が、まさかの『いい人認定』で終わるの!? そんなの営業妨害よ!)
私は焦りました。
こうなれば、実力行使です。
宝石を床に叩きつけて割るフリでもすれば、さすがに悲鳴が上がるはず!
「お、おのれぇ……! 私の本気が分からないようですわね! なら、この宝石を……!」
私が宝石を振り上げた、その時でした。
「……プッ」
どこからか、笑い声が聞こえました。
「ククク……傑作だ。本当に傑作だよ、この国は」
その声は、会場の入り口の方から響いてきました。
冷たく、粘着質で、底知れない悪意を含んだ声。
「あんな『偽物』を必死に守ったり、盗んだりして騒いでいるなんてな」
「……え?」
私が動きを止めると、入り口に人影が現れました。
ボロボロのローブを纏った怪しい男。
そして、その隣に立っているのは――。
「ヴィオレッタ王女!?」
マリアさんが叫びました。
そこには、以前とは違う、どす黒い笑みを浮かべたヴィオレッタ王女の姿がありました。
彼女の手には、怪しく光る水晶玉のようなものが握られています。
「ごきげんよう、皆様。そして愚かなシュガー・メルティ」
ヴィオレッタ王女が、私を見上げて嘲笑いました。
「あなたが必死に盗んだその宝石……ただのガラス玉ですわよ?」
「……は?」
私は手元の宝石を見ました。
「本物は――ここにあるもの」
ヴィオレッタ王女が、もう片方の手から『何か』を取り出しました。
それは、私が持っているものと瓜二つの、しかし輝きが段違いに深い、青い宝石でした。
「建国の宝玉……!?」
会場がどよめきます。
「いつの間にすり替えた!?」
殿下が叫びました。
「オホホホ! つい先ほど、煙幕騒ぎのドサクサに紛れて、私の召喚した使い魔にすり替えさせましたのよ!」
ヴィオレッタ王女が高笑いしました。
「感謝しますわ、シュガー。あなたが煙幕なんて焚いてくれたおかげで、誰にも気づかれずに本物を頂けましたもの!」
「……あ」
私の思考が停止しました。
私が悪役を演じるために起こした騒ぎが。
本物の悪党の窃盗をアシストしてしまった……?
「な、なんてことをしてくれたんだシュガー!」
誰かが叫びました。
今度こそ、非難の視線が私に集まります。
しかし、それは私が望んだ「悪役としての断罪」ではなく、「間抜けな共犯者」としての冷ややかな視線でした。
(……詰んだ)
テーブルの上で、私は絶望しました。
私の完璧な計画が。
私の尊い推しカプのための舞台が。
全部、あの王女に横取りされた挙句、最悪の形で利用された。
「さあ、この国の守りは消えましたわ! いでよ、我が魔獣たち!」
ヴィオレッタ王女が水晶玉を掲げると、会場の窓ガラスが一斉に割れました。
ガシャンッ!!
「ギャオオオオオオン!!」
夜空から、翼を生やした異形の魔物たちが、次々と舞踏会場になだれ込んできました。
悲鳴。怒号。パニック。
美しい舞踏会は一転して、阿鼻叫喚の地獄絵図へと変わりました。
「……嘘でしょ」
私は呆然と立ち尽くしました。
私の推し活ライフ、最後の最後で、ジャンルが『モンスターパニック映画』に変更ですか!?
「シュガー! 降りろ!」
キース様の声が聞こえ、私は我に返りました。
彼がテーブルの下まで来て、私に向けて手を伸ばしています。
「ボーッとするな! 死ぬぞ!」
「キース様……!」
「まったく、お前の脚本にはいつも『魔物』なんて書いてないだろうが!」
彼は悪態をつきながらも、ニヤリと笑いました。
「……だが、退屈はしなさそうだ。行くぞ、共犯者!」
私は宝石(偽物)を放り投げ、キース様の腕の中へと飛び降りました。
「……ええ、行きますわよ!」
空中で体勢を立て直しながら、私はドレスの裾を破り捨てました。
「私のステージを台無しにした罪……万死に値しますわ、ヴィオレッタ王女!!」
推しカプを守るため。
そして、私の汚名を返上するため。
悪役令嬢シュガー・メルティ、最終決戦のゴングが鳴り響きました。
ワルツが終わり、会場が割れんばかりの拍手に包まれた瞬間。
私はドレスの隠しポケットから、魔道具『瞬間煙幕玉(パーティ用クラッカー改造版)』を取り出しました。
(ごめんあそばせ、皆様。この美しい夜会を、私が地獄に変えて差し上げますわ!)
私はそれを床に叩きつけました。
パンッ!!
乾いた破裂音と共に、真っ白な煙がダンスフロアの中央で巻き起こりました。
「きゃあああ!?」
「な、なんだ!?」
「火事か!?」
会場は一瞬でパニックに陥ります。
視界が遮られ、貴族たちが逃げ惑う混沌の中。
私はハンカチで口を覆い、迷いなくターゲットへと走りました。
目指すは、会場奥の台座に鎮座する『建国の宝玉』。
(警備兵が慌てている今がチャンス! キース様に教わった『気配を消す歩法』が役に立つわ!)
私は煙の中を滑るように移動し、ガラスケースの前へ。
そして、あらかじめ用意していた『ガラス切り(ダイヤモンド製)』で、ケースの裏側を円形に切り取りました。
カポッ。
音もなくガラスが外れます。
私は手を伸ばし、台座の上の青い宝石を鷲掴みにしました。
(ゲット! ……重っ! これ本当にサファイア? 漬物石くらいあるわよ?)
ずっしりとした重量感に驚きつつも、私はそれを高々と掲げました。
そして、煙が晴れ始めた絶妙なタイミングで、近くのテーブルの上に飛び乗りました。
「オッホッホッホッホ!!」
会場中に響き渡る高笑い。
煙がサーッと引いていき、衆人環視の中、テーブルの上で仁王立ちする私の姿が露わになりました。
「そこまでですわ! この茶番は!」
「……シュガー!?」
アレクセイ殿下が目を見開いて叫びました。
マリアさんも、口元を押さえて絶句しています。
会場中の視線が、私と、私の手にある青い宝石に釘付けになりました。
「あ、あれは……!」
「建国の宝玉!?」
「まさか、盗んだのか!?」
どよめきが広がります。
成功です。
完全に「ヤバイ奴」として認知されました。
私は扇で口元を隠し、悪役令嬢としての演説を開始しました。
「お聞きなさい、愚かな貴族ども! そしてアレクセイ殿下!」
私はビシッと殿下を指差しました。
「私は認めません! どこの馬の骨とも知れぬ平民娘が、次期王妃になるなど! この国の恥ですわ!」
「なっ……! シュガー、貴様何を言っている!」
「うるさいお黙んなさい! あまりに腹が立ったので、この国の平和の象徴……『建国の宝玉』は、私がいただきましたわ!」
私は宝石を見せびらかしました。
「返して欲しければ、今すぐその娘との婚約を破棄しなさい! さもなくば、この宝石を粉々に砕いて、魚の餌にしてやりますわよ!」
言った。
言ってやりました。
国家反逆罪スレスレの暴言です。
さあ、どうですか!
これほどの悪逆非道を見せつけられれば、誰だって怒るはずです。
特にマリアさん!
あなたは今こそ、聖女としての正義感を発揮し、「そんなことは許しません!」と私を断罪するのです!
そして殿下が「シュガー、お前には失望した」と言って私を捕らえ、二人の愛の勝利が確定する……!
(来い! 断罪イベント! 私を罵倒して!)
私は期待に胸を膨らませて、マリアさんを見下ろしました。
マリアさんが、震えながら一歩前へ出ました。
「シュガー様……」
(そうだ! 言え! 『最低です』と!)
「……どうして、そこまで……」
マリアさんの瞳から、涙が溢れ出しました。
「どうして、そこまでして……私たちのために、悪役を演じてくださるのですか……ッ!」
「……はい?」
私の高笑いがピタリと止まりました。
会場も静まり返ります。
「え、あ、いや……演じてませんけど? 本気で盗みましたけど?」
「嘘です!」
マリアさんが叫びました。
「だって、シュガー様の手……震えています! 本当はそんなことしたくないのに、私たちの愛を証明するために、わざと憎まれ役を買って出たんですね!?」
「ッ!?」
(ま、またそのパターンかあああああ!!)
震えているのは宝石が重すぎるからです!
漬物石サイズなんですよこれ!
しかし、マリアさんの「聖女フィルター」は、私の悪事をすべて「自己犠牲」に変換してしまいます。
「殿下! 気づいてあげてください!」
マリアさんは殿下にすがりました。
「シュガー様は、ご自分の身を犠牲にして、私たちに『試練』を与えてくださっているんです! 私たちがこの困難を乗り越えられるか、試してくださっているんです!」
「……な、なるほど!」
殿下もポンと手を打ちました。
「そうか……! 普通に考えれば、公爵令嬢が衆人環視の中で宝石を盗むなどありえない。逃げ道もないし、メリットもない。……つまり、これは『狂言』か!」
「違います! 本気です! ガチの犯行です!」
私はテーブルの上で地団駄を踏みました。
「見てくださいこの邪悪な顔! 今の私は完全に『国を滅ぼす魔女』の顔でしょう!?」
私は必死に変顔(悪役面)を作りました。
しかし。
「……悲しい」
殿下が涙ぐみました。
「なんて悲痛な表情なんだ……。心を殺して悪役になりきろうとする、その痛々しさ……。シュガー、お前はどこまで不器用なやつなんだ」
「だーかーらー!!」
伝わらない!
全く伝わりません!
私の「濡れ衣作戦」は、完全に「感動の自己犠牲ショー」として処理されようとしています。
周囲の貴族たちまで、
「そういえば、彼女は以前から殿下を陰ながら支えていたという噂も……」
「山賊から殿下を守ったのも彼女だろ?」
「なんて健気な……」
と、ざわめき始めました。
空気が「断罪」から「同情」へと変わっていきます。
(嘘でしょ……? 私の悪役引退公演が、まさかの『いい人認定』で終わるの!? そんなの営業妨害よ!)
私は焦りました。
こうなれば、実力行使です。
宝石を床に叩きつけて割るフリでもすれば、さすがに悲鳴が上がるはず!
「お、おのれぇ……! 私の本気が分からないようですわね! なら、この宝石を……!」
私が宝石を振り上げた、その時でした。
「……プッ」
どこからか、笑い声が聞こえました。
「ククク……傑作だ。本当に傑作だよ、この国は」
その声は、会場の入り口の方から響いてきました。
冷たく、粘着質で、底知れない悪意を含んだ声。
「あんな『偽物』を必死に守ったり、盗んだりして騒いでいるなんてな」
「……え?」
私が動きを止めると、入り口に人影が現れました。
ボロボロのローブを纏った怪しい男。
そして、その隣に立っているのは――。
「ヴィオレッタ王女!?」
マリアさんが叫びました。
そこには、以前とは違う、どす黒い笑みを浮かべたヴィオレッタ王女の姿がありました。
彼女の手には、怪しく光る水晶玉のようなものが握られています。
「ごきげんよう、皆様。そして愚かなシュガー・メルティ」
ヴィオレッタ王女が、私を見上げて嘲笑いました。
「あなたが必死に盗んだその宝石……ただのガラス玉ですわよ?」
「……は?」
私は手元の宝石を見ました。
「本物は――ここにあるもの」
ヴィオレッタ王女が、もう片方の手から『何か』を取り出しました。
それは、私が持っているものと瓜二つの、しかし輝きが段違いに深い、青い宝石でした。
「建国の宝玉……!?」
会場がどよめきます。
「いつの間にすり替えた!?」
殿下が叫びました。
「オホホホ! つい先ほど、煙幕騒ぎのドサクサに紛れて、私の召喚した使い魔にすり替えさせましたのよ!」
ヴィオレッタ王女が高笑いしました。
「感謝しますわ、シュガー。あなたが煙幕なんて焚いてくれたおかげで、誰にも気づかれずに本物を頂けましたもの!」
「……あ」
私の思考が停止しました。
私が悪役を演じるために起こした騒ぎが。
本物の悪党の窃盗をアシストしてしまった……?
「な、なんてことをしてくれたんだシュガー!」
誰かが叫びました。
今度こそ、非難の視線が私に集まります。
しかし、それは私が望んだ「悪役としての断罪」ではなく、「間抜けな共犯者」としての冷ややかな視線でした。
(……詰んだ)
テーブルの上で、私は絶望しました。
私の完璧な計画が。
私の尊い推しカプのための舞台が。
全部、あの王女に横取りされた挙句、最悪の形で利用された。
「さあ、この国の守りは消えましたわ! いでよ、我が魔獣たち!」
ヴィオレッタ王女が水晶玉を掲げると、会場の窓ガラスが一斉に割れました。
ガシャンッ!!
「ギャオオオオオオン!!」
夜空から、翼を生やした異形の魔物たちが、次々と舞踏会場になだれ込んできました。
悲鳴。怒号。パニック。
美しい舞踏会は一転して、阿鼻叫喚の地獄絵図へと変わりました。
「……嘘でしょ」
私は呆然と立ち尽くしました。
私の推し活ライフ、最後の最後で、ジャンルが『モンスターパニック映画』に変更ですか!?
「シュガー! 降りろ!」
キース様の声が聞こえ、私は我に返りました。
彼がテーブルの下まで来て、私に向けて手を伸ばしています。
「ボーッとするな! 死ぬぞ!」
「キース様……!」
「まったく、お前の脚本にはいつも『魔物』なんて書いてないだろうが!」
彼は悪態をつきながらも、ニヤリと笑いました。
「……だが、退屈はしなさそうだ。行くぞ、共犯者!」
私は宝石(偽物)を放り投げ、キース様の腕の中へと飛び降りました。
「……ええ、行きますわよ!」
空中で体勢を立て直しながら、私はドレスの裾を破り捨てました。
「私のステージを台無しにした罪……万死に値しますわ、ヴィオレッタ王女!!」
推しカプを守るため。
そして、私の汚名を返上するため。
悪役令嬢シュガー・メルティ、最終決戦のゴングが鳴り響きました。
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